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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

2015年08月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年10月

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第17話「瀬織の選択 -前編-」

「改めて、ワタクシの名は棚機 瀬織(たなばた せおり)。今まで隠していて申し訳なかった・・・」

 一人のポニーテール少女が、深々と頭を下げた。
 凛よりは少しだけ背が高く、やや細めだが、ほぼ標準的体型で色白の肌。
 クリクリとした瞳が愛らしい、どこにでもいそうな美少女。
 凛も改めて見る、『青い妖魔狩人』が頭巾を外した素顔。
 それが、この瀬織であった。
 ここはマニトウスワイヤーの時の戦いで、負傷した凛が運び込まれたホテルニューオーニタの一室。
 どうやら瀬織はこの部屋を、長期に渡って借りきっているようだ。
「今・・着ているのが、学校の制服ですか?」
 凛の問いに無言で頷く。
 白地のブラウスに、大きめの襟。それに通ったネクタイ。
 襟とネクタイ、そしてミニのプリーツスカートは、水色地に白いチェック模様。
 そう、あのとき・・・柚子村のゲームセンターで、ゲーム機に取り込まれた女子高生たちと同じ制服。

妖魔狩人若三毛凛 17話01

「そうだ、來愛(くるめ)女子大学付属高等学校一年生。それが普段のワタクシの姿だ」
「そして、真の姿は・・・・神族の一人である、瀬織津(せおりつ)姫!」
 今まで黙って聞いていた金鵄が、ここぞとばかりに口を開く。
 その言葉に瀬織はすぐに反応せず、しばらく間をおいてから頷くと、
「正確には、今のワタクシは、もう神族ではなく、普通の人間となんら変わりがない」
 と答えた。
「たしかに霊鳥金鵄が言った通り、ワタクシの真名は瀬織津。日本神話の時代・・、水神とも呼ばれていた」
「そんな古い時代から・・!?」
「勘違いしないでほしい。別に1000年以上も、生き続けているわけではない」
 先日まで、頭巾越しで常に無表情だったように思えたその目だが、珍しく苦々しくも目尻を垂らしたように見えた。
「話せば長くなるので掻い摘むが、当時ワタクシは神として崇められていた。だが、妖怪どもの企みによりその地位から落とされ、ついには神族であることからも追われてしまった」
「それって、マニトウスワイヤーみたいに・・・?」
「そう。地位だけでなく、永き寿命も消され、人間と同じ寿命になり、何度も~何度も転生し、今に至っている」
「なるほど・・・。それで妖怪を憎んでいるんだね」
 金鵄のその言葉に、瀬織はキッと目尻を上げたが、それ以後この件について、何も語ろうとしなかった。
「しかし・・若三毛凛。マニトウスワイヤーの件では本当に感謝している。貴方がいてくれなかったら、ヤツを倒すことはできなかっただろう」
「いいえ、わたし一人の力ではありません。あの場に駆けつけた人、みんなの力があったからこそ、解決できたんです。もちろん棚機さん、あなたも居てくれたから・・こそです!」
「瀬織でいい。勝手で悪いが、これからも力を貸してほしい・・」
「こちらこそです!」
 たった一日の戦い・・・。
 だが、そのたった一日が、これまでに無い、厳しく激しい戦いだった。
 そんな戦いを乗り越えてきたからだろう。
 今、凛と瀬織の気持ちはしっかり繋がっている。
 金鵄はそう感じ取っていた。

「ところで、高嶺優里と斉藤千佳の具合はどうだ?」
 急に切り替わった話題に、凛は一瞬戸惑ったが・・・ 
「優里お姉さんは、精密検査で予想以上に深い傷を負っているのがわかり、今・・中央区の病院に入院しています。もっとも、水無月さんの応急手当てと、この一週間の入院で、だいぶ身体の傷は癒えたようですが。それでもまだ動ける状態ではないみたいです」
「聞く所によると、奥技とやらのせいで、相当身体に負荷が掛かり、身体の機能が停止状態近くまでなったらしいからな。回復が長引きそうだ」
「はい。もうしばらく入院が必要みたいで、三日に一度、お見舞いに行ってます」
「斉藤千佳は・・・・?」
「千佳の灼熱爪はあの戦いで、粉々に砕けてしまいました。水無月さんの話によると、元々・・全身を覆っていた妖力を、右手に集中させる事によって、あの灼熱爪は出来ていたそうです。
 だから、妖力が完全に元に戻れば、灼熱爪も再構成できるらしいので、毎日妖力の回復のために、水無月さんのお宅に通っています」
「なるほど。それにしても・・・痛いな。貴重な戦力が三人も欠けてしまっている」
「三人?」
 金鵄が不思議そうに聞き返した。
 それに気づいたように凛が
「そう言えば、あの祢々さんという、禰々子河童の女性はどうされたんですか?」
 と尋ねた。
「祢々はトラブル処理で、先日から地元栃木に帰っている。アイツはああ見えても、関東一円の水棲妖怪を束ねる、女党首だからな」
「噂は聞いているよ。過去、数多くの妖怪を退けた女傑だということをね」
「そう・・。だからこそ高嶺優里、斉藤千佳、祢々。この三人が欠けている今、なにか事があると戦力が足りない」


「幸い、この一ヶ月間、中国妖怪の動きはない」
 ホテルニューオーニタを後にし、JR丘福駅へ向かう途中、思い出したように金鵄が呟いた。
 わかっているとは思うが、霊鳥である金鵄は一般人には見えない。当然、言葉も聞こえないが、魂を共有した凛とならば、近距離という限りはあるものの、直接声は出さなくとも会話は可能である。
「でも・・中国妖怪にしろ、マニトウスワイヤーのような敵にしろ、どんどん強敵が現れている。瀬織さんの言うとおり、今・・何かあったら防げるか、どうか・・?」
「とにかく、優里や千佳が復帰するまで、何事もなければいいんだけどね」
 そう話しながら駅まで、あと1~2分というところで
「あ・・っ、やっぱりそうだ! 黒い妖魔狩人~っ!?」
 と声を掛けられた。
「えっ?」
 振り返るとそこには、一人の若い女性が立っていた。
 それは雪のように白い肌・・白く長い髪。
 流し目が得意そうな、潤んだ色気のある目。
 その割には、タンクトップにTシャツを重ね着。キュロットパンツというスポーティーな出で立ち。

