2013.03.20 Wed
妖魔狩人 若三毛凛 if 第06話「妖怪鯵坊主 -後編-」
①→
この猪豚蛇という妖怪、一度戦ったことがあるけど、元々気の弱い妖怪。とてもこんな大それたことをできるような妖怪じゃない。
「わかった、あなたを信じるわ」
「ほ…本当ダカ!? 嬉しいダヨ!」
「それで、その干物を作った妖怪はどこに・・・?」
凛と猪豚蛇が話していると、そばにある岩の上から麦わら帽子をかぶった人影が・・・
人影は大きな串のように尖った棒を手に、岩上から凛に狙いを定め、一気に飛び降りた!
「危ないダヨっっ!!」
先に気づいた猪豚蛇が叫び声をあげた。
声に反応し、咄嗟に飛びよける凛。
串は砂浜に突き刺さり、人影は凛を睨み付ける。
「この妖気…、あなた妖怪ね!」
そう問いかけると同時に、凛は霊装し、弓を構えた。
「ほぅ、ただの人間ではなさそうだな。」
人影はそう言って、麦わら帽子や着ていた服を放り投げた。
青光りする肌、全身を覆う鱗、ギョロギョロとした魚のような大きな目。
まさしくその姿は、妖怪…鯵坊主であった。
「中国妖怪では無い…?」
「あいつはこの土地の妖怪で、人間に復讐するために、人間を干物にしているダヨ」
「そこの豚妖怪、やはり裏切りよったな。お前も干し肉にしてくれる!」
ギョロっとした大きな目が猪豚蛇を睨み付けた。
「オ…オラは、戦いは苦手ダヨ~っ!」
猪豚蛇は泣き叫びながら岩陰に隠れた。
「くらえ、小娘!!」
鯵坊主は、全身の鱗を手裏剣のように飛ばし、襲いかかって来た。
その威力は、岩に突き刺さるほど強力なもの。
必死に走りながらかわす凛。激しい連続攻撃のため、弓の狙いを定める暇も無い。
「ちょこまかと逃げ回りおって! これならどうだ!!」
鯵坊主は、飛ばした数十枚の鱗を凛の頭上で弾幕のように広げた。
青光りする鱗が、太陽の光を乱反射する。
「眩し…!」
思わず目を背ける凛。
「いまだ!!」
鯵坊主はそう叫ぶと、両手から包帯のような和紙を投げつけ、凛の全身に巻きつけた。
「あっ!?」
ぐるぐると和紙が巻きつき、凛はまるでエジプトのミイラのように、グルグル巻きになっていた。
「ぐふふ…、その和紙はわしの妖力で作られた特別製で、普通の刃では傷一つ入れることすらできん。」
鯵坊主は再び大串を手に振りかぶり、
「トドメを刺して、お前も旨い干物にしてやろう!」
と、一気に振り下ろした!
その瞬間!
バリッ!!
鋭い音と共に、凛を包んでいた和紙が引き裂かれ、中から凛が飛び出した。
「なにっ!?」
虚をつかれ、呆然とする鯵坊主。
「くらえ、霊光矢!!」
その隙を逃さず、凛の霊光矢が鯵坊主を貫いた。
「な…なぜ…だ…、どうやって…? しかも…並みの刃では…切り裂く事は…できない…のに…?」
「和紙に包まれる瞬間、わたしはこの霊光矢を突き立てて、切れ目入れておいた。そしてこの霊光矢は、わたしの霊力を具現化したもの。だから、あなたの妖力を切り裂くことができる」
「ま…まさか…、人間に…負ける…とは…」
ここまで言うと鯵坊主は倒れ、浄化の光で包まれた。
光が消えると、妖怪化する前の一匹の鯵がピチピチと跳ねている。凛は鯵を拾い上げると、海へ帰してやった。
―被害にあった人は残念だけど、これでもう…新たな被害者が出ることはない―
戦いが終わり、ホッと一息入れる凛。そして…
「さっきは危険を教えてくれて、ありがとう。」
と、猪豚蛇に向かってにこやかに礼を言った。
猪豚蛇は、しばし驚いた表情をしていたが、
「あ…あの…、オラを仲間にしてほしいダ…」
「えっ!?」
と、深々と頭を下げた。
「あんたは以前…オラが命を狙ったのに、オラを殺さず見逃してくれた。そして今回もオラの言う事を信じてくれたダ。
オラ、中国に居た時も、妖木妃様の手下になってからも…脅されてばかりで、まして御礼なんか言われたのも初めてダ。」
「・・・・・」
「オラ、今…心の底から、あんたについて行きたいと思ってるダヨ」
猪豚蛇の訴えを黙って聞いていた凛。やがて静かに微笑み…
「却下…」
と一言だけ言い、そっぽを向いて歩き出した。
「な…なんで…ダ!?」
「わたしは人との交流は苦手なの。コンプレックスさえ持っているの。まして妖怪相手なんて、どう接していいかわからない…」
「いや…だけど…、だったら…勝手にあんたについて行くダヨ!」
そう言って後をついて来る猪豚蛇に対し、凛はそれ以上何も言わなかった。
ただ・・・・・・
―どうでもいいけど、この妖怪…、電車とか乗れるの?―
第7話へつづく(正規ルート)
----------------------------------------------------------------
②は 》続きを読むをクリックしてください。
この猪豚蛇という妖怪、一度戦ったことがあるけど、元々気の弱い妖怪。とてもこんな大それたことをできるような妖怪じゃない。
「わかった、あなたを信じるわ」
「ほ…本当ダカ!? 嬉しいダヨ!」
「それで、その干物を作った妖怪はどこに・・・?」
凛と猪豚蛇が話していると、そばにある岩の上から麦わら帽子をかぶった人影が・・・
人影は大きな串のように尖った棒を手に、岩上から凛に狙いを定め、一気に飛び降りた!
