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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

2015年10月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年12月

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第18話「 妖木妃の目覚め -前編-」

 紫色の空が、辺りを包む夜明け前。
 犬乙山の麓の洞窟を出た、白陰、嫦娥、ムッシュ・怨獣鬼の三人は、柚子神社という小さな神社に辿り着いた。
 約三ヶ月半前、この神社で凛と妖木妃が対峙したのが、もう数年も前の事のように感じられる。
 妖木妃の放った黒炎弾は、樹木をなぎ倒し、参道を吹き飛ばし、辺り一面を焼き野原と化した。
 焼け焦げた木々。地肌が覗く石畳。
 今なおその惨状は残ったままで、参拝に来るものは誰一人といない。
 今三人は、その凄まじさを実感しながら、拝殿へと向った。

 感じる・・・・。

 拝殿から、強く大きな闇の鼓動が感じ取れる。
「来たか・・・?」
 拝殿の内から、低く重い、女性の声が聞こえた。
 扉がゆっくり開くと、闇の鼓動は、直接身体に重くのしかかるように感じられた。
 そこには、中国貴族が着ている華やかな出で立ち。青く透き通るような澄んだ肌。
 冷たく光る切れ長の眼差しに、存在感の大きい花の髪飾り。
「この方が妖木妃・・・?」
 ムッシュですら、目を奪われるような妖艶な美女。
 中国妖怪闇の王妃…妖木妃が、待ちくたびれたように立っていた。

妖魔狩人若三毛凛 18話1



「妖木妃様。お目覚めされるのを、ずっと待ち焦がれておりました」
 一歩前に出た白陰は、その場で跪き頭を下げた。
 嫦娥も後に続いて跪く。
「ワシが眠りについてから今日まで、侵攻状況はどこまで進んでおる?」
 妖木妃の鋭く冷たい目が、白陰を突き刺すように見下ろした。
「侵攻状況は・・・・・・・」
 青ざめたまま言葉が出ない白陰。
「ワシが見たところ、この国どころかこの小さな村ですら、奪い取れていないように見受けられるが?」
 言葉に詰まる白陰の、退路を断つような重い言葉。
「も・・申し訳ございません! 妖魔狩人に・・、妖魔狩人に侵攻を邪魔されており・・・」
「妖魔狩人・・? あの霊鳥金鵄が見つけた、人間の小娘か?」
「はい。あの娘はその後仲間を増やし続け、身共たちの刺客を尽く退けております」
「仲間・・・? 人数は・・・?」
「黒・・、白・・、赤・・、青・・。現在四人・・・」
 白陰がそう言い終えた瞬間!
 妖木妃が高々と上げた右腕には、黒い炎の塊が。
 それを、白陰に向けて投げ放つ。
「ひぃぃぃっ・・・」
 白陰の目の前で、黒い炎が高々と燃え上がった。
「たった四人の人間相手に、何をしているのだ!?」
「も・・申し訳ございません」
 白陰はガタガタと震えながら、更に深々と土下座をした。
「白陰よ。直様中国本土に連絡を入れ、我が配下の妖怪を、この村に全て集めよ!」
「全ての妖怪を、この村に・・・ですか?」
「そうだ。密かに事を進めようと思っておったが、今のままではまったく先へ進まん。こうなれば、力づくでこの地を奪い取る!」
「承知いたしました。大至急、妖怪たちを呼び寄せます!」
 白陰はそう言って立ち上がると、逃げるようにその場を去っていった。
「さて、残るは嫦娥。この場に姿の見えない銅角。そして、そこにいるのは・・・?」
 妖木妃は跪く嫦娥と、腕組をしたまま、待ち疲れたように立っているムッシュに目をやった。
「銅角は黒い妖魔狩人によって倒されました。そして、そこにいるのは・・・」
 嫦娥は妖木妃の問いに簡単に答えると、そのままムッシュへ視線を送った。
「吾輩、ムッシュ・怨獣鬼と申します。貴女が妖木妃殿でございますな? 以後お見知り置きを」
 ムッシュは右手を胸に当て、軽く会釈をした。
「ただの妖怪とは思えぬ。貴様、何かしら目的があって、我らに近づいているのではないか?」
「ウイ。この世の人間全てを家畜にした、妖怪牧場の設立。これにご協力いただければ・・と」
「妖怪牧場・・・。面白い発想だ」
「ご理解頂けて光栄です。そういったわけですので吾輩、世界征服のような野望は、一切持っておりません。したがって、貴女様と敵対する気もございません!」
 ムッシュはそう言って自慢のカイゼル髭を、ピンと引き伸ばした。
「愉快なヤツだ。よかろう、ワシの配下としてではなく、客人として扱おう」
 妖木妃もそう言うと、不敵な笑みを浮かべた。
 互いの挨拶を終えると、ムッシュは思いついたように二人に背を向けた。
「ムッシュ、どこへ行くのじゃ?」
 つい声を掛ける嫦娥。
「うむ。せっかくこうして妖木妃殿にお目通りして頂けたので、一つ・・祝いの料理でも作ろうかと思いましてな」
 そう言って、善は急げとばかしに、その場を去っていった。
 白陰、ムッシュの二人が離れ、二人きりとなった妖木妃と嫦娥。
「さて、儂もそろそろ、おいとまさせて頂きますじゃ」
 なにか気まずいように、嫦娥はスルリと立ち上がった。
「久しぶりに会ったんだ。ゆっくりしていいのだぞ?」
 そんな嫦娥を、嘲笑うように問いかける妖木妃。
「い・・いえ、宿敵…妖魔狩人の動向を探りながら、ついでにこの近辺で、手下にできる日本妖怪を探してみますじゃ・・」
「ほぉ・・そうか。いい手下が見つかると良いな?」
 どう聞いても、皮肉としか聞こえないその言葉。
 それは、主君と部下とは思えない。まるで仇同士のような、そんな空気すら感じられる。
 嫦娥は何も答えず、そそくさと立ち去っていった。


