2017.02.18 Sat
ターディグラダ・ガール 第四話「パーピーヤスの野望 六章」
「ボンベーガールは倒された。諦めて投降しろ……茶和麗華」
そう問いかける瑞鳥川を尻目に、レイカは釈然としない表情で、倒れているボンベーガールを見つめていた。そして
「なるほどぉ~っ。服の性能は殆ど互角以上だったのに、この結果。単純に着用者の戦闘レベルの差ってことね? やっぱ、ベースとなる素材の選出は、結構大事~ってことなのねぇ~っ! 参考になったから、これはこれで良しとしときましょ♪」
まるで懲りていない口調で、自身を納得させていた。
「聞いているんですか!? おとなしく投降して下さいと言っているんです!」
和も銃を突きつけ、厳しく問い質す。
レイカはそんな二人に、やっと気づいたかのように振り返ると、
「投降!? 冗談~っ♪ アタシ、帰って色々調べたい事も、やりたい事もあるので無理よぉー!」と、眩しい笑顔で返した。
「冗談ではありません。貴方が過去犯した事から今回のことまで。尋ねたいことは山ほどあるんです。もし、抵抗するのならば……」
和はそう言うと、手にした拳銃を更に突きつける。
「逆らったら撃つっていうのぉ? 大人しそうな顔しているのにぃ、結構大胆なことを言うのねぇ~! でも、アタシ……言うこと聞く気ないから!だから、撃ってもいいわよぉ~っ♪」
レイカはそう言って、やれるものならやってみろと言わんばかりに、一歩前へ出た。
「本当に冗談ではありませんよ!?」
「だ・か・ら~ぁ、撃っていいわよぉ! アタシ、前……お手伝いしていた錬金術師に、『賢者の石の欠片』とか言うのを体内に入れられて、半不老不死になっているのぉ。だから、拳銃で撃たれたくらいじゃ死なないのよねぇ~っ♪」
「賢者の石……? 半不老不死……!?」
和には、言っている意味がさっぱりわからない。
「論より証拠!見せてあげるわねぇ~! グーラ、貴女の左腕でアタシの事、撃っちゃってぇ~♪」
レイカはそう言って、後方で呆然としているグーラに命令した。それに対しグーラは首を振ると、
「ワ、ワッチの左腕は先程白い戦士にやられて、砕けてしまっているので……」と言い返した。
「はん!?」レイカの冷ややかな目がグーラを突き刺す。
「貴女の左腕は、自己修復型のナノマシンを備えているのぉ。だから、もうそろそろ元のように使えるはずよぉ!」
レイカの言う通り、粉砕したはずのグーラの左腕は、いつの間にかほぼ元通りの形に戻っていた。
それを知ると、グーラは左腕を銃の形に変え、レイカの側頭部に銃口を当てる。
「あ! 顔はダメ!こう見えてもれっきとした女の子だからぁ~、ボディーにして!ボディーに!!」
なんか、古いヤンキー映画のようなことを言うレイカ。もしかしたら、少しウケを狙っているのかも知れないが、この雰囲気では誰一人、笑える者などいやしない。
そんなことは置いておいて、改めて銃口をレイカの心臓に向けたグーラ。
「撃ちなさい!」
レイカの一言で、バンッ!!と銃声が鳴り響く。
またたく間に、レイカのアイボリー色のニットが、赤い血に染まっていく。
それを見ていた和も瑞鳥川も。そして駆けつけた明日香も。誰も声も出ず、立ち竦んでいた。
しかし……
「あぁ~ん、しまったぁぁぁっ!! このニット、結構お気に入りだったのにぃ、勿体無い事しちゃったぁ~っ!」と、当のレイカは何食わぬ顔。
そして、「わかってもらえた!? ちょっとだけ痛みがあるのが難点だけど、でも死にはしないのよねぇ~♪」と笑い飛ばしている。
「…と言うわけでぇ~、脅し程度では投降なんかしないからぁ~♪ それじゃ、アタシ……そろそろ帰るわねぇ~っ。」
そう言いながら、まるで何事もないように背をむけるレイカ。
「だ、だったら……、力尽くで拘束します!」
明日香はレイカを逃すまいと、慌てて彼女の肩を掴んだ。
当然のことながら、ターディグラダ・ガールとなっている明日香は、握力も通常の数倍以上になっている。
そんな明日香に肩を掴まれているにも拘らず、何事もないように平然とした顔で振り返るレイカ。
「軽々しくアタシに触れないでよ!」
そう言って、右手で明日香の胸に軽く触れた。
すると、今まで見たことのないような黒い靄が、レイカの右手に纏わりつくように集まった。そして……
バァァァァン!!
