2015.11.24 Tue
妖魔狩人 若三毛凛 if 第18話「 妖木妃の目覚め -中編-」
「しんどい・・。霊体なのに、ここまでしんどいなんて・・・」
誰にも見えない霊体の姿で、柚子中学校校門までやってきた金鵄。
凛は、学校は午前中で終わると言っていた。
案の定、校舎からポツ・・ポツ・・と、生徒たちが姿を見せる。
そろそろ凛も出てくるはずだ。
校門の塀に止まり、凛が現れるのを待つ。
来たっ!!
凛に向って飛び寄ろうとした瞬間・・
「凛~っ! 待てっちゃ~っ!」
先に呼び止めた者がいた。
金鵄には見慣れたその姿。凛の同級生であり、妖魔狩人の仲間でもある・・、斎藤千佳。
だが、その右手は包帯でグルグルに巻いてあり、三角巾で吊るし上げている。
もう、二週間は経つだろう。
あの大きな戦いで、千佳の灼熱爪は粉々に砕け散ったのだ。
ただ、灼熱爪というのは、千佳の妖力を右手に集中させることで形成された物であり、それ自体は本物の肉体の一部では無い。
したがって、それが砕けたと言っても、生身の右手が砕け散ったわけではないのだ。
しかし、灼熱爪と繋がっていた神経は損傷しており、右手を動かすとかなりの痛みを伴うらしい。その痛々しい姿は、何度見ても悔やまれてならない。
もし千佳が、わたしと交友関係でなければ、こんなことにはならなかった。
ただでさえ、人との関わりが苦手な凛だが、更に追い打ちをかけるように、親友である千佳とも距離を置こうと考えていた。
「待てと言ってるっちゃよ~ぉ!」
足早に立ち去ろうとしている凛に対し、立ち塞がるように前へ出た千佳。
「なぁ、今日の凛・・なんかおかしいっちゃよ。なんか、あったん?」
「別に何もないけど・・・」
「嘘やん! 朝から、ごっつ気分が重そうやん。ウチの凛センサーが、ピッ!ピッ!ピッ!と反応しとるっちゃ!」
相変わらず、テンションが高いね・・千佳。
その高さで、何度気持ちが救われたことがあったか。でも・・・
「ホント、なんでもないよ。千佳こそ、今日も水無月さんの家で、妖力回復するんでしょ? のんびりしている暇は、無いんじゃない?」
「そうっちゃ! 妖力が回復すれば、右手の痛みもかなりとれるらしいし、戦いにも復帰できる! そうすれば、『ふたりは妖魔狩人!』第二シーズン・・『Max Heart』っちゃよ♪」
お前のテンションは、どこまで上がるんだ? そのまま大気圏を飛び出し、宇宙の果てまで飛んでいきそうな勢いだぞ!?
…と口には出さないが、これ以上はさすがについていけない。
「わ・・わかったから、早くいってらっしゃい・・!」
そう言う凛の縦筋の入った表情を見て、千佳は察したように苦笑すると
「んじゃっ! ちょっくら行ってくるっちゃ。また・・明日!」
と、走って校門を駆け出していった。
千佳の姿が見えなくなると、
「金鵄、いるんでしょ?」
凛は心の中で、声を掛けた。
その言葉に、霊体のまま近寄った金鵄。
「凛、気づいているだろう? この妖気・・」
「うん。だから、様子を見に行こうと思っている」
「だったら何故・・、千佳を帰したんだい? 味方は一人でもいたほうが・・・」
金鵄の言葉に、凛は静かに首を振った。
「妖力が回復していない今の千佳では、どう考えてもまともに戦えない。 そんな千佳を連れて行って、もし万が一の事があったら、わたしは一生後悔する」
「ならば、優里か・・もしく瀬織を呼ぶとか?」
「瀬織さんには連絡いれるけど、丘福市からだから、すぐには来れないと思う。優里お姉さんは、あと2~3日は退院できないみたい」
凛の良さは仲間を思いやる心。だが・・、時にはそれが災いし、彼女を不利な状況へ追い込むこともある。
「正直、僕はキミが一人で行くのは賛成できない。もし、ヤツが眠りから覚めていれば、間違いなくキミに勝ち目は無い」
「でも、妖木妃は人間を妖怪に変えるか、食料にしてしまうか? この国を、そんな世界に変えてしまうことが、目的でしょう。被害が出るまで、放っておくわけにはいかない!」
「わかった。とりあえず、様子を見に行くだけだ。少しでも危険だと感じたら、引き返すよ!?」
金鵄の真剣な眼差しに、凛は無言で頷いた。
一旦帰宅し、私服に着替えた凛は、柚子神社へ向って自転車を漕いだ。
近づけば近づく程、邪悪で重い妖気は伸し掛かってくる。
間違いない。ヤツは眠りから覚めている。
そう確信した、その時・・!
