2014.04.27 Sun
妖魔狩人 若三毛凛 if 第12話「対決!独楽勝負 -後編-」
① 優里は凛を信じ、独楽勝負に挑む
― 凛ちゃんは、私よりずっと高い霊力を持っている。 さっき凛ちゃんは勘のようなものと言っていたけど、おそらく名の通り霊感から、何かを感じ取ったに違いないわ。―
優里はそう決断すると、
「セコさん、独楽の回し方・・・知っている? 知っていたら教えてほしいのだけど?」
と問いかけた。
「はい、ぼく自身はした事がありませんが、昔……子供たちが遊んでいるのをよく見ていました」
「ありがとう、お願いね」
「優里、考え直したほうがいい。あまりに不利だ!」
金鵄はまだ反対し続ける。
「金鵄さん、私たちは凛ちゃんを信じて、こうして妖怪と戦う道を選びました。だから、最後まで凛ちゃんを信じましょう!」
微笑む優里。もはや迷いも無い。
「どうするか、決めたばいね?」
「ええ、独楽勝負をする! だからわたしを独楽に変えて!」
凛はそう言って前へ出た。
「いい度胸ばい!」
ネンカチは、そう言って紐を凛に巻きつけた。
女教師と同じように、ポンッ! という音と共に白煙が巻き上がる。
しばらくすると、そこには一つの黒い独楽が落ちていた。
「凛ちゃん・・・・」
優里は優しく丁寧に、黒い独楽を拾いあげる。
よく見ると、独楽の上の模様は、凛の顔にも見える。
だが、独楽となった凛は何も語ることができない。
すると、独楽は優里の手の中で、青白い光に包まれていく。
「こ…これは……?」
優里は思わず声を漏らす。
と同時に・・・
「えっ、凛……なのか!?」
と金鵄が声を上げた。
「どうしたの・・・金鵄さん!?」
慌てて振り返る優里。
「凛が僕の頭の中に語りかけてくる・・・・」
しばらく驚きを隠せない金鵄だったが・・・
「そうか、独楽になっても凛の意識は残っているんだ! そして霊波動を通して、僕と会話ができる!!」
「ホント・・・!?」
「ああ、自分は大丈夫だから、勝負を急いでくれと、凛は言っている」
「わかったわ!!」
優里はそう言うと、セコに独楽の使い方を教わり始めた。
紐の巻き方、腕の振り方。
「まだかい?」
ネンカチが急かすが、優里は無視して使い方を習う。
負けるわけにはいかない。子どもたちもそうだけど、絶対に凛ちゃんを元に戻さなければいけない!
優里の頭には、それしかなかった。
「お待たせしました!」
ひと通り、独楽の使い方を習った優里は、独楽(凛)を手にし、前へ出た。
「勝負は一回勝負! 先に独楽が倒れた方が負けばい。途中、回転を強めるために自分の独楽を叩くのは有りとするばい。いいか?」
「了解しました!」
独楽を持つ手に力が入る。
「では、審判はぼくがします!」
セコが間に入る。
「勝負・・・・・・開始っ!!」
セコの合図と共に、ネンカチ・・そして優里が独楽を投げる!
激しく回転する、両者の独楽!
ガチッ! ガチッ! と、まるで火花が散る勢いでぶつかり合う。
「ひゃはははははっ♪」
ネンカチが、自分の独楽の横っ面を叩きだした。更に勢いを増すネンカチの独楽。
何度も押され、やや回転に鈍りが見える優里の独楽(凛)。
「やばい・・・凛っ!!」
金鵄がそう呟くと、まるでその言葉に反応したかのように・・・
パァ~~ッと、優里の独楽(凛)が、青白い輝きを強めていった。
その光に威嚇されたかのように、ネンカチの独楽は若干勢いが弱まる。
「よしっ!」
この瞬間を逃す手は無い!
優里は手にした紐で、己の独楽の横面を何度も叩きつけ、回転を強めていく!
ガンッ!!
