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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第10話「凛のために・・ -中編-」

 翌日、朝一番で家を出て、JRに乗り込み志津香駅で乗り換えると、一時間半位で柚子駅に辿り着いた。
 まずは柚子村立中学校へ向かってみることにする。その近辺で聞けば、ある程度の住まいはわかるだろう。
 比較的、都会と呼ばれる丘福市と違って、山々に囲まれた柚子村。
 春人には草の一本一本でも、珍しい景色であった。
 フト、背筋に氷の塊を押し付けられるような感覚を受けた春人は、その辺りを見回した。
 木々が覆い茂った森。よく見ると、そこだけ土砂崩れでもあったのかと思える程、木々が押し倒され荒れ果てた地があった。
 ゆっくり足を向けると、奥の方に拝殿のような櫓(やぐら)が見える。
「神社……?」
 何かに引き寄せられるように足を踏み入れと……
「なにか、御用かな?」
 まるで待ち構えていたかのように絶妙のタイミングで声を掛けらた。
「すまぬ、驚かせてしまったようだな」
 色の白い長身長髪の男が姿を見せた。
「身共は、この社の神主をしている。汝……この土地の者では無いな?」
「は…はい、ちょっと人を訪ねて……」
 春人はそう言って、携帯の画像を見せた。
「ふむ、たしかにこの娘はこの土地に住む者だった気がする。だが、どこで暮らしているかまでは、身共も存じていない」
「そうですか……、どうもありがとうございました」
 春人はそう言って踵を返した。
「待ちなさい!」
「えっ……!?」
「汝、心の中に秘めた想い……願い事のようなものを感じる。そうだろう?」
「え……、は…はい?」
 春人がそう答えると、神主は懐から何かを取り出すと
「これを飲むが良い、この社の神木から採れた種だ」
 そう言って小さな木の種を差し出した。
 春人は言葉の意味を理解できないまま受け取る。
「心配ない、元々食用の種で身体に害はない。今、ここで一飲みせよ」
「はぁ……」
 とても断りきれない空気と感じた春人は、言われるまま種を口に放り込み、一気に飲みこんだ。
 「じゃ…これで」
 さっさと中学へ行って、優里の家を探そう。その想いが足早にその場を立ち去ろうとさせた。
 だが……
「ああっ!!」
 いきなり全身に激痛が走った。体中の筋という筋が引き裂かれる、そんな激痛だ。
 あまりの痛みにその場にうずくまる春人。
 すると両足から、まるで蛇の尾のような細長い物がニョロニョロと生え出しきた。
「な…なんだ……!?」
 足から生えてきた細長い物は、そのまま足元の地を突き刺し、奥へ奥へと進んでいく。
 腕からは、細い木の枝のような物が生え、葉を茂らせながら伸びていく。
「た…すけ……て……」
 数分後、春人がうずくまったその場所には、若葉を茂らせた一本の木が立っていた。
「白陰、何故その者を妖樹化させたのじゃ?」
 事が済むと同時に、一人の老婆が姿をみせた。
 緑色の肌、ギョロっとした大きな目。嫦娥だ。
「この人間から面白そうな欲望を感じたのでな。転生したら変わった能力を持つ妖怪になるだろうて」
 神主…いや白陰は、そう言ってニヤリと笑った。


 それから三日後。
「もう……通学が大変っ! 部活やってたら、こんな田舎から通えないよぉーっ!!」
 日も暮れ、暗い農道を自転車で走る女子高校生。
 体育会系の部活をやっているのだろうか、長い髪を後ろで一つに括っている。
「なんとか、丘福市で暮らせないかな……?」
 そう呟いた瞬間。
 シュルルル……、何かが首に巻き付いてきた。
「きゃ…………」
 まともに声も出せず、その場で自転車ごと引き倒される。
「な……?」
 暗くてよく見えないが、手触りで判断すると、植物のツタのような物が巻き付いている。
 必死で引き剥がそうとするが、
 シュルルル……
 だが、更に両足、胴にもツタは巻き付いてきた。
 藻掻き苦しむが、ツタは外れるどころがドンドン身体に巻き付いていく。
 数分後、彼女の身体は完全にツタで覆われ、ピクリとも動かない。
 動かなくなったのを見定めると、一人の影が現れた。
 それは三日前、白隠に妖樹化されたはずの春人だ。
 腕から数十本のツタが生え、彼女を覆ったツタに繋がっている。
 腕を払うように軽く振ると、全てのツタは春人の腕に引き戻されていった。
 すると、足元に小さな物体が転がり落ちている。
 拾い上げ確認すると、長さ30㎝程のそれは人の形をしており、後頭部は長い髪を一括りにしてある。そう、それはあの女子高生に瓜二つの人形だった。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第十話(1)

 妖怪化した春人の妖力、それは人間を人形に変えること。
 春人は頭の先から足先、そしてスカートを捲し上げ中を覗き込むと
「うん、まずまずの出来だ! やはり人形は着せ替え人形に限るね」
 そう言って、嬉しそうに微笑んだ。
「早くこの手で、高嶺優里を人形にしたい……」