妖魔狩人若三毛凛 17話02

 凛には、まるで見覚えがなかった。
「あ・・あの・・、どちら様でしょうか?」
「あら、あたしの事・・見覚えがない? じゃあ・・こうしたら、ど~ぅ!?」
 と女性は、なにやら魔法攻撃でもするような仕草をとった。
「り・・凛・・・、気を・・妖気・・を感じ取るんだ・・!」
 そのとたん、何かに気づいたように声が振るえる金鵄。
「う・・うん・・、この・・妖気、初めてじゃ・・ない!? まさか・・・」
 同じように驚きを隠せない凛。
「やっと思い出してくれた!? そう、あたしは雪女郎よ~~っ♪」
 雪女郎!?
 雪女と同種族の妖怪で、マニトウスワイヤーに召喚され、凛や瀬織と戦った・・。
「た・・たしかに雪女郎だけど、だけど・・・なんなんだいっ! その格好は~っ!?」
 雪女と言えば、白い和服姿が定番だ。現にマニトウスワイヤーに召喚された時も、そういった姿だった。
「あんなもん、イメージ合わせ、コスプレみたいなもんよ~っ!(笑) 黒い妖魔狩人だって、ゴスロリ服着ていたじゃなぁーい!?」
「わ・・わたしのは戦闘服であって・・、コスプレじゃ・・ありません!」
「あ、そうなんだ!? どっちにしろ~、いくら妖怪でも、町中であんな格好している方が、恥ずかしくない?」
 お前は本当に妖怪なのか!?
 そうツッコミたくなるのも抑えて、凛も金鵄も、ただ・・唖然とするばかりだった。
「・・・で、その雪女郎が、どうしてこんな所にいるんだい?」
 呆れたように問いただす金鵄。
「その前に、もう一人・・、そこで待っている子がいるんだ!」
 雪女郎はそう言って、背後に目を送る。
 すると、今まで気付かなかったのが不思議なくらい、雪女郎のすぐ背後から、もう一人の女性が姿を現した。
 赤みがかった肌に、赤毛のショートカットヘアにカチューシャ。
 強気そうなツリ目だが、瞳は挙動不審のように、おぼつかない。
 雪女郎とは真逆に、清楚な感じのするブラウスにリボン。そしてジャンパースカート。
「あ・・あの・・ぉ・・、こ・・こんにち・・わ・・」
 性格も控えめなのか、オドオドしたところも見受けられる。

妖魔狩人若三毛凛 17話03

「ま・・まさか、貴方は・・・?」
 今度はすぐに妖気を探った凛と金鵄。
 だが、あまりの驚きにそれ以上、声が出ない・・!
「はい・・、サ・・サラマンダー・・・です・・ぅ・」
「いや、嘘だろぉ!? キミが・・あの火トカゲぇぇっ!?」
「ていうか・・、女の子だったの!?」
 珍しい、凛と金鵄によるダブルツッコミ!
「いやぁ~っ、まさか!そこまで驚くとはね~ぇ!?」
 ニヤニヤとほくそ笑む雪女郎。
「クールなイメージと程遠い雪女郎にも驚いたけど、サラマンダーに関しては、仮にマニトウスワイヤーが復活したと言われても、それ以上に驚くよ!」
 もはや、金鵄にも何がなんだか、解らなくなってきた。
「でも、どうして二人ともそんな姿で、こんな所に・・・?」
「その前に、駅構内のファーストフードでも入らない? 雪妖怪のあたしとしては、やっぱ・・この暑さは辛い」

 雪女郎の申し出により、丘福駅構内にあるドーナッツチェーン店に入った一行。
「知っての通り、あたしとサラマンダーの二人は、マニトウスワイヤーに召喚されて、この地に来た。ちなみに黒い妖魔狩人は、召喚ってどんな契約になっているか、知ってる?」
「いえ・・?」
「基本的に召喚って、魔力や霊力などの供給という見返りがあって、そこで力を貸してやるという、従僕の契約を結ぶんだよ」
「はい・・・」
「だが、マニトウスワイヤーは違った。ヤツはあたし達の力を借りるのではなく、あたし達そのものを操ることができたからね。だから~なんの見返りも無い、無料(タダ)働きってやつだったのよね」
「それは僕もやられてわかった。自分が自分でなくなるんだ・・・」
「そんな訳で、マニトウスワイヤーには恩も縁もないから、事が済んだら、みんなすぐに、元の世界や国へ帰っていくのよ」
「そういうものなんですね・・・」
「で・・あたし達も本当なら、即座に地元に戻りたいんだけど・・。ほらっ、あたし達って、マニトウスワイヤーに融合されたじゃない?」
「ああ・・、はい!」
「その時に妖力の殆どをヤツに持ってかれて、帰る力も残っていないわけ」
「なんと!?」
「そこで、地元に戻る力が回復するまでここに滞在することにしたんだけど・・、知らない土地で生きていくのも大変じゃない?」
「はい・・?」
「だから、あたし達が完全回復するまで、従僕契約をして、その日~その日を生き延びる程度の霊力供給を、あたし達にしてくれないかな?」
「はい~~~っ!?」
「もちろん、無料(タダ)で霊力を貰おうなんて思っていないよ? その分、ちゃんと働くからさ!」
 そう言って、雪女郎とサラマンダーは満面の笑みを浮かべた。
 もっとも、状況を今ひとつ理解していないサラマンダーに至っては、笑顔がぎこちなかったが。
「状況は理解したけど、なぜ・・凛なんだい? キミ達は、その凛を殺そうとしただろう?」
「やだな~~っ! あれは~ゎ、あたし達の意思じゃなく、マニトウスワイヤーに操られていたせい。金鵄ちゃんも同じことやってたじゃん!」
「き・・金鵄ちゃん・・?」
「そうだね~!」
 思わず微笑んでしまう凛。
「いいですよ! わたしの霊力で良ければ、少しくらいならお分けします」
「さすが、黒い妖魔狩人! あの時戦ってみて、一番優しそうだな~って思っていたんだよね!」
「身勝手な解釈だね・・」
 呆れる金鵄を他所に、雪女郎は凛の手を握り・・
「それじゃ、あたしの言うとおりに契約の言葉を言ってみて!」
「はい」
「我・・汝と力の契約を結ぶ。汝は肉を・・我は血を・・、互いに分け与えると誓う」
 雪女郎の言うとおり、凛は契約の言葉を並べた。
 その瞬間、青白い凛の霊力が雪女郎に流れ込んだ。
 だが・・・
「あぁぁっ!!?」
 思わず仰け反る雪女郎!
「ど・・どうしたのぉ・・・?」
 サラマンダーが心配そうに顔を覗きこんだ。
「強すぎる・・・・」
「えっ!?」
「この子の霊力、浄化の力が強すぎて、あたし達妖怪の身体には合わない!?」
「そ・・そんなぁ・・・?」
 ガックリと落ち込む二人。
「ごめんなさい・・・」
「いや、黒い妖魔狩人のせいじゃない。でも・・浄化の力が、ここまで強いとは思わなかったわ」
「ねぇ・・雪女郎・・・」
 そんな雪女郎にサラマンダーが声を掛けた。
「もう・・一人・・・、青い・・妖魔狩人・・・なら、どうかな・・・?」
「青い妖魔狩人か・・・」
「あ、いいかも! 瀬織さんも強い霊力を持っているし!」
 だが、賛同する凛を諌めるように
「いや、おそらく無理だと思う。たしかに瀬織の霊力は、マニトウスワイヤーと同じ元神族だっただけに、精霊や妖怪との波長も合いやすいかもしれない」
「だったら?」
「だが、彼女は妖怪を憎んでいる。とても、妖怪のために霊力を分け与えるとは思えない」
 たしかにそうかもしれない・・。
 凛は金鵄の言葉に、何一つ言い返すことはできなかった。

