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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

2017年01月 | ARCHIVE-SELECT | 2017年03月

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ターディグラダ・ガール 第四話 はじめに

こんにちわ、るりょうりにです。
つい先週、予告にて「第四話は月末か、来月半ばまでに~」なんて事を記載したのに、あれから驚くほど順調に進み、なんと第四話……完成してしまいました!
(^_^;)

今回の第四話は、とにかく長い!
おそらく『妖魔狩人~』の1.5倍から2倍近くあると思います。
しかも、挿絵枚数『19枚』!!
これは、過去最多だと思います。
さらに、その内の二枚は、久しぶりのあの形式になっております。

そんな訳で予告でも言いましたが、後付口実とは言え『10周年記念&100万ヒット記念』に、それなりに相応しい内容になったと思います。

物語的にも、結構重要な事もあったりするので、長すぎてお疲れになるとは思いますが、じっくり読んでいただけると幸いです。

では、また『あとがき』で!


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ターディグラダ・ガール 第四話「パーピーヤスの野望 一章」

 あたしの名前は結城暁(ゆうきあきら)。見た目も大したこと無く、そしてコレといった取り柄もない、ただ毎日流されるように生きている平凡な中学校の女子生徒。

ターディグラダ・ガール 四話01

 父は『ゆうきまなぶ』という芸名で、神田川県内で活動している地方タレント。
 ローカルテレビのバラエティー番組やラジオ番組。県内芸能イベントでの司会。割と仕事も多く、神田川県内だけであれば、全国規模の芸能人やタレントに負けない程度の人気を誇っていた。
 でもある時。その父は、番組でアシスタントをしていた若い女性タレントと、不倫をしていたことが公表されてしまった。
 数多くあった仕事は謹慎休止。憤慨した母は父と別居することになり、私は母の元で生活をすることになった。
 だけど、あたしの真の苦しさはここからだった。
 なまじ有名人だった父だけに、その話題は学校でも広がり、あたしは『不倫タレントの娘』『セックスハンターの遺伝子を持つ者』など呼ばれ、あっという間に『いじめ』の対象となってしまったのだ。
 今の時代のいじめというのは、偏った正義感からくる攻撃。つまり、相手は「自分は正しいことをしている」と思い込んでいる分、『罪悪感』なんてものをまるで感じていない。したがって加減や遠慮なんてものはまるっきり無い。そんなものを、なんの戦闘力も持っていない極普通の女子生徒が、そう簡単に耐えられるものではないのだ。
 学校ではゴミのように扱われ、家に帰れば相変わらず母はイライラしている。
 いつしかあたしは自分の居場所が無くなり、学校へも行かず、充てもなく街中をブラブラしていることが多くなった。
 今でも何故だかわからない。もしかしたら、反撃する戦闘力が欲しかったのかもしれない。
 あたしは街の一角にある、小さな『キックボクシングジム』の前でポツンと立っていた。
 すると……
「よかったら、少しやってみない?」
 いきなり背後から、そう声を掛けられた。振り返るとそこには、ショートヘアの女の子がニコニコしながら立っている。
「い……いえ、あたしは、こういうのは……」
 なんと返事をしたらいいか戸惑っているあたしに、彼女はさらににこやかな笑顔でこう綴った。
「そう? 無理強いはしないけど、何かを殴ったり蹴ったりするのって、身体の中に溜まっているワケわかんない物が、結構吐き出せるもんだよ!」
 そう。その人は、あたしが今……どんな気持ちなのか?まるで見抜いているような感じだった。
 結局あたしは断る気もなく、半分どうでもいいか!的な気持ちで、ジムの中へ連れられていったんだ。
 中に入り、言われるままサンドバッグを叩いたり、蹴ったり。
 最初は殴っている手や足の方が痛かった。でも、そんなことを一時間も続けていたら、学校での嫌なこと。家にいるときの暗い気持ちなど、すっかり忘れていた。
「あたしもさ、以前……凄く嫌な気分になる時期があってね。貴方と同じようにこの辺をぶらついていたら、ここのジムの会長にひっぱりこまれちゃった!」
 そういう女の子の笑顔は、あたしがしばらく見たこともない、別世界の輝きがあった。
 それがきっかけで、いつしかあたしもジムに通うようになり、一緒に練習に励んだ。そしたら何故だろう?学校でのいじめが、それほど苦痛でなくなったんだ。
 キックを始めたお陰で「お前たちなんかいつでも叩き伏せることができる!」と思えるようになってきたからなのか? それとも、練習を続けていくことで、どんどん強くなっていく自分が楽しかったからなのか? とにかく、いじめている子たちの事なんか、眼中に無くなってきていたんだ。
「最近、笑うようになったじゃん!」女の子は、いつもと変わらぬ笑顔で、あたしにそう言ってきた。
 たしかに。鏡で見たら、その子ほどじゃないけど、キックを始める前まですっかり潜んでいたあたしの笑顔が、そこにあった。その女の子のお陰で、あたしは笑顔を取り戻せたんだ! 今でも彼女には感謝している。
 その女の子の名前は、堀口琴音(ほりぐちことね)。私立晶華女子商業高校に通う、あたしの二つ上の尊敬する女の子だ!