 村の女子高生や若い女性が二~三人、行方不明になっていると凛の耳に入ったのは、更に三日後であった。
 セコ、金鵄を通して入ったその情報は、どうやら柚子駅から柚子中学校までの、人通りの少ない場所で起きているらしい。
 放課後、部活を休み足早に校門を飛び出した凛を、千佳が引き止めるように声を掛けた。
「凛、部活休むなら、途中までウチと一緒に帰らん?」
「ごめん千佳、大事な用があって急ぐの」
「そう……、引き止めてごめん」
 まるで叱られた子犬のように、しょぼくれる千佳に対し、凛は優しく微笑むと
「今度、一緒に帰ろう!」
 そう言って、走り去っていった。

 まずは中学から駅までの間で、比較的人通りの少ない農道を中心に当たることにした。
「セコの話だと、事件が起こった場所には、半妖の気が残っているらしい」
 金鵄は気配を探りながら、農道に沿って飛び回る。
「半妖……、千佳や美咲おばさんのように、妖怪化された人間の可能性があるって事?」
「そうだ、つまり中国妖怪の仕業である可能性が強い」
 凛たちは、そう話しながら妖気を頼りに辺りを調べまわった。
 日も暮れかかり、辺りが薄暗くなったその時、
「金鵄……!?」
「うん!」
 強烈な妖気を感じ取った。
 同時に数本のツタが凛に襲いかかる。
 凛は飛び避けるように攻撃をかわすと、直ぐ様、霊装し戦闘体勢に入る。
「おおっ!戦う少女~っ!? いいねぇーっ!!」
 ツタを引き戻しながら、春人が姿を見せる。
「小学生……? いや、さっきまで制服を着ていたから、女子中学生か。でも、今着ているそのミニスカ戦闘服、カッコイイねぇ~♪」
 凛を凝視しながら春人は、気持ちを高揚させていく。
「あなたが女性たちを襲った妖怪?」
 凛はそう言って、弓を構えた。
「襲った…? 人聞きの悪い」
 春人はそう言うと、懐から三体の人形を取り出した。
「彼女たちは僕の人形となったことで、毎日着飾る事ができ、幸せを満喫しているはずさ」
「に…人間を、人形に……!?」
「君も僕の人形になりな! そうすれば、毎日色々な服が着られるよ!」
 再び春人の両腕から数十本のツタが飛び出し、凛へ襲いかかる。
 凛は弦を引き、矢を放った。
 青白い光を放つ霊光矢は、襲いかかるツタを一撃で消滅させる。
「な…なんだ、この子は……!?」
 霊光矢の威力に思わず怯む、春人。
 しかし一体の人形を高々と持ち上げると、
「この人形は、今でも生きているんだ。もちろん僕が術を解けば、人間に戻す事ができる」
「……?」
「つまり人形が死と同じ状況に陥れば、当然……人間としての命も尽きる」
 春人は農道沿いの用水路に目をやると
「人形も、溺死するのかな?」
 そう言って、手にした人形を放り投げた。
「やめ……!!」
 とっさに人形を追って、用水路に飛び込む凛。
 手探りで人形を拾い上げ、安堵のため息をついた瞬間、
「あっ!!?」
 背後からツタが全身に巻き付いた。
「凛ーっ!!」
 金鵄の叫びも虚しく、徐々に小さくなっていく凛の身体。
 春人がツタを引き戻すと、その手には30㎝にも満たない人形となった凛の姿があった。
 サイドテールもゴスロリ戦闘服もそのままだが、瞳は一点を直視しピクリとも動かない。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第十話(2)

「可愛いね~っ、戦う美少女の着せ替え人形!」
 頭の先から足先まで舐めるように眺めると、その指は例のごとくスカートを捲り上げた。
「短パン?」
 スカートの中の黒い短パンを摘み、そのまま引き下ろそうとするが、なかなか引き下ろせない。
「あ……、これスカートと一体型のスカパンってやつか?」
 そう呟き、スカートを引き下ろそうとした。
 その時!!
「その手を放しなさい!」
 鋭く突き刺さるような声が、背後から掛けられた。
 振り返ると、最初に目に入ったのは、鋭い刃。
 そして、その刃のついた長い獲物を手にし、白く軽装な鎧を身につけた、山吹色の髪をなびかせる少女。
「高嶺……優里……ちゃん……?」
 今まさに、春人の想い人がそこに立っている。しかも春人の趣味に合わせたような戦闘服を身につけて。
「なぜ私の名を知っているのか解りませんが、まずその手にした人形を渡してください」
 突き刺さるような眼光が、春人の視線を貫く。
「いいね!いいね!いいね!いいね!いいね!いいね!いいね!いいね!いいね!いいね!いいね!いいね!」
 春人が雄叫びのような絶叫を上げた。
「その姿の君が人形になれば、こんな子どもの人形は、二の次だ!!」
 春人は人形となった凛を放り投げると、空かさず数十本のツタで襲いかかる。
 一振り!
 たった一振り薙刀を振り払うだけで、ツタは切り落とされる。
 二撃、三撃と襲いかかるが、優里にはまるで通じない。
 そして一気に間合いを詰めた優里の刃が、春人の眼前に迫った。
 実力の差は、一目瞭然だった。
 腰が抜け、その場に座り込む春人。
「ま…待ってくれ、僕を殺すと……、さっきの子も……他の人形になった子も……、元に戻らないよ……」
 それを聞いた優里の眉が、僅かに動く。
 その瞬間を見逃さなかった春人は追い打ちをかけるように、
「ど…どうだ!? 君が僕の人形になれば、さっきの子を含め……全ての子を元に戻そうじゃないか……」
 …と、申し立てた。
 無言で冷ややかな視線を送る、優里。