勢いが増した優里の独楽(凛)は、ネンカチの独楽を強く叩きつけ形勢を逆転し始めた。
その時・・・・
(き…金鵄……っ)
金鵄の頭の中に弱々しい声が流れてきた。
(金鵄……ちょっ…と、やばい……。目が……目が回って………リ…リバース……しそう……。お…おぇ……)
それは今にも逝っちゃいそうな、弱った凛の声・・・
「り…凛・・・!?」
(ご…ごめ……一旦……中断…………)
苦しそうな凛の声。
「金鵄さん、凛ちゃん……どうかしたの!?」
優里が心配そうに振り返った。
「優里、一旦・・・・」
そこまで言いかけた金鵄だったが、戦況はあともう一押しで勝てる勢い。ここは・・・
「いやっ、もう一息だ! 一気にやってくれと、凛も言っている!!」
(えっ・・・・・・?)
「わかりました!!」
優里は更に横面を叩き、コレ以上にない勢いで独楽を回す!
(金鵄、あんた一生恨む~~~~っ!!)
ガンッ!!
ついに、ネンカチの独楽は弾け飛んで、その場で転がり落ちた。
「勝者、妖魔狩人組っ!!」
ここで審判のセコが勝敗を下す。
「ま…負けた……ばい……」
ネンカチが、がっくりと膝をついた。
ポンッ! ポンッ! ポンッ!
ネンカチが負けを認めた瞬間、アチコチで弾けるような音と、白煙が立ち込める。
校庭に転がっていた数々の独楽は、次々に子どもたちの姿へ戻っていった。
あの若い女教師も。そして・・・
「う……うぅ…………」
凛も元の姿に戻った・・・が、完全に千鳥足状態。
よろよろと這いつくばって隅へ辿り着くと・・・
「お……おぇ~~~~~っ……」
一気に、ゲロゲロ・・・・・
「凛ちゃん、大丈夫・・・?」
「凛、お疲れっ!」
心配そうに駆け寄る優里と金鵄。
「き…金鵄、あなた……鬼か!?」
もはや、キャラ崩壊までしている凛。
「ごめんよ凛、でもあの場面は一気にいくべきだと・・・」
「わ…わかるけど……、わかるけど……、お…おぇ……っ」
そんな凛の背中を、優里が優しく擦ってやる。
『五十数年ぶりに熱くなれた、感謝しとるばい!』
凛、優里、金鵄、セコの頭の中に直接声が聞こえた。
皆が振り返ると・・・
「あっ!?」
ネンカチの身体は溶けるように崩れ落ち、そしてついに土の塊となった。
「消滅したのか・・・?」
金鵄が近寄って確認していると、
「それは、ネンカチじゃないよ・・・」
と、凛が遮った。
「どういう事、凛ちゃん・・?」
優里も不思議そうに凛を見つめる。
「ネンカチの本体は、わたしと直接ぶつかり合った……独楽!」
「ええ~~~~~~っ!!?」
驚く一同。
『ほぅ、気づいておったばいね』
またも頭の中で声が響く。
「まさか・・・・」
皆がネンカチの独楽に目をやると、まるで陽炎のような赤い気が独楽から吹き出ている。
『そうばい、おいどんが本体ばい』
よく見ると、独楽の上部にクリクリっとした大きな目が。
『おいどんは五十数年前、この村で暮らしていた独楽好きの子どもの物だった。 だが、その子は親と一緒にこの村を離れ、おいどんは置き忘れていかれたばい』
「…………」
『今日まで五十数年、おいどんはもう一度、熱い独楽勝負をしたい! その想いだけが募っていった。 そして今日、キザで褐色の大男の血に触れたら、こうして妖怪として生まれ変わる事ができたばい……』
「キザで褐色の大男・・・・、ムッシュ・怨獣鬼・・!?」
『おいどんは、別に子どもに恨みがあったわけではない。 ただもう一度勝負したかっただけ。 だが、今の子どもたちは独楽という存在すら知らない……、それが悔しくなってあんな事をしてしまったばい』
「そうなのね……」
『でも、お前たちのお陰で熱い勝負ができた。もう……悔いは無いばい。 ありがとさん……』
独楽本体であるネンカチは、ここで静かに目を閉じた。
すると、いつの間にか全体が青白い光で包まれている。
「この光はもしかして・・・・・」
「うん、わたしの霊力。 独楽にされた身体に霊力を纏わせ、ぶつかり合う事で浄化していたの」
凛の言葉に合わせるように、光に包まれたネンカチは、徐々に光の粒子となって、静かに消えていった。
「凛ちゃんは、最初からネンカチの本体が独楽である事を、気づいていたの?」
