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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第06話「妖怪鯵坊主 -後編-」

①→

 この猪豚蛇という妖怪、一度戦ったことがあるけど、元々気の弱い妖怪。とてもこんな大それたことをできるような妖怪じゃない。
「わかった、あなたを信じるわ」
「ほ…本当ダカ!? 嬉しいダヨ!」
「それで、その干物を作った妖怪はどこに・・・?」
 凛と猪豚蛇が話していると、そばにある岩の上から麦わら帽子をかぶった人影が・・・
人影は大きな串のように尖った棒を手に、岩上から凛に狙いを定め、一気に飛び降りた!
「危ないダヨっっ!!」
 先に気づいた猪豚蛇が叫び声をあげた。
声に反応し、咄嗟に飛びよける凛。
串は砂浜に突き刺さり、人影は凛を睨み付ける。
「この妖気…、あなた妖怪ね!」
 そう問いかけると同時に、凛は霊装し、弓を構えた。
「ほぅ、ただの人間ではなさそうだな。」
 人影はそう言って、麦わら帽子や着ていた服を放り投げた。
青光りする肌、全身を覆う鱗、ギョロギョロとした魚のような大きな目。
まさしくその姿は、妖怪…鯵坊主であった。
「中国妖怪では無い…?」
「あいつはこの土地の妖怪で、人間に復讐するために、人間を干物にしているダヨ」
「そこの豚妖怪、やはり裏切りよったな。お前も干し肉にしてくれる!」
 ギョロっとした大きな目が猪豚蛇を睨み付けた。
「オ…オラは、戦いは苦手ダヨ~っ!」
 猪豚蛇は泣き叫びながら岩陰に隠れた。
「くらえ、小娘!!」
 鯵坊主は、全身の鱗を手裏剣のように飛ばし、襲いかかって来た。
その威力は、岩に突き刺さるほど強力なもの。
 必死に走りながらかわす凛。激しい連続攻撃のため、弓の狙いを定める暇も無い。
「ちょこまかと逃げ回りおって! これならどうだ!!」
 鯵坊主は、飛ばした数十枚の鱗を凛の頭上で弾幕のように広げた。
青光りする鱗が、太陽の光を乱反射する。
「眩し…!」
 思わず目を背ける凛。
「いまだ!!」
 鯵坊主はそう叫ぶと、両手から包帯のような和紙を投げつけ、凛の全身に巻きつけた。
「あっ!?」
 ぐるぐると和紙が巻きつき、凛はまるでエジプトのミイラのように、グルグル巻きになっていた。
「ぐふふ…、その和紙はわしの妖力で作られた特別製で、普通の刃では傷一つ入れることすらできん。」
 鯵坊主は再び大串を手に振りかぶり、
「トドメを刺して、お前も旨い干物にしてやろう!」
と、一気に振り下ろした!
 その瞬間!
 バリッ!!
 鋭い音と共に、凛を包んでいた和紙が引き裂かれ、中から凛が飛び出した。
「なにっ!?」
 虚をつかれ、呆然とする鯵坊主。
「くらえ、霊光矢!!」
 その隙を逃さず、凛の霊光矢が鯵坊主を貫いた。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第六話(3)

「な…なぜ…だ…、どうやって…? しかも…並みの刃では…切り裂く事は…できない…のに…?」
「和紙に包まれる瞬間、わたしはこの霊光矢を突き立てて、切れ目入れておいた。そしてこの霊光矢は、わたしの霊力を具現化したもの。だから、あなたの妖力を切り裂くことができる」
「ま…まさか…、人間に…負ける…とは…」
 ここまで言うと鯵坊主は倒れ、浄化の光で包まれた。
光が消えると、妖怪化する前の一匹の鯵がピチピチと跳ねている。凛は鯵を拾い上げると、海へ帰してやった。
―被害にあった人は残念だけど、これでもう…新たな被害者が出ることはない―
 戦いが終わり、ホッと一息入れる凛。そして…
「さっきは危険を教えてくれて、ありがとう。」
と、猪豚蛇に向かってにこやかに礼を言った。
 猪豚蛇は、しばし驚いた表情をしていたが、
「あ…あの…、オラを仲間にしてほしいダ…」
「えっ!?」
と、深々と頭を下げた。
「あんたは以前…オラが命を狙ったのに、オラを殺さず見逃してくれた。そして今回もオラの言う事を信じてくれたダ。
 オラ、中国に居た時も、妖木妃様の手下になってからも…脅されてばかりで、まして御礼なんか言われたのも初めてダ。」
「・・・・・」
「オラ、今…心の底から、あんたについて行きたいと思ってるダヨ」
 猪豚蛇の訴えを黙って聞いていた凛。やがて静かに微笑み…
「却下…」
と一言だけ言い、そっぽを向いて歩き出した。
「な…なんで…ダ!?」
「わたしは人との交流は苦手なの。コンプレックスさえ持っているの。まして妖怪相手なんて、どう接していいかわからない…」
「いや…だけど…、だったら…勝手にあんたについて行くダヨ!」
 そう言って後をついて来る猪豚蛇に対し、凛はそれ以上何も言わなかった。
 ただ・・・・・・