 八月も終盤。夏休みの残り日数も、数えるほどになっていた。
 今日は柚子中学校、全校登校日。
 この日、凛は朝から気分が優れなかった。
 その理由(わけ)は、いつになく邪悪な妖気が、感じ取れていたからである。
 こんな邪悪な妖気、今まで初めてだ。いや、初めてじゃない・・。
 そう・・・一度。いえ、二度程直面したことがある。
 凛は薄々と気づいていた。この妖気が、妖木妃のものであるかもしれない事を。
 だが、認めたくない。
 なぜなら、一度目は普通の女子中学生だった凛を、瀕死に追い込み。そして二度目は、圧倒的な力で敗北を味あわされた・・。この恐るべき妖気。
 妖気は、その戦いのあった柚子神社の方角から、感じ取れる。
 学校が終わったら、様子を見に行ってみよう。
 
 その頃、金鵄は若三毛家の、凛の部屋にいた。
 金鵄もまた、一つの不安事項を抱えていた。
 霊体のままなら、まだそこまで感じられない。だが実体化すると、明らかに霊力の不足を感じられる。
 ここ数日。それによる現象は、空を飛べなくなったり、動くことすらできない事もあった。
 考えてみれば、約三ヶ月半前、妖木妃と戦って敗れ。
 その時、偶然巻き込んでしまった凛。その凛が瀕死の重症を負い、その命を助けるために、自らの霊力を分け与えた。
 その後も危機の度に、残り少ない霊力を振り絞ってきている。
 霊力によって存在を形成している霊鳥が、その霊力を失うとき。それは、間違いなく死を意味する。
 そうだ。僕の命は長くない。
 だからこそ、朝から感じ取れるこの恐るべき妖気。
 今、アイツに目覚められては困るのだ。
 凛や優里、千佳。そして新たな仲間・・瀬織。彼女たちがもう少し力をつけるまで。
 彼女たちだけで、この危機を乗り越えられる力がつくまで。
 それまでは、まだ目覚めてほしくない。
 そう思わずには、いられなかった。


「さて、ああは言ったものの、祝いの料理は何にするべきか?」
 柚子神社を出てから、当てもなく彷徨い歩くムッシュ。
 ご存知の通り柚子村は、農産業が主要の村である。
 少し歩けば、右を見ても左を見ても、目に映るのは田んぼや畑ばかり。
 今、ムッシュの目に映る景色は、まさしくそれであった。
 だが、その先に少し大きな建物が見える。
 横長のその建物からは、少し甲高い声が、ワ~ッ!ワ~ッ!ワ~ッ!ワ~ッ!と聞こえてくる。
「ガキどもの声? 相変わらず、癇に障る声ですな」
 ウンザリするように溜息をつきながらも、その建物に歩を進めてみた。
 そこは柚子村立柚子小学校。
 以前、ムッシュの血で蘇った独楽妖怪ネンカチが、小学生たちを独楽に変えた、あの小学校だ。
 今日は、中学校同様、小学校も全校登校日。
 見ると、学校はもう終わっているのか?
 校門から、帰宅するように出て行く児童もいれば、まだ校庭で遊びまわっている児童もいる。
「それにしても、今のガキは栄養が行き届いているのか? 割りと良い身体をしていて、見るからに美味そうなガキが多いものだな」
 ムッシュは、まるで品定めをするかのように、児童たちを見渡す。
「ガキ・・・? うむ、ガキね・・!」
 何かを思いついたように、学校と反対側にある、山の景色に視線を移す。
 まだ青々とした木々が茂っているが、あと二ヶ月もすれば紅葉し、秋を実感するであろう。
 秋。そう、秋と言えば味覚の秋。味覚の秋と言えば、思い浮かぶのが・・・柿!
 柿=ガキ!
 ムッシュの頭の中で、何故かそういう公式が浮かび上がった。
 そもそも、柿は中国から伝わってきたもの。
 日本に昔からある、吊し柿や干し柿。たしか中国にもありましたね。
 ムッシュはそう思い、懐から自身が作成したレシピ本を取り出す。
 パラパラと頁をめくっていると、一つの文と絵が目に入った。
 円盤状に押し潰された、中国の干し柿『柿餅(シービン)』。
「うむ、悪くない! 祝いの料理はこれでいきますかな!?」
 ムッシュはそう頷くと、丁度校門から出てきた、五~六年生くらいの三人の少女たちに目を止めた。

妖魔狩人若三毛凛 18話2

「ボンジュール、子どもたち!」
 カイゼル髭をピンと立て、にこやかな笑顔で呼び止める。
 しかし、二メートル近い巨体に、更に大きく見せるコック帽。ギラギラと光る、赤い瞳。黒みがかった褐色の肌。
 それは子どもからしてみれば、どう見ても不審者以外何者でもない。
「いやぁぁぁぁっ!!」
 悲鳴を上げて、逃げようとする少女たち。
「面倒くさいですな・・・」
 ムッシュは大きく溜息をついたが、すっと飛び出し、少女達の眼前に移動した。
 それは瞬間移動かと思わせる、コンマ数秒の動き。
 そして、呆気にとられる少女たちの額に、ピン!ピン!ピン!と、デコピンを与えた。
 少女たちは声を上げることすらできず、その場に崩れるように倒れこんだ。
 ムッシュは、三人の少女を担ぎ上げると、鼻歌交じりでその場を去ろうとした。
 その時・・・・
「そこの人、すぐに子どもたちを下ろしなさい!!」
 背後から気の篭った声が、突き刺すように発せられた。
 何事ですか?と言った表情で振り返る。
 そこには空色の半袖シャツに縞の腕章。紺色のタイトスカートに、同色で旭日章の入った、丸い帽子。
 真っ直ぐ伸ばした右手には、二つ折りのパスケースのような物が握られており、それには顔写真と名前、帽子同様…旭日章らしきものが記されている。
 そう、それは一人の若い女性警察官だった。
「ほぅ・・?」
 ムッシュは少し関心を持った。
 切れ長の目元に、通った鼻筋。キリリと上がった眉。手入れ不足なのか、艶がイマイチ無いが、黒く短い髪がよく似合っている。
 美女・・・とまでは呼べないが、しかし決して『悪くない』二十代半ばくらいの若い女性警察官であった。