ガサササッ!!
突如、森の茂みから何者かが姿を現し、凛に飛びかかってきた!
「霊装っ!!」
自転車を飛び降り、戦闘服に身を包む。
「こいつらは、中国妖怪・・!?」
凛に飛びかかった二つの影。
一つは、ムッシュに負けない程の、2メートルを超す人型の巨体に牛の頭部。
もう一つは、そこまで巨体ではないが、スラリとした長身に馬の頭部。
それは地獄の番人と呼ばれる、牛頭(ごず)馬頭(めず)という二人組の妖怪。
そして、その二人の背後から姿を現した、もう一つの影。
緑色のイボイボの肌に、曲がった腰。齢百歳を超えていそうな老婆・・・。
そう、妖木妃幹部の一人、嫦娥であった。
「やはり来おったな、黒い妖魔狩人! じゃが、ここから先は一歩も行かせるわけにはいかんのじゃ!」
立ち塞がる嫦娥と、牛頭馬頭。
「牛頭馬頭・・・。噂で聞く限りでは、怪力を活かした攻撃をする牛頭。俊敏な動きで敵を惑わす馬頭。相当、息の合った攻撃をしてくるに違いない。凛が妖木妃以外で、初めて敗北を喫した相手、コンビ妖怪の手長足長。あの二人の妖怪と、ほとんど変わらない妖力を感じる・・!」
しかし、敵の妨害は予想はしていたが、まさか凛にとって、もっとも不利なタイプの相手が待ち構えているとは。
改めて、凛を一人でここへ来させたことを、後悔しはじめた金鵄。
そうともしているうちに、申し合わせたかのように、同時に突進してくる牛頭馬頭。
だが凛は少しも慌てた素振りを見せず、一本の霊光矢を放った。
それは途中まで一直線に飛び、敵の寸前で四方八方に分散すると、まるで投網を広げたような形に変化した。
「これは・・あのときの・・!?」
金鵄の記憶では、鶏の妖怪・・妖鶏に襲われ、卵化した人々を浄化するときに使った技。
もともと霊光矢は物理的な矢ではなく、凛の霊力が矢の形をしているだけ。そのため、霊力の形成次第では、形を変えることも可能であった。
そんな投網を避けるように、左右に分かれた牛頭馬頭。
しかし、それを予測していたかのように、次の霊光矢が牛頭目掛けて、放たれていた。
それを、必死で叩き落とす牛頭。
その間、馬頭は凛に飛びかかろうと体勢を立て直していたが、当の凛の姿が見当たらない。
なんと凛は、次の矢を数メートル離れた高い木の枝に突き刺し、そこから伸び繋がっている霊力の糸を手繰って、振り子の原理で一気に場所を移動していた。
そして、そのまま体勢を整え、馬頭を目掛けて更なる霊光矢を放つ。
自在に形を変えられる霊光矢を投網やロープ代わりに使い、一対複数の不利な戦闘を有利な展開へ運んでいる。
そう・・・、このトリッキーな戦い方は、『てんこぶ姫』の戦い方だ!!