 結局その後、話をまとめる事ができず、雪女郎たちと別れることなった。
「ごめんなさい、全然役に立てなくて」
 そう項垂れる凛に対し、雪女郎はニッコリ微笑むと・・
「ううん、快く引き受けてくれようとした気持ちだけでも嬉しい。契約はできなかったけどさ。もし、あたし達の力が必要な時は、いつでも言って!」
「ありがとう」
「あ、それと~っ、もう一つ! もしかしたら、あたし達以外でも、この地に留まっている精霊がいるかもしれない」
「え、雪女郎さんたちみたいに、帰れなくなった精霊や妖怪が他にも・・・?」
「帰れなくなったのか・・・、それとも『帰る気が無い』のか!? とにかく、ここ数日。この土地で、嫌な気を感じるのよ」
「わかりました」
 こうして一行は、その場は分かれ去っていった。

『続いて、次のニュースです。 あの謎の震災から一週間たった今日ですが、またしても大生堀公園近くで、新たな遺体が数体発見されました。
 ただ、遺体は比較的新しく、バラバラに切り刻まれたものや、動物に食い殺されたようなものもあり、警察は震災との関連性。身元の確認などを急いでおります』
 彼女達が去った駅前の建物に設置された大型モニターで、TVのニュースが報道されていた。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第17話「瀬織の選択 -中編-」

 あれから三日後。
 ここは丘福市中央区にある、大生堀公園。
 周辺の長さ、約2㎞という大きな池が特徴の公園で、通常ならジョギングや景色を楽しむ人々が集まっている。
 だが一週間以上前、マニトウスワイヤーが起こした災害で、この近辺は特に大勢の犠牲者が続出した。
 そのため、一部立ち入り禁止区域などもあり、人影は殆ど見受けられない。
 そんな中で、カメラや照明器具、レフ板など撮影機材をもった集団が、なにやら池の前に集まっていた。
 中心にいるのは、10代と思われる3人の少女。
 その内の一人は、日笠琉奈(りな)。
 そう、ティーン雑誌の読者モデルで、凛と同じ中学の先輩。
 そして、あの生徒たちが赤ん坊化した事件の中心人物。
 もう一人。琉奈を見守るように、撮影スタッフと一緒にいる少女・・初芽涼果(うぶめすずか)。
 琉奈のクラスメートで、赤ん坊化事件の首謀者。
 妖怪姑獲鳥に転生した少女だが、瀬織に浄化され、今ではほとんど、普通の女子中学生に戻っている。
「琉奈ちゃん、薫ちゃん、貢実(つぐみ)ちゃん。一旦休み入れようか!?」
 カメラマンのすぐ側に立っていた中年男性、小済賢一は、そう声を掛けてきた。
 その言葉に三人は池縁から離れ、それぞれベンチに腰掛ける。
 八月も、もうじき終わりだというのに、まだまだ残暑が厳しい。
 琉奈はハンカチで汗を拭っていると・・・
「琉奈、おつかれ~っ♪」
 と、缶ジュースを両手に、涼果が歩み寄ってきた。
「ありがとう、涼果!」
 涼果に手渡された缶ジュースを開け、口に含む。爽やかな清涼感が身体を駆け巡る。
「今日、仕事が終わったら、アレ・・・。連れて行ってくれるんでしょ?」
「うん。でも・・・、あまりいい状況じゃないんだよね」
 それからニ時間。
 赤みがかった夕暮れも薄暗くなってきた頃、
「じゃぁ、琉奈ちゃんはここまで。上がっていいよ!」
 小済賢一が声を掛ける。
「は・・はい!」
「薫ちゃん、貢実ちゃんは、あと・・もう四~五枚撮ろうか!?」
「えーっ!?」
「薄暗くなってきた今こそ、『大人への移り変わり』というコンセプトに合うんだよ!」
「もう、疲れた」
 ぼやく薫と貢実を後に、琉奈と涼果は早々にその場から離れていった。