妖魔狩人若三毛凛 18話3

「早く、子どもたちを下ろしてください!」
 女性警察官は、念を押すように、再度警告してきた。
 やれ…やれ…といった表情で、子どもたちを下ろすムッシュ。
 それを見て、少し安心したのだろうか。
「ありがとうございます。では、少しお話を伺いたいので、交番まで同行願えますか?」
 女性警察官は、心持ち優しい口調に変え、問い直してきた。
 と・・・・、次の瞬間!!
 女性警察官の目の前に、影絵のキツネみたいな格好した、大きな黒褐色の手が迫ってきた。
ビンっ!!
 デコピン一撃っ!!
 あまりの衝撃に女性警官は数メートル程弾け飛び、グルグル目のその表情から、気を失っていることは一目でわかった。
 ムッシュは、女性警察官の制服の襟元をつまみ、そのまま釣り上げると、
「これは…これで、なかなか美味そうな食材ですな。ただ・・・・」
クン・・クン・・クン・・
 女性警官の全身を、むら無く嗅いでみる。
「少し…というか、結構・・汗臭いですな。肉も少々硬そうですし。ですが、逆に調理のしがいはありますな!」
 そう言うと、ちょっとラッキー♪な表情で女性警官を肩に担いだ。
 そして、気絶している少女たちも担ぎあげると、悠然とその場を去っていった。
 立ち去ったその後には、彼女が持っていたと思われる、『高嶺百合』と記された警察手帳が、ポツリと落ちていた。




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妖魔狩人 若三毛凛 if 第18話「 妖木妃の目覚め -中編-」

「しんどい・・。霊体なのに、ここまでしんどいなんて・・・」
 誰にも見えない霊体の姿で、柚子中学校校門までやってきた金鵄。
 凛は、学校は午前中で終わると言っていた。
 案の定、校舎からポツ・・ポツ・・と、生徒たちが姿を見せる。
 そろそろ凛も出てくるはずだ。
 校門の塀に止まり、凛が現れるのを待つ。
 来たっ!!
 凛に向って飛び寄ろうとした瞬間・・
「凛~っ! 待てっちゃ~っ!」
 先に呼び止めた者がいた。
 金鵄には見慣れたその姿。凛の同級生であり、妖魔狩人の仲間でもある・・、斎藤千佳。
 だが、その右手は包帯でグルグルに巻いてあり、三角巾で吊るし上げている。
 もう、二週間は経つだろう。
 あの大きな戦いで、千佳の灼熱爪は粉々に砕け散ったのだ。
 ただ、灼熱爪というのは、千佳の妖力を右手に集中させることで形成された物であり、それ自体は本物の肉体の一部では無い。
 したがって、それが砕けたと言っても、生身の右手が砕け散ったわけではないのだ。
 しかし、灼熱爪と繋がっていた神経は損傷しており、右手を動かすとかなりの痛みを伴うらしい。その痛々しい姿は、何度見ても悔やまれてならない。
 もし千佳が、わたしと交友関係でなければ、こんなことにはならなかった。
 ただでさえ、人との関わりが苦手な凛だが、更に追い打ちをかけるように、親友である千佳とも距離を置こうと考えていた。
「待てと言ってるっちゃよ~ぉ!」
 足早に立ち去ろうとしている凛に対し、立ち塞がるように前へ出た千佳。
「なぁ、今日の凛・・なんかおかしいっちゃよ。なんか、あったん?」
「別に何もないけど・・・」
「嘘やん! 朝から、ごっつ気分が重そうやん。ウチの凛センサーが、ピッ!ピッ!ピッ!と反応しとるっちゃ!」
 相変わらず、テンションが高いね・・千佳。
 その高さで、何度気持ちが救われたことがあったか。でも・・・
「ホント、なんでもないよ。千佳こそ、今日も水無月さんの家で、妖力回復するんでしょ? のんびりしている暇は、無いんじゃない?」
「そうっちゃ! 妖力が回復すれば、右手の痛みもかなりとれるらしいし、戦いにも復帰できる! そうすれば、『ふたりは妖魔狩人!』第二シーズン・・『Max Heart』っちゃよ♪」
 お前のテンションは、どこまで上がるんだ? そのまま大気圏を飛び出し、宇宙の果てまで飛んでいきそうな勢いだぞ!?
 …と口には出さないが、これ以上はさすがについていけない。
「わ・・わかったから、早くいってらっしゃい・・!」
 そう言う凛の縦筋の入った表情を見て、千佳は察したように苦笑すると
「んじゃっ! ちょっくら行ってくるっちゃ。また・・明日!」
 と、走って校門を駆け出していった。
 千佳の姿が見えなくなると、
「金鵄、いるんでしょ?」
 凛は心の中で、声を掛けた。
 その言葉に、霊体のまま近寄った金鵄。
「凛、気づいているだろう? この妖気・・」
「うん。だから、様子を見に行こうと思っている」
「だったら何故・・、千佳を帰したんだい? 味方は一人でもいたほうが・・・」
 金鵄の言葉に、凛は静かに首を振った。
「妖力が回復していない今の千佳では、どう考えてもまともに戦えない。 そんな千佳を連れて行って、もし万が一の事があったら、わたしは一生後悔する」
「ならば、優里か・・もしく瀬織を呼ぶとか?」
「瀬織さんには連絡いれるけど、丘福市からだから、すぐには来れないと思う。優里お姉さんは、あと2~3日は退院できないみたい」
 凛の良さは仲間を思いやる心。だが・・、時にはそれが災いし、彼女を不利な状況へ追い込むこともある。
「正直、僕はキミが一人で行くのは賛成できない。もし、ヤツが眠りから覚めていれば、間違いなくキミに勝ち目は無い」
「でも、妖木妃は人間を妖怪に変えるか、食料にしてしまうか? この国を、そんな世界に変えてしまうことが、目的でしょう。被害が出るまで、放っておくわけにはいかない!」
「わかった。とりあえず、様子を見に行くだけだ。少しでも危険だと感じたら、引き返すよ!?」
 金鵄の真剣な眼差しに、凛は無言で頷いた。


