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妖魔狩人 若三毛凛 if 第10話「凛のために・・ -前編-」

―高嶺優里……、凛がまるで歯が立たなかった相手を一方的に……―
 優里の高い戦闘力を間近で見た金鵄は、驚愕で声も出なかった。
「あ…あれは、麒麟の力を受け継いだからなのかい!?」
 側にいたセコに尋ねられずにはいられなかった。
 金鵄の問いにセコは静かに首を振ると、こう答えた。
「たしかに麒麟の力を受け継いではいますが、それだけではありません。むしろ彼女自身の基本能力が高いが上に、麒麟の力を使いこなせていると言ったほうがいいでしょう」


 高嶺優里、6月30日生・・・私立大生堀高校三年生17歳。
 父拓海、母美咲の間に長女として産まれる。その頃はまだ普通の子どもだったが、四歳の頃、愛犬コロが亡くなった事がきっかけに、ある能力が目覚める。
 それは霊や物の怪といった類の妖気を感じ取る能力。
 愛犬コロを失った三日後に、彼女はコロの霊を見たのが始まりだった。
 以後、様々な霊や妖気を感じ取る事ができるが、大人たちは愛犬を亡くした悲しみからくる幻覚だと、相手にしなかった。
 この経験があったからこそ、誰も信じない凛の霊体験話を真剣に受け止め、心の支えになる事ができたのであろう。
 両親は共働きで家に一人で居ることが多かった優里に、近所に住む老女、園部秀子はよく自宅に招き入れ話し相手になったり、薙刀の指導を行ったりした。
 秀子は古武術北真華鳥流の元師範で、全国でも指折りの薙刀使いだった。
 北真華鳥流は戦国時代から続く流派で、対真剣・対槍など実戦向けの流派。
 厳しい指導だったが、優里は薙刀にのめり込み日々実力を付けていった。
 優里が中学二年生の頃、秀子は伝手を生かし、当時の全国高校なぎなた大会優勝者と練習試合を設けた。
 結果は優里の圧勝だった。この結果は非公式のため記録には残っていないし、対戦流派の希望から、口外もされなかった。
 秀子は機会が有る度に、優里に他流派試合をさせた。こうして優里はより一層実戦型の実力を上げていった。
 そんな秀子も優里が高校へ進学する前に息を引き取った。
 優里は神田川県で数少ない『なぎなた部』のある進学校、県立丘福高校へ入学した。
 学力でも運動能力でも秀でた優里は、校内でも注目の的であった。
 特に入部した『なぎなた部』では、その突出した実力で、一年生であるにも関わらず、レギュラーに選出された。
 この事が事件の発端になった。
 それまでレギュラーだった三年生の一人が優里に嫉妬し、他の部員と共に一年生イビリを始めたのだ。
 優里たちがイビリに耐えれば耐える程より過激になり、ついには一年生の中から怪我人が出てしまった。
 大きな怪我では無かったが精神的傷ついた同級生の姿は、優里の怒りに火をつけるには十分だった。
 たった数分の出来事だった。
 木製の薙刀を手にした優里の足元には、怪我を追った数人の上級生達が倒れていた。
 練習中の事故と言うことで扱うようになったが、この事件は優里の退部を余儀なくされた。
 更に怪我をした上級生の一人に、県会議員の姪がいた。
 県会議員はこの事件を、優里の起こした校内暴力として対応するように、県教育委員会へ連絡させた。
 そのため、通っていた丘福高はもちろん、地元の柚子中学校を通じて村民からも、優里に対する視線や対応が変わった。
 この一件で優里は弁解することもできず、私立高校へ転校していった。

 その後は薙刀を封じ、学問優先の高校生活を送っていたのだが、約一月前、突然豹変した美咲に彼女の近況は一転した。
 気を失っていたため事件の経緯はよく覚えていない。しかし、元には戻ったものの、間違いなく美咲は獣のようになり、そして事件解決に凛が絡んでいる。
 その後もいくつかの事件が村で発生した。
 後を追っていくと、そこには殆ど凛が絡んでいる。
 事実を確認しようと思ったその時だった、子ども姿の妖怪セコに出会ったのは。
 セコは封印されている麒麟の祠に案内し、全てを優里に話した。
 妖木妃の事、妖樹からの妖怪化。そしてそれを食い止めている凛の事。
 話を聞き、凶悪な妖怪との戦いになると知りつつも、優里は戦う事を決意した。
 そして麒麟は復活後すぐに、残る力の全てを優里に譲り託したのだ。

 セコから優里の経緯を聞いた金鵄は、優里の強さの秘密を改めて実感した。


 手長足長との戦いから二日後。
「春人、また荷物が届いているわよー!」
 下から響く母の声に、春人は階段を駆け下りると、玄関先で荷物を受け取った。
 大切そうに荷物を持って部屋へ戻ると、丁寧に荷を開け中から箱を取り出した。
 箱には『閃光のナスア』と表示され、透明の硬質ビニールからアニメ風の美少女の顔が見える。
 春人は箱から美少女を抜き出し、机に立てかけた。
 それは、30㎝ほどのアニメ美少女のフィギュアであった。
「やっぱ、戦う美少女って萌えるよな~っ!」
 春人はそう呟くとフィギュアのスカートの中を何度も覗き込んだ。
 西村春人、丘福市南区在住、県内の国立大学に通っている。
「そう言えば、うちの高校の後輩にもいたよな……、すごく強い美少女が!!」
 そう言って携帯を手に取り、画像を映し出す。
 そこには、カメラとは全然別の方向に視線を送っている、山吹色の髪をした美少女が写っている。
 そう……それは、優里だった。
「なぎなた部に入部したこの子。強くて勉強ができて、それでいて最高に可愛い。まさか、現実にこんなアニメみたいな美少女がいたなんて~♪」
 鼻の下を伸ばし、想いに耽る。
「でも、1年のうちに転校してしまって……。ああ~っ…会いたいな!いや、本物でなくてもいい、この子のフィギュア!いや……着せ替え人形が欲しい!!」
 居ても立ってもいられなくなった春人はパソコンに向かうと、在学していた高校の友人や、あの事件をネット検索などで調べ上げ、優里が由子村立中学校出身であることを突き止めた。
「柚子村か……、JRで途中乗り換えれば、そう遠くはないな……。」
 ネットで路線を確認すると、翌日村へ向かう事を決意した。
 

 
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 今回はいつもより、かなり長めになっております。ww
引き続き、下のスレ「中編」を御覧ください。

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