―どうでもいいけど、この妖怪…、電車とか乗れるの?―


第7話へつづく(正規ルート)


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| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 13:18 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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第六話 あとがき

こんにちわ!

改めて、「夢は甘い、しかし現実はムチャ…辛い」と実感させられる、 るりょうりにです。

まぁ、それは置いておいて・・・。

なんとか第六話、公開できる運びとなりました~♪
今回は、昨年9/16に募集した、『凛のBADEND』ネタから使わせて頂きました。


yorotoru様より

凜の末路募集

マミー(ミイラ男)に包帯まきにされ棺桶の中に入れられ、日当たりのいい場所に置かれる。
いい感じの干物になった時点でバラバラにされ、観光客に売られるというのはどうでしょう



yorotoru様、ありがとうございます!!


ただ、申し訳ないですが、一つ私なりに変更させていただきました。(^_^;)

○マミー(ミイラ男)に・・・
 ここを「鯵坊主」という、オリジナル妖怪に変更させて頂きました。
 凛を包帯でグルグル巻き上げるというシチュエーションならミイラ男の方がもっともらしいのですが、今回私は「干物」という点に拘りました。
 しかも何かに包んで干物を作る。
 そのまま包んで、箱(棺桶)等に入れ熱すると、干物というより「蒸し焼き」に近いかな?と思ったわけです。

 そこで、それに近い干物加工製法があるかどうかを調べてみた結果、日本古来からある「灰干し」という技法に辿り付きました。
 灰干しは現実にある干物加工製法で、和紙やセロハンに包み、灰の中に入れて乾燥させるという技法です。
 この技法は、作中で鯵坊主が言っているように、本来ならば温めず冷暗所で長時間置いて乾燥させるわけですが、箱の中で蒸される凛も捨てがたいな~という気持ちもあり、劇中では短時間乾燥という運びにし、日光に晒すという形にしたわけです。

 こうなると、干物作りに…しかも「日本古来」の技法に詳しい妖怪がいい。
 そこで、干物と言えば「」w。
 鯵が千年生き延びて妖怪化したという設定にしました。

あとは、凛の末路を悲惨さを強調するために、yorotoru様のアイデア、「バラバラにして観光客に売られる」という末路にしました。
ここは、最初ネタを知った時「妖木妃がそういう事をさせるのは無理がある」という想いがあったのですが、
「妖木妃にまるっきり関係のない日本妖怪がするなら問題ないか~」という事で落ち着きましたw

このネタ、構想を始めたら結構萌えまして、一旦書き始めたら、割と早いペースで書き上がりました。


うん! 本当にいいネタでした~♪


次の話も、頂いたネタを構成して、作っていきたいと思います!


次に、このネタ募集をかけた時に「大きなイベント」という話をしました。

この大きなイベント、先月末から開始しておりますが、今なら言えます!


「リアルで独立開業をしました!!」


結構、借金をして始めたので、かなり不安です
約1月立ちましたが、ハッキリ言って…赤字です!! Σ(゚д゚lll)

まぁ、その業界では当然の出足という事らしいので、徐々に取り返していけば・・・・


大丈夫かな…orz


そんなところです。


小説はそんな落ち込みたくなるような状況から、気分転換の意味も込めて書いておりますw
運が良ければ、また一ヶ月後に公開できると思います!