 その様子を見ていた金鵄。
「やはり、優里の戦闘力は群を抜いている。あの妖怪を間違いなく討ち取る事ができるだろう。
 だが、そうなるとあの術だ。おそらく、あの術は呪術系の妖術。術を解くには、ヤツの言葉通り……ヤツでなければ解けないだろう。
 つまりヤツをこのまま討ち取れば、凛もその他の娘たちも元には戻らない。
 どうする……優里!?」


どうする?
 ① 耳を貸さず、春人を討ち取る。
 ② 身代わりになって、凛を救う。


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『-後編-』へ続く。

そのまま、下のスレをご覧ください。

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 13:29 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第10話「凛のために・・ -後編-」

① 耳を貸さず、春人を討ち取る。


「保証……できるのですか?」
「えっ!?」
「私が人形になれば、凛ちゃんやその他の女性たちが、元に戻れるという保証はあるのですか?」
「や…約束は、守るよ……」
「信用できませんね」
 優里はそう言うと、薙刀を頭上高く振り上げた。
「妖怪である貴方の事、私を人形にした後……凛ちゃんたちも、そのまま持ち帰る可能性があります」
―ギクッ……!―
「それに、仮に一旦は戻したとしても、また多くの人々を人形に変えていく恐れがありますよね」
「そ…それは……」
「だったら、ここは凛ちゃんたちを犠牲にしてでも、貴方を討ち取った方が、村や多くの人々のため!」
 優里の目に殺気が篭もる。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第十話(3)

「覚悟してください!」
 そう言って、薙刀を一気に振り下ろした!!
「わ……わ……わ……わかったぁぁぁぁぁっ!!」
 再度、待ったをかける春人。
「今すぐ……今すぐ、あの子を元に戻す!!」
 春人は大慌てでツタを伸ばし、人形の凛を包み込んだ。
 薄い光がツタごと包み込む。
 すると光は徐々に大きくなり、やがて人の形になると、そこには元の姿の凛が。
 キョトンとして周りを確かめる凛。
「優里……お姉さん……?」
 その言葉に優しく微笑む、優里。
 たしかに元に戻っている。
「な…! な…! 元に戻しただろう! だから、助けてくれ!!」
 春人は必死に懇願した。
「まだ他の女性たちが戻っていませんよ」
 優里は強い視線で返す。
「わかった……、わかったよ……」
 春人は更に数本のツタを伸ばすと、同じように三体の人形を包んだ。
 そして髪を括った女子高生も、他の女子高生や女性も、元の姿に戻った。
「これで全部だ! なっ、約束は守っただろう? だから、助けてくれ」
 優里は女性たちを確認すると
「たしかに。では私も貴方に手をだすのを止めます」
 そう言って、薙刀を手放した。
「じゃ……じゃあ! 約束通り、君を人形にするよぉぉ!!!!」
 春人は打って変わったようにツタを伸ばすと、優里の身体に巻き付けていく。
 その時……
「凛ちゃん、今よっ!! 妖怪を撃ちなさい!!」
 優里が叫んだ!
「は……はいっ!?」
 一瞬呆然とした凛だが、直ぐ様我に返り、春人に向かって霊光矢を放った!
 青白い閃光が一直線に飛び、春人の胸に突き刺さる。
「そ…そんな……、ずるく……ね…?」
 呆然とした表情のまま、春人は青白い光の粒に包まれていく。
 優里に巻き付いたツタも消え去り、春人は普通の人間の姿に戻っていく。
 気を失って倒れている春人を確認すると、優里は凛の下に歩み寄る。
 そして優しく凛の頭を撫でると
「ありがとう凛ちゃん、よくやってくれたわ」
 と声を掛けた。
 優里の言葉に頬を赤く染めた凛。そして
「い……いえ、わたしこそ、ありがとうございます……」
 と照れながら、返した。
「ところで、彼女たちはどうする?」
 気を失って倒れている三人の女性や春人を見て、金鵄が尋ねた。
「すぐに警察に連絡して、保護してもらいましょう。これから先は私達は関わらないほうがいいと思います」
 優里のきっぱりした返事に、凛も頷いた。
「それと、あの妖怪化した青年の記憶は大丈夫なんだろうか?」
 金鵄は更に付け加えるように尋ねる。
「うちの母もそうでしたけど、凛ちゃんの浄化の矢は、姿形を元に戻すだけでなく、妖力も……、そしてその間の記憶も消し去るみたいです。だから大丈夫でしょう」
「なるほど、改めて凛の霊力は凄いね・・・」
 金鵄は感心したように呟いた。
「だから私は、凛ちゃんのその力に賭けたんです」
 予想もしない優里の言葉に、金鵄は思い出したように尋ねた。
「そう言えば、優里は本気であの妖怪を討ち取る気だったのかい?」
 金鵄の問いに静かに首を振ると
「あの場面、凛ちゃんならどんな結果を望むかな?…って考えたんです」
「凛……なら?」
「ええ、凛ちゃんならきっと、女性たちを全て元に戻し、尚且つ妖怪化した彼を人間に戻して、一人の犠牲も出さない。そんな結果を望むだろうって」
「は…はい……」
「丁度、あの妖怪の元の人を思い出して……。あの彼、私が前にいた高校の先輩だったんです。当時、2~3回私に付きまとった事があって……、その時ちょっと強めに注意した事がありました」
「そ…そうなのか!?」
「ええ、根は悪い人では無いと思うのですが、気が弱いところがありましたね。だから今回、脅しをかけてみたのです」
「それで、あんな強気な態度を!?」
「術を解かせて……予想以上に上手くいきました。あとは……」
「凛の浄化の矢で、元に戻す……と!」
「はい。この形が一番ベストな結果だと思いました」
 優里はそう言ってニコリと微笑んだ。
 話を聞いていた凛は、しきりに感心するばかり。


