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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第06話「妖怪鯵坊主 -後編-」

①→

 この猪豚蛇という妖怪、一度戦ったことがあるけど、元々気の弱い妖怪。とてもこんな大それたことをできるような妖怪じゃない。
「わかった、あなたを信じるわ」
「ほ…本当ダカ!? 嬉しいダヨ!」
「それで、その干物を作った妖怪はどこに・・・?」
 凛と猪豚蛇が話していると、そばにある岩の上から麦わら帽子をかぶった人影が・・・
人影は大きな串のように尖った棒を手に、岩上から凛に狙いを定め、一気に飛び降りた!
「危ないダヨっっ!!」
 先に気づいた猪豚蛇が叫び声をあげた。
声に反応し、咄嗟に飛びよける凛。
串は砂浜に突き刺さり、人影は凛を睨み付ける。
「この妖気…、あなた妖怪ね!」
 そう問いかけると同時に、凛は霊装し、弓を構えた。
「ほぅ、ただの人間ではなさそうだな。」
 人影はそう言って、麦わら帽子や着ていた服を放り投げた。
青光りする肌、全身を覆う鱗、ギョロギョロとした魚のような大きな目。
まさしくその姿は、妖怪…鯵坊主であった。
「中国妖怪では無い…?」
「あいつはこの土地の妖怪で、人間に復讐するために、人間を干物にしているダヨ」
「そこの豚妖怪、やはり裏切りよったな。お前も干し肉にしてくれる!」
 ギョロっとした大きな目が猪豚蛇を睨み付けた。
「オ…オラは、戦いは苦手ダヨ~っ!」
 猪豚蛇は泣き叫びながら岩陰に隠れた。
「くらえ、小娘!!」
 鯵坊主は、全身の鱗を手裏剣のように飛ばし、襲いかかって来た。
その威力は、岩に突き刺さるほど強力なもの。
 必死に走りながらかわす凛。激しい連続攻撃のため、弓の狙いを定める暇も無い。
「ちょこまかと逃げ回りおって! これならどうだ!!」
 鯵坊主は、飛ばした数十枚の鱗を凛の頭上で弾幕のように広げた。
青光りする鱗が、太陽の光を乱反射する。
「眩し…!」
 思わず目を背ける凛。
「いまだ!!」
 鯵坊主はそう叫ぶと、両手から包帯のような和紙を投げつけ、凛の全身に巻きつけた。
「あっ!?」
 ぐるぐると和紙が巻きつき、凛はまるでエジプトのミイラのように、グルグル巻きになっていた。
「ぐふふ…、その和紙はわしの妖力で作られた特別製で、普通の刃では傷一つ入れることすらできん。」
 鯵坊主は再び大串を手に振りかぶり、
「トドメを刺して、お前も旨い干物にしてやろう!」
と、一気に振り下ろした!
 その瞬間!
 バリッ!!
 鋭い音と共に、凛を包んでいた和紙が引き裂かれ、中から凛が飛び出した。
「なにっ!?」
 虚をつかれ、呆然とする鯵坊主。
「くらえ、霊光矢!!」
 その隙を逃さず、凛の霊光矢が鯵坊主を貫いた。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第六話(3)

「な…なぜ…だ…、どうやって…? しかも…並みの刃では…切り裂く事は…できない…のに…?」
「和紙に包まれる瞬間、わたしはこの霊光矢を突き立てて、切れ目入れておいた。そしてこの霊光矢は、わたしの霊力を具現化したもの。だから、あなたの妖力を切り裂くことができる」
「ま…まさか…、人間に…負ける…とは…」
 ここまで言うと鯵坊主は倒れ、浄化の光で包まれた。
光が消えると、妖怪化する前の一匹の鯵がピチピチと跳ねている。凛は鯵を拾い上げると、海へ帰してやった。
―被害にあった人は残念だけど、これでもう…新たな被害者が出ることはない―
 戦いが終わり、ホッと一息入れる凛。そして…
「さっきは危険を教えてくれて、ありがとう。」
と、猪豚蛇に向かってにこやかに礼を言った。
 猪豚蛇は、しばし驚いた表情をしていたが、
「あ…あの…、オラを仲間にしてほしいダ…」
「えっ!?」
と、深々と頭を下げた。
「あんたは以前…オラが命を狙ったのに、オラを殺さず見逃してくれた。そして今回もオラの言う事を信じてくれたダ。
 オラ、中国に居た時も、妖木妃様の手下になってからも…脅されてばかりで、まして御礼なんか言われたのも初めてダ。」
「・・・・・」
「オラ、今…心の底から、あんたについて行きたいと思ってるダヨ」
 猪豚蛇の訴えを黙って聞いていた凛。やがて静かに微笑み…
「却下…」
と一言だけ言い、そっぽを向いて歩き出した。
「な…なんで…ダ!?」
「わたしは人との交流は苦手なの。コンプレックスさえ持っているの。まして妖怪相手なんて、どう接していいかわからない…」
「いや…だけど…、だったら…勝手にあんたについて行くダヨ!」
 そう言って後をついて来る猪豚蛇に対し、凛はそれ以上何も言わなかった。
 ただ・・・・・・