 大生堀公園から歩いて2~3分にある、小さな動物病院。
 琉奈と涼果は、ここに立ち寄った。
「こんにちわ。あの子の具合、どうですか?」
 入って早々、そう切り出す琉奈。
 その言葉に反応したかのように、奥から白衣を着た中年女性が現れる。
 そして、寂しそうな笑みを浮かべると・・
「いらっしゃい、日笠さん。でも・・あまり良くはないわね」
 と静かに返した。
 奥の部屋には十台前後のゲージが並んでおり、琉奈と涼果はその内の一つを覗きこむ。
 そこには狐色の毛に覆われた、猫ほどの小動物が丸くなって眠っていた。
 見ると、その腹には幾重にも、包帯が巻かれている。
「この子がそうなの?」
 涼果は、小動物を見つめながら琉奈に問いかけた。
「5日前・・。仕事でこの近くに来た時、木陰で蹲っているこの子を見つけたんだ。でも、全身血まみれで」
「それで日笠さんがここに連れて来たんだけど。正直、今でも生きているのが不思議なくらいな重症よ」
 中年女医も一緒にゲージを覗き込み、そう付け加えた。
「事故にあったんですか?」
「判らないわ。ただ・・、腹部に大きな刺し傷があってね。鋭い何かで貫かれているみたいだけど・・・」
「誰かが、刺したんですか!?」
「誰か・・? でも・・たぶん、人間では無いと思うの。傷口に爪痕のようなものがあったから・・」
「じゃあ、虎とか・・ライオンとか?」
「そういう動物とも、違うと思うわ。でも、なんだかは、わからない」
 涼果と女医の話を黙って聞きながら、琉奈は小動物の身体を撫でてやる。
「先生。私・・モデルやってるから、少しくらいならお金用意できます。だから、なんとか助けてやってください・・・」
 静かに。それでいて強く頼み込む琉奈。
「出来る限りのことはするわ。でも、覚悟はしておいてね」
 女医はそこまで言うと、治療室の方へ去っていった。
 それを見届けると、涼果は先程とは打って変わって、眉を潜めながら・・・
「ねぇ、琉奈。その動物、なんていう動物なの?」
 と尋ねた。
「先生の話だと、イタチらしい・・・」
「琉奈、怒らないで聞いてね。その子・・・、普通のイタチじゃないよ!」
「・・・?」
「微かだけど、妖怪のような・・、そんな気を感じる」
 険しい表情で、そう告げる涼果。だが、琉奈がとった反応は・・
「やっぱり、そうなんだ」
 と、予想外のものだった。
「声がしたんだ、『助けて・・・』って。
 そして、その声を辿っていったら、その子が倒れていた」
「琉奈! 妖怪かもしれないって、わかっていて・・・!?」
「関係ないじゃん。イタチだろうが・・、妖怪だろうが・・。傷だらけで助けを求めているのに見捨てるなんて、そっちの方が酷くない?」
「でも。もし・・、もし・・、琉奈に万が一の事があったら・・・!?」
「私の親友も、妖怪の力を持っているよ」
 琉奈は、キッパリと言い返した。
「涼果は、私に万が一のことをするの?」
「そ・・、それは・・・?」
 琉奈の真っ直ぐな視線に、涼果は言葉を詰まらせる。
「ないよ!」
 絞りだすように、言葉を返す涼果。
「それは、絶対にないよ! あたしは、琉奈が大事だもん!」
「ほら! 妖怪だからって、悪者とは限らないじゃん!」
 琉奈はそう言って、ニッコリ笑った。
 その時、それまで黙って撫でられていたイタチが、ムクっと頭を上げた。
 そして・・・
「逃げ・・るんだ・・・」
 弱々しい声で、そう告げる。
「喋ったっ!? ねぇ、喋れるの? 身体は痛くない?」
 驚きのあまり、矢継ぎ早やに聞き返す二人。
「そ・・んな事はいいから・・、早くここから・・離れる・・んだ!」
 イタチがここまで言った、その時・・・
ガシャーンッ!!
 激しい音と共に、玄関から何者かが駆け込んだ気配。
「どうしました!?」
 女医が駆けつけると、そこには血まみれになった、小済賢一の姿が。
「た・・助けてくれ・・! 化け物・・が・・!」
「えっ!?」
 女医は、理由がわからず外に目をやると・・・
グシャッ!!
 真っ黒な手が、その顔面を鷲づかみにした。
「た・・た・・たすけ・・」
 女医が助けを求める間も無く、鋭い歯が首筋に齧り付いた。
ガブッ・・!
クチャ・・クチャ・・・
ゴクッ!
「マズイ・・・、歳とった人間は、やはり美味くない・・・」
 そう、不気味な言葉を吐きながら、黒い手の本体がゆっくりと姿を現した。
 まず最初に目に入るのは、黒い肌。
 その黒い肌に覆われた体型は、人間の成人となんら変わりない。
 全裸状態で現れたその姿、その黒い顔に爛々と輝く赤い瞳。
 そして、肌が黒いため、より鮮明に浮かび上がる白い歯。
 しかし、その白い歯もクチャクチャと音を立てながら動くたび、赤い肉片が目に入る。
 そいつは、絶命した女医の身体を、更に貪り続ける。

妖魔狩人若三毛凛 17話04

「な・・なんなの・・あいつ・・?」
 ガチガチと振るえる口から、蚊の泣くような声で、琉奈が言葉を漏らした。
「アレの・・名は・・、グール・・・。主に・・中東・・にいる・・精霊・・。いや・・魔神・・・だ・・・」
 琉奈の問いに、弱々しく答えるイタチ。
「ヤツは・・人間の・・・特に・・若い女の・・・肉を・好んで・・・喰う・・・。は・・早く・・逃げる・・だ・・」
「琉奈!!」
 状況を理解した涼果が、目で合図を送る。
 琉奈は静かに頷くと、イタチを抱きかかえ、ゆっくりと窓を開け身体を潜らせた。
「涼果~っ、早く!!」
 先に窓を潜り抜けた琉奈は、上半身を潜らせた涼果の手を引く。
 しかし、元々運動神経が達者でない涼果。
 潜り抜けようと足をバタバタした為、棚に乗せてあった置物に当ってしまった。
ゴトン・・・
 棚の上でゆっくり転がる置物。
「誰か、いるのか・・・?」
 敏感に察知したグールは食べかけの中年女医を放り投げると、扉や診察台を蹴散らすように突進してきた。
「早く!涼果~っ、早く~っ!!」
 涼果を強引に外へ引きずり出すと、その手を引いて一目散に駆け出す。
「若い・・・女・・!?」
 逃げ出した琉奈たちを見つけると、グールも窓から飛び出し後を追う!
 日も沈み、つい一~ニ週間前なら、街灯や街の明かりで、辺りが見渡せるほど明るかったのに、あの災害でアチコチが焼け落ちた今では、僅かな月明かりしか頼れない。
 どこを走っているか分からぬまま、二人と一匹が行き着いた場所は、大生堀公園の中。
「あっ!?」
 池に反射した月明かりが、しゃがみこんでいるような人影を照らしだした。
「助けてくださいっ、バケモノが・・!?」
 琉奈は必死に叫びながら、人影に駆け寄った!
「バケモノ・・・?」
 振り向いたその顔は、あたりの暗さに溶け込むように黒く、目はギラギラと赤く輝き、白い歯には真っ赤な血糊が滴っている。
 そして、そいつの足元には、ミニスカ―トから伸びる、細い足が見える。
「つ・・貢実・・・!?」
 思わず、声を上げた琉奈。
 だが、元・・貢実というべきだろう。
 首からスカートまでの間には、もはや肉片しかなく、人の形はしていない。
「ほぅ。まだ他にも、若い娘がいたか? この国は本当に餌が豊富だ!」
 そう言いながら、貢実を喰っていたグールは、嬉しそうに立ち上がった。
 いや、正確にはグーラ・・。女のグールだ。