金鵄はマニトウスワイヤーの一件で、凛と死闘とも呼べる戦いをした、蜘蛛妖怪・・てんこぶ姫を思い出した。
てんこぶ姫の戦闘力数値は決して高い方ではなく、むしろ妖怪化人間より少々・・上回っている程度だ。
だが、知恵と機転を活かしたその戦い方は、そんな数値では計り知れない力を見せ、凛やマニトウスワイヤーすら苦しめた。
凛は今、そんな『てんこぶ姫』のような戦い方をしている。
そうとは知らず、動きの読めない凛の攻撃に、今や防戦一方となった馬頭。
執拗に繰り出される攻撃をかわし続けていると、目の前に一本の樹木が倒れこんできた。
それは凛の攻撃によって起きたもの。しかし、今の馬頭にとってそんな原因より、樹木に押し潰されないように、身をかわすのが精一杯だ。
寸前で倒れこむ樹木から身をかわし、安堵の溜息をつく馬頭。その油断が、次に放たれていた矢を気づけなかった。
霊光矢は馬頭の足元で長い紐状に形を変えると、そのまま馬頭の足首を絡めとった。
その場にひっくり返り、身動きの取れない馬頭。
そんな馬頭を助けようと駆け寄った牛頭の背後にも、一本の霊光矢が。
その霊光矢はそのまま四散し、投網となって牛頭を頭から包み込んだ。
「嘘だろっ!?」
金鵄は、我が目を疑った。
いくら、てんこぶ姫のようなトリッキーな戦法を身につけたとしても、この牛頭と馬頭。
先程も言った通り、あの手長足長と変わらない戦闘力を持っているはずだ。それを、いとも簡単に取り押さえるとは・・・?
「牛頭っ!? 馬頭っ!?」
そう思ったのは、金鵄だけでは無い。
予想外の出来事に慌てた嫦娥。凛の前に飛び出し、クパッ!と大口を開けると、2メートルはあろうかと思われる長い舌を振り上げた。
それを鞭のように振り回し、凛に襲いかかる。
だが、凛はそんな攻撃をまるで風のようにかわし、一気に間合いを詰めると、霊光矢の矢尻を嫦娥の額に当てた。
王手!
為す術もなく呆然と立ち尽くす、嫦娥。
「お・・驚いたわい、儂の負けじゃ・・・。そのまま、その矢を射るがいい」
嫦娥は全てを諦めたように、そう呟いた。
弦を引く凛に腕に、力が入る。
① 凛は弓を下げ、戦いを終わらせた。
② 凛は、嫦娥に止めを刺そうとした。
誰にも見えない霊体の姿で、柚子中学校校門までやってきた金鵄。
凛は、学校は午前中で終わると言っていた。
案の定、校舎からポツ・・ポツ・・と、生徒たちが姿を見せる。
そろそろ凛も出てくるはずだ。
校門の塀に止まり、凛が現れるのを待つ。
来たっ!!
凛に向って飛び寄ろうとした瞬間・・
「凛~っ! 待てっちゃ~っ!」
先に呼び止めた者がいた。
金鵄には見慣れたその姿。凛の同級生であり、妖魔狩人の仲間でもある・・、斎藤千佳。
だが、その右手は包帯でグルグルに巻いてあり、三角巾で吊るし上げている。
もう、二週間は経つだろう。
あの大きな戦いで、千佳の灼熱爪は粉々に砕け散ったのだ。
ただ、灼熱爪というのは、千佳の妖力を右手に集中させることで形成された物であり、それ自体は本物の肉体の一部では無い。
したがって、それが砕けたと言っても、生身の右手が砕け散ったわけではないのだ。
しかし、灼熱爪と繋がっていた神経は損傷しており、右手を動かすとかなりの痛みを伴うらしい。その痛々しい姿は、何度見ても悔やまれてならない。
もし千佳が、わたしと交友関係でなければ、こんなことにはならなかった。
ただでさえ、人との関わりが苦手な凛だが、更に追い打ちをかけるように、親友である千佳とも距離を置こうと考えていた。
「待てと言ってるっちゃよ~ぉ!」
足早に立ち去ろうとしている凛に対し、立ち塞がるように前へ出た千佳。
「なぁ、今日の凛・・なんかおかしいっちゃよ。なんか、あったん?」
「別に何もないけど・・・」
「嘘やん! 朝から、ごっつ気分が重そうやん。ウチの凛センサーが、ピッ!ピッ!ピッ!と反応しとるっちゃ!」
相変わらず、テンションが高いね・・千佳。
その高さで、何度気持ちが救われたことがあったか。でも・・・
「ホント、なんでもないよ。千佳こそ、今日も水無月さんの家で、妖力回復するんでしょ? のんびりしている暇は、無いんじゃない?」
「そうっちゃ! 妖力が回復すれば、右手の痛みもかなりとれるらしいし、戦いにも復帰できる! そうすれば、『ふたりは妖魔狩人!』第二シーズン・・『Max Heart』っちゃよ♪」
お前のテンションは、どこまで上がるんだ? そのまま大気圏を飛び出し、宇宙の果てまで飛んでいきそうな勢いだぞ!?