では、その時まで~~♪

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 13:01 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第05話「千佳の異変 -前編-」

 行方不明だった千佳が保護されてから二日経った、五月十一日。
もちろん千佳が行方不明だった事は、警察関係者、学校関係者、本人家族以外、誰にも知らされていない。
 生徒達には、千佳はインフルエンザで休学と伝えられていたため、凛ですらその事実を知る由もないのだ。

 その日の朝、日曜だという事もあり凛はいつもよりのんびりと目覚めた。
「今何時・・・? えっ、もう十時・・!?」
 おそらく相当な疲れが溜まっていたのだろう。なにしろこの一週間で四回も妖怪と戦ったのだ。ついこの間まで普通の女子中学生であった凛にとって、それは当然であろう。
 パジャマ姿のまま階段を降り、居間を通って台所へ除くと、母・日和が朝食の片付けをしていた。
「おはよう」
「おはよう、今日はずいぶんゆっくり寝ていたわね?」
「うん、ちょっと部活で疲れたみたい」
 そう言って凛は居間へ戻ると、テレビを付けた。
「うん…?」
 何気なくバラエティー番組を見ていると、画面の上にニュース速報が流れている。
 神田川県加須屋郡由子村で起きている連続通り魔事件、昨夜も村民二名が何者かに襲われる。
「連続通り魔事件…!?」
「そうそう、三日前から被害者が出ているそうよ。昨日の朝、村長さんから気をつけるようにって連絡があったわ」
 日和が凛の朝食を持って居間へ入るなり話掛けてきた。
「三日前から・・・?」
「二丁目の大橋さんと三丁目の吉田さんが被害にあったらしいの。でも重症は負ったけど命に別状はないみたい」
 ジリリリリン・・・
 話に水を差すように電話が鳴り響いた。
「はい、若三毛ですけど…、ああ村長さん。はい…はい…」
日和は受話器を置くと青ざめた顔で凛を見た。
「凛、昨日の被害者は斎藤さん…、千佳ちゃんのお父さんとお母さんだって!」
「ち…千佳の…?」
「今から公民館で緊急集会があるから、お母さん出かけてくるわね。凛、用事がなければ家にいるのよ」
 日和はそう言って手短に身支度を整えると、急ぎ早で飛び出していった。
―千佳の両親が・・・?―
 座卓の上にある新聞を広げ、隅々まで目をやる。
 あった!
『被害者は全身を鋭い刃物のようなもので刻まれ、全治三ヶ月の重症』
 妖怪の仕業?
いえ、これだけでは断定できない。
それと千佳の両親、千佳は無事なの!?
「金鵄、いるんでしょ?」
「ああ、姿が見えないように霊体化しているけどね」
「嫌な予感がするの、一緒に被害者が入院している診療所へついて来てくれる?」
「もちろんだ、もし妖怪の仕業なら早く手を打った方がいい」


「申し訳ございません、こちらの患者さん方はしばらくの間、面会をご遠慮させて頂いております。」
 村の中央にある病床数、十床程度の診療所。予想はしていたが、面接はあっさりと断られてしまった。
「金鵄、あなた被害者の症状を確認してきてくれる? 人間によるものなのか、妖怪の仕業なのか」
「わかった。…で君は?」
「わたしは千佳の家に行ってみる。無事かどうか確認したいし」
「うむ、何かわかったら、すぐに知らせるよ」
 金鵄はそう言って姿が見えない霊体のまま、病床へ向かっていった。
凛はそれを見届けると、診療所を後にした。


 斎藤家は昔ながらの棚田農家。
その特性を生かし、現在では山葵産業で需要を上げ、神田川県内で一つのブランドとして確立している。
 そのため集落から離れた場所に住まいをおいているが、その佇まいは村民から『斎藤御殿』とも呼ばれる程の立派なものである。
 千佳の家族は両親と千佳に加え、使用人が五名。祖父母もいるらしいが、現在は大きな病院に通院しやすい丘福市で暮らしている。
 診療所から自転車で二十分、凛はその門前に来ていた。
門に設置されたインターホンを押すと、しばらくしてから千佳の声が返ってきた。
「どなた?」
「千佳? わたし・・凛だけど・・・」
「凛? 入って・・」
 門が開錠され、凛は中へ入っていった。
何度も来たことがあるが、日本の自然美を味わえる立派な庭に繋がる。
春夏秋冬に催されたその庭は、県内でも五本の指に上げられると言われている。
 そんな立派な庭を通り玄関に入ると、そこには千佳が待っていた。
 斎藤千佳、凛の同級生。
丸顔でショートヘア、アンダーリムの眼鏡を掛けている。
背丈は凛よりやや低いものの、運動神経抜群でそのせいか、全体的なスタイルでは凛より上かも知れない。
「千佳! おじさんとおばさんの事・・・・」
 凛は開口一番そう尋ねる。
「いいから、入って」
 千佳はそっけない態度で凛を中へ通した。
廊下を歩きながら、凛は一つの違和感を感じ千佳に尋ねた。
「ねぇ、ここの家で働いている人達は? さっきから誰にも会わないし、いつもならその人達が案内してくれるのに?」
「今日は誰も来ていないっちゃよ。あんな事があったから、暇を与えたんやわ。だから、あたしと凛の二人っきりやねん。」
「わたしと千佳の二人だけ・・・?」