「危ないダヨっっ!!」
先に気づいた猪豚蛇が叫び声をあげた。
声に反応し、咄嗟に飛びよける凛。
串は砂浜に突き刺さり、人影は凛を睨み付ける。
「この妖気…、あなた妖怪ね!」
そう問いかけると同時に、凛は霊装し、弓を構えた。
「ほぅ、ただの人間ではなさそうだな。」
人影はそう言って、麦わら帽子や着ていた服を放り投げた。
青光りする肌、全身を覆う鱗、ギョロギョロとした魚のような大きな目。
まさしくその姿は、妖怪…鯵坊主であった。
「中国妖怪では無い…?」
「あいつはこの土地の妖怪で、人間に復讐するために、人間を干物にしているダヨ」
「そこの豚妖怪、やはり裏切りよったな。お前も干し肉にしてくれる!」
ギョロっとした大きな目が猪豚蛇を睨み付けた。
「オ…オラは、戦いは苦手ダヨ~っ!」
猪豚蛇は泣き叫びながら岩陰に隠れた。
「くらえ、小娘!!」
鯵坊主は、全身の鱗を手裏剣のように飛ばし、襲いかかって来た。
その威力は、岩に突き刺さるほど強力なもの。
必死に走りながらかわす凛。激しい連続攻撃のため、弓の狙いを定める暇も無い。
「ちょこまかと逃げ回りおって! これならどうだ!!」
鯵坊主は、飛ばした数十枚の鱗を凛の頭上で弾幕のように広げた。
青光りする鱗が、太陽の光を乱反射する。
「眩し…!」
思わず目を背ける凛。
「いまだ!!」
鯵坊主はそう叫ぶと、両手から包帯のような和紙を投げつけ、凛の全身に巻きつけた。
「あっ!?」
ぐるぐると和紙が巻きつき、凛はまるでエジプトのミイラのように、グルグル巻きになっていた。
「ぐふふ…、その和紙はわしの妖力で作られた特別製で、普通の刃では傷一つ入れることすらできん。」
鯵坊主は再び大串を手に振りかぶり、
「トドメを刺して、お前も旨い干物にしてやろう!」
と、一気に振り下ろした!
その瞬間!
バリッ!!
鋭い音と共に、凛を包んでいた和紙が引き裂かれ、中から凛が飛び出した。
「なにっ!?」
虚をつかれ、呆然とする鯵坊主。
「くらえ、霊光矢!!」
その隙を逃さず、凛の霊光矢が鯵坊主を貫いた。
「な…なぜ…だ…、どうやって…? しかも…並みの刃では…切り裂く事は…できない…のに…?」
「和紙に包まれる瞬間、わたしはこの霊光矢を突き立てて、切れ目入れておいた。そしてこの霊光矢は、わたしの霊力を具現化したもの。だから、あなたの妖力を切り裂くことができる」
「ま…まさか…、人間に…負ける…とは…」
ここまで言うと鯵坊主は倒れ、浄化の光で包まれた。
光が消えると、妖怪化する前の一匹の鯵がピチピチと跳ねている。凛は鯵を拾い上げると、海へ帰してやった。
―被害にあった人は残念だけど、これでもう…新たな被害者が出ることはない―
戦いが終わり、ホッと一息入れる凛。そして…
「さっきは危険を教えてくれて、ありがとう。」
と、猪豚蛇に向かってにこやかに礼を言った。
猪豚蛇は、しばし驚いた表情をしていたが、
「あ…あの…、オラを仲間にしてほしいダ…」
「えっ!?」
と、深々と頭を下げた。
「あんたは以前…オラが命を狙ったのに、オラを殺さず見逃してくれた。そして今回もオラの言う事を信じてくれたダ。
オラ、中国に居た時も、妖木妃様の手下になってからも…脅されてばかりで、まして御礼なんか言われたのも初めてダ。」
「・・・・・」
「オラ、今…心の底から、あんたについて行きたいと思ってるダヨ」
猪豚蛇の訴えを黙って聞いていた凛。やがて静かに微笑み…
「却下…」
と一言だけ言い、そっぽを向いて歩き出した。
「な…なんで…ダ!?」
「わたしは人との交流は苦手なの。コンプレックスさえ持っているの。まして妖怪相手なんて、どう接していいかわからない…」
「いや…だけど…、だったら…勝手にあんたについて行くダヨ!」
そう言って後をついて来る猪豚蛇に対し、凛はそれ以上何も言わなかった。
ただ・・・・・・
―どうでもいいけど、この妖怪…、電車とか乗れるの?―
第7話へつづく(正規ルート)
----------------------------------------------------------------
②は 》続きを読むをクリックしてください。
| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 13:18 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