まるで爆発音のような大きな音が鳴り響き、同時に明日香が十数メートルほど吹き飛んでいく。それはまるで、至近距離から強力な大砲で撃たれたような。
「た、橘ちゃん!?」
大好きな明日香が吹き飛ばされ、いつものクールさの欠片も消し飛んだように、瑞鳥川は血相を変えて明日香の元へ駆けていった。
大地に叩きつけられた明日香は、そのままピクリとも動かない。駆け寄った瑞鳥川は、明日香のヘルメットを外し、息を確認する。
瑞鳥川の見立てでは、明日香は気絶しているものの、命に別状はなさそうであった。
「なんなんだ……今のはいったい!?」
強化された明日香を、見たこともない技一発で戦闘不能にする。もはやレイカに対して、未確認生物以上に脅威を感じてしまった和。その表情から伺えるように、銃を手にした腕もダラリと下げ、完全に戦意を喪失してしまっている。
「あらあら~、なんか腑抜けたような顔してるわよぉ~! ひょっとして、ビビっちゃったかしらぁ~?」
「い……一体キミは何者なんだ? に、人間なのか……? 何のために、未確認生物を使って……こんなことをしているんだ?」
顔面蒼白の和。彼の今の心境では、これを聞くのが精一杯だ。
「ん~~っ! アタシ自身の事はさておいて、アタシ達パーピーヤスの目的は……」
レイカはここで一旦区切り、全身を使ったゼスチャーをしながら続きを語りだした!
「神族の国……天界! 魔族が支配する……魔界! 死者の国……冥界! 精霊や妖怪、そして人間が暮らす……地上界! これらを統合し支配する! それがパーピーヤスの目的。そしてアタシは、その統合された世界の王……『No,1』になるのぉ~っ♪」
「魔界や天界……地上を統合、支配……!?」
この子はいったい何を言っているのか? よく言われる『厨二病』とか『痛い子』なのか? だが、現実に未確認生物は存在しているし、中田くんは風船のようになってしまった。そして、明日香くんを吹き飛ばした力はなんだ? もしかしたら、天界とか魔界とか、本当は存在しているのか?
「キミの言うことを信じるとして、仮に地上を支配したとき、人々をどうするつもりなんだ?」
そう問い返す和に対し、レイカは「え?そんなことも解らないの!?」といった表情をすると……
「そんなの簡単よぉ~っ。人間だろうと何だろうと強ければ生き残り、弱ければ死ぬ。それだけよぉ~っ♪」
「簡単なワケないだろう!? キミは人の命をなんだと思っているんだ?」
「人間の命? そんなもの……お前たちの言葉で言えば、食物連鎖の一角にすぎん。」
突然、それまでのレイカとは口調の声質もまるっきり別人と思える言葉が返ってきた。
「本来世界の全ては、強者がピラミッドの上位に君臨し、弱者は糧として下位にいるよう構成されているものだ」
和の目から見て、それはどう見てもレイカの口から発せられている声である。しかし、女性っぽい声質ではあるものの、やはり別人としか思えない。そしてその別人のような声は、更に言葉を続ける。
「だが、地上界における人間。そして天界に住む一部の神族は、その構成を認めようとしない。いや、人間の中にはそれを当たり前と思っている者もいるのはいるようだが。だから余は、全ての世界を統一し、その世界の全てを食物連鎖のピラミッドで構築し直そうと考えている。」
「そ……そんなこと、許されるはずが……」
「フッ! 気に入らぬなら、いくらでも歯向かってくるがよい。お前たちが余の野望を封じることができれば、今の世の中を維持できるであろう。もっともそれは、お前たちが強者となっての権利であり、それは余の唱える食物連鎖のピラミッドと、結局同じことだがな!」
レイカ……いや、声の主はそう言って「クククッ!」と笑う。