 一旦帰宅し、私服に着替えた凛は、柚子神社へ向って自転車を漕いだ。
 近づけば近づく程、邪悪で重い妖気は伸し掛かってくる。
 間違いない。ヤツは眠りから覚めている。
 そう確信した、その時・・!
ガサササッ!!
 突如、森の茂みから何者かが姿を現し、凛に飛びかかってきた!
「霊装っ!!」
 自転車を飛び降り、戦闘服に身を包む。
「こいつらは、中国妖怪・・!?」
 凛に飛びかかった二つの影。
 一つは、ムッシュに負けない程の、2メートルを超す人型の巨体に牛の頭部。
 もう一つは、そこまで巨体ではないが、スラリとした長身に馬の頭部。
 それは地獄の番人と呼ばれる、牛頭(ごず)馬頭(めず)という二人組の妖怪。

妖魔狩人若三毛凛 18話4

 そして、その二人の背後から姿を現した、もう一つの影。
 緑色のイボイボの肌に、曲がった腰。齢百歳を超えていそうな老婆・・・。
 そう、妖木妃幹部の一人、嫦娥であった。
「やはり来おったな、黒い妖魔狩人! じゃが、ここから先は一歩も行かせるわけにはいかんのじゃ!」
 立ち塞がる嫦娥と、牛頭馬頭。
「牛頭馬頭・・・。噂で聞く限りでは、怪力を活かした攻撃をする牛頭。俊敏な動きで敵を惑わす馬頭。相当、息の合った攻撃をしてくるに違いない。凛が妖木妃以外で、初めて敗北を喫した相手、コンビ妖怪の手長足長。あの二人の妖怪と、ほとんど変わらない妖力を感じる・・!」
 しかし、敵の妨害は予想はしていたが、まさか凛にとって、もっとも不利なタイプの相手が待ち構えているとは。
 改めて、凛を一人でここへ来させたことを、後悔しはじめた金鵄。
 そうともしているうちに、申し合わせたかのように、同時に突進してくる牛頭馬頭。
 だが凛は少しも慌てた素振りを見せず、一本の霊光矢を放った。
 それは途中まで一直線に飛び、敵の寸前で四方八方に分散すると、まるで投網を広げたような形に変化した。
「これは・・あのときの・・!?」
 金鵄の記憶では、鶏の妖怪・・妖鶏に襲われ、卵化した人々を浄化するときに使った技。
 もともと霊光矢は物理的な矢ではなく、凛の霊力が矢の形をしているだけ。そのため、霊力の形成次第では、形を変えることも可能であった。
 そんな投網を避けるように、左右に分かれた牛頭馬頭。
 しかし、それを予測していたかのように、次の霊光矢が牛頭目掛けて、放たれていた。
 それを、必死で叩き落とす牛頭。
 その間、馬頭は凛に飛びかかろうと体勢を立て直していたが、当の凛の姿が見当たらない。
 なんと凛は、次の矢を数メートル離れた高い木の枝に突き刺し、そこから伸び繋がっている霊力の糸を手繰って、振り子の原理で一気に場所を移動していた。
 そして、そのまま体勢を整え、馬頭を目掛けて更なる霊光矢を放つ。
 自在に形を変えられる霊光矢を投網やロープ代わりに使い、一対複数の不利な戦闘を有利な展開へ運んでいる。

 そう・・・、このトリッキーな戦い方は、『てんこぶ姫』の戦い方だ!!

 金鵄はマニトウスワイヤーの一件で、凛と死闘とも呼べる戦いをした、蜘蛛妖怪・・てんこぶ姫を思い出した。
 てんこぶ姫の戦闘力数値は決して高い方ではなく、むしろ妖怪化人間より少々・・上回っている程度だ。
 だが、知恵と機転を活かしたその戦い方は、そんな数値では計り知れない力を見せ、凛やマニトウスワイヤーすら苦しめた。
 凛は今、そんな『てんこぶ姫』のような戦い方をしている。
 そうとは知らず、動きの読めない凛の攻撃に、今や防戦一方となった馬頭。
 執拗に繰り出される攻撃をかわし続けていると、目の前に一本の樹木が倒れこんできた。
 それは凛の攻撃によって起きたもの。しかし、今の馬頭にとってそんな原因より、樹木に押し潰されないように、身をかわすのが精一杯だ。
 寸前で倒れこむ樹木から身をかわし、安堵の溜息をつく馬頭。その油断が、次に放たれていた矢を気づけなかった。
 霊光矢は馬頭の足元で長い紐状に形を変えると、そのまま馬頭の足首を絡めとった。
 その場にひっくり返り、身動きの取れない馬頭。
 そんな馬頭を助けようと駆け寄った牛頭の背後にも、一本の霊光矢が。
 その霊光矢はそのまま四散し、投網となって牛頭を頭から包み込んだ。
「嘘だろっ!?」
 金鵄は、我が目を疑った。
 いくら、てんこぶ姫のようなトリッキーな戦法を身につけたとしても、この牛頭と馬頭。
 先程も言った通り、あの手長足長と変わらない戦闘力を持っているはずだ。それを、いとも簡単に取り押さえるとは・・・?
「牛頭っ!? 馬頭っ!?」
 そう思ったのは、金鵄だけでは無い。
 予想外の出来事に慌てた嫦娥。凛の前に飛び出し、クパッ!と大口を開けると、2メートルはあろうかと思われる長い舌を振り上げた。
 それを鞭のように振り回し、凛に襲いかかる。
 だが、凛はそんな攻撃をまるで風のようにかわし、一気に間合いを詰めると、霊光矢の矢尻を嫦娥の額に当てた。
王手!
 為す術もなく呆然と立ち尽くす、嫦娥。
「お・・驚いたわい、儂の負けじゃ・・・。そのまま、その矢を射るがいい」
 嫦娥は全てを諦めたように、そう呟いた。