「本当なんですか、琴音先輩が未確認生物に食い殺されたっていうのは!?」
 あれから約一年後。高校入試を控えたあたしに、とんでもない事実が飛び込んできた!
「うん、あたしの目の前でアイスクリームにされて、ペロリと食べられちゃった……」
 そう話してくれたのは琴音先輩の親友で、ツインテールにまとめ上げた赤く染めた髪。小柄で童顔。一見、妹系と言われている咲沢彩音(さきざわあやね)さん。
 二か月近く前、琴音先輩と彩音先輩は下校中に未確認生物に襲われたらしい。辛うじて彩音先輩だけは、噂の特殊機動警官ターディグラダ・ガールに救われたとのこと。

ターディグラダ・ガール 四話02

 でも、琴音先輩はもう二度と戻ってこない。あの笑顔を見ることができない。
「暗いトンネルの中のような生活を送っていたあたしに、光を与えてくれた琴音先輩。その先輩が未確認生物に食い殺されたなんて。許せない!世の中の未確認生物を絶対に許せない!」

 そして今、あたしは『丘福市立博物館』の前にいる。
 この博物館は、なんでも女子アナウンサーが未確認生物に殺されたという、あの大生堀公園から歩いて十数分の所にある。
 半年以上前の丘福大災害で建物が半壊状態となり、今では立入禁止区域となっているこの場所。でも、ここ最近怪しい人影や大型動物のような姿が目撃されていると、ネットで話題になっている。
「ねぇ、暁ちゃん。やっぱ……止めようよ。ここ、入っちゃいけない場所だよ。」
 そんな彩音先輩の言うことを、まるで聞こえていないような仕草をしながら、あたしは博物館のエントランスに足を踏み入れた。
 内部は電気も通っていない、当然真っ暗。ガラスが砕け散ったままになっている窓や、崩れて亀裂の入った壁の隙間から、僅かな光が差し込まれている。
「ねぇ、暁ちゃん。もし……ホントにここに未確認生物がいたら、どうするの? 琴音ちゃんだって、まるで手も足も出ないでやられちゃったんだよ。いくら暁ちゃんが強いっていっても、敵わないと思うよ」
 後ろから恐る恐る付いてきている彩音先輩の不安気な言葉。
 そんなことはわかっている。でも……。でも……、例え敵わなくても、一矢は報いたい。琴音先輩に誘ってもらったこのキックボクシングで、先輩の代わりに報いてやりたい!
 一階ホールを進んでいくと、正面に二階へ上がる大階段が目に入った。
 すると、その階段の上から、ギシッ!ギシッ!と何者かが降りてくるのか?階段の軋む音が聞こえてくる。そして……
「あら……あら~っ? どなたかいらっしゃったの~ぉ?」と間延びした女性の声が。
「実はこの博物館で、未確認生物が目撃されたと聞いて来たのですが……」
「未確認……生物? ああ、あの今…世間で騒がれている『アレ』ねぇ~っ!? アレは今~っ、ちょっと出かけているけどぉ、代わりにこんなのならいるわよ♪」
 こんな場所でえらくのんびりした人だな~。てか、ここ……立ち入り禁止区域なのに、なぜこの女性(ひと)は居るんだろう? アレが出かけている!? 代わりにこんなの……!?
 次々に浮かんでくる突っ込みのどれを返せばいいんだろう? そう考えていたその時、
「きゃあああっ!」
 後ろに付いていたはずの彩音先輩の悲鳴が聞こえた。
 振り返ると彩音先輩は、人でもなく……獣でもない。何かわからないけど、人間よりも少し大きめな物体に抱きかかえられていた。
 物体はその大きな手で、彩音先輩の体を四方八方から押し固めるように握りしめていく。
 ギュッ!ギュッ!「ふぎゃ…ふぎゃ……」ギュッ!ギュッ!「ふぎゃ…ふぎゃ……」
 握りしめる音と彩音先輩の短い悲鳴の不思議なハーモニー。
 数分後、あたしの目の前には、クルクルと目を回し、綺麗な三角形の形に押しつぶされた、元…彩音先輩の『おにぎり』がそこにあった。