妖魔狩人若三毛凛 17話05

 グーラは、ダラダラと垂れる涎を拭くと・・
シャァァァァッ!!
 と叫び声を上げながら、襲いかかってきた。
 必死に飛び避けると、涼果は己の髪の毛を数本引き抜く。
 そして、「ふぅ~っ!!」と息を吹きかけると、髪は赤い肌の子どもの姿に変化した。
 それは、妖怪赤子。
 以前、涼果が教室を襲った時、その手足となって働いた、小人妖怪。
「赤子~っ、あたし達を守って!!」
 涼果の叫びに、数匹の赤子がグーラに飛びかかる。
「今のうちに・・!」
 涼果と琉奈は互いに合図を送ると、再び駆け出していった。
 だが・・・
「娘・・・、美味そうな・・小娘・・・」
 どこからともなく、まるで呪文のような声が響き渡る。
 同時に、気を失いそうになるほどの恐怖が二人を襲った。
 なんと、公園内のアチコチから、黒い肌をしたグールたちが十数体。
 ゆらり・・、ゆらり・・と、集まってくる。
 その中には、もう一人のモデル仲間、薫の身体を、まるでトウモロコシみたいに齧りついている。 そんなようなヤツもいた。
「な・・何匹いるの・・・?」
 更に背後から、赤子の手足を引き裂きながら、ニタリと笑うグーラと、最初に襲ってきたグールも近寄ってくる。
 周りを囲まれるように追い詰められ、琉奈も、涼果も、完全に血の気が失せてしまった。
「だ・・だれか・・・」
「誰か、助けてぇぇぇっ!!」
 涼果と琉奈の叫び声を合図にしたかのように、数体のグールが飛びかかる。
「水泡幕~っ!!」
 その瞬間、二人を覆い隠すように、無数の泡が辺りに広がった。
 泡に阻まれ、二人を襲う事ができないグールたち。
「早く、こっちへ!」
 琉奈たちを導くように、青い衣で身を固めた、一人の少女が声を上げた!
 声に惹かれるように、少女の元へ走り出す二人。
 瀬織を先頭に石段を駆け上がると、赤いレンガの建物に辿り着いた。
 それは公園内にある、丘福美術館。
「早く~っ、中へ!!」
 二人を中に入れると、瀬織は追って来るグール達を見渡した。
「水流輪っ!!」
 瀬織の得意技、水流輪が一体のグールを包み込んだ。
 水流はすぐに白い水泡と化し、中にいたグールは、糸の切れた操り人形のように倒れこむ。
 ピクピクと痙攣するその姿は、徐々に肌が白くなり、やがて人間と見分けがつかなくなると、そのまま永遠の眠りについた。
「なるほど、浄化の術か・・・」
 それを見ていた女のグール・・・グーラ。
「マニトウスワイヤーに召喚され、この地に来たが、ヤツが死んだ後もこの地に居残って、正解だったわ!
この地は餌である人間が豊富な上、あんな上等な霊力を持った娘もいる。
あの娘、なんとしても食ろうてやるぞ」
 そう呟き、嬉しそうに笑うと、・・
「その娘を捕まえて、ワッチの所に連れて来い!」
 と、全てのグールに命令を与えた。
 どうやら、このグーラは女王蟻のような存在なのだろう。
 全てのグールが、一斉に襲いかかったのだ。
「水流輪・・!」
 右へ左へと、水流輪を放つ瀬織。
 だが、あまりにも敵の数が多い。
 一匹浄化しても、その間に二匹~三匹と詰め寄ってこられ、ついには術を放つ隙すらない状態になってきた。
「くっ・!!」
 迎撃を諦め、やむを得ず、入り口に飛び込む瀬織。
 中から錠を閉め、琉奈たちの元へ駆け寄った。
 幸か・・不幸か、美術館は作品劣化を予防するため、室温を維持する目的と、直射日光が入らないようにするため、窓などは付けていない。
 したがって、野外と通じているのは、出入口ただ一箇所だけである。
 その出入り口さえ塞いでしまえば、しばらくは時間が稼げる。
「どうなの?」
「ダメだ、敵の数が多すぎる。これでは、助けに来た意味が無い!」
 悔しそうに唇を噛み締める、瀬織。
「いえ、来てもらわなかったら、あの時・・、もう殺されていたよ。でも、どうして私達が襲われていると、わかったの?」
「んっ? ああ・・。偶然、部活の用事で大生堀高校を訪ねてきてな」
「えぇぇっ!? もしかして高校生なの? い・・いえ・・なんですか!? てっきり、あたし達と同じ中学生かと・・・?」
 小柄で童顔。まぁ、そう見られても、不思議ではないとわかってはいるものの、涼果のしまった!といった表情を見て、少しだけ目が座った瀬織。
「まぁ、この際それはいいとして。それより、これから先どうするかだ?」
 と、冷静に話を戻した。
「朝日を浴びたら、消滅するとか・・。そういうのは無いんですか?」
「グールはヴァンパイアとは違う。基本、夜行性ではあるが、昼間でも自由に活動できる」
 そうこう話している間に、ギシギシと・・入り口扉がこじ開けられそうな音が聞こえる。
 入り口から奴らが侵入すれば、逆に瀬織たちの逃げ場は無くなる。
 二人の前にたち、術を仕掛ける構えを取る、瀬織。
 その時・・
「おいらと・・従僕の・・契約を結べ・・・」
 琉奈の腕の中から、弱々しい声が聞こえた。
 それは、琉奈に抱きかかえられている、イタチの妖怪。 
 それを見た瀬織。
「鎌鼬(かまいたち)か・・・?」
「そうだ・・・。あんた・・青い妖魔狩人・・だろ・・? あの・・戦いの場・・で、見たから・・覚えてる・・・」
「なるほど、その傷は、あの蜘蛛女にやられた傷か。で、何故・・ワタクシがお前と契約せねばならん?」
 冷ややかな眼差しで返す、瀬織。
「おいら・・は・・風属性の・・妖怪。だから・・感じるんだ・・風の動きで・・。近くに・・同じ・・風属性の・・強い・・霊力を持った・・・奴が・・」
「・・?」
「おいらと・・契約して・・あんたの霊力を・・・、おいらに・・供給しろ・・。そうすれば・・おいらは・・あんたたちを・・助けて・・やる事が・・できる」
 真剣な眼差しで訴える、鎌鼬。
 しばらく口を閉ざしたまま、考え込んでいた瀬織だが、
「そんな申し出、受けるわけにはいかない」
「ど・・・どうして・・!?」
「まず今のお前は、生きている事自体が奇跡と言えるほどの重症。そんな身体に霊力を与えても、たいした戦力として望めない。そして、もう一つは・・・」
 瀬織はここまで言うと、一旦息を飲み込み、
「ワタクシは、妖怪を信じない!」
 と、キッパリ言い放った。
「霊力を分け与えたとたん、ワタクシたちを裏切るだろう!」
「だったら・・・、ここで・・あの子たちと・・一緒に・・・、黒い邪霊・・・に喰われて・・死ぬ・・か・・?」
「喰われはせん。守りぬいてみせる!」
「どうだか・・・? あんたの・・術は・・・、浄化・・・と・・癒やし・・だろ? 本当・・に・・戦える・・・のか・・・?」
「妖怪ごときに、心配される覚えはない!」
「もう・・・一度・・言う・・・。おいら・・を・信じて・・・、契約して・・・おいらの・・力・・を使え・・・」
 弱り切ってはいるものの、真っ直ぐな眼差しが、瀬織を見つめる。