 弦を引く凛に腕に、力が入る。


① 凛は弓を下げ、戦いを終わらせた。

② 凛は、嫦娥に止めを刺そうとした。
 

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第18話「 妖木妃の目覚め -後編-」

① 凛は弓を下げ、戦いを終わらせた。


 そのまま弦を離せば、霊光矢は嫦娥の額に突き刺さるだろう。
 だが・・
 凛は弓を下げ、その矢を消し去った。
「な・・なぜ、とどめを刺さない。凛っ!?」
 まさしく鳩が豆鉄砲を喰らったように、目を丸くして凛に飛びよる金鵄。
「わたしの目的は柚子村を守ることであって、妖怪を殺すことじゃない・・。それに・・・」
「それに・・?」
 凛は、嫦娥や牛頭馬頭を見渡し、
「この人達、最初からわたしを殺す気なんか、なかったみたいだし!」
と、答えた。
「だから、牛頭や馬頭も浄化消滅させないで、生け捕りにしたのか?」
 今でも信じられないといった金鵄に対し、凛は嫦娥に話を振った。
「そうですよね? 嫦娥さん・・」
「何故、そう思ったんじゃ?」
「わたしは幼いころから霊感が強く、霊や妖怪が放つ恨みや憎しみなどの気なども、感じ取れるんです。でも、嫦娥さんやそちらの二人の妖怪からは、殺気どころか、敵意すら感じ取れなかった」
「・・・・・・・・・」
「それに嫦娥さん。貴方は消滅しようとしていた、千佳の魂も救ってくれたことがある。わたしには、根っからの悪人とは思えないんです」
 凛の言葉を、一つ一つ噛みしめるように黙って聞いていた嫦娥。
 そして、フトっ・・凛の顔を見上げると、
「儂は、黒い妖魔狩人。お前さんを、妖木妃の下へ辿りつかせたくなかった・・・」
と、静かに答えた。
「それは妖木妃の身を守ることが、お前たちの役目だからだろう?」
 率直に言い返す金鵄。
「いや。そうことじゃ、ないわい」
 嫦娥はゆっくり首を振り
「その逆じゃ。今、妖木妃と戦えば、黒い妖魔狩人が敗れるのは目に見えておる。それを阻止したかったんじゃよ・・・」
「な・・なぜ、お前が凛の身を案じるんだ!?」
 嫦娥は、金鵄の問いに鋭い目つきで睨むと
「簡単な理由じゃ。あの妖木妃を倒せる可能性があるのは、妖魔狩人たちだけじゃ。だからこそ、こんなところで無駄死させるわけにはいかんのじゃ!」
 と、キッパリ言い返した。
「嫦娥さん、貴方は妖木妃を・・・?」
「ああ・・、殺したいと思っておる。なぜなら、あやつは儂の大切な夫を殺した、憎むべき敵だからじゃ!」

「今よりはるか昔・・・。この国では縄文時代と呼ばれていた頃の話じゃ。
 当時・・儂は、仙女と呼ばれる神族の一人じゃった。
 そして、儂には同様に神族である、『ゲイ』という名の夫がおった。ゲイは弓の達人で、数々の悪鬼を倒し、勇者と讃えられていたんじゃ」
「あっ!その話は僕も聞いたことがある。たしか・・・」
 金鵄はそう言うと、その続きを話しだした。
 ところがゲイの倒した数々の悪鬼の中には、当時・・国を納めていた天帝の、九人の息子たちも含まれていたんだ。
 天帝は激しく怒り、ゲイとその妻・・嫦娥から神族の能力を消去し、ただの人間に落として、一族から追放したんだ。
 神族から追われたゲイは、再び神族に返り咲こうと、全ての仙女を統率する西王母の下を訪ね、長寿の薬を貰おうとしたんだ。
 ところが、永遠の命に目が眩んだ嫦娥は、夫ゲイを騙し、長寿の薬を奪い取ると月へ逃げてしまったんだ。
 神族に戻れなかったゲイは、その後可愛がっていた弟子に騙し討ちを喰らい、そのまま亡くなったと聞く。