…と口には出さないが、これ以上はさすがについていけない。
「わ・・わかったから、早くいってらっしゃい・・!」
そう言う凛の縦筋の入った表情を見て、千佳は察したように苦笑すると
「んじゃっ! ちょっくら行ってくるっちゃ。また・・明日!」
と、走って校門を駆け出していった。
千佳の姿が見えなくなると、
「金鵄、いるんでしょ?」
凛は心の中で、声を掛けた。
その言葉に、霊体のまま近寄った金鵄。
「凛、気づいているだろう? この妖気・・」
「うん。だから、様子を見に行こうと思っている」
「だったら何故・・、千佳を帰したんだい? 味方は一人でもいたほうが・・・」
金鵄の言葉に、凛は静かに首を振った。
「妖力が回復していない今の千佳では、どう考えてもまともに戦えない。 そんな千佳を連れて行って、もし万が一の事があったら、わたしは一生後悔する」
「ならば、優里か・・もしく瀬織を呼ぶとか?」
「瀬織さんには連絡いれるけど、丘福市からだから、すぐには来れないと思う。優里お姉さんは、あと2~3日は退院できないみたい」
凛の良さは仲間を思いやる心。だが・・、時にはそれが災いし、彼女を不利な状況へ追い込むこともある。
「正直、僕はキミが一人で行くのは賛成できない。もし、ヤツが眠りから覚めていれば、間違いなくキミに勝ち目は無い」
「でも、妖木妃は人間を妖怪に変えるか、食料にしてしまうか? この国を、そんな世界に変えてしまうことが、目的でしょう。被害が出るまで、放っておくわけにはいかない!」
「わかった。とりあえず、様子を見に行くだけだ。少しでも危険だと感じたら、引き返すよ!?」
金鵄の真剣な眼差しに、凛は無言で頷いた。
一旦帰宅し、私服に着替えた凛は、柚子神社へ向って自転車を漕いだ。
近づけば近づく程、邪悪で重い妖気は伸し掛かってくる。
間違いない。ヤツは眠りから覚めている。
そう確信した、その時・・!
ガサササッ!!
突如、森の茂みから何者かが姿を現し、凛に飛びかかってきた!
「霊装っ!!」
自転車を飛び降り、戦闘服に身を包む。
「こいつらは、中国妖怪・・!?」
凛に飛びかかった二つの影。
一つは、ムッシュに負けない程の、2メートルを超す人型の巨体に牛の頭部。
もう一つは、そこまで巨体ではないが、スラリとした長身に馬の頭部。
それは地獄の番人と呼ばれる、牛頭(ごず)馬頭(めず)という二人組の妖怪。
そして、その二人の背後から姿を現した、もう一つの影。
緑色のイボイボの肌に、曲がった腰。齢百歳を超えていそうな老婆・・・。
そう、妖木妃幹部の一人、嫦娥であった。
「やはり来おったな、黒い妖魔狩人! じゃが、ここから先は一歩も行かせるわけにはいかんのじゃ!」
立ち塞がる嫦娥と、牛頭馬頭。
「牛頭馬頭・・・。噂で聞く限りでは、怪力を活かした攻撃をする牛頭。俊敏な動きで敵を惑わす馬頭。相当、息の合った攻撃をしてくるに違いない。凛が妖木妃以外で、初めて敗北を喫した相手、コンビ妖怪の手長足長。あの二人の妖怪と、ほとんど変わらない妖力を感じる・・!」
しかし、敵の妨害は予想はしていたが、まさか凛にとって、もっとも不利なタイプの相手が待ち構えているとは。
改めて、凛を一人でここへ来させたことを、後悔しはじめた金鵄。
そうともしているうちに、申し合わせたかのように、同時に突進してくる牛頭馬頭。
だが凛は少しも慌てた素振りを見せず、一本の霊光矢を放った。