「ただ武術ができるだけではない。的確な状況判断、そしてそれを実行できる、強い精神力」
「改めて、優里さんの力を知りましたか?」
 帰り道、金鵄はセコと二人で語り合っていた。
「麒麟が彼女に全ての力を譲ったのも、わかる気がする」
「麒麟様が優里さんの事を一番気に入った理由は、実は他にあるんです」
「それは?」
「彼女が力を譲り受ける日でした。優里さんは麒麟様に、こう告げたのです」

「この力を受け継ぐ目的は、日本を守る事では無い……と?」
 麒麟は眉を潜めて、優里に尋ねた。
「はい、たしかに柚子村を……日本を、妖木妃の手から守る。それも大事ですが、私はこの力を、凛ちゃんのために・・。それを最優先に使わせて頂きたいと思っています」
「若三毛凛、金鵄と共に戦っている娘の事だな」
「私はあの子に返しきれない程の恩があります。もし…あの子がいなかったら、私はこの場にいなかったかもしれません」
「……」
「前の高校での私の行いが、学校や村にまで広まり転校を余儀なくされた時、私の心は完全に折れていました。
 打って変わった村人の怪訝な目、腫れ物を触るように、必要以上に気を使う両親。
 当時の私は、他人に対する不信感と自分に対する罪悪感でいっぱいでした。こんな思いをするなら、死んだほうがマシだ。そんな気にもなっていました」
「そんな……」セコが思わず呟いた。
「そんな時、唯一私に対する接し方を変えない子が、一人だけいました。
 当時、小学生だった凛ちゃんです。
 私はあの子に言いました。私と一緒にいると、他の人達から良い目で見られないよ…と。
 するとあの子は……」
「小さい頃から、おかしな子と見られているから、別に平気です。それにそんなわたしを話を、優里お姉さんはいつも真剣に聞いてくれました。
 だからわたしも、同じように優里お姉さんとお話します。
 たとえ優里お姉さんが本当に悪い事をしたとしても、わたしは最後まで優里お姉さんを信じます」
「涙が出ました……。そして私は決意しました。
 どんな事があっても、この子を自分の実の妹のように、守り抜いていく……と。
 だから私は日本を守ることよりも、妖怪と戦う……あの子を守る事を優先したい」

「優里はそこまで凛のことを……」
 セコの話を聞いて、金鵄は思わず言葉を漏らした。
「優里さんの言葉を聞いて、麒麟様はこう返されたんです」

「面白い娘だ。いいだろう、下手な正義感をかざされるより、そなたの信念の方が信じるに値する。それがしの力……、自由に使ってくれ」

「麒麟すら認めた高嶺優里……、これ以上に無い…凛の味方だ!」
 金鵄は確かな喜びを感じていた。


 その頃、凛の友人、千佳は自宅の自室で、悲しげな表情を浮かべていた。
「今日も凛に謝る事ができなかった……」
 そう呟くと携帯の裏に貼ってある、凛とのプリクラ写真を眺める。
「ウチは半月前、明らかにこの手で凛を殺そうとしていた……。なんでこんな事、今まで忘れていたっちゃろう? 凛に謝って、真意を確かめたいっちゃ……」


正規ルート 第11話へつづく


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| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 13:06 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第09話「新たな味方 -前編-」

「胡媚娘の獲猿も、銅角も、あそこまで妖魔狩人を追い詰めておきながら・・・」
 麓の洞窟、老酒を口に含み、百陰は静かに息を吐いた。
「あの娘の武器は、邪気や妖気を浄化する霊光矢という弓矢。その威力は殆どの妖怪を一撃で倒している。だが、弓だけに接近されると、逆に手も足もだせない」
 再び老酒を喉に流し込む。
「だが、それがわかっていても僅かな隙を付かれ、倒されている。近接攻撃ができ、尚且つ一瞬足りとも隙を与えない攻撃ができる者」
―ふぅ……―
「残念だが、身共の部下にはそのような者はおらん・・・」
「おや、 なにやら深刻な悩みのようじゃね」
 声の方へ首を向けると、一人の老婆が立っていた。
 まるで草のような緑色の肌、その肌は多くの吹き出物で覆われている。
 ギョロリとした大きな目、そうまるで蛙のような老婆である。
「嫦娥か……、しばらく見なかったな」
「ああ、ちょいとこの国を色々見て回ってきていたんじゃよ。この小さな国は、乗り物を使えば一週間もあれば、ある程度回る事ができるからのぉ」
「それで収穫はあったのか?」
「うむ何人か、この国の妖怪を手下にしてきたわ。敵地で戦うには、敵地の兵が適しておるからの」
「なるほど、一理ある」
「そこでお主が先ほど悩んでいた件じゃが・・・・」
 

