みら!エン 第二話―続いて、次のニュースです。
昨夜、またも丘福市在住の女子生徒が2名行方不明となりました。
一人は県立丘福高等学校1年生、秋葉冬実さん15歳。
もう一人は同校一年生、結城俊子さん16歳。
今週に入り、女子生徒の行方不明者がこれで7名になっております。
県警では対策本部を作り、行方不明となっている女子生徒の共通点を調べ、一刻も早く事件解決に全力を注いでおります。―ここは、神田川県丘福市にある…ありふれた集合住宅の一室。
そのリビングでテレビを見ている一人の少女と、一匹(?)の小鳥のような少女(?)
「どう思う…ニコ。やはり、この間のような妖魔の仕業かな?」テレビのニュースを横目に、熱いココアを飲みながら、少女が呟くように口を開いた。
少女の名は、神楽巫緒(ミオ)。栗色の短髪で、スレンダーな身体つき。
整ってはいるが、中学生位の少年にも見える…ボーイッシュな面立ち。
しかし、これでも名門私立聖心女子高等学校に通う、女子高生なのだ。
対する質問を受けた…ニコと呼ばれる小鳥のような少女。
そう、体長はまるで文鳥や雀のように小鳥と同じくらい。
しかしピンクの短髪に、女子中学生のような面立ち。腕の代わりに白い翼が生えているが、身体つき…二本の足は、人間の少女とまるで一緒だ。
それは、ファンタジー小説に登場する、ハーピーというモンスターをそのまま小鳥化したような姿であった。
「うーん…、それは多分…違うと思うよぉ。」ニコはそう言うと、器用に翼の先を、まるで指先のように頬にあて、考え込むような仕草をとった。
「もし、妖魔などの仕業なら、被害場所は殆ど同じ場所だろうし、この間のように…樹木化した人々のとか、なんらかの被害の跡が残っているはずなんだよねぇ。」「だったら、妖魔とか妖怪など関係ない、変な言い方だけど人間の手による…普通の事件だということ?」ミオがちょっと安心したような、それでいて…やや不安とも取れる、複雑な表情をした。
翌日「おっはよぉ~っ! ミ・オ・ちゃん♪」いつものように登校し、下足場で靴を脱いでいるミオの背後から、有り余るような元気な声が掛けられた。
「あ…、おはようございます。水無月(みなづき)先輩。」振り返ると同時に挨拶をするミオ。
「あ~ん…、ミオちゃんって…やっぱりカワイイよね~っ♪」水無月という名の女子生徒は、ミオの顔をマジマジと眺め…やや頬を赤く染めながら、嬉しそうに答えた。
とはいうものの、この女子生徒・・・名を水無月聖魚(セイナ)といい、一年先輩ではあるが、外見上…世間一般的な感性で言えば、決してミオに劣る少女ではない。
むしろ…青色で腰まであるストレートなロングヘア。前髪の一部をヘアピンで留め、やや垂れ気味ながらも、パッチリとして大きな目に澄んだ瞳。
鼻筋が通り…小さめながらも、ふっくらとした感触がありそうな唇。
スラリとした体つきに、大き過ぎず…小さ過ぎず、上向きで端整なバスト。
均整の取れた腰回りに長い足。
もし都心を一人で歩いていたら、芸能関係者の2人や3人、普通に声を掛けてきそうなくらいの美少女である。
そんな少女がなぜミオのような少女に、ちょっと危なげな好意を持つのか?