それは途中まで一直線に飛び、敵の寸前で四方八方に分散すると、まるで投網を広げたような形に変化した。
「これは・・あのときの・・!?」
金鵄の記憶では、鶏の妖怪・・妖鶏に襲われ、卵化した人々を浄化するときに使った技。
もともと霊光矢は物理的な矢ではなく、凛の霊力が矢の形をしているだけ。そのため、霊力の形成次第では、形を変えることも可能であった。
そんな投網を避けるように、左右に分かれた牛頭馬頭。
しかし、それを予測していたかのように、次の霊光矢が牛頭目掛けて、放たれていた。
それを、必死で叩き落とす牛頭。
その間、馬頭は凛に飛びかかろうと体勢を立て直していたが、当の凛の姿が見当たらない。
なんと凛は、次の矢を数メートル離れた高い木の枝に突き刺し、そこから伸び繋がっている霊力の糸を手繰って、振り子の原理で一気に場所を移動していた。
そして、そのまま体勢を整え、馬頭を目掛けて更なる霊光矢を放つ。
自在に形を変えられる霊光矢を投網やロープ代わりに使い、一対複数の不利な戦闘を有利な展開へ運んでいる。
そう・・・、このトリッキーな戦い方は、『てんこぶ姫』の戦い方だ!!
金鵄はマニトウスワイヤーの一件で、凛と死闘とも呼べる戦いをした、蜘蛛妖怪・・てんこぶ姫を思い出した。
てんこぶ姫の戦闘力数値は決して高い方ではなく、むしろ妖怪化人間より少々・・上回っている程度だ。
だが、知恵と機転を活かしたその戦い方は、そんな数値では計り知れない力を見せ、凛やマニトウスワイヤーすら苦しめた。
凛は今、そんな『てんこぶ姫』のような戦い方をしている。
そうとは知らず、動きの読めない凛の攻撃に、今や防戦一方となった馬頭。
執拗に繰り出される攻撃をかわし続けていると、目の前に一本の樹木が倒れこんできた。
それは凛の攻撃によって起きたもの。しかし、今の馬頭にとってそんな原因より、樹木に押し潰されないように、身をかわすのが精一杯だ。
寸前で倒れこむ樹木から身をかわし、安堵の溜息をつく馬頭。その油断が、次に放たれていた矢を気づけなかった。
霊光矢は馬頭の足元で長い紐状に形を変えると、そのまま馬頭の足首を絡めとった。
その場にひっくり返り、身動きの取れない馬頭。
そんな馬頭を助けようと駆け寄った牛頭の背後にも、一本の霊光矢が。
その霊光矢はそのまま四散し、投網となって牛頭を頭から包み込んだ。
「嘘だろっ!?」
金鵄は、我が目を疑った。
いくら、てんこぶ姫のようなトリッキーな戦法を身につけたとしても、この牛頭と馬頭。
先程も言った通り、あの手長足長と変わらない戦闘力を持っているはずだ。それを、いとも簡単に取り押さえるとは・・・?
「牛頭っ!? 馬頭っ!?」
そう思ったのは、金鵄だけでは無い。
予想外の出来事に慌てた嫦娥。凛の前に飛び出し、クパッ!と大口を開けると、2メートルはあろうかと思われる長い舌を振り上げた。
それを鞭のように振り回し、凛に襲いかかる。
だが、凛はそんな攻撃をまるで風のようにかわし、一気に間合いを詰めると、霊光矢の矢尻を嫦娥の額に当てた。
王手!
為す術もなく呆然と立ち尽くす、嫦娥。
「お・・驚いたわい、儂の負けじゃ・・・。そのまま、その矢を射るがいい」
嫦娥は全てを諦めたように、そう呟いた。
弦を引く凛に腕に、力が入る。
① 凛は弓を下げ、戦いを終わらせた。
② 凛は、嫦娥に止めを刺そうとした。
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