 柚子村は山々に囲まれた小さな村である。
 農地も人家も、山沿いに並んでいるところもある。
 また、隣接した街、丘福市との行き来は、当然山沿いの山道を通ることになる。
 ここ県道35号線もその一つで、今二台のオートバイが路肩に車両を停め、二人の男女が景色を眺めていた。
 ヘルメットを外した男女は20代前半、茶髪で二人共長めの髪、市内の大学生だろうか。
 そんな男女の頭上にある崖縁から、なにやら人影らしい姿が見える。
 しばらく男女の様子を伺っていたが、突然一人が崖から飛び降りた!
 それは普通の人間の三倍位長い腕で、しっかりと女性の体を捕らえと、女性を攫ってそのまま山を駆け下りていく。
「な……なんだ今のは!?」
 残った男性は何が起きたか、理解できないまま眺めていたが、フト我に返り後を追おうとした。
 その時、目の前に長い棒のようなものが見えたかと思った瞬間、彼の体は大きく吹き飛ばされていた。
 痛む顔面を覆い転げまわる男性。
 指の隙間から見えたその姿は、足の長さが通常の三倍はあろうかと思われる巨人。
「な……なんだ、おまえは……」
 それが彼の最後の言葉だった。
 長い足は彼の頭蓋骨が粉々になるまで、何度も何度も踏みつけていた。
「なんだ、男は殺したのかい?」
 長い腕で気絶した女性を抱え、もう一人が戻ってきた。
 通常の人間の三倍ほどの長さの両腕、それ以外は人間と大差ない姿。
「せっかく男の方は、アタシが貪って遊ぼうと思ったのに」
 更に膨らんだ胸、それは女だった。
「何を言っている。人間の男なんて、すぐに喚くし、肉は硬くて不味いし、良いことないじゃねぇーか」
 そう答えたのは、足の長さが通常の三倍ほどの長さの巨人。頭は少し禿げており、どうやら男のようだ。
 「まぁ、いいわ。そっちの死んだ男は干し肉にして、今夜はこの若い女を喰らいましょう!」
 腕の長い女はそう言って嬉しそうに微笑んだ。
 腕の長い女、それは『手長』と呼ばれる妖怪。そしてもう一人の足の長い男、こいつは『足長』と呼ばれる妖怪である。
 二人で『手長足長』と呼ばれる妖怪は、元々東北地方に生息している。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第九話(1)

 大昔から旅人を攫って食ったり悪行が絶えなかったので、旅の僧が磐梯山に封印したと言われていた。
「あんた達、来て早々好き勝手やるのは構わぬが、本来の目的を忘れるでないぞ」
 そう言って現れた緑色の肌の老婆。嫦娥である。
「わかっているわい! ここで騒ぎを起こして俺たちを狩りに来る奴を殺せって事だろ!?」
 まるで山の頂から見下ろすように、足長巨人の足長は嘲笑うように答えた。
「大騒ぎを起こしてはならん、人間共が大勢押しかけてきては、我々もそれ相応の頭数を揃えなければならん。 あくまでも誘き出すのは、妖魔狩人ただ一人じゃ」
「ちっ、面倒くせーな! 大勢押しかけてくれば大勢殺せばいいだけだろ!」
「口答えは許さんぞ、お主たちを封印から解いてやったのは、この私じゃ。また…山の中に封印してやろうか?」
 嫦娥はそう言って、懐から玉のようなものを取り出した。
「足長、言うとおりにするのよ! アタシはもう……何百年も封印されるのは懲り懲りだからね!」
 手長が窘めるように、口を開いた。
「わかったよ、とにかくあまり大騒ぎにならない程度に騒ぎを起こし、妖魔狩人とやらを誘き出して殺せばいいんだろう?」
「その通りじゃ。うまくいったら私の直属の部下として、永遠にこの地で生きられるようにしてやろう」
「部下っていうのは気に入らねぇが、とりあえず言うことは聞いてやるぜ」