ターディグラダ・ガール 四話03



「西東くん、中田くん。手が空いたら、少し僕に付き合ってくれないか?」
 ここは神田川県警本部、警備部警備課未確認生物対策係、通称CCSの対策室。
 一通りの書類を書き終え、係長である和(かのう)警部補は、壁際に設置されたデスクで作業する若い男女に声を掛けた。
 その二人は約一月前にCCSに配属された、西東瀾巡査と中田素子巡査である。
「はぁ……」
 気の乗らない声でそう反応したのは、ややワイルドな雰囲気を持つ、瀾こと西東巡査。瀾は不愉快そうな表情のまま隣の席に座っている小柄な女性、中田素子巡査をチラリと睨みつけた。
「付き合うのはいいんスけど、そこの『チビお嬢様』も一緒じゃなくちゃいけねぇーんスかぁ?」
「チビお嬢様……。小学中学でよく言われたけど、改めて『元ヤン』とかいう社会のクズに言われると、怒りを通り越して呆れてくる……」
 そう毒気を吐きながら返してきたのは、スーこと中田素子巡査。
「相変わらず、日本全国の元ヤンを敵に廻す気マンマンだな。あ…!? チビお嬢様……?」
「誤解の無いように言っておく。ボクの敵は『元ヤン』だけでなく、『現役ヤンキー』も入っているから。因みに、ヤンキーとか不良とか、全部死ねばいいと思っている。」
 何故か、目が合うと一触即発なこの二人。
 和は疲れ切った表情で頭を掻きながら、「まぁ、そんなにいがみ合わずに。今後の任務において、見ておいてもらいたいものがあるだけなんだ。」と、窘めるように付け加えた。
「うぃ!係長を困らせる気はねぇース。了解ッス、すぐお供します。」
「ボクも任務が大事なんで、とりあえず従います。」
 そう言って二人は、渋々ながらも席を立ち上がった。

 和が最初に二人を連れてきたのは、署内にある拳銃保管金庫。
 日本の警察では、拳銃など銃器の使用が必要な事件、事故以外では、銃器は所持できない。一部例外として特別な任務の一部刑事や、駐在所等に勤務する警官は、勤務時間内所持ということはあるが。
 したがってCCSで勤務している者も、基本的に現場出動時以外では、銃器は保管することが義務付けられている。
 和は銃器取り出し手続きを終えると、保管庫から一丁の長い銃器を取り出した。
「豊和M1500。知ってはいると思うけど、本来……猟銃として開発された物で、その性能の良さから日本の警察では狙撃用としても使われるんだ。今回警備部長にお願いして、中田くん用に手配をしてもらった。もちろん、対未確認生物撃退用としてだ。ちなみに弾丸は.300WinMag(300ウィンチェスターマグナム)を使用する。」
 素子は和からライフル銃を受け取ると、適当に構えて感触を確かめてみる。
「銃に詳しい中田くんならわかっていると思うが、その手のライフル銃はボルトアクション式だ。だから命中精度は高いが、アサルトライフルみたいに連射はできない。したがって、仕留められなかった場合、反撃をくらう可能性がある。」
 和の説明に、素子は無言で頷く。
「対策として、遠距離からの狙撃のみで使用するか? もう一つは……。それは、後ほど話そう」
 和はそう言って説明を一旦区切ると、保管庫へM1500を収納した。そのまま保管庫の鍵を閉めるのを見て、瀾が眉をひそめて声をかける。
「アレ、係長。俺には新しい銃の支給とか……無いんッスか?」
 その問いに対し和は軽く微笑むと、「西東くんには銃ではなく、別に支給されているものがある。こっちだ!」そう言って保管庫を後にした。
 和が案内したのは、本部地下にある任務車両用駐車場。
 その一角にTG01が愛用する災害対策用白バイXT250P-Sや対策車両を停めてあるCCS専用ゾーンがある。出動の度に使用しているので、欄も素子も当然知っている。
「これが西東君に支給されたものだ!」
 和がそう言って見せたものは、交通部交通機動隊で使っていたものと同型の新型白バイ。
「おおっ!FJR1300APじゃないッスか~っ!」