―どうでもいいけど、この妖怪…、電車とか乗れるの?―


第7話へつづく(正規ルート)


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②→

「本当の事を言いなさい!」
 凛はそう叫ぶと、すぐさま霊装し、弓を向けた。
「信じて欲しいダ…、オラはそんな事はできねぇダヨ…!」
 泣いて訴える猪豚蛇。だが凛の鋭い眼光は猪豚蛇を離さない。
そんな二人の背後にある大きな岩の影に、一人の男が潜んでいた。
麦わら帽子をかぶり、その奥で光るギョロギョロした大きな目。
紛れもなく…鯵坊主であった。
 鯵坊主は手にした棒を振り上げ、ゆっくりと二人の下へ忍び寄る。
「おいっ!!」
 背後から声がし、凛は何気に振り返ると・・・
ガツンッ!!
 目の前が真っ暗になり、無数の星がチカチカ。
「あ…あ…っ…?」
 凛はそのまま、ヘナヘナと気を失ってしまった。
「ずいぶんと高い霊力を持っていそうだが、所詮は子ども…大したことはねぇーな!」
 鯵坊主は棒を放り投げると、足元で目を回して倒れている凛を見下ろし嘲笑した。
 そして…
「おい豚妖怪、お前…わしの事を喋ろうとしたな?」
「ひぃぃぃ…、オラは…、ごめんなさい…命だけは助けてください…」
「二度と裏切らないと誓うなら、今度ばかりは見逃してやろう」
「裏切りません…、誓います…!」
「よし、ならばこのガキを運ぶのを手伝え。持ち帰って、干物にしてしまおう♪」


ゴボッ… ゲボッ… ゲボッ…
 口の中から塩辛い液体が入り込み、噎せ返った弾みで、凛は目を覚ました。
必死で頭を上げ、口に入った液体を吐き出す。
「ごほっ…ごほっ…」
 起き上がろうとしたが、身体が自由に動かず、倒れこんでは液体が口に入ってくる。
頭部だけ起こし、息を整え…辺りを見渡す。
手足は包帯のようなもので縛られていた。身体の自由が利かなかったのは、そのためか。
 更に自分が大きな金属パットのような物の中で仰向けで倒れており、液体が張ってあるのを理解した。
―ここはいったい?―
「気がついたようだな」
 見上げると、青光する肌に、ギョロギョロとした大きな目が覗き込んでいた。
「あなたは・・・!?」
「わしの名は鯵坊主、人間共を干物にして売っていたのは、わしだ!」
「なぜ…そんな酷いことを!?」
 凛の問いに、鯵坊主は猪豚蛇にも話した人間に対する復讐心を述べた。
「お前も干物にしてやる、そのために今…塩水に漬け込んでいるのだ。どれどれ…もうそろそろ、いいかな?」
 鯵坊主は猪豚蛇に合図をすると、二人で凛を担ぎ上げ、調理台の上に乗せた。
「わしの干物作りは、普通の作り方と少し違う。灰干しという技法を使うのだ」
 鯵坊主はそう言うと、包帯のように長い和紙を凛の足元から、グルグルと巻いていった。
下半身を巻き上げ、更に上半身…頭部まで、ぎっしりと巻き上げていく。
 30分後には、まるで『エジプトのミイラ』のような姿になった凛が横たわっていた。
「これからが本番だ」
 再度、グルグル巻きの凛を担ぎ上げ、小屋の隅に置いてある木箱の前に運んだ。
木箱はまるで棺おけのように、人一人が横たわって入れる大きさになっている。
中をみると、黒みがかった『灰』が敷き詰められていた。
 凛を箱の中に入れると、更にその上から灰を被せていく。
「…んぐっ!…んぐっ!」
 凛は身体をくねらせ抵抗するが、二人掛りで押さえつけられ、次第に身動きの取れぬまま、灰の中に埋められてしまった。
 箱に蓋をし、釘を打ちつけ密封すると、再び箱ごと担ぎ上げ、小屋の外の陽の当たる場所へ置いた。
「本来ならば陽に当てず、逆に涼しい所で長時間置いておいたほうがいいんだが、こういうガキは早めに料理してしまうに限る。この天気なら陽が沈む頃には、いい干物になってるだろう!」
 密封された箱の中は徐々に温度を上げ、30分もすると70℃近くまで上がっていた。
当然、中にいる凛は蒸し焼き状態。全身から滝のような汗が流れ、早くも脱水状態に陥っている。
 しかも流れ出た汗は、和紙を通し全て灰に吸収される。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第六話(4)