 金鵄の話を、ここまで無言で聞いていた嫦娥。
「今…金鵄が話した経緯が、儂らの世界で語り継がれている事の経緯じゃ。だが・・」
「・・・・?」
「その話は、真実ではない。捏造されておるのじゃ!」
「捏造!? 作られた話ってこと?」
「むろん、大筋の流れはそんなところじゃ。天帝の怒りを買って人間に落とされた事。西王母から長寿の薬を貰うあたりの経緯はな。
 じゃが、ゲイを神族から落とすように、背後から天帝を炊きつけた者がおる。
 妖木妃じゃ!
 妖木妃は悪行を働いた息子だけでなく、いずれゲイは天帝の命すら脅かすじゃろうと、憤りを感じておるその心を、揺さぶってきたのじゃ。
 そして薬を渡した西王母。アレも本物ではなく、妖木妃が化けた姿じゃ。
 西王母に化けた妖木妃は、儂に偽の薬を渡した。その薬は妖怪変化の薬。奴の言うがままに薬を飲んだ儂は、このようなヒキガエルの妖怪と化し、遠く離れた死火山の洞窟に閉じ込められたのじゃ。
 その一方で、儂を探し回っていたゲイには、儂が薬を盗んで月へ逃げたと偽りおった。
 そして、神族に戻れず普通の人間として生きる事になったゲイを、今度はその弟子を言葉巧みに誑かし、殺害させたのじゃよ。
 元々妖木妃は、死人の腐肉や血を養分として生まれ育った植物型の妖怪。
 永遠の命を手に入れ神族となり、いずれ中国大陸を制圧する野望を持っていたのじゃよ」
 醜いヒキガエルの姿である嫦娥。だが話を語るその目には、その姿とは逆に、美しい涙が溢れていた。
「二つほど疑問点があるけど、いいかい?」
 金鵄が、ゆっくり問い始めた。
「一つ、妖木妃は何故そこまで、ゲイに執着したのか? そしてもう一つは、西王母から手に入れた本物の長寿の薬は、いったいどうなったんだい?」
 たしかに・・・。凛もそこを知りたいといった表情で耳を傾ける。
「ゲイについては後ほど話そう。先に薬の件じゃが、お主らが想像している通り、妖木妃が服用したよ。じゃが・・・・」
「!?」
「妖木妃が手に入れた薬。実はアレは薬ではなく、一種の寄生生物の卵じゃった」
「寄生生物・・・の、たまご・・・っ!?」
「本来ならば人間の心臓に寄生し、血液から養分を吸収する代わりに、老化を鈍らせる成分を送り込むことで宿主の寿命を維持する」
「それが・・・長寿の秘密?」
「そうじゃ。だが、妖怪である妖木妃に寄生した生物は、栄養分ではなく妖力を吸収し、一匹の新たな妖怪へと進化したんじゃ」
「まさか・・・!?」
「そう、頭にある花の髪飾り。アレこそ寄生生物が、絶対防御の能力を備えた妖花に進化したものなのじゃ。
 結果的に、妖木妃は神族になれず妖怪のままで、百年の生体活動を維持するためには、その倍の年月を眠りつかなければならない。その代わり妖花の髪飾りという、無敵の防御力を手に入れた」
 嫦娥の話に、凛は表情を曇らせた。初めて妖木妃と戦ったあの時あの恐怖を、思い出したからだ。
「儂はどうしても、夫ゲイを殺された復讐を遂げたかった。だからこそ、幹部として奴に付き添い、長年奴を倒せる手段を探し続けていた。そして、ある事に気づいたのじゃ!」
「ある事・・・?」
「それは、先程お主たちが尋ねた、妖木妃が何故我が夫ゲイにそこまで執着したか?に繋がる。
 たしかに神族だった頃のゲイは、数多くの悪鬼を倒した。妖木妃が最大の難敵と想定したのも無理はない。だが、妖花の髪飾りを手に入れて、尚且つ・・普通の人間になったゲイを、そこまで恐れる必要があったのかを・・・?」
 言われてみれば、あの妖花の髪飾りはこちらからの攻撃を全て防御する。それが物理攻撃であっても、霊力の攻撃であっても・・・。
「そう。妖木妃の強さの秘密はお主たちも知っての通り、髪飾りによる絶対防御。じゃが、もし・・あの髪飾りを破壊できる方法があるとしたら?」
「あるんですか!?」
「あの妖花の髪飾り、いや・・寄生妖怪は、闇の属性を持っておる。闇の属性は、他の風・地・火・水の四大属性の力を半減させる事ができる。奴の絶対防御もソレによるものじゃ」
「やはりそうか!」
「じゃが、唯一・・その闇属性を打ち敗れる属性がある!」
「光属性っ!!?」
「その通り。それこそが、妖木妃がゲイを恐れた、真の理由なのじゃ!」
「ちょっと待って!!」
 話が、もっとも佳境に入った所だというのに、凛は嫦娥の言葉を遮った。
ガサッ・・!ガサッ・・!
 気配だ! 強い殺気を持った気配を感じる!
うぉぉぉぉぉぉっ!!
 土砂崩れのような大きな雄叫びが響き渡ると、何者かが森の茂みから飛び出し、嫦娥に襲いかかろうとする!
 だが、凛の戦いによって培われた反射神経が、即座に弓を射らせた。
 霊光矢を左肩に受け、そのまま倒れこんだソレは・・・
「こいつは、山精っ!?」
 身長は小学生高学年くらいだが、顔つきは中年男性。骨格はガッシリとしていて、その身体を支える太く筋肉質な一本足!
 それは白陰直属の妖怪戦闘兵、山精であった。
「気をつけろ凛!山精は集団で行動する。一体だけではないはずだ!」
 金鵄の忠告通り、周りの森から次々に山精が姿を見せる。
「話は聞かせてもらった・・」
 更に、凛たちを取り囲んだ山精たちの背後から、一人の男が姿を見せた。
 色白の肌、艶々とした黒い長髪。そしてスラリと伸びた長身。妖木妃一番の幹部、白陰である。
「まさか、幹部の一人である嫦娥。汝(うぬ)自身が妖木妃様の命を狙っていたとは。本国に連絡を取った後、様子がおかしいので密かに見張っておれば、こんな事になっているとはな・・」
「いやいや、白陰殿は案外鈍いのですな。我輩はもっと早くから。そして・・・、妖木妃殿もとっくに気づいておられたと思いますぞ」
 同時に野太い声と共に褐色の大男、ムッシュ・怨獣鬼も姿を現した。
 その両肩には大きな籠を担いでおり、その中には複数の女児と、女性警官らしき姿が見える。
「最悪だ・・・」
 顔面蒼白の金鵄から、溜息のように言葉が漏れた。
 四方八方、数十体の山精にそれを操る白陰。そして、おそらく妖木妃に次ぐ実力者であろうムッシュ。
「うぉぉぉっ!!」
 そのムッシュに、牛頭と馬頭が襲いかかる。だが、地獄の番人と呼ばれた牛頭と馬頭ですら、ムッシュの足元にも及ばない。
ガツッ!! バギッ!!
 たった二撃の拳。これだけで牛頭馬頭の二人を沈黙させた。
「吾輩こう見えても、屠殺場に送られた家畜たちの怨念の集まり。ですから、貴殿らのような牛や馬の妖怪には、危害を加えたくは無いのですがね」
 足元に転がる二体の妖怪を見下ろし、不敵に微笑んだ。
 凛や嫦娥にも、数十体の山精たちがじわじわと歩み寄る。
 弓を構え、相手の動きを注意深く探る凛。だが、どう考えても戦って勝利するどころか、逃げることすら難しい状況下。
「こうなれば一か八か・・・。戦って活路を見出すしか、手は無い!」
 今まで霊体のままでいた金鵄も実体化し、戦闘準備に入ろうとする。しかし・・・
「うぐッ・・・!?」
 実体で飛び上がった瞬間、激しい痛みに襲われた金鵄は、そのままユラユラと舞い落ちた。
「金鵄っ!?」
「くそ・・っ、こんな肝心なときに戦うどころか、飛ぶことすらできないなんて・・・」
 悔しさに顔を歪ませる金鵄。
「黒い妖魔狩人よ、ここは儂が突破口を開く。そうしたら、全力でこの場を逃げ去るのじゃ・・」
「わかりました。でも・・・」
「ん!?」
「貴方も一緒ですよ?嫦娥さん」
 優しい眼差しで見返す凛。その瞳に嫦娥は口元を緩ませると・・
「承知したわい!」
 と、今までにない優しい口調で返した。
「行くぞ!」
 嫦娥はそう叫び、一番手薄な山精の群れに飛び込むと、前屈みに頭を下げた。
ブシュッッッ!!
 嫦娥の後頭部、いや・・耳の後ろ辺りから、激しい水しぶきが飛び散る!
 水しぶきを浴びた数体の山精が、突然・・目や口を抑えて苦しみだした。
「毒の水飛沫!? そんな奥の手があったとはな・・・」
 驚く白陰。そう、それは嫦娥最後の切り札。致命傷ではないが、しばらくの間、敵の動きを封じ込める程度の毒性はある。
「さぁ、早くっ・・黒い妖魔狩人!!」
 嫦娥の声に、隊列の乱れた隙間を走り抜けようとする凛。
 その後に続く嫦娥・・・・
「ぐわっっ!!」
 だが、その嫦娥の身体を、背後から貫いた細長い影。
「嫦娥さん!?」
 驚いて振り返った凛が見たもの。
 それは嫦娥の胸から突き出た、白い蛇。蛇は離れた場所にいる白陰の右腕に、繋がっている。