 しばらくして県道35号線で不可思議な事故が起きるという噂が村中に広がったのは、約一週間後であった。
 噂の内容はこうだった。
 若い男女、もしくは女性だけが35号線を通ると、神かくしに合うという。
 現場には乗ってきた車両のみが置き去りにされ、乗車してきた者は行方不明になっていた。
 死体も発見できないため、事故とも事件ともつかず、捜査も一向に先へ進まなかった。
 その噂が凛や金鵄の耳に入ったのは、更に三日後である。
 自転車で山道を登る凛と金鵄。
 はっきり言って漕いで登るのはかなりの労働である。大きなため息と共に自転車を降り、押して登ることにした。
 登りながら金鵄は凛に話しかける。
「なぁ……凛、なぜ麒麟に助けを求めないんだ?」
「助け・・・?」
「そうだよ、銅角を倒したことで麒麟には元の力が戻っているはずだ。東洋でも五本の指に入ると言われている麒麟が味方につけば、僕達の戦いもずっと楽になる」
 金鵄の言い分はもっともだ。麒麟が加われば戦いはもっと楽になるだろう。
「せっかく戻った力……、また戦いで失うのも辛いだろうな……って」
「えっ!?」
「金鵄も麒麟も、この国の為に命がけで戦っていたんだよね。わたし自身も幾つかの戦いをしてみて、人間も……そして妖怪にも大切な命があるって知った」
「妖怪も……? あっ……この間の小白……!?」
「うん。命の大切さって、人間も妖怪も変わらないんだと思う」
 凛は足を止め金鵄を見つめると
「だからね、そんな危険な戦いにもう一度加わってって、なんか言い難くて」
 そう言って照れくさそうに微笑んだ。
 だが、その笑顔はどこか悲しそうであった。
「凛……」

 その時、頭上から長い腕が襲いかかってきた!
「妖怪かっ!?」
 先に気づいた金鵄が腕に体当たりする。
 動きが鈍った瞬間、凛はその場を離れ・・・
「霊装!!」
 戦闘服を装着し、弓を手に取る。
「その格好、その霊気……、あんたが妖魔狩人かい?」
 長い腕の主、手長が両手を広げるように構えた。
「日本妖怪!? まさか……お前たちがここを通る人達を!?」
 金鵄が驚きの声を上げた。
「その通りさ、妖怪が人間を襲って何がおかしいだい?」
 手長はそう言ってせせら笑うと両手で挟み込むように襲いかかる。
「くっ!」
 必死で飛び避け、弓を構えようとした瞬間……
「凛っ、危ないっっっ!!」
 間髪入れず、長い足蹴りが凛を直撃した。
「……っ!!」
 悲鳴すら上げられず吹き飛ぶ凛。
 強固な防御力を誇る戦闘服を着ていなければ、今の一撃であばら骨の二~三本は折れていただろう。
「もう一匹いたのか……。しかもその足の長さ……そうか、お前たち手長足長だな!?」
 凛を蹴り倒した足の長い妖怪の姿を見て、金鵄は思い出したように叫んだ。
「さすがは霊鳥金鵄、よく知ってるじゃねぇーか!」
 人間の三倍はあろうかと思われる長足で、頭がやや薄い妖怪足長は、ニヤッと笑った。
「だったら俺たちが相当凶悪だって事も知っているよな~」
 足長は小馬鹿にするような口調で、再び凛に向かって足を振りかざす。
「くっ……」
 喰らう寸前で仰け反り、辛うじて強力な足蹴りをかわした凛。
 すぐさま弓を向け弦を引こうとすると、背後から長い手刀が襲いかかった。
バキッ!!
 またも吹き飛ばされる凛。
 こめかみ辺りはざっくり切れ、血が流れている。
「なんてことだ……、間髪入れない連携攻撃で、凛が反撃する隙がない……」

 凛の攻撃は『霊光矢』という弓を使った射撃攻撃だ。
 並みの妖怪ならば一撃で倒せる程の高い威力を誇る攻撃だが、『構える』『狙いを定める』『撃つ』という三つの動作が必要である。

 今までの敵は、凛が避けながら間合いを開けたり、相手を足止めし隙を作ったり、そうして倒してきた。
 だが、今回の手長足長は異様に手足が長く、それぞれの間合いが広い。
 しかも息の合った連携攻撃をしてくると、凛は構える隙さえ与えてもらえない。
「このままでは、凛は間違いなく殺される……」
 今まで以上の強敵だと悟った金鵄。


① 金鵄は大急ぎで麒麟の元へ飛んだ。
② 金鵄は全力で手長足長に立ち向かった。


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『-後編-』へ続く。

そのまま、下のスレをご覧ください。

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 14:28 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第09話「新たな味方 -後編-」

① 金鵄は大急ぎで麒麟の元へ飛んだ。



―凛には悪いが、二度と麒麟を戦いに巻き込みたくないとか、言っている場合じゃない! 一刻も早く助けを呼ばないと、凛が殺される!―
 
 そう判断した金鵄は、麒麟が封印されていた祠に向かって飛び立った。
 幸いにも祠のある麓はそう遠くない。全速力で飛べば、1~2分で着く。
「き……麒麟ーっ!!」
 祠に辿り着いた金鵄は雄叫びのように叫んだ。
「復活したのでしょう!姿を見せてください!!」
 金鵄の叫びとは対照的に、静寂な時が返ってくる。
「残念ですが、麒麟様はもうこの世にはおられません」
 金鵄の期待をぶち壊すような言葉と共に、小さな妖怪セコが姿を現した。
「こ……この世には……いない……?」
「はい、麒麟様は一週間程前にお亡くなりになりました」
「ま……まさか、だって……凛が銅角を倒し……復活したんじゃ……」
「たしかに銅角が倒れ、麒麟様に肉体が戻り復活を果たすことができました。しかし……」
「……?」
「その時すでに、麒麟様の寿命は限界だったのです」
「そ……そん……な」
「後の事は全てこのボクに託して……、えっ?」
 セコは話を続けようとしたが、すでに金鵄の耳には届いていない。
「もう終わりだ……凛も殺される。ならば、僕も彼女の後を……」
 完全に悲観する金鵄。
 だが、そこへ・・・
「すぐにその場所へ、私を案内してください!」
 凛とした声が遮った。