それは、いつもの事だが…ミオが自分の下駄箱を開けてみればよくわかる。
開けた瞬間、ドドドッと落ちてくる十数枚の手紙。
誰が見てもわかるソレは、ラブレター(ファンレター)と呼ばれるものだ。
「いつもの事だけど、相変わらず…ミオちゃんは、凄い人気だよねぇー♪」セイナは自分の事のように嬉しそうに話しかける。
実はミオは、この聖心女子高等学校の剣道部に所属している。
県警勤めの父…良平に指導してもらっていたこともあるのだろうが、元々かなりの努力家であるミオは、現在段位弐段。(年齢の関係上弐段だが、実質参段級の実力を持つ)
中学時代は全国大会で準優勝の実績をもっており、高校での大会でも注目を浴びている。
また、正式部員ではないが、弓道部にも掛け持ちしており、そちらでも高い注目を浴びているのだ。
付け加え、前記にも記載しているが、外見が少年のような面立ちもあり、すなわち…この女子校という世界の中では、そんじょそこいらの男子生徒なんか全然相手にされないくらいのアイドルなのである。(爆)
「ところでさ…ミオちゃん。 この最近…この丘福市で噂になっている都市伝説、知っている?」自らも靴を履き替えながら、セイナが問いかけてきた。
「都市・・・伝説・・・?」意味がわからず、詰まりながらミオが返す。
「うん、ハムカツ女とメダル女♪」と、なぜか得意そうに話すセイナ。
「ナンデスカ…ソレハ!?」全然意味不明。
棒読みどころか、思わず…無機質な機械音的口調になる…ミオ。
「私もよく知らないんだけどー」セイナはそう言って、携帯電話を開くと、あるサイトを表示し…ミオに見せた。
「なんでも、この4~5日の間、丘福市に出没しては、人々をハムカツやメダルにしてしまうらしいの。
このサイトでは、そのハムカツ女やメダル女の特徴…出現ポイントとかの情報が集まってくるらしく、予め空メールを出して登録しておくと、最新情報がメールで送られてくるのよ♪」「ふーん…。で、水無月先輩は登録しているんですか?」「うん、クラスの友達と一緒にね♪」セイナは携帯をしまいながら、
「だって~っ、ハムカツやメダルにされちゃうのは嫌だけど、もし…お友達に焼き芋女さんとかがいて…、焼き芋とか沢山分けてもらえたら嬉しいじゃなーい♪
どう…、ミオちゃんも、登録しない?」…と、更に嬉しそうに語った。
「いや…ボク、先輩のように…愉快な友達に憧れていませんから。」昼休み…校舎屋上「都市伝説・・・か。 どう思う…ニコ?」手すりに寄りかかり、校庭を眺めながらミオが呟くように問いかけた。
「うーん…、たしかに例の行方不明事件と時期的に一緒だけど、これだけじゃ…なんとも言えないよぉー?」他の生徒達に見つからないように、ミオの首元で隠れるようにニコが答えた。
「だよねー。偶然の一致かもしれないし、そもそも…怪しげな都市伝説なんて、考えること事態間違っているのかもね(笑)」そう言いながらクスクスと笑うミオ。
「ミ~オ~ちゃ~ん~っ!!」―また…あの声だ・・・。―
あえて振り返らずともわかる、独特の間の抜けた口調。
ニコはミオの首元から、そのままブレザーの中に入り隠れた。
「今度は何ですか…水無月先輩?」ため息交じりに返事を返すミオ。
「聞いてよ~っ、ミオちゃん。
あの登録したサイトなんだけど、クラスの友達二人には最新情報のメールが届いて、私には、何も来ないんだよー!」セイナが、半泣き状態で訴えてきた。
思わず頭を掲げるミオ。
「登録できていなかったんじゃないですか?」「そんな事ないもーん。登録後の返信メールだって、ちゃんと…来ていたしぃーっ。」「…で、どんな内容だったんです?」「ん…とね、今夜8時~9時頃…4丁目に潰れた中華レストランがあるんだけど、そこにハムカツ女とメダル女が出没するらしいの♪」セイナのその表情は、まるで遊園地へ行く前の子供のようだ。
―まさか、そんな情報…本気にしているのか? この人…!?―思わず声に出しそうになり、慌てて口を閉ざすミオ。
「私にだけメールくれないなんてーぇ、絶対にズルイと思わない?」セイナは再び半泣き状態になって、ミオに抱きついた。
―別にそんな事…知らなくても、人生に何の影響も無いでしょう。―「でも…先輩がソレ知っているって事は、友達の方に教えてもらったんでしょう?」「うん、そーだよ♪」「だったら、その友達と一緒に見に行ってくればいいじゃないですか。」「あ…、そうか。 ミオちゃん…頭いい~~っ♪」打って変って、大はしゃぎするセイナ。
―すみません…先輩、一発ぶん殴っていいですか?―やはり…口には出せない(笑)
午後8時。 神楽家自宅。「ただいま!」
「おかえりなさい♪」
父…良平が帰宅すると、暖かく迎える母…アリサ。
この夫婦に預かってもらい15年。
暖かくて楽しく、優しい夫婦。
そして家庭。