妖魔狩人若三毛凛 18話5

「くそぉぉっ!」
 弓を構え、応戦しようとする凛。
「だ・・だめじゃ!!」
 はぁ…はぁ…と肩で息する嫦娥だが、己の状況よりも凛の身を案じるように制すると、
「こ・・これを・・持って、逃げる・・んじゃ・・」
 そう言って懐から一つの白い瓢箪を取り出し、凛に放り投げた。
「その中には、妖木妃を倒す事のできる・・秘密が入っておる・・・」
 嫦娥は凛が瓢箪を手にしたのを見届けると、
「白陰ーっ!!」
 長い舌を鞭のように振り上げ、白陰へ向かっていった。
ガブッッ!!
 だが、その舌が届く前に白陰のもう一方の左腕が、右腕同様白い蛇と化し、嫦娥の喉元に喰らいついていた。
「蛙が蛇に勝てると思うなよ!」
 白陰の言葉と連動しているように、左手の蛇は嫦娥の喉元を喰い千切る。
 噴水のように噴き出る、緑色の血液。
「仇を・・・。ゲイの仇を・・・」
 嫦娥はそのまま崩れるように倒れ、瞳孔が開いたその瞳は、絶命しているのが一目瞭然だった。。
 呆然と立ち尽くしたまま、その光景を見届けていた凛。
「な・・なんで? なんで、平気で・・仲間だった人を殺せるの・・・!?」
 ワナワナと肩を震わし、白陰を一直線に見据えるその瞳。明らかに激憤していることががわかる。
「だめだ・・凛。今は、逃げることだけを考えるんだ・・・」
 弱り切った身体で、必死で忠告する金鵄。
 とは言うもの、そんな凛と金鵄を山精たちは容赦なく取り囲んでいた。
「この世で唯一、妖木妃様に傷をつけた人間・・黒い妖魔狩人。だが、汝もここで終わりだ」
 右腕を高々と上げ、一斉攻撃を合図しようとする白陰。そして、その指先を凛へと向けかけたその時・・!
 山精に負けない大勢の人影の群れが、一斉にその中に乱入した!
 それは、全身真っ赤な肌の、まるで子どものような姿の大群。
「これは、赤子っ!?」
 驚く白陰の言葉どおり、それは小人妖怪、赤子。妖怪姑獲鳥(こかくちょう)の力で生み出だされた、初芽涼果(うぶめすずか)の得意な術。
 次から次へと湧き出るように現れる赤子たちは、凛と山精たちを遮るように割って入る。
「こんな雑魚妖怪、さっさと捻り潰して妖魔狩人を狙え!」
 剣を取り出し、赤子たちを斬りつけながら、命令を下す白陰。
 ムッシュも軽く腕を振り回すだけで、赤子たちの身体を叩き落とす。
「若三毛、早くこっちへ!!」
 凛に向って、あまり聞き覚えのない声が掛けられた。
 半信半疑のまま声の方向へ進むと、突然・・旋風が凛の身体を包むように舞い降りた。
 旋風は人影となり、ギュッと凛の腕を引き寄せる。
「一気に飛び去るから、しっかり私につかまっていて!」
「ええっ!? 貴女は・・・!?」
 それは、まさかの人物・・・・。
 長く靭やかな黒髪。170cm台の長身、高校生と見間違えられるような整った体つきに、ややツリ目ながらも優里とは違った美少女。
 凛の学校の先輩で初芽涼果の親友・・・。日笠琉奈(ひかさりな)であった。
「な・・なぜ、日笠先輩が・・・?」
「理由(わけ)は、あと・・。いくよーっ!」
 琉奈はそう言って凛の身体を抱きしめると、まるでロケットのように空高く飛び上がる。
 そして、全身に旋風のような気流を纏わりつかせると、そのまま山を下るように飛び去っていった。
 予測もつかない事態に、目を白黒させ立ち尽くしていた白陰・ムッシュ・山精たち。
 ハッと、我に返り・・・、気づけば赤子たちの姿も見当たらない。
「いつの間に・・、空を飛ぶ者を・・・・?」
 今尚、信じられないといった表情で、飛び去った行方を見送り続けていた。


「どうやら、追っ手はないようね!」
 琉奈は飛びながら後方を確認すると、ゆるやかに減速し、あぜ道へ舞い降りた。

妖魔狩人若三毛凛 18話6

 こちらでも目を白黒させ呆然とする凛。
「ど・・どうして、日笠先輩が・・空を・・・?」
 凛の問いに、琉奈はおどけたようにペロっと舌を出すと
「やっぱ・・驚いた? まぁ…普通、空飛んだら驚くよね。詳しい話は涼果が戻ってきてから話すけど、結論から言えば、妖怪鎌鼬(かまいたち)・・・だっけ? 私、彼の力を引き継いだんだ!」



 第十九話へ続く(正規ルート)

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| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 13:48 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

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第18話 あとがき

こんにちわ!