「さ、最後にもう一度だけ尋ねさせろ。お、お前はいったい何者なんだ!?」
振り絞るような声で、再び問いかける和。
「余か……? 余は……」そこまで言うと、Vサインを掲げ大袈裟なポーズを取り、「麗華、茶和麗華でぇ~ス!!」とおどけてみせた。
「ま……また、声が変わった……?」
「まぁ、アタシがぁ~、どこの誰だって構わないじゃな~い? どうせ、一年もしないうちに、全界の女王として君臨するんだから! そうなれば、嫌でもアタシの事はわかるわよぉ~っ♪」
レイカはそう言って踵を返すと、「じゃあ、そういうことでぇ! また遊んであげるねぇ~♪」と、その場を後にした。
そして、大通りに出てタクシーを拾うと、何処かへと去っていってしまった。
それは、どう見たって極普通の若い女性の行動であり、誰が見ても全界を支配しようなんて企んでいる者には見えやしない。
残された和は、ただ……ただ……呆然と、見ているだけだった。
ちなみに、気を抜くと存在を忘れかけそうになるグーラだが、しばらくどう動いていいのやら悩んでいたが、とりあえずレイカの後を追うように去っていった。
今回、未確認生物や改造生物を影で操っていたのがパーピーヤスという組織であるということがわかった。
そしてその組織の目的、更にその組織を率いているマスターと呼ばれる人物が、茶和麗華という女性であることもわかった。
だがそのレイカは、計り知れないほどの謎を秘めた人物であった。
数々のロボット製作や改造技術を行える天才的な頭脳。未確認生物を操り、TG01を一撃で吹き飛ばす程の謎の力も秘めている。
そして、別人とも思われるもう一つの謎の人格。
それは、和が今まで経験したことのない世界観のものである。
また、配属されて間もない藤本、西東、中田が形状変化させられ戦闘不能。
大生堀公園に現れた敵は結果的には排除したものの、和の心の中には大きな『惨敗感』で埋め尽くされていた。
つづく
そう問いかける瑞鳥川を尻目に、レイカは釈然としない表情で、倒れているボンベーガールを見つめていた。そして
「なるほどぉ~っ。服の性能は殆ど互角以上だったのに、この結果。単純に着用者の戦闘レベルの差ってことね? やっぱ、ベースとなる素材の選出は、結構大事~ってことなのねぇ~っ! 参考になったから、これはこれで良しとしときましょ♪」
まるで懲りていない口調で、自身を納得させていた。
「聞いているんですか!? おとなしく投降して下さいと言っているんです!」
和も銃を突きつけ、厳しく問い質す。
レイカはそんな二人に、やっと気づいたかのように振り返ると、
「投降!? 冗談~っ♪ アタシ、帰って色々調べたい事も、やりたい事もあるので無理よぉー!」と、眩しい笑顔で返した。
「冗談ではありません。貴方が過去犯した事から今回のことまで。尋ねたいことは山ほどあるんです。もし、抵抗するのならば……」
和はそう言うと、手にした拳銃を更に突きつける。
「逆らったら撃つっていうのぉ? 大人しそうな顔しているのにぃ、結構大胆なことを言うのねぇ~! でも、アタシ……言うこと聞く気ないから!だから、撃ってもいいわよぉ~っ♪」
レイカはそう言って、やれるものならやってみろと言わんばかりに、一歩前へ出た。
「本当に冗談ではありませんよ!?」
「だ・か・ら~ぁ、撃っていいわよぉ! アタシ、前……お手伝いしていた錬金術師に、『賢者の石の欠片』とか言うのを体内に入れられて、半不老不死になっているのぉ。だから、拳銃で撃たれたくらいじゃ死なないのよねぇ~っ♪」
「賢者の石……? 半不老不死……!?」
和には、言っている意味がさっぱりわからない。
「論より証拠!見せてあげるわねぇ~! グーラ、貴女の左腕でアタシの事、撃っちゃってぇ~♪」