妖魔狩人 若三毛凛 if 第五話(1)

 そうこう言っているうちに、いつも通り洋風のリビングに連れられた。
「凛、紅茶でいいんやろ?」
「千佳!そんな事より、おじさんとおばさんの事、心配じゃないの!?」
 凛の言葉に千佳は小さくため息をついた。
「凛、さっきから父さんと母さんの事ばかりやね? あたしの事は心配じゃなかと?」
「心配よ、だからこうして・・・」
「だったら今日まで、なんで見舞いに来てくれなかったん?」
「えっ!?」

 その頃、病床に侵入した金鵄は、千佳の母親『結』の枕元にいた。
全身包帯で包まれている結、それだけでどれだけの負傷を負ったかがわかる。
 ここへ来る前に他の被害者を見てきたが、状態は殆ど同じ。
それだけでなく、傷口から僅かながら妖気を感じ取れた。間違いなく妖怪の仕業だ。
「う…ううん…」
 意識を失っている結が、うなされるように言葉を漏らした。
「ち…千佳・・・ど…どうして…そんな姿に・・・・」
「うわごと…!?」
「やめて…千佳…、いや…いやぁ…」
 相当な精神的ショックと恐怖を味わったのか、その形相は普通ではない。
「ま…まさか、その千佳って子が・・・!? 早く、凛に知らせなくては!!」

「あたしさぁ、何日間か学校休んどったやん、凛がいつ見舞いに来てくれるか、ずっと待っとったんよ!」
「そ…それは、千佳がインフルエンザだから、治るまでお見舞いには行かないようにって、学校の先生から・・・」
「そんなの関係ないやん。結局…凛があたしの事、その程度しか思っていないってことやないの?」
「ち…違う、わたしにとって千佳は幼なじみで、勉学を共にする大事な友だ・・」
「だよね~っ、幼なじみで同級生! 凛にとってのあたしは、その程度。あたしがどんだけ凛の事を・・・」
「千佳・・・・」


どうなる?

①凛は会話の最中で千佳の小さな異変に気づく。
②凛は千佳の会話のペースを変えられず、流れに乗ってしまう。

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『-後編-』へ続く。

そのまま、下のスレをご覧ください。

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 21:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第05話「千佳の異変 -後編-」

①→

「!?」
 凛は会話の途中で、千佳の口元に牙のような鋭い歯が見えた。
 まさか・・・
そのまま凛は精神を集中し、千佳の体から出る気を探る。
 妖気だ! 千佳の体から妖気が感じられる。
「千佳、あなた…まさか…、最近の連続通り魔…、そして…おじさんやおばさんを襲ったのも…!?」
「なんね、気づいたん?」
 千佳はクスッと笑うと、眼鏡を外しテーブルの上に乗せた。黒い瞳が金色に光りだす。
ショートヘアの髪はハリネズミのように逆立ち、小さな手の爪は刃物のように長く尖っていく。
 間違いない、優里の母…美咲が妖怪化した時と同じ姿。
 でも、いったい何時? 妖木妃はわたしとの戦いの後、姿を見せていないはず!?
「ねぇ、凛。あたしのさ、凛への想い…知っとぉ?」
 甘い口調で凛へ問いかけるのと同時に、千佳は鋭い爪を突き出して、凛へ襲い掛かってきた。
「霊装っ!!」
 千佳の攻撃を避けながら、戦闘服を装着し弓を手にする凛。
「その姿…、その服…、やっぱり凛だったんやね」
「何のこと!?」
 クスッ!
「あたしさ、早生まれで未熟児やったんよ。だから今でも体は小さい方やけど、幼稚園や小学校の時でも一番小さくて、それでよくみんなから苛められていたとよ。」
 千佳は突然昔話を始めだした。だが、それでいて攻撃の手は緩めていない。
「馬鹿にされ、苛められ、いつも一人ぼっちだった。だけどね、あたしと同じようにみんなから弾き出され、孤独だった子がもう一人いたとよ。」
「!?」
「そう…、凛…あんたや。」
大きく振り切った爪が、家具を真っ二つに切り裂く。
―なんて、鋭い爪なの!?―
「凛、あんたもお化けが見えるとか言って、同級生はだけでなく村の人からも気味悪がられよったよね。
あんただけやと思った。あたしの気持ちがわかる子は・・・。
だからあたしは、あんたと友達になろうと必死やったわ。」
―幼稚園の頃、千佳がわたしに話しかけてきたのは、そういう理由…―
「あんたはあまり心を開いてくれなかったけど、でも…いつも拒むことなく、あたしを受け入れてくれた。あたしにとって、あんたは最高の居場所だったんだよ」
 話しながらも千佳の攻撃は止まらない。凛の体も二~三の傷を負っていた。