出会いって大切ですよね。
もっともっと、その出会いを大切するべきでした。歳のせいか・・・ちょっと過去を振り返る、るりょうりにです。

さてさて、最初に お詫び から入らせていただきます。

自宅のマイPCが絶賛大不調です!! (TT△TT)
現在検査にだしておりますが、おそらく物理的修理が必要になるでしょう。
そういった訳で、この一週間以上・・・プライベートも創作も、職場のPCを使って作業しております。

そこでまずお詫びというのが、メール確認ができません

このブログに記載しているアドレスは御存知の通り hotmailなのですが、職場のPCからログインしようとすると、なんやかかんやら言ってさせてくれません。
かなり昔はできたのに・・・・・。
てか、固定したPCでなくとも確認できるのが、hotmailの良さだったのに。

そういった理由で、ここ一週間以上頂いたメールを確認できておりません。
もし、メールを出して頂いた方いらっしゃいましたら、しばらくお待ち頂けるか、もしくはこのサイトのコメントにてご連絡ください。(管理人のみ閲覧という機能がありますので)
よろしくお願いいたします。m(_ _)m

 では、あとがきに戻りますが、今回は本当に大変でした。

ストーリー執筆はいつもどおりのペースで進んだのですが、肝心な挿絵・・・。

マイPCが使えず職場のPCでの作業でしたので、ホント・・・苦労いたしました。
同じソフト(Photoshop)を使っているのに、PCスペックで思い通りの絵が描けなかったりします。
特に線に至っては、ここまで質が違うのか!と思うくらい、まるっきり表現が違っておりました。
さらに低いスペックなので、途中で固まったり・・・。
久しぶりに、3分おきの保存で描いていた次第です。

でも、それなりの絵が完成したので、まぁ・・良しとしておきましょう(笑)

 物語について話しますと、久しぶりに凛1人に焦点を当てた展開にしております。
ストーリー上たった3ヶ月半の期間ですが、その間いくつもの出来事や戦いがありました。
色々な面で、凛は成長しております

 嫦娥が妖木妃に反旗を翻すのは、最初から決めておりました。
千佳を妖魔狩人に仕立てあげたのも、妖木妃に対する戦力を増強するためのものです。
ちなみに、嫦娥にとって本当は怨獣鬼もその予定でしたが、色々あってムッシュという妖怪になり、手に負えなくなったというのが真相です(笑)

 そんなわけで、いよいよ妖木妃との戦いの本番が近づいておりますが、ここにきて新たな味方が。
琉奈涼華
 この二人、正直・・・大した戦力になりません(笑)
ぶっちゃけ、まともに戦ったら妖怪化人間の方が強いです。
役に立つんでしょうかね? (笑)

 バッドエンドですが、待ちに待った・・・餅化です!!

この妖魔狩人では餅化は嫦娥にさせると、初期設定の段階から決めておりました。
それだけに、ずっとフライングしたいのをこられて、この日を待ち続けました。(笑)

 なぜそこまで餅化が好きかというと、これはもう・・・「ゲゲゲの鬼太郎」の影響です。

 私が鬼太郎で最も萌えたエピソードが、「さざえ鬼・平面化→お食事」と「のっぺらぼう・餅化」の話なんです。

だから、餅化するのは主人公の凛とハッキリ決めておりましたし、必死でフライングしないように気を使いました(笑)
ちなみに、黒い戦闘服を餡に見立てたのは、昔・・・時報氏が私がデザインしたメイというキャラをケーキ化したとき、着ていたメイド服をコーティング用のクリームに見立てたことを参考にさせて頂きました。

 次に柿餅ならず・・ ガキ餅ですが。(笑)

これは、当サイトの閲覧者の1人である「霜月さん」の「吊るし柿」の一言がきっかけとなりました。
いわゆる干し柿ですが、それは面白そうだな~と入り、そこから柿=ガキという発想になり、干しガキと進んだわけです。

今回三人の小学生をデザイン、柿餅化しましたが、この子たち大変気に入っております。
ですので、次の19話にも登場するかもしれません。
(柿餅化したのはバッドエンドであって、正規ルートではまだ生存しております!)

ちなみに、この子たちのデザインにおいて、椛さんには大変お世話になりました
メールが出来ないので、この場をお借りしてお礼申し上げます!m(_ _)m


 最後に、女性警察官の『高嶺百合』さん!

 ご存知の方、多いと思います。
私と一緒に『てんこぶ姫』を企画、作品化してくれた『MTさん』のノベルゲーム・・・100シリーズに登場する主人公です。

 あの100をやったとき、本気で萌えました!(笑)
以来、女性警察官萌えに走っております!!ヽ(=´▽`=)ノ

 そんな大好きな百合さんなので、いつか・・・妖魔狩人か、もしくは私の書く「てんこぶ姫」に登場させようと、機会を狙っておりました。
 今回こうして妖魔狩人に登場させて頂いたわけですが、大好きなキャラなのでそれにふさわしい料理、佛跳牆を選びました。

 元々、彼女は「肉が硬い」「汗臭い」という設定があったので、初めてその設定を知ったとき、私ならシチューとか煮込み料理にするな~という、勝手な妄想を描いていたわけです。
佛跳牆はそれに近い料理でもあるし、ゲストキャラにふさわしい高級料理でもありますので、個人的には満足しております。

 気がつけばかなりの長文!! ∑( ̄□ ̄;

次回はいつになるかわかりませんが、その前に『妖魔狩人 若三毛凛 if VS てんこぶ姫』の一般公開ができると思います。

ただ・・・・・・


 早く、マイPC・・帰って来い!!(TT TT)




| あとがき | 13:32 | comments:18 | trackbacks:0 | TOP↑

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生存報告

こんにちわ。

毎日仕事に追われ、人は何のために生き、何のために死すのだろうと、哲学的な思想でいっぱいのるりょうりにです。
(ところで、哲学って・・・なに? 美味しいの・・・?)

妖魔狩人 若三毛凛 if 第18話。
物語自体の執筆は終えております。現在、挿絵を作成中!
したがって公開は早くて今月末。遅ければ来月になりそうです。
ちなみに、次回のキーワードは・・・、餅と柿です!

それと、去年から今年にかけて、パスワード申請者のみ公開していた『小説版 妖魔狩人若三毛凛 if VS てんこぶ姫』。
来月下旬あたりに、一般公開する予定です。
これに関しては、個人的に『劇場版~』気分で制作したものなので、時期がある程度過ぎたらTV公開!みたいな感じで、一般公開しようと最初から決めておりました。
まだご覧になっていない方もいらっしゃると思いますので、興味があったら、その時閲覧していただけると少し嬉しいです。

今回は少ない情報ですが、こうでもしないと存在を忘れられそうなので・・・(笑)

では!

| 閲覧者様との交流 | 15:06 | comments:10 | trackbacks:0 | TOP↑

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