 
① 鎌鼬を信じて契約し、霊力を分け与える。

② 鎌鼬を信じられず、自分たちの力で迎撃する。


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『-後編-』へ続く。

そのまま、下のスレをご覧ください。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第17話「瀬織の選択 -後編-」

① 鎌鼬を信じて契約し、霊力を分け与える。

「いいだろう! 今回だけお前を信じて、契約してやろう」
 瀬織はそう言って、鎌鼬の手を握った。
「我・・汝と力の契約を結ぶ。汝は肉を・・我は血を・・、互いに分け与えると誓う」
 その瞬間、瀬織の身体から、白い光が鎌鼬に流れ込む。
 すると、今まで弱々しかった顔色が、少しだけ良くなり、琉奈の手から離れ、立ち上がる事もできた。
「思ったとおり、上質な霊力だ!」
 ニヤリと笑う、鎌鼬。
「あばよ~っ! そんじゃ、頑張って持ちこたえるんだな」
 そう叫びと一気に飛び上がり、真空の鎌で美術館の天井を切り刻むと、月明かりの夜空へ飛び出して行った。
「やはり裏切って、自分だけ逃げ出したか・・・」
 大きなため息をついた瀬織。
 その表情は悔しさよりも、己に対する不甲斐なさが表れていた。
ガッシャァァァン!!
 入り口から大きな破壊音が聞こえると、ドタドタと駆け込んでくる音が聞こえる。
「結局、信じられるのは、己の力だけだ。お前たちも死にたくなければ、必死に抵抗しろ」
 瀬織はそう言いながら、両手で水流輪を編み出す。
 涼果も髪の毛を引き抜き、妖怪赤子を生み出した。
「獲物・・・見つけた・・・♪」
 一体のグールが部屋に侵入し、ニタリと笑う。
 同時に、他二体のグールも駆け込んできた。
「やれっ!!」
 瀬織の合図で、水流輪が放たれ、赤子も飛びかかる。
 一体に水流輪が命中。一体に数匹の赤子が飛びかかって押さえつける。
 突破してきたもう一体は瀬織に接近。鋭い爪先で斬りつけてきた。
 瀬織は数歩、身を引いて、再び水流輪を放つ。
 見事に命中して、このグールは浄化。
 だが入り口からは、他のグールが数体入り込んでいた。
 壁を背にし盾とすることで、前方からの敵だけに集中すればいいが、それでも瀬織たちの防衛力より、グールの突破力の方が高い。
 間髪入れず攻撃しても、敵との間合いはどんどん縮まっていく。
 室内には数体のグールが蠢き、もはや逃げ場も無くなった。
 全てを諦め、ただ怯えている琉奈と涼果。
 肩で息をしている瀬織は、術すら満足に放てなくなってきている。
 最後列から中を覗いていたグーラは、勝利を確信したかのように不気味に微笑むと、顎で再攻撃を促した。
シャアァァァァッ!!
 一体、そしてまた一体と、グールが飛びかかる!
「もはや、これまでか?」
 瀬織も諦めかけた瞬間。
シュッッッ!!
 青白い閃光が、一体のグールを貫いた!!
 更に、
シュッッッ!!
 驚きふためく、もう一体のグールにも、閃光が貫く!!
「れ・・・霊光矢・・・? 若三毛凛か!?」
 そう、それは邪なるものを浄化する、霊力の矢。
「どこだ・・? 若三毛凛は、何処から撃っている!?」
 辺りを見渡す瀬織。
「あ・・あそこ!?」
 涼果が指差したのは、鎌鼬が切り裂いた天井。
 そこには天井に足を引っ掛け、逆さ吊り状態で、亀裂から身を乗り出した凛の姿が。
「瀬織さん、大丈夫ですか!?」
 そう言いながら、一回転して瀬織の元に飛び降りる。
「若三毛凛、助かった。でも、どうしてここに?」
「鎌鼬だよ。鎌鼬が、凛に救援を求めてきたんだ!」
 返答と共に、金鵄も現れる。
 金鵄は、気を失ってグッタリとしている鎌鼬を、足で掴んでいた。
「瀕死の身体のまま、キミから受け継いだ霊力を全て使って、凛を探し廻っていたようだ」
 金鵄はそう言って、鎌鼬の身体を琉奈に預けた。
「逃げたのでは、なかったのか?」
 更に、
「黒い妖魔狩人だけじゃ、ないよ!」
 瀬織が耳にしたことのない声が聞こえると、新たに天井から二人の人影が飛び降りてきた。
「なんか、やばそうな気がしたので、あたし達も付いてきた!」
 それは、雪女郎とサラマンダーの二人。
「ついでだから、あたし達とも契約しない? いい仕事するよ♪」
 そう言ってニッコリ微笑む、雪女郎。
 先の戦いで、雪女郎・・サラマンダーとは、直接相まみえている。実力は充分承知だ。
「いくら黒い妖魔狩人でも、あれだけの数のグールを相手にするのはキツイ。あたし達と契約しろ!」
「そうだ・・・。ワタシ・・たちなら・・・、グールにも・・・負けない・・・」
 サラマンダーも一緒に問い詰めてくる。
 その間、凛はたった一人でグールを相手にしている。
 たしかに、この中では一番戦闘力のある凛だが、弓使いである凛は、遠距離攻撃型。
 こういう室内では、その力は半減する。
 それに比べ、中距離ながらも、広範囲の攻撃術を持っている、雪女郎やサラマンダーの方が、この場は有利だろう。
 それは、瀬織もよくわかる。
 だが、瀬織は妖怪を・・・・・
 そんな心を読んだかのように、雪女郎はこう付け加えた。
「あんたは鎌鼬を信じたんだろう? そして鎌鼬はそれに応えた。あたし達も同じだ!」
― た・・たしかに、そうだ・・! 鎌鼬を信じたことで、黒い妖魔狩人が駆けつけてくれた。―
 その言葉に、瀬織は心を決めた!
「手を貸せ! 疲れて消耗しているが、残っている霊力を、お前たちに分け与える!」
 そういって、雪女郎とサラマンダーの手を握った。
 白い光が、二人の身体に流れ込む・・・
 みるみるうちに、力が復活していくのがわかる!
 小さく、ガッツポーズをとる二人。
「契約完了! それじゃ~っ、早速給料分働くよ!」
 そう言った雪女郎は、凛の前に出た。