ミオにとっては、今でも本物の両親としか思えない。
「どう? 例の女生徒消息不明事件は?」
アリサが、ちょっと心配そうに訊ねる。
「コラっ!、そんな話…自宅で出来るはずないだろ。現実はサスペンスドラマと違うんだから(笑)」
良平が苦笑しながら答えた。
「そうよね、部外者他言無用が義務だもんね(笑)」
アリサがペロリと舌をだす。
―なんでこの二人は、いつでもラブラブなんだ?―そんな様子を見守っていたミオは、半分呆れ気味に…それでいて、半分嬉しそうに感じた。
「だけど・・・」
ふと…良平が口を開いた。
「なぁ…ミオ。今の女子高生っていうのは、直接会話よりもメールで連絡を取り合うっていうけど、そんなもんなのか?」
「うん? ボクはあまり携帯使わないからよく知らないけど、最近ではチェーンメールとか…」ここまで言うと、ミオは昼間のセイナとの会話を思い出した。
―情報を収集するサイトではなく、逆に情報そのものを操作し、利用者を自在に操るサイトだったら…!?―「水無月先輩達が、危ないっ!!」ミオは、そう叫ぶと…竹刀を片手に大急ぎで家を飛び出した。
「ミオ、待ってよぉーっ!!」ニコも後に続く。
午後8時15分 元中華レストラン店内ホールの奥の方に人影が見える。
壁際に二人の少女が寄りかかるように座り込んでいる。
年齢的にミオと同じか…少し上くらいだ。
二人とも怯えた表情で前を見つめている。
この二人の少女は、ミオと同じ聖心女子高等学校の二年生。
そう、ミオの先輩…水無月聖魚(セイナ)のクラスメートであった。
そして、その目の先には3人の女性。
この3人の女性は、実は魔界から来た者。
いわゆる魔族と呼ばれる種族の者達である。
人間とは異なった能力を持ち、時にはこうして人間界にやってきては、己の欲望のまま災いを振りまくことすらある。
3人とも外見は人間に近い姿をしてはいるが、一人目は灰色の長い髪。
全体的に丸みを帯びた身体つきで、一本のボンレスハムが立っているようにも見える。
二人目は、ピンクのショートヘア。碧みを帯びた肌で、やせ細った体。
まるで柳の木のようだ。
三人目は、長身で褐色の肌に緑の髪。上向いたバスト・綺麗にくびれたウエスト・張りのあるヒップ。スラリとした長い足。それはまるで超一流のモデルのような姿。
「ウフフ…♪ カワイイ生娘たち。大丈夫…痛い思いはさせないからね。」やせ細った碧い肌の女はそういうと、手に持っていた袋から粉のようなものを握り締め、二人の少女に振り掛けていった。
「おい、ミンスー。あまり…フニャフニャパウダーを掛けすぎるなよー。
粉っぽくなって、味が落ちるんだから。」ハムのように太った女の魔族が、粉を振りかけている瘠せた女の魔族に忠告する。
「アラ、私は…パンス、貴女のように力任せの仕事はいたしませんのよ。
微妙な作業に関しては、とやかく口を出さないでいただきたいわね」ミンスーと呼ばれた、痩せた魔族はそう言いながら、微笑ましく…少女たちにフニャフニャパウダーと呼ばれる粉を掛けていく。
「こ・・・この・・粉は・・何・・何です・・か・・?」少女の一人、茶髪のツインテールで、ノースリーブのパーカーにキュロットパンツを履いた、弥生が恐る恐る…訊ねた。
「…ん、これはね、フニャフニャパウダーと言って、魔界では割とポピュラーな薬なのよ。
人間だろうと魔族だろうと、その身体の肉も骨も…まるで捏ねた小麦粉のように、グニャグニャにする事ができるの♪」ミンスーは、極普通に当たり前のように答える。
「あ…あたし…たちを、グニャグニャに…して…、どう…する…のです…か?」もう一人、綺麗な黒のショートヘアでネコのようなツリ目、Tシャツにミニの巻きスカートを履いた、昴が訊ねる。
「ニヒッ♪ アタイは、ペチャンコにプレスした後、パン粉をつけて…油で揚げてハムカツにして食べてしまうのが好きなんだけどね。
そっちの芸術家気取りのコレクターの方は、メダルか…絵画にして保存したいらしいよ。」話を聞いていた…ハムのように太った魔族、パンスがニタニタ笑いながら答える。
もう一人の褐色の肌の美女は、一瞬…鼻を啜ったような仕種をしたが、ため息を吐きながら黙って立ち尽くしている。
「それじゃ…早速作業を始めようか?」ハム女…パンスは、そういうと壁際で座り込んで震えている、茶髪ツインテールの娘…弥生を担ぎ上げた。
そしてそのまま厨房に運びこむと、弥生の身長よりも大きい、日本風のまな板の上にうつ伏せ状態で寝かしつけた。
「た…たすけ…て…」震える声で弥生が救いを求める。
「大丈夫。さっきミンスーが言っただろう。痛くないって。
あの…フニャフニャパウダーには、感覚を混乱させる作用もあって、一切痛みは感じないから。」パンスはそう言いながら、弥生の胴回りくらいの太い麺棒を取り出した。