ターディグラダ・ガール 四話04

 欄はそう叫びながら、まるで玩具を見つけた子どものように駆け寄り、嬉しそうにペタペタと触りまくる。
 すると「アレっ? これ……何ッスか~ぁ!?」と運転シートの後部に手を当てて問いかけた。
 通常、交通部で使用している白バイの後部は、反則切符や書類等が入れられているケースが取り付けられている。だが、この白バイの後部は二人乗り用シート。と言っても、ノーマルの二人用ではなく、背もたれも付いた本格的なタンデムシートである。
「な…何っスか、これっ!? ケツに誰か乗っけて、ツーリングでもしろ!……つぅんスかぁ~っ!?(笑)」
「ツーリング…ではないけど、キミの言うとおり二人一組で乗ってもらうことを前提としている。」
「二人乗り前提って、そんな白バイ……最近見たことも聞いたこともないッスよ!?」
「それはこの白バイが追跡や交通取締り用ではなく、未確認生物や改造生物との戦闘用に改造されたものだからだ。」
「戦闘……用?」
「そう。一人が運転をし、もう一人が後部シートから射撃をする。つまり走行攻撃を想定した、戦闘用オートバイというわけだ。」
「何ッスか? その戦車みたいな発想は……?」
「戦車よりも機動力があるぞ」
「当たり前っしょ!戦車よりトロかったら、バイクの意味無いじゃないっスか!?」
 先程までとは打って変わって、まるで苦虫を1ダースほど噛み締めたような表情の欄。
更に大きく溜息をついて……「で、その後部座席には誰が乗るんです? まさか……」と尋ねる。
「うん、中田くんに乗ってもらうつもりだ。」
 清々しいほどの笑顔で、和は明るくそう答えた。
 ―やっぱりか……―
 欄も、そして傍で話しを聞いていた素子も、ウンザリした顔で和を睨みつけた。
「先日植物園で、中央署の警官隊が敵わなかった未確認生物に、キミたち二人が協力しあって撃退している。これによってキミたち二人が協力し合えば、TG01にも負けない働きをしてくれると僕は確信したんだ。それを活かすために先程のライフルも、この白バイも部長にお願いしたんだ。」
「じゃあ、さっき係長が言っていた、ライフルを使うボクが反撃されない……もう一つの対策って!?」
「そう。これに乗ることで、攻撃して即離脱。ボクシングで言う、ヒットアンドウェイになるだろう!」
―なんで俺がこんな『チビお嬢様』の、お抱え運転手にならなきゃいけねぇーんだ?―
―なんでボクが、こんな『ヤンキー』とニケツをしなきゃいけないの……?―
 口には出さないが、そんな思いが顔から読み取れるくらい、ゲンナリした表情の二人。その二人の気持ちに気づいているのか、いないのか?
 和がトドメの一言を放った。
「これから週に二~三回は、二人の共同訓練を行う。一日も早く、『二人の息をピッタリ合わせてくれ!』」

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ターディグラダ・ガール 第四話「パーピーヤスの野望 二章」

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ターディグラダ・ガール 第四話「パーピーヤスの野望 三章」

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ターディグラダ・ガール 第四話「パーピーヤスの野望 四章」

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ターディグラダ・ガール 第四話「パーピーヤスの野望 五章」

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ターディグラダ・ガール 第四話「パーピーヤスの野望 六章」