妖魔狩人若三毛凛 17話06


 片手を上げ、ゆっくり回転させると、周囲にチラホラと雪が舞いだした。
 そのまま上げた手を、グールに向ける!
 すると雪は、激しい吹雪となってグールに襲いかかった!!
 サラマンダーは、天井の穴から外へ飛び出すと、入り口付近に集まっているグールたちの背後に周り、大きな炎の渦を放った!!
 炎の渦で、複数のグールが一気に倒れる。
 雪女郎、サラマンダー。
 たった二人の精霊の加入で、戦況は一気に逆転!
 倒れていく同族の姿を見て、他のグールたちは次々に逃げ始めた!
 そんなグール達に・・
「逃げるな! 最後まで戦えっ!!」
 と命令し続ける、グーラ。
 そのグーラの左腕に、青白い閃光が突き刺さる!!
 もちろんそれは、凛の霊光矢。
 それが何を意味しているか!?
 理解しているグーラは左肩に己の爪を突き刺し、肩口から力任せに腕を引きちぎった。
 肩口から、大量の血をたれ流しながら、凛を睨みつけるグーラ。
「この傷、絶対に忘れない。いずれ、必ず貴様を喰らってやる!!」
 そう吐き捨てると、他のグールに紛れて、その場を去っていった。

「た・・助かった・・・」
 安堵の溜息をつきながら、琉奈と涼果は腰を抜かす。
「若三毛凛・・、雪女郎・・、サラマンダー。お前たちが来てくれなかったら、ワタクシ達は確実に敗れていた。本当にありがとう」
 瀬織も深々と頭を下げる。
「違いますよ、瀬織さん。わたし達は鎌鼬さんの必死の呼びかけに応じただけ。本当にお礼を言ってあげてほしいのは、鎌鼬さんにです」
 凛の言葉に、瀬織は静かに頷き
「そうだったな・・・」
 と、琉奈に抱かれている鎌鼬に、頭を下げた。
「いいんだ・・・、あんた達が助かって・・くれれば・・・」
 もはや鎌鼬は、虫の息であった。
「この子・・・、なんとか助けてあげられないの?」
 琉奈が瀬織に懇願する。
 しかし、瀬織は首を振ると、
「さっきも言ったが、生きているのが不思議なくらいの重体なのだ。もはや、治癒の術を掛けても効果は無いし、受け付けるだけの気力も残っていないだろう」
「わかって・・いる・・。」
 鎌鼬は、静かに頷いた。
「一つだけ、聞きたいことがある」
 瀬織は振り返り、雪女郎やサラマンダーを見ると、
「なぜ、ワタクシと従僕の契約を結ぼうとした? 探せばワタクシ以外にも、多少の霊力を分け与えられる人間が、他にもいるはずだ。とても偶然や成り行きとは思えない」
 と問いかけた。
 その問いに、雪女郎たちはニッコリと笑みを浮かべると
「妖怪はさ~ぁ、結構義理堅いんだよ!」
「・・・?」
「あんた達妖魔狩人は、あたしらをマニトウスワイヤーから開放してくれた。 だから、その恩返しをしたかったんだ!」
「それで・・、わたし達に・・?」
 凛も、初耳といった表情で、問い返した。
「特に、あたしとサラマンダーは、融合までされちゃったからね。 こうして元の身体に戻る事ができたのも、みんな・・あんた達のお陰だよ!」
「ワタシたちの・・力で・・、貴女たちに・・・恩を返したかった・・・」
 雪女郎とサラマンダーの、嘘偽りの無い眩しい笑顔が、そこにあった。
「妖怪が、義理を重んじるなんて・・・」
 複雑な心境の瀬織。
 その時、
「かまいたちーっ!?」
 琉奈の泣き声にも似た叫び声が、響き渡った。
「どうしたんですか?」
「鎌鼬が・・・、鎌鼬が・・・、死んでしまった・・・・」
 琉奈の言葉に、金鵄が鎌鼬に触れる。
 心音を探るかのように、静かに診ていたが、
「駄目だ。息を引き取っている」
 と首を振った。
「鎌鼬・・・」
 瀬織もそっと手を触れ、亡骸を見つめた。
 まるで、全てに満足したかのように、安らかな表情だった。