そして、うつ伏せ状態で倒れている弥生のつま先あたりに麺棒を乗せると、そのままゆっくりと、足首…ふくろはぎまで押していく。
「あ…あ…あ…あ…っ…」弥生は、短い悲鳴を繰り返すように呟く。
麺棒は一旦足首まで戻すと、今度は太股までクルクルと押していく。
「ああ…ああ……、な…なんか…き…気持ち…いい…。」弥生の瞳が虚ろになっている。
麺棒を戻しては、クルクルと押し。
パンスは弥生の全身に、何度も繰り返していく。
頭の先まで麺棒で押しつぶすと、今度はひっくり返して仰向け状態にした。
そして、再びつま先から…ゆっくりと麺棒をクルクルと押しながら、潰していく。
「いい…、いい…すごく…いいです…。」仰向けにされた弥生の表情は恍惚としており、口元は涎さえ垂らしている。
一方ショートヘアでツリ目の昴は、先ほどのホールで身長を測るような器具の上に立っていた。
そう、身体測定で身長を測る…あんな器具だ。
しいて違うところと言えば、足を乗せる部分と頭の先を当てる部分が、胴回りくらいの太さで鉄製の円形になっているところだろう。
良く見ると、それは深さ10センチくらいでくり抜かれている。
器具の後面には、ハンドルがついており、その構造はハンドルを回すと、上部の円形部分が下へ降りる仕組みになっているようだ。
痩せの女…ミンスーは、スバルをその器具に立たせて、再度フニャフニャパウダーを振りかけた。
器具に立っている昴の足は、ガタガタと震えている。
ミンスーは昴の頬を撫でながら、
「カワイイわね~♪ とてもステキなメダルになりそう♪」とにこやかに笑う。
そして、器具のハンドルをゆっくりと回し始めた。
重みのある円形部分がゆっくりと下がって、昴の頭部をまるで粘土のように押しつぶす。
「いやぁぁぁぁぁぁっ!」そしてそのまま…顔、首…上半身と押しつぶしながら、下がっていった。
「アラ、痛いことは無いはずよ。」ミンスーは、微笑みながら何事もないようにハンドルを回し続ける。
「ふに…ふに…ふに…」昴の声が、よく聞き取れないようになってきた。
円形部分はもう足首付近まできている。
ガツン!
そしてついに、下に敷いてある円形部分と下がってきた円形部分が重なりあった。
ミンスーはそれを確かめると、今度はハンドルを逆回しする。
ゆっくり鉄の円形が上がっていくと、そこには上を向いた状態で、綺麗に円形平面化した、昴の姿があった。
厚さは約10cmくらいだろう。
表情は、口を半開きにして目はトロンとしている。
ミンスーは、平面化した昴を手に取ると、高々と持ち上げ下部面を眺めてみた。
ミニスカートだった下部は、足とピンクと白の縞模様の下着が一体化している。
「うーん、この眺めがいいのよねー♪」ミンスーは、目を細め眺めを楽しんだ。
「や…、だめ……。」昴の頬を真っ赤にし、目を閉じた。
しかし…この状態ではソレが精一杯の抵抗で、なす術は無い。
「このまま金メッキに漬け込んで、綺麗なメダルにしてあげるからね♪」ミンスーは昴を床に置くと、たらいのような容器や薬品を準備し始める。
その間、弥生は暑さ1cmくらいまでペチャンコにされ、卵の黄身、小麦粉、パン粉を全身にまぶされ、後は油で揚げるだけの状態になっていた。
「もう、いいかな?」パンスは、人よりも大きな鍋で熱した、油の温度を計りながら、そうつぶやいた。
そして、両手で弥生を抱えると、一気に鍋に放り込んだ。
じゅゅゅゅゅゅゅっ!!
勢い良く油が弾ける。
途中…鍋の中で裏返しにしたり、満遍なく火が通りこんがりと狐色に揚がっていく弥生。
パンスは状態を見計らうと、弥生をすくい上げ皿の上に盛り付けた。
立ち込める湯気の中、コンガリと綺麗な狐色をした…その揚げ物は、人並みに大きいが…どうみても、元が少女とは思えない。
―あ…あ…あ…私……どう…なって…いる…の…?―美味しそうなハムカツになっている弥生が呟いた。
そう、こんな状態でもまだ生きており、しかも意識がある。
「ニヒヒ・・・・。
フニャフニャパウダーを全身に塗りこまれたら、神経感覚が狂っているから、揚げられても痛みも熱さも感じない。
それどころか、今から切り刻まれて食べられても、全然痛くも無い…むしろ、快感に思えてくるはずだよ。」そういうパンスの表情は、満面の笑みであった。
昴はというと、タライ位の大きな容器の中に漬け込まれていた。
容器の中は、金色の液体が入っている。
「もう、いいわね~♪」容器から引き上げられた昴。
円形平面のまま、全身が輝くような金色で、それはどうみても…巨大な金のメダルに見える。
「私のカワイイ…コレクションが、また一つ増えたわ~~っ♪」ミンスーは、メダルになった昴を抱きしめ、嬉しそうに頬ずりをしていた。
もう一人の褐色の肌を持つ、美しい魔族の女は、壁に寄りかかり腕を組んだまま…二人の様子を伺っていた。
だが、その表情はすっかり冷め切っていた。
つづく