「ボンベーガールは倒された。諦めて投降しろ……茶和麗華」
 そう問いかける瑞鳥川を尻目に、レイカは釈然としない表情で、倒れているボンベーガールを見つめていた。そして
「なるほどぉ~っ。服の性能は殆ど互角以上だったのに、この結果。単純に着用者の戦闘レベルの差ってことね? やっぱ、ベースとなる素材の選出は、結構大事~ってことなのねぇ~っ! 参考になったから、これはこれで良しとしときましょ♪」
 まるで懲りていない口調で、自身を納得させていた。
「聞いているんですか!? おとなしく投降して下さいと言っているんです!」
 和も銃を突きつけ、厳しく問い質す。
 レイカはそんな二人に、やっと気づいたかのように振り返ると、
「投降!? 冗談~っ♪ アタシ、帰って色々調べたい事も、やりたい事もあるので無理よぉー!」と、眩しい笑顔で返した。
「冗談ではありません。貴方が過去犯した事から今回のことまで。尋ねたいことは山ほどあるんです。もし、抵抗するのならば……」
 和はそう言うと、手にした拳銃を更に突きつける。
「逆らったら撃つっていうのぉ? 大人しそうな顔しているのにぃ、結構大胆なことを言うのねぇ~! でも、アタシ……言うこと聞く気ないから!だから、撃ってもいいわよぉ~っ♪」
 レイカはそう言って、やれるものならやってみろと言わんばかりに、一歩前へ出た。
「本当に冗談ではありませんよ!?」
「だ・か・ら~ぁ、撃っていいわよぉ! アタシ、前……お手伝いしていた錬金術師に、『賢者の石の欠片』とか言うのを体内に入れられて、半不老不死になっているのぉ。だから、拳銃で撃たれたくらいじゃ死なないのよねぇ~っ♪」
「賢者の石……? 半不老不死……!?」
 和には、言っている意味がさっぱりわからない。
「論より証拠!見せてあげるわねぇ~! グーラ、貴女の左腕でアタシの事、撃っちゃってぇ~♪」
 レイカはそう言って、後方で呆然としているグーラに命令した。それに対しグーラは首を振ると、
「ワ、ワッチの左腕は先程白い戦士にやられて、砕けてしまっているので……」と言い返した。
「はん!?」レイカの冷ややかな目がグーラを突き刺す。
「貴女の左腕は、自己修復型のナノマシンを備えているのぉ。だから、もうそろそろ元のように使えるはずよぉ!」
 レイカの言う通り、粉砕したはずのグーラの左腕は、いつの間にかほぼ元通りの形に戻っていた。
 それを知ると、グーラは左腕を銃の形に変え、レイカの側頭部に銃口を当てる。
「あ! 顔はダメ!こう見えてもれっきとした女の子だからぁ~、ボディーにして!ボディーに!!」
 なんか、古いヤンキー映画のようなことを言うレイカ。もしかしたら、少しウケを狙っているのかも知れないが、この雰囲気では誰一人、笑える者などいやしない。
 そんなことは置いておいて、改めて銃口をレイカの心臓に向けたグーラ。
「撃ちなさい!」
 レイカの一言で、バンッ!!と銃声が鳴り響く。
 またたく間に、レイカのアイボリー色のニットが、赤い血に染まっていく。
 それを見ていた和も瑞鳥川も。そして駆けつけた明日香も。誰も声も出ず、立ち竦んでいた。
 しかし……
「あぁ~ん、しまったぁぁぁっ!! このニット、結構お気に入りだったのにぃ、勿体無い事しちゃったぁ~っ!」と、当のレイカは何食わぬ顔。
 そして、「わかってもらえた!? ちょっとだけ痛みがあるのが難点だけど、でも死にはしないのよねぇ~♪」と笑い飛ばしている。
「…と言うわけでぇ~、脅し程度では投降なんかしないからぁ~♪ それじゃ、アタシ……そろそろ帰るわねぇ~っ。」
 そう言いながら、まるで何事もないように背をむけるレイカ。
「だ、だったら……、力尽くで拘束します!」
 明日香はレイカを逃すまいと、慌てて彼女の肩を掴んだ。
 当然のことながら、ターディグラダ・ガールとなっている明日香は、握力も通常の数倍以上になっている。
 そんな明日香に肩を掴まれているにも拘らず、何事もないように平然とした顔で振り返るレイカ。
「軽々しくアタシに触れないでよ!」
 そう言って、右手で明日香の胸に軽く触れた。
 すると、今まで見たことのないような黒い靄が、レイカの右手に纏わりつくように集まった。そして……
バァァァァン!! 
 まるで爆発音のような大きな音が鳴り響き、同時に明日香が十数メートルほど吹き飛んでいく。それはまるで、至近距離から強力な大砲で撃たれたような。
「た、橘ちゃん!?」
 大好きな明日香が吹き飛ばされ、いつものクールさの欠片も消し飛んだように、瑞鳥川は血相を変えて明日香の元へ駆けていった。