 その頃、柚子村・・犬乙山麓の洞窟。
 白陰と嫦娥の二人が話し合っていると、
「な・・なんなのであるか? この大きな、闇の波動は!?」
 大声で、ムッシュ・怨獣鬼が駆け込んできた。
「一週間ほど前にも、丘福市の方向から大きな闇を感じたが、今回のは、それに劣らない波動。 それも、この柚子村からであるぞ!」
 いつになく険しい表情のムッシュ。
 そんなムッシュに、冷ややかな笑いを見せる白陰。
「そうか、ムッシュは知らないのだな。 この波動の持ち主を・・・」
「!?」
「やっと、お目覚めのようじゃな」
 嫦娥も白陰同様・・・冷めた笑みを浮かべる。
「お目覚め・・? まさか・・・!?」
 呆然とするムッシュに、二人は揃ってこう言った。
「妖木妃様が、ついに目覚められる!」


 第18話につづく(正規ルート)


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第17話 あとがき

こんにちわ!

久しぶりに『妖魔狩人 若三毛凛 if』の更新となりました。ヽ(`▽´)/

最後の話しはいつだったかと調べてみたら、なんと昨年の9月28日!
うわぁ! 丁度一年前やん!!∑( ゚д゚ ;)

ちなみに『妖魔狩人 若三毛凛 if VS てんこぶ姫』の物語内の時間って・・・・

たった、一日の出来事 なんですよね・・(^^A

たった一日の話に、一年ものリアル時間を費やしています。(苦笑)


さて、そんな久しぶりの『妖魔狩人 若三毛凛』 最新話。

物語は、クロスオーバー『妖魔狩人 若三毛凛 if VS てんこぶ姫』の後日談となっております。

よく、アニメなどの劇場版って、本編の『平行世界』的な物語だったり、仮に本編と同じ世界であっても、その後の本編に、その出来事は無かったことになっていたり。
(もっともコレは、本編が原作に沿って作られていて、劇場版は特別企画だから、当然と言えば当然なんだけど・・・)

でも、あれだけ大きな出来事があって、その後の話に全然出てこないって、おかしいやん!? (´ε`;)

ってことで、自分の作品では、しっかり後日談を付け加えたわけです。

そこでまず、クロスオーバーでその素顔を現した、『青い妖魔狩人』。
本当は、正体晒しは、もっと後にしたかったんですよね。
実のところ、青い妖魔狩人が登場するときに限って、チョロチョロと登場する、弓道部の部長・・・田中心美。
以前、ゲームの話を通じて凛にアドバイスしたり、ポニーテールという共通点もあって、「もしかして、こいつが青い妖魔狩人なんじゃね!?」と思わせたかったんですよね。
そう・・、第4・・第5人目のプリキュア探しみたいに(笑)

残念ながら、時間的都合で正体を明かす事にしました。

だいたいの正体は本編で語っているので、詳しいことは、また後日。

次に、クロスオーバーで初登場したキャラの、再登場について。
雪女郎とサラマンダー。
本編で登場させようと思ったのは、クロスオーバー完成直前でした。
そもそも、あのシーンで召喚されるのは、炎と氷を操れる精霊(妖怪)であれば、なんでもよかったんです。(笑)
そんな感じで物語は書き終わっており、挿絵を描いているときに、雪女郎が思いの外・・いい感じで描けたこと。
その余韻で、「サラマンダーが女の子だったら、意外性があってウケるかな?」と、フトっ思ったこと。

そんな軽い思いから、本編再登場の構想へと進みました。
だから、クロスオーバーでのサラマンダーの姿(火トカゲの姿)、体つきが女性っぽくなっているでしょ!?(笑)

まぁ、彼女たちの再登場のおかげで、中東方面の料理をつくる敵を登場させる口実も作れたし!

そう!
この17話での、敵・・・。グーラとグール。

グールは有名ですよね。
でもグールって、RPGゲームでは、よく『屍食鬼』と呼ばれ、ゾンビのように知性の無い、ただの屍体喰らい的なモンスターと扱われているんですよね。
(もっとも、ゾンビ自体も、本来の扱いと違いますけどね)

伝説上のグールは、変身能力などもあり、身近な人間に姿を変えて近寄り、当然普通に会話などもできる、知的な精霊なんです。
まぁ、近寄って油断させたあと、その相手を喰らうんですけど・・(笑)
だから、この作品でも、まだ変身能力は出していませんが、知的な邪精霊として登場させました。
そして、グーラ(女のグール)が、魅了の術を使うというのも、本当です。これも、男を魅了して誘い出し、後から喰らうためですけど。
だから、そんだけ知的なヤツだから・・・

パイ包み焼きや、ヨーグルトとか、作るでしょう!? (汗)

パイ包み焼き、いかがでした?

何かに包んで焼き上げる料理って、好きなんですよ。
現実でも、妄想でも・・・(笑)

そうそう・・・

今回初めて、

凛がバッド・エンドになっておりません!! (激爆)

最初は凛も含まれていたんですが、今回はバッド・エンドの被害者が、3人いるからいいや!と簡単に除外しました。
とにかく、一番料理したかったのが、瀬織だったので。


最後に、正規ルートでついに、あのお方が復活の兆しを見せました。

そう、それって・・・現状の予定では、あと数話(三~五話)ほどで、最終回を迎えさせようと思っております。

そういうわけで、良かったら物語の核心も楽しんで頂けると、幸いです。


るりょうりにでした! m(_ _)m

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