「きゃぁぁぁ……」
 激しい勢いで崖に叩きつけられる凛の小さな体。
 強い防御力を誇る戦闘服を着ていても、その服すらもうボロボロ。
 全身のアチコチから出血、弓は手放され、もう完全に立ち上がる気力すら残っていない。
「強いと聞いていたけど、アタシら二人にかかったら赤子のようなものね!」
 倒れ伏した凛を眺めながら、手長がせせら笑う。
「こんな子どもに手こずるようじゃ、中国妖怪も大したことねぇーな」
 そう言って足長は凛の体を踏みつけた。
「足長、さっさと止めを指しちゃいな!今夜はこの娘の肉を五平餅にして頂くわよ!」
「五平餅か、いいねぇ~!それじゃ、肉が柔らかくなるように、グチャグチャに踏みつぶしておくか!」
 足長はそう言って、大きく足を振り上げた。
 その瞬間・・・
ズザッ!!
 背後で何かが落下してきたような気配を感じると、間をおかず何かを切り裂く音がした。
「!?」
 次に足長が感じた感覚は、自身の背中の激しい痛みと出血。
 そう、足長の肩口から腰辺りまで、一直線に切り裂かれていた。
「ぎゃあああああっ!!」
 悲鳴をあげ、転げまわる足長。
「な……何者だい!?」
 手長が振り返ると、そこには一人の人影が。
 凛も僅かに頭を上げ、虚ろな目で人影を見つめた。

 それは細身の体の、どう見ても若い女性。
 凛の戦闘服を反転したかのような、白い衣服。
 長い槍のような、いや……薙刀に近い獲物を持つ手。
 日の光で、山吹色に輝く長い髪。
 凛とした眼差し、けれど凛を見つめる時のみ優しげになる。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第九話(2)

「優里……お姉さん……?」

 それは、凛が唯一心を開き、幼いころから憧れている人。
 凛の隣家に住む女子高生、高嶺優里であった。
「凛ちゃん、よく頑張ったわね。あとは私に任せて休んでいなさい」
 そう言って優しく微笑んだ。
「どう見ても人間の娘……だが、そっちの妖魔狩人と同じ位の霊力を感じる。何者なんだい……アンタ!?」
「妖魔狩人? そうね……私もそう名乗っておこうかしら!」
 優里はそう返し、左半身中段の構えを取る。
「ふざけるなぁ!!」
 手長は両手を広げ優里に飛びかかっていった!
 優里は構えを上げ、空かさず長い獲物で突きかかった。
 手長の両手が優里の頭を刳る……その前に、長い獲物の切っ先が手長の胸を貫いていた。
 ゆっくりと薙刀を引き抜くと、手長は崩れるように倒れ伏した。
 睨みつけるように見開いた眼差しは、すでに絶命している事を表していた。
「手長ーっ!!」
 それまで転げまわっていた足長だが、手長が突き倒されたのを見ると、激しい勢いで足を振り優里に襲いかかった。
 優里は慌てず柄で蹴りを受けると同時に、その足を払った。
 体勢が崩れた足長に、振り下ろされた刃が体を切り裂く。
 それは弓ではできない、近接戦闘に優れた獲物だからこそできる、攻防に順応した技だ。
 断末魔の叫びを最後に、足長も倒れ伏した。
 まるで夢でも見ているような凛。
 そんな凛に気づくと、優里は膝をつき凛の髪を優しく撫でた。
「もう、大丈夫よ!」
 その顔は、いつも隣で会っている憧れの女性、優里そのものであった。


 その様子を木陰で見つめていた金鵄とセコ。
「強い……優里さんのあの戦闘力は、一体どうやって……?」
 金鵄はそう呟くと、フト思い出したように、こう付け加えた。
「まさか……麒麟の力が……!?」
 その言葉に静かに頷くセコ。
「もちろんそれもあります。でも、優里さんの秘密はそれだけでは無いんです。そして、それが有ったからこそ、麒麟は彼女に力を預けたのです」


 第10話へ続く(正規ルート)


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妖魔狩人 若三毛凛 if 第08話「対決 銅角 -前編-」

胡媚娘と獲猿による襲撃の翌日。
 村には『神田川県警』と銘打たれた大勢の警官やパトロールカーが配備されていた。
 それはそうであろう。
 なにしろ昨日一日だけで十数人の村人と、警察官が殺されているのだ。
 それだけに今日は、村内の学校も職場も臨時休みとし、大規模な捜査が行われている。