レイカはそう言って、後方で呆然としているグーラに命令した。それに対しグーラは首を振ると、
「ワ、ワッチの左腕は先程白い戦士にやられて、砕けてしまっているので……」と言い返した。
「はん!?」レイカの冷ややかな目がグーラを突き刺す。
「貴女の左腕は、自己修復型のナノマシンを備えているのぉ。だから、もうそろそろ元のように使えるはずよぉ!」
レイカの言う通り、粉砕したはずのグーラの左腕は、いつの間にかほぼ元通りの形に戻っていた。
それを知ると、グーラは左腕を銃の形に変え、レイカの側頭部に銃口を当てる。
「あ! 顔はダメ!こう見えてもれっきとした女の子だからぁ~、ボディーにして!ボディーに!!」
なんか、古いヤンキー映画のようなことを言うレイカ。もしかしたら、少しウケを狙っているのかも知れないが、この雰囲気では誰一人、笑える者などいやしない。
そんなことは置いておいて、改めて銃口をレイカの心臓に向けたグーラ。
「撃ちなさい!」
レイカの一言で、バンッ!!と銃声が鳴り響く。
またたく間に、レイカのアイボリー色のニットが、赤い血に染まっていく。
それを見ていた和も瑞鳥川も。そして駆けつけた明日香も。誰も声も出ず、立ち竦んでいた。
しかし……
「あぁ~ん、しまったぁぁぁっ!! このニット、結構お気に入りだったのにぃ、勿体無い事しちゃったぁ~っ!」と、当のレイカは何食わぬ顔。
そして、「わかってもらえた!? ちょっとだけ痛みがあるのが難点だけど、でも死にはしないのよねぇ~♪」と笑い飛ばしている。
「…と言うわけでぇ~、脅し程度では投降なんかしないからぁ~♪ それじゃ、アタシ……そろそろ帰るわねぇ~っ。」
そう言いながら、まるで何事もないように背をむけるレイカ。
「だ、だったら……、力尽くで拘束します!」
明日香はレイカを逃すまいと、慌てて彼女の肩を掴んだ。
当然のことながら、ターディグラダ・ガールとなっている明日香は、握力も通常の数倍以上になっている。
そんな明日香に肩を掴まれているにも拘らず、何事もないように平然とした顔で振り返るレイカ。
「軽々しくアタシに触れないでよ!」
そう言って、右手で明日香の胸に軽く触れた。
すると、今まで見たことのないような黒い靄が、レイカの右手に纏わりつくように集まった。そして……
バァァァァン!!
まるで爆発音のような大きな音が鳴り響き、同時に明日香が十数メートルほど吹き飛んでいく。それはまるで、至近距離から強力な大砲で撃たれたような。
「た、橘ちゃん!?」
大好きな明日香が吹き飛ばされ、いつものクールさの欠片も消し飛んだように、瑞鳥川は血相を変えて明日香の元へ駆けていった。
大地に叩きつけられた明日香は、そのままピクリとも動かない。駆け寄った瑞鳥川は、明日香のヘルメットを外し、息を確認する。
瑞鳥川の見立てでは、明日香は気絶しているものの、命に別状はなさそうであった。
「なんなんだ……今のはいったい!?」
強化された明日香を、見たこともない技一発で戦闘不能にする。もはやレイカに対して、未確認生物以上に脅威を感じてしまった和。その表情から伺えるように、銃を手にした腕もダラリと下げ、完全に戦意を喪失してしまっている。
「あらあら~、なんか腑抜けたような顔してるわよぉ~! ひょっとして、ビビっちゃったかしらぁ~?」
「い……一体キミは何者なんだ? に、人間なのか……? 何のために、未確認生物を使って……こんなことをしているんだ?」
顔面蒼白の和。彼の今の心境では、これを聞くのが精一杯だ。
「ん~~っ! アタシ自身の事はさておいて、アタシ達パーピーヤスの目的は……」
レイカはここで一旦区切り、全身を使ったゼスチャーをしながら続きを語りだした!