「あたしさ、凛の事…愛しているっちゃよ」

「えっ!?」
「小四の終わり頃から、その気持ちに気づいたんよ。友情とか信頼とか、そういうんやない。凛を一人の女の子として見て、自分のものにしたいってね。」
「え…? なに…っ?」
「いつも凛の事を考えてたら、あたしにとって凛はなくてはならない存在になっていったっちゃ。そしてその気持ちはいつしか、凛を抱きしめたい…、凛とキスしたい…、そして凛の体の隅々まで知りたい…って」
「それって…」
「そう、あたし…いわゆる、百合ってやつやったんやね」
 言葉とは裏腹に、千佳の攻撃は更に激しさを増す。
素早い動きに、両手から繰り出される鋭い爪の嵐。
凛は弓を盾に、防戦するのが精一杯だ。
―この狭い部屋の中では、かわす事すらままならない。もっと広い場所へ―
 苦し紛れにリビングの窓ガラスを矢で撃ち破ると、飛び込むように庭へ飛び出した。
―とにかく、距離をおかないと…―
 体制を立て直そうとする凛に容赦なく襲い掛かる千佳。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第五話(2)

「凛ーっ!あんたは、あたしのものっちゃよ!!」
「千佳…ひとつ聞かせて!貴方はいつ…妖怪になったの!?」
 凛の問いに、一瞬動きを止めた千佳。
「一週間前のゴールデンウィーク、あんた…宿題の答え合わせに来られないって言った日があったやん?
 あの日、あたしは電話の後に、あんたの家に行ったっちゃ。」
「?」
「あんたがその姿で、化け物と戦っているのを見たっちゃよ」
―一週間前のゴールデンウィーク…、もしかして…初めて妖魔狩人になって、美咲おばさんや…ボンディァォフーニュと戦った時・・!?―
「あたしはなんとなく理解したっちゃ。子どもの頃からお化けが見えるとかいう…凛の能力。そのせいで、あたしらの予想できないような事に巻き込まれているんやないかと。」「あ…あれを見ていた…の?」
「翌日早朝、あたしは村外れの神社にお祈りのいったっちゃ。
『凛を助けて』…。『あたしに何かできる事はないか!?』…と」
「ち…千佳…」
「そうしたら拝殿から恐ろしく綺麗な女性が現れてや、あたしに強力な力を与えてやる言うて、一粒の種をくれたっちゃ」
―妖木妃!!―
「その種を飲んでから後は殆ど記憶がない。気がついたら数日後に神社の近くで保護されたっつうわけやん。強力な力を手に入れて…な!」
「千佳、その力は・・・!」
「わかっとる。あん時の化け物と同じ力っちゅう事やろ? あの日からあたしは、激しい怒りと憎しみばかりが心を覆っているっちゃ。壊したい・・・殺したい・・・そんな気持ちでいっぱいや」
 いつの間にか、千佳は涙を流していた。溢れるような涙を…