 大地に叩きつけられた明日香は、そのままピクリとも動かない。駆け寄った瑞鳥川は、明日香のヘルメットを外し、息を確認する。
 瑞鳥川の見立てでは、明日香は気絶しているものの、命に別状はなさそうであった。
「なんなんだ……今のはいったい!?」
 強化された明日香を、見たこともない技一発で戦闘不能にする。もはやレイカに対して、未確認生物以上に脅威を感じてしまった和。その表情から伺えるように、銃を手にした腕もダラリと下げ、完全に戦意を喪失してしまっている。
「あらあら~、なんか腑抜けたような顔してるわよぉ~! ひょっとして、ビビっちゃったかしらぁ~?」
「い……一体キミは何者なんだ? に、人間なのか……? 何のために、未確認生物を使って……こんなことをしているんだ?」
 顔面蒼白の和。彼の今の心境では、これを聞くのが精一杯だ。
「ん~~っ! アタシ自身の事はさておいて、アタシ達パーピーヤスの目的は……」
 レイカはここで一旦区切り、全身を使ったゼスチャーをしながら続きを語りだした!
「神族の国……天界! 魔族が支配する……魔界! 死者の国……冥界! 精霊や妖怪、そして人間が暮らす……地上界! これらを統合し支配する! それがパーピーヤスの目的。そしてアタシは、その統合された世界の王……『No,1』になるのぉ~っ♪」
「魔界や天界……地上を統合、支配……!?」
 この子はいったい何を言っているのか? よく言われる『厨二病』とか『痛い子』なのか? だが、現実に未確認生物は存在しているし、中田くんは風船のようになってしまった。そして、明日香くんを吹き飛ばした力はなんだ? もしかしたら、天界とか魔界とか、本当は存在しているのか?
「キミの言うことを信じるとして、仮に地上を支配したとき、人々をどうするつもりなんだ?」
 そう問い返す和に対し、レイカは「え?そんなことも解らないの!?」といった表情をすると……
「そんなの簡単よぉ~っ。人間だろうと何だろうと強ければ生き残り、弱ければ死ぬ。それだけよぉ~っ♪」
「簡単なワケないだろう!? キミは人の命をなんだと思っているんだ?」
「人間の命? そんなもの……お前たちの言葉で言えば、食物連鎖の一角にすぎん。」
 突然、それまでのレイカとは口調の声質もまるっきり別人と思える言葉が返ってきた。
「本来世界の全ては、強者がピラミッドの上位に君臨し、弱者は糧として下位にいるよう構成されているものだ」
 和の目から見て、それはどう見てもレイカの口から発せられている声である。しかし、女性っぽい声質ではあるものの、やはり別人としか思えない。そしてその別人のような声は、更に言葉を続ける。
「だが、地上界における人間。そして天界に住む一部の神族は、その構成を認めようとしない。いや、人間の中にはそれを当たり前と思っている者もいるのはいるようだが。だから余は、全ての世界を統一し、その世界の全てを食物連鎖のピラミッドで構築し直そうと考えている。」
「そ……そんなこと、許されるはずが……」
「フッ! 気に入らぬなら、いくらでも歯向かってくるがよい。お前たちが余の野望を封じることができれば、今の世の中を維持できるであろう。もっともそれは、お前たちが強者となっての権利であり、それは余の唱える食物連鎖のピラミッドと、結局同じことだがな!」
 レイカ……いや、声の主はそう言って「クククッ!」と笑う。
「さ、最後にもう一度だけ尋ねさせろ。お、お前はいったい何者なんだ!?」
 振り絞るような声で、再び問いかける和。
「余か……? 余は……」そこまで言うと、Vサインを掲げ大袈裟なポーズを取り、「麗華、茶和麗華でぇ~ス!!」とおどけてみせた。
「ま……また、声が変わった……?」
「まぁ、アタシがぁ~、どこの誰だって構わないじゃな~い? どうせ、一年もしないうちに、全界の女王として君臨するんだから! そうなれば、嫌でもアタシの事はわかるわよぉ~っ♪」
 レイカはそう言って踵を返すと、「じゃあ、そういうことでぇ! また遊んであげるねぇ~♪」と、その場を後にした。
 そして、大通りに出てタクシーを拾うと、何処かへと去っていってしまった。
 それは、どう見たって極普通の若い女性の行動であり、誰が見ても全界を支配しようなんて企んでいる者には見えやしない。
 残された和は、ただ……ただ……呆然と、見ているだけだった。
 ちなみに、気を抜くと存在を忘れかけそうになるグーラだが、しばらくどう動いていいのやら悩んでいたが、とりあえずレイカの後を追うように去っていった。