「はい、確信は無かったけど、あの独楽のほうが強い妖力を感じられて・・・」
「だったら、わざわざ独楽勝負なんてしないで、普通に独楽を攻撃すれば良かったんじゃないか?」
金鵄が、そう問いただすと、
「ネンカチからは、邪悪な妖気は感じ取れなかった。 感じ取れたのは、勝負に掛ける未練だけ。 だったら、それを解消してやればいいかな…と」
凛はそう答えた。そして・・・
「潰し合うことだけが、妖怪との戦いじゃない。 わたしはそう思うんだ・・・」
勝負を終えて和やかな雰囲気の一同を少し離れた塀から、二つの人影が。
それは、嫦娥とムッシュ・怨獣鬼の姿であった。
「まさかお前さんの血は、動物だけでなく物品までも妖怪化できるとはのぉ……」
「ええ、吾輩も驚きましたよ。ま、どちらにしろ……」
ムッシュは自慢のカイゼル髭を摘むと。
「うむ、悪くない~♪」
「うん?」
嫦娥は上機嫌のムッシュを無視して、フトっ校門に目をやると、そこにはもう一つの人影が。
それは一人の少女の姿。
よく見ると、その少女は陽炎のような赤い妖気を纏っている。
そう、凛と同じ柚子中学校の制服。
ショートヘアに、アンダーリムの眼鏡。
それは、凛の友人であり幼なじみの、千佳であった。
金鵄の連絡でまっすぐ現場へ向かった凛。
千佳は、すぐその後をつけて、全ての戦いを見ていたのだ。
「あの黒い服……あの服には見覚えがある。 やっぱり…ウチはあの服を着た凛と戦った事があるっちゃ……」
「ほぅ、黒い妖魔狩人と戦った事がある? もしかしてお前さん、以前妖樹化して妖怪に転生した娘かの?」
いつの間にか嫦娥が背後におり、呟くように話しかけてきた。
「妖怪……?」
真っ青な顔で振り返り、言葉を返す千佳。
「ウチ……、妖怪になったっちゃか……!?」
第13話へ続く(正規ルート)
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― 凛ちゃんは、私よりずっと高い霊力を持っている。 さっき凛ちゃんは勘のようなものと言っていたけど、おそらく名の通り霊感から、何かを感じ取ったに違いないわ。―
優里はそう決断すると、
「セコさん、独楽の回し方・・・知っている? 知っていたら教えてほしいのだけど?」
と問いかけた。
「はい、ぼく自身はした事がありませんが、昔……子供たちが遊んでいるのをよく見ていました」
「ありがとう、お願いね」
「優里、考え直したほうがいい。あまりに不利だ!」
金鵄はまだ反対し続ける。
「金鵄さん、私たちは凛ちゃんを信じて、こうして妖怪と戦う道を選びました。だから、最後まで凛ちゃんを信じましょう!」
微笑む優里。もはや迷いも無い。
「どうするか、決めたばいね?」
「ええ、独楽勝負をする! だからわたしを独楽に変えて!」
凛はそう言って前へ出た。
「いい度胸ばい!」
ネンカチは、そう言って紐を凛に巻きつけた。
女教師と同じように、ポンッ! という音と共に白煙が巻き上がる。
しばらくすると、そこには一つの黒い独楽が落ちていた。
「凛ちゃん・・・・」
優里は優しく丁寧に、黒い独楽を拾いあげる。
よく見ると、独楽の上の模様は、凛の顔にも見える。
だが、独楽となった凛は何も語ることができない。
すると、独楽は優里の手の中で、青白い光に包まれていく。
「こ…これは……?」
優里は思わず声を漏らす。
と同時に・・・
「えっ、凛……なのか!?」
と金鵄が声を上げた。
「どうしたの・・・金鵄さん!?」
慌てて振り返る優里。
「凛が僕の頭の中に語りかけてくる・・・・」
しばらく驚きを隠せない金鵄だったが・・・
「そうか、独楽になっても凛の意識は残っているんだ! そして霊波動を通して、僕と会話ができる!!」
「ホント・・・!?」
「ああ、自分は大丈夫だから、勝負を急いでくれと、凛は言っている」
「わかったわ!!」
優里はそう言うと、セコに独楽の使い方を教わり始めた。
紐の巻き方、腕の振り方。
「まだかい?」
ネンカチが急かすが、優里は無視して使い方を習う。
負けるわけにはいかない。子どもたちもそうだけど、絶対に凛ちゃんを元に戻さなければいけない!