「あたしは、村の人も…お父さんやお母さんも、そして…そして…
何よりも、凛・・・・っ! あんたを襲いたくなんか…ないっちゃよ!!」

 暴走した己の体を止められない千佳は、激しく涙を流しながらも、凛への攻撃を緩めない。
 そう、妖怪化した千佳の体は、完全にその『血』に支配されてしまっている。
だが、同様に妖怪化した優里の母…美咲と違って自我を持っているのは、おそらく凛に対しての想いが強いためであろう。
 たとえそれが、一般的に許されない想いであっても…だ。
そして、その人としての心が、村人や両親を襲っても無意識のうちに加減し、命まで奪わなかったのだろう。
 凛には、それが痛いほど感じ取れていた。と同時に妖木妃への怒りも強まっていく。
千佳の想いにつけこんだ妖木妃、絶対に許せない。
「ごめんね…千佳、わたしのために苦しい思いをさせて。でも…千佳、あなたはわたしの大事な親友だよ」
 凛は初めて素直な気持ちを現したかもしれない。滅多に心を開く事のない…凛が。
 その気持ちが千佳に届いたのか?
攻撃を止め、呆然と立ち止まり凛を見つめる千佳。
「元に戻ってぇぇぇっ! 千佳ぁぁぁぁっ!!」
 その隙をついて、浄化の霊力を込めた矢を射る。
「あっ…?」
 一瞬驚いた千佳、だがその表情はすぐに穏やかなものに変わる。
「ありがとう…凛」
 輝く光に包まれながら、ゆっくりと崩れるように倒れる千佳。
ちょうどその時・・・
「凛、大変だぁっ!君の友人が・・・!!」
 診療所から駆けつけた金鵄が現れた。
「凛…?」
 そこには、徐々に人間の姿に戻っていく千佳と、優しい表情でそれを見守っている凛の姿であった。

 そして凛は、改めて…いや、心の底から自らの手で、妖木妃の野望を止めると誓っていた。

第六話へ続く(正規ルート)


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| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 20:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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第五話 あとがき

 こんにちわ、新しい生活で思いっきり不安になっている、るりょうりにです。

 *ネタバレがありますので、まだ小説を読んでおられない方は、先にそちらを読まれることをお勧めいたします。

 というわけで、なんとか第5話、完成いたしました。
今回も、書きたかったバッドエンドをメインとしております。

 前回は平面化+食品化という物語を作りました。それと同じくらい…ゲーム構想段階から作りたかったシチュエーション、カスタードクリーム化です。
 『みら!エン』ではクリーム化というのはありませんでしたよね?
レイカが初登場時にミキサーでドロドロに溶かされるというのはありましたが。(ある意味、一緒かw)
 実はこのシチュエーション、割と好きなんですよ。(食材化として溶かされる分には)
このサイトを立ち上げる前、時報さんとメールでイラストのやり取りをしていたというのは、かなり以前に話しましたね。
 その当時、時報さんがミオをカスタードクリーム化するというミニマンガを描いてくれたんですよ。
それがね、今でもお気に入りで、たまに見て…ゾクゾク~ってきますw
 で、凛というキャラを使って再びこういった状態変化創作を創るにあたって、絶対にカスタードクリーム化は’やる’と決めていたわけです。
 では誰にやらせるか?というところで、色々設定を変えましたが、凛の友人『千佳』が決定しました。
 第一話から千佳という友人の名を登場させ、彼女はシュークリーム作りが得意という伏線を貼りまくったのも、この話のためですw
 小説でもそのシーンを書いていくのは楽しかったですね。欲を言えば、もっと凛が気持ちよくなる描写を細かくしたかったのですが、ただでさえ無駄に長い小説が更に長くなるし、最低限のエロ描写に抑えたかったというのもあって、ある程度妥協しました。
 その分イラストを通常バッドエンドルートは2枚しか描かないのですが、今回は3枚描くという自己満足に走っております。
 私の中で、少女というのは『甘そう』というイメージがあるので、こういった食品化を書くときは、スイーツの方が合いますね。

 さて、現時点での物語展開では、この第5話で私の書きたいことは概ね書き終わりました。
(またある程度物語が進んだら、新しい展開がありますけど。)
 
 そこで、次回第6話からは、以前頂いたネタをベースに物語を書きたいと思います。

 しかし! どのネタを使うかは、まだ決めておりませんww

 じっくり考えていきたいと思います。ですから、今からでも面白いネタや構想がある方は遠慮なく教えてください。
 コメントでも、メールでも結構です!
 使わせていただく可能性、まだまだあります。

 冒頭でも書きましたが、新しい生活を始めております。
正直、貧乏暇なし…言葉の通りの人生になりつつあります。
したがって、次の更新は早くて来月、再来月という可能性もありますので、気長にお待ちください。

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○ブログ拍手コメント○

01/06 21:03 投稿者様

>平面化ネタ、よかったです。また今後もぜひ見たいです。

 ありがとうございます。
私自身、平面化は大好きなので、また構想してやっていきたいと思っております。


では、閲覧ありがとうございました。

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 20:32 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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