そう、『灰干し』とは、古来から伝わる技法で、陽の光や風を使わず、灰だけで素材の水分を吸収し乾燥させる、高度な製造法なのだ。
 これによって製造された干物は、まるで鮮魚のような食感があり、流通でも高級品として扱われている。
―た…たすけ…て…―
 凛は滴る汗も殆どなくなり、次第に意識も失っていった。

 

 あれから数時間後、陽もすっかり落ち、二人は木箱を担ぎ小屋の中へ運び入れた。
 蓋を開け、灰を掻き出し、中から和紙に包まれた凛を引き出すと、調理台の上に乗せた。もう、抵抗する気配どころか、ピクリとも動かない。
 足元から和紙を切り裂いて取り払う。
 そこには、すっかり水分は抜けているものの、色艶は変わらず…いや、ほんのり飴色に光った、見事な『凛の干物』があった。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第六話(5)

 その見事な出来栄えに、猪豚蛇も漠然とした表情で眺めていた。
「匂いを嗅いでみろ」
 鯵坊主の言葉に猪豚蛇は凛の匂いを嗅いだ。水分がすっかり抜けているとはいえ、相当汗をかいたはずだ。なのに、少しも汗臭くも無い。
「この技法で作ると、水分と一緒にアンモニアも吸収するから、臭みが無くなるんだよ」
「はぁ…」
「では、さっそく味見といくか!」
 鯵坊主は包丁を手に取り、凛の太腿に刃を当てる。
まるで生肉のように、すんなり刃が入っていく。
 切り落とした太腿を更に薄くスライスして、一枚を猪豚蛇に手渡し、もう一枚を自分の口に入れた。
 もぐ…もぐ…もぐ…
 猪豚蛇も干し肉を口に入れる。
 もぐ…もぐ…もぐ…
「う…旨いダ…♪ なんか…程よい甘さもあるダヨ…」
 それは干物とは思えない絶妙な味わい。
まず、塩加減がいい。和紙が余分な塩分を吸収するためか…?それとも灰の効力なのかは、わからない。ただ、魚でもこの技法で作った干物は、明らかに普通に日干しした干物とは比べ物にならないほど、絶妙な塩加減になる。
 そのため、素材本来の味が引き立ってくるのだ。
 そして、一番の違いは、肉の硬さである。普通の日干しによる干物は、陽の光による熱や、冷風による乾燥のため、肉質が固くなる。
 しかしこの技法は、光に当てていない。風も遮断している。基本的に灰だけで乾燥させているので、肉質が柔らかく、まるで生のように感じられるのだ。
「ま…熟成した大人の女なら、もっと脂が乗って旨みが出るのだが、ガキにしてはいい出来上がりになった」
 鯵坊主も満足気な表情を浮かべる。
「よし、明日は朝一番から、この干物を売るぞ!」


 翌日、日曜ということもあってか、浜にはまずまずの人通りがある。
その中で、鯵坊主と猪豚蛇の二人は、熱心に凛の干物を売り歩いていた。
 味見をさせれば、10人中10人とも、その旨みに驚き買って帰っていく。
 そこへ・・・
「ほぅ…これは美味しそうな干し肉じゃのぅ」
 品の良さそうな老夫婦が、中学生くらいの孫娘を連れてやってきた。
一口分づつ、味見用の干し肉を手渡す。
「うん、これは美味しい! 肉自体もいい肉を使っている!」
「ほんと、とても美味しいわ~。さぁ…千佳ちゃんも、一口食べてごらん?」
 老婦人の言葉に、ショートヘアでアンダーリブの眼鏡を掛けた孫娘らしい少女は、そっと干し肉の匂いを嗅いだ。
「ほんと…なんかいい匂いがするっちゃね! そう…まるで『凛』の匂いに似てるわ~♪」
 千佳は嬉しそうに、干し肉を口に入れた。
「あーっ!マジ…美味しいやん! お爺ちゃん、お婆ちゃん、お父さん達へのお見舞…これにしよう!!」
「そうじゃのう、それじゃ…お見舞い用に一袋、そして…わしらが食べる分一袋をもらおうか」
 老人はそう言って干物を購入している。
 千佳は試食用をもう一口分貰ってしみじみ眺めながら、
―あぁ…、もし凛を食べれるとしたら、こんな味なんやろうね~?―
…という妄想をしていた。


おわり。 BADEND

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 13:18 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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