 今回、未確認生物や改造生物を影で操っていたのがパーピーヤスという組織であるということがわかった。
 そしてその組織の目的、更にその組織を率いているマスターと呼ばれる人物が、茶和麗華という女性であることもわかった。

 だがそのレイカは、計り知れないほどの謎を秘めた人物であった。
 数々のロボット製作や改造技術を行える天才的な頭脳。未確認生物を操り、TG01を一撃で吹き飛ばす程の謎の力も秘めている。
 そして、別人とも思われるもう一つの謎の人格。
 それは、和が今まで経験したことのない世界観のものである。

 また、配属されて間もない藤本、西東、中田が形状変化させられ戦闘不能。

 大生堀公園に現れた敵は結果的には排除したものの、和の心の中には大きな『惨敗感』で埋め尽くされていた。

                           
 つづく

| ターディグラダ・ガール | 17:40 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ターディグラダ・ガール第四話  あとがき

改めて、こんにちわ。

そして、第四話を最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
(このあとがきは、第四話を全て読まれたという前提で書いております)

今回の話はかなり長くなっており、内容的には二話分の構成になっていたと思います。
ですので、本来ならば二話に分けて作るべきなのでしょうが、やはりこの辺がまだまだ未熟。二話に分けようとすると、物語の展開や状態変化等のバランスが取れなくなるため、一話にまとめてしまうしかありませんでした。

そこで長すぎる話をそれっぽく納得していただくため、『後付け』で『10周年記念』だの『100万ヒット記念』だのという口実を付けたというわけです(笑)

でも、今回の話……特に後半は、私がこの『ターディグラダ・ガール』という作品を書くにあたって、もっとも書きたかった部分でもありました。
だから、レイカの登場は本当ならもっと引っ張るべきなのですが、フライングしてしまったというわけです。
でも、それだけに、本文でも、イラストでも、久しぶりに書くレイカは楽しかったですね!

あともう一人、懐かしいキャラが登場していたのですが、お気づきになられたでしょうか?
もしお気づきにならなくても大丈夫。作者の私ですら顔立ちとかうろ覚えで、再デザインするのにちょっと手こずった程のキャラですから(笑)

次回の話は、まだ全然書いておりません。(妄想はしているけど)
ですが、次回も出来る限り……10周年記念&100万ヒット記念の口実に、相応しい雰囲気を作っていこうと考えております。

また、次回もよろしくお願いいたします。m(_ _)m

============================

最近……他の創作活動主様に、色々関連作品を作って頂いたので、勝手ながら宣伝活動をさせていただきます。
皆様、ありがとうございます!m(_ _)m



「蝕欲」 この一言、かなり気に入っております。いずれ作中で使いたい!


「ターディグラダ・ガール外伝(?)」/「MT」の小説 [pixiv]

ターディグラダ・ガールで、たった一度の登場でお亡くなりになったキャラを使って、「もしも……」の物語を作って下さいました!




うちのあるキャラが、バレンタイン用の平面化チョコになってしまいました。
キャラの選択、変化の状況。まったくもって、ど真ん中ストレートでした!ヽ(`▽´)/


では、また次回。もしくは近況報告等にて!

| あとがき | 17:34 | comments:40 | trackbacks:0 | TOP↑

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