優里の頭には、それしかなかった。
「お待たせしました!」
ひと通り、独楽の使い方を習った優里は、独楽(凛)を手にし、前へ出た。
「勝負は一回勝負! 先に独楽が倒れた方が負けばい。途中、回転を強めるために自分の独楽を叩くのは有りとするばい。いいか?」
「了解しました!」
独楽を持つ手に力が入る。
「では、審判はぼくがします!」
セコが間に入る。
「勝負・・・・・・開始っ!!」
セコの合図と共に、ネンカチ・・そして優里が独楽を投げる!
激しく回転する、両者の独楽!
ガチッ! ガチッ! と、まるで火花が散る勢いでぶつかり合う。
「ひゃはははははっ♪」
ネンカチが、自分の独楽の横っ面を叩きだした。更に勢いを増すネンカチの独楽。
何度も押され、やや回転に鈍りが見える優里の独楽(凛)。
「やばい・・・凛っ!!」
金鵄がそう呟くと、まるでその言葉に反応したかのように・・・
パァ~~ッと、優里の独楽(凛)が、青白い輝きを強めていった。
その光に威嚇されたかのように、ネンカチの独楽は若干勢いが弱まる。
「よしっ!」
この瞬間を逃す手は無い!
優里は手にした紐で、己の独楽の横面を何度も叩きつけ、回転を強めていく!
ガンッ!!
勢いが増した優里の独楽(凛)は、ネンカチの独楽を強く叩きつけ形勢を逆転し始めた。
その時・・・・
(き…金鵄……っ)
金鵄の頭の中に弱々しい声が流れてきた。
(金鵄……ちょっ…と、やばい……。目が……目が回って………リ…リバース……しそう……。お…おぇ……)
それは今にも逝っちゃいそうな、弱った凛の声・・・
「り…凛・・・!?」
(ご…ごめ……一旦……中断…………)
苦しそうな凛の声。
「金鵄さん、凛ちゃん……どうかしたの!?」
優里が心配そうに振り返った。
「優里、一旦・・・・」
そこまで言いかけた金鵄だったが、戦況はあともう一押しで勝てる勢い。ここは・・・
「いやっ、もう一息だ! 一気にやってくれと、凛も言っている!!」
(えっ・・・・・・?)
「わかりました!!」
優里は更に横面を叩き、コレ以上にない勢いで独楽を回す!
(金鵄、あんた一生恨む~~~~っ!!)
ガンッ!!
ついに、ネンカチの独楽は弾け飛んで、その場で転がり落ちた。
「勝者、妖魔狩人組っ!!」
ここで審判のセコが勝敗を下す。
「ま…負けた……ばい……」
ネンカチが、がっくりと膝をついた。
ポンッ! ポンッ! ポンッ!