 そんな警察官たちを横目に、紅色の瓢箪をぶら下げた大柄な男が一人、苦虫を噛み潰したような表情で眺めていた。
 男は妖木妃一味の幹部である中国妖怪銅角。
 彼は妖魔狩人を始末するために村へ降りてきたが、行動するにあたって、白陰から一つの注意を受けていた。
 それは・・・・
「よいな? 絶対に騒ぎを起こすでないぞ。」
 そもそも妖木妃一味は日本を侵略しに訪れ、秘密裏にこの由子村を拠点としようとしている。
 しかし妖魔狩人の出現により計画は遅れ、様々な奇怪な事件で世間から目に付き始めてきている。
 そこへ今回の殺人事件による、人間達の大規模操作。
 これ以上騒ぎを大きくしてしまうと、一斉攻勢に出なければならなくなる。
 妖木妃が休眠している現在、勝手な判断でそれはできない。
 したがって、出来る限り秘密裏に行動をしなければならないのだ。
「チッ! 俺様は白陰と違って、こっそりチンタラ動くのは苦手なんだがな・・・。さて、どうしたものか?」
 そう考えていると、古びた民家から小柄な人影が出てきたのが目に入った。
「ん……、あれは……?」
 銅角は獲物を見つけたように、素早く人影に駆け寄った。
「これで荷物は全部持ち出したダ。住み慣れたいい家だったけど、白陰に見つかって殺されるよりはマシダ・・・」
 そう人影は以前凛に敗れた最弱妖怪、猪豚蛇。
 樫井の海辺でも凛に信じてもらえた事から、以後凛の回りをうろついている。
「妖魔狩人若三毛凛、あの子についていけば、もう惨めな生き方をしなくてもいいダヨ。それにいざとなったら守ってもらえるかもしれねぇダ!」
 凛を慕っているわりには、都合のいい事を考えている猪豚蛇。そこへ・・・
「おい!!」
 ドスの効いた声に振り返ると、一気に血の気が失せた。
「あ……あんたは、ど……銅角……さま……」
「お前、たしか猪豚蛇とかいう妖怪だったな。こんな所で何をしている?」
「あ……あの……べつに……」
「それと今、妖魔狩人がどうとか言っていたな。」
「い……いや……その……」
「ああ! 白陰から聞いたぜ! お前、妖魔狩人と戦って敗れたらしいな。なのに、なぜ無事なんだ!?」
「そ……それは……」
「なるほど、命を取られなかっただけでなく、俺たちを裏切って仲間にでもなったか……」
―こ……殺される……ダ……―
「そう怖がるんじゃねぇ、なんだったら見逃してやってもいいぜ!」
「えっ!?」
「ただし、幾つか俺様の問いに答えろ」
「は……はい……?」
「妖魔狩人について、性格……戦い方、知っている限り教えるんだ」
「は……はい……ダヨ」
 戦闘能力はもちろん、気も弱い妖怪である猪豚蛇。
 凛について知っている事を洗い浚い話した。

「なるほど、他人の命を見捨てる事ができない性格か、使えるな!」
 銅角は何かを思いついたように
「おい、貴様は今から妖魔狩人の所へ行き、俺様が村人を人質に捕って待っていると伝えてこい。」
「人質を捕って……?」
「そうだ! あそこに見える建物がいい、二時間以内にあの場所へ来るように伝えるんだ!」
 銅角はそう言って、小さな村の小学校を指差した。
 今日は事件捜査と万一に備え、学校も全て休校になっている。そのため人の姿は見えない。
「いいな、必ず伝えろ! もし二時間以内に妖魔狩人が来なかったら、俺様が必ず貴様を殺す!」
「は……はい……」
 そう言って猪豚蛇は、必死の形相で駆け出していった。
「さて、一応人質を一~二匹捕まえておくか」
 銅角はあたりを見渡すと、民家へ向かって歩き始めた。
 その様子を少し離れた木の影から、一人の少女が見つめていた。


 猪豚蛇から知らせを受けた凛は、金鵄と共に自転車で小学校へ向かっていた。
 すると、その行き先に小さな人影が飛び出る。
 慌てて自転車を止める凛、見ると人影は凛と同じ年頃の少女だ。
「あんたが、妖魔狩人なの?」
 立ちふさがった少女は、お団子をつけたツインテール。雪のように白い肌。クリクリとした瞳に、真一文字に結んだ口元。そしてその服装は俗に言うチャイナ服である。
「そうだけど、あなたは……?」
「あたしの名は小白、中国から来た白兎の精」

妖魔狩人 若三毛凛 if 第八話(1)

 小白と名乗った少女はそう言って右手を前に差し出した。
 その手には、小刀が握られている。
「あたしは昨日あんたと戦った胡媚娘姉さんの妹弟子。姉さんより半日遅れでこの村に到着した」
「胡媚娘……? あの、大猿の妖怪を操っていた!?」
 そう言うと凛は、弓を構え霊光矢を向けた。
「慌てないで! あたしはあんたと戦うためにここに来たんじゃない。」
「……?」
「あたしの狙いは銅角!」

―銅角!? たしか……封印されている麒麟の魂を解放する鍵を握っている幹部妖怪!―

 半日遅れで村に到着した小白は、偶然胡媚娘が銅角に殺される所を目撃したらしい。
「姉さんはアイツに殺された、あたしは敵を討ちたいんだ。そのためにあんたに頼みがある」
「わたしに、頼み……?」
「あんたの血をあたしに分けて欲しい!」



 突然現れ、血を分けて欲しいと頼んできた中国妖怪 小白。
 凛は小白に、自分の血を分け与えるか?

①凛は小白を信じ、血を分け与える。
②凛は小白を疑い、血を分け与えない。

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『-後編-』へ続く。

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| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 22:32 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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