「神族の国……天界! 魔族が支配する……魔界! 死者の国……冥界! 精霊や妖怪、そして人間が暮らす……地上界! これらを統合し支配する! それがパーピーヤスの目的。そしてアタシは、その統合された世界の王……『No,1』になるのぉ~っ♪」
「魔界や天界……地上を統合、支配……!?」
この子はいったい何を言っているのか? よく言われる『厨二病』とか『痛い子』なのか? だが、現実に未確認生物は存在しているし、中田くんは風船のようになってしまった。そして、明日香くんを吹き飛ばした力はなんだ? もしかしたら、天界とか魔界とか、本当は存在しているのか?
「キミの言うことを信じるとして、仮に地上を支配したとき、人々をどうするつもりなんだ?」
そう問い返す和に対し、レイカは「え?そんなことも解らないの!?」といった表情をすると……
「そんなの簡単よぉ~っ。人間だろうと何だろうと強ければ生き残り、弱ければ死ぬ。それだけよぉ~っ♪」
「簡単なワケないだろう!? キミは人の命をなんだと思っているんだ?」
「人間の命? そんなもの……お前たちの言葉で言えば、食物連鎖の一角にすぎん。」
突然、それまでのレイカとは口調の声質もまるっきり別人と思える言葉が返ってきた。
「本来世界の全ては、強者がピラミッドの上位に君臨し、弱者は糧として下位にいるよう構成されているものだ」
和の目から見て、それはどう見てもレイカの口から発せられている声である。しかし、女性っぽい声質ではあるものの、やはり別人としか思えない。そしてその別人のような声は、更に言葉を続ける。
「だが、地上界における人間。そして天界に住む一部の神族は、その構成を認めようとしない。いや、人間の中にはそれを当たり前と思っている者もいるのはいるようだが。だから余は、全ての世界を統一し、その世界の全てを食物連鎖のピラミッドで構築し直そうと考えている。」
「そ……そんなこと、許されるはずが……」
「フッ! 気に入らぬなら、いくらでも歯向かってくるがよい。お前たちが余の野望を封じることができれば、今の世の中を維持できるであろう。もっともそれは、お前たちが強者となっての権利であり、それは余の唱える食物連鎖のピラミッドと、結局同じことだがな!」
レイカ……いや、声の主はそう言って「クククッ!」と笑う。
「さ、最後にもう一度だけ尋ねさせろ。お、お前はいったい何者なんだ!?」
振り絞るような声で、再び問いかける和。
「余か……? 余は……」そこまで言うと、Vサインを掲げ大袈裟なポーズを取り、「麗華、茶和麗華でぇ~ス!!」とおどけてみせた。
「ま……また、声が変わった……?」
「まぁ、アタシがぁ~、どこの誰だって構わないじゃな~い? どうせ、一年もしないうちに、全界の女王として君臨するんだから! そうなれば、嫌でもアタシの事はわかるわよぉ~っ♪」
レイカはそう言って踵を返すと、「じゃあ、そういうことでぇ! また遊んであげるねぇ~♪」と、その場を後にした。
そして、大通りに出てタクシーを拾うと、何処かへと去っていってしまった。
それは、どう見たって極普通の若い女性の行動であり、誰が見ても全界を支配しようなんて企んでいる者には見えやしない。
残された和は、ただ……ただ……呆然と、見ているだけだった。
ちなみに、気を抜くと存在を忘れかけそうになるグーラだが、しばらくどう動いていいのやら悩んでいたが、とりあえずレイカの後を追うように去っていった。
今回、未確認生物や改造生物を影で操っていたのがパーピーヤスという組織であるということがわかった。
そしてその組織の目的、更にその組織を率いているマスターと呼ばれる人物が、茶和麗華という女性であることもわかった。
だがそのレイカは、計り知れないほどの謎を秘めた人物であった。
数々のロボット製作や改造技術を行える天才的な頭脳。未確認生物を操り、TG01を一撃で吹き飛ばす程の謎の力も秘めている。
そして、別人とも思われるもう一つの謎の人格。
それは、和が今まで経験したことのない世界観のものである。
また、配属されて間もない藤本、西東、中田が形状変化させられ戦闘不能。
大生堀公園に現れた敵は結果的には排除したものの、和の心の中には大きな『惨敗感』で埋め尽くされていた。
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