ネンカチが負けを認めた瞬間、アチコチで弾けるような音と、白煙が立ち込める。
校庭に転がっていた数々の独楽は、次々に子どもたちの姿へ戻っていった。
あの若い女教師も。そして・・・
「う……うぅ…………」
凛も元の姿に戻った・・・が、完全に千鳥足状態。
よろよろと這いつくばって隅へ辿り着くと・・・
「お……おぇ~~~~~っ……」
一気に、ゲロゲロ・・・・・
「凛ちゃん、大丈夫・・・?」
「凛、お疲れっ!」
心配そうに駆け寄る優里と金鵄。
「き…金鵄、あなた……鬼か!?」
もはや、キャラ崩壊までしている凛。
「ごめんよ凛、でもあの場面は一気にいくべきだと・・・」
「わ…わかるけど……、わかるけど……、お…おぇ……っ」
そんな凛の背中を、優里が優しく擦ってやる。
『五十数年ぶりに熱くなれた、感謝しとるばい!』
凛、優里、金鵄、セコの頭の中に直接声が聞こえた。
皆が振り返ると・・・
「あっ!?」
ネンカチの身体は溶けるように崩れ落ち、そしてついに土の塊となった。
「消滅したのか・・・?」
金鵄が近寄って確認していると、
「それは、ネンカチじゃないよ・・・」
と、凛が遮った。
「どういう事、凛ちゃん・・?」
優里も不思議そうに凛を見つめる。
「ネンカチの本体は、わたしと直接ぶつかり合った……独楽!」
「ええ~~~~~~っ!!?」
驚く一同。
『ほぅ、気づいておったばいね』
またも頭の中で声が響く。
「まさか・・・・」
皆がネンカチの独楽に目をやると、まるで陽炎のような赤い気が独楽から吹き出ている。
『そうばい、おいどんが本体ばい』
よく見ると、独楽の上部にクリクリっとした大きな目が。
『おいどんは五十数年前、この村で暮らしていた独楽好きの子どもの物だった。 だが、その子は親と一緒にこの村を離れ、おいどんは置き忘れていかれたばい』
「…………」
『今日まで五十数年、おいどんはもう一度、熱い独楽勝負をしたい! その想いだけが募っていった。 そして今日、キザで褐色の大男の血に触れたら、こうして妖怪として生まれ変わる事ができたばい……』
「キザで褐色の大男・・・・、ムッシュ・怨獣鬼・・!?」
『おいどんは、別に子どもに恨みがあったわけではない。 ただもう一度勝負したかっただけ。 だが、今の子どもたちは独楽という存在すら知らない……、それが悔しくなってあんな事をしてしまったばい』
「そうなのね……」
『でも、お前たちのお陰で熱い勝負ができた。もう……悔いは無いばい。 ありがとさん……』
独楽本体であるネンカチは、ここで静かに目を閉じた。
すると、いつの間にか全体が青白い光で包まれている。
「この光はもしかして・・・・・」
「うん、わたしの霊力。 独楽にされた身体に霊力を纏わせ、ぶつかり合う事で浄化していたの」
凛の言葉に合わせるように、光に包まれたネンカチは、徐々に光の粒子となって、静かに消えていった。
「凛ちゃんは、最初からネンカチの本体が独楽である事を、気づいていたの?」
「はい、確信は無かったけど、あの独楽のほうが強い妖力を感じられて・・・」
「だったら、わざわざ独楽勝負なんてしないで、普通に独楽を攻撃すれば良かったんじゃないか?」
金鵄が、そう問いただすと、
「ネンカチからは、邪悪な妖気は感じ取れなかった。 感じ取れたのは、勝負に掛ける未練だけ。 だったら、それを解消してやればいいかな…と」
凛はそう答えた。そして・・・
「潰し合うことだけが、妖怪との戦いじゃない。 わたしはそう思うんだ・・・」
勝負を終えて和やかな雰囲気の一同を少し離れた塀から、二つの人影が。
それは、嫦娥とムッシュ・怨獣鬼の姿であった。
「まさかお前さんの血は、動物だけでなく物品までも妖怪化できるとはのぉ……」
「ええ、吾輩も驚きましたよ。ま、どちらにしろ……」
ムッシュは自慢のカイゼル髭を摘むと。
「うむ、悪くない~♪」
「うん?」
嫦娥は上機嫌のムッシュを無視して、フトっ校門に目をやると、そこにはもう一つの人影が。
それは一人の少女の姿。
よく見ると、その少女は陽炎のような赤い妖気を纏っている。
そう、凛と同じ柚子中学校の制服。
ショートヘアに、アンダーリムの眼鏡。
それは、凛の友人であり幼なじみの、千佳であった。
金鵄の連絡でまっすぐ現場へ向かった凛。
千佳は、すぐその後をつけて、全ての戦いを見ていたのだ。
「あの黒い服……あの服には見覚えがある。 やっぱり…ウチはあの服を着た凛と戦った事があるっちゃ……」
「ほぅ、黒い妖魔狩人と戦った事がある? もしかしてお前さん、以前妖樹化して妖怪に転生した娘かの?」
いつの間にか嫦娥が背後におり、呟くように話しかけてきた。
「妖怪……?」
真っ青な顔で振り返り、言葉を返す千佳。
「ウチ……、妖怪になったっちゃか……!?」
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