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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第17話「瀬織の選択 -後編-」

① 鎌鼬を信じて契約し、霊力を分け与える。

「いいだろう! 今回だけお前を信じて、契約してやろう」
 瀬織はそう言って、鎌鼬の手を握った。
「我・・汝と力の契約を結ぶ。汝は肉を・・我は血を・・、互いに分け与えると誓う」
 その瞬間、瀬織の身体から、白い光が鎌鼬に流れ込む。
 すると、今まで弱々しかった顔色が、少しだけ良くなり、琉奈の手から離れ、立ち上がる事もできた。
「思ったとおり、上質な霊力だ!」
 ニヤリと笑う、鎌鼬。
「あばよ~っ! そんじゃ、頑張って持ちこたえるんだな」
 そう叫びと一気に飛び上がり、真空の鎌で美術館の天井を切り刻むと、月明かりの夜空へ飛び出して行った。
「やはり裏切って、自分だけ逃げ出したか・・・」
 大きなため息をついた瀬織。
 その表情は悔しさよりも、己に対する不甲斐なさが表れていた。
ガッシャァァァン!!
 入り口から大きな破壊音が聞こえると、ドタドタと駆け込んでくる音が聞こえる。
「結局、信じられるのは、己の力だけだ。お前たちも死にたくなければ、必死に抵抗しろ」
 瀬織はそう言いながら、両手で水流輪を編み出す。
 涼果も髪の毛を引き抜き、妖怪赤子を生み出した。
「獲物・・・見つけた・・・♪」
 一体のグールが部屋に侵入し、ニタリと笑う。
 同時に、他二体のグールも駆け込んできた。
「やれっ!!」
 瀬織の合図で、水流輪が放たれ、赤子も飛びかかる。
 一体に水流輪が命中。一体に数匹の赤子が飛びかかって押さえつける。
 突破してきたもう一体は瀬織に接近。鋭い爪先で斬りつけてきた。
 瀬織は数歩、身を引いて、再び水流輪を放つ。
 見事に命中して、このグールは浄化。
 だが入り口からは、他のグールが数体入り込んでいた。
 壁を背にし盾とすることで、前方からの敵だけに集中すればいいが、それでも瀬織たちの防衛力より、グールの突破力の方が高い。
 間髪入れず攻撃しても、敵との間合いはどんどん縮まっていく。
 室内には数体のグールが蠢き、もはや逃げ場も無くなった。
 全てを諦め、ただ怯えている琉奈と涼果。
 肩で息をしている瀬織は、術すら満足に放てなくなってきている。
 最後列から中を覗いていたグーラは、勝利を確信したかのように不気味に微笑むと、顎で再攻撃を促した。
シャアァァァァッ!!
 一体、そしてまた一体と、グールが飛びかかる!
「もはや、これまでか?」
 瀬織も諦めかけた瞬間。
シュッッッ!!
 青白い閃光が、一体のグールを貫いた!!
 更に、
シュッッッ!!
 驚きふためく、もう一体のグールにも、閃光が貫く!!
「れ・・・霊光矢・・・? 若三毛凛か!?」
 そう、それは邪なるものを浄化する、霊力の矢。
「どこだ・・? 若三毛凛は、何処から撃っている!?」
 辺りを見渡す瀬織。
「あ・・あそこ!?」
 涼果が指差したのは、鎌鼬が切り裂いた天井。
 そこには天井に足を引っ掛け、逆さ吊り状態で、亀裂から身を乗り出した凛の姿が。
「瀬織さん、大丈夫ですか!?」
 そう言いながら、一回転して瀬織の元に飛び降りる。
「若三毛凛、助かった。でも、どうしてここに?」
「鎌鼬だよ。鎌鼬が、凛に救援を求めてきたんだ!」
 返答と共に、金鵄も現れる。
 金鵄は、気を失ってグッタリとしている鎌鼬を、足で掴んでいた。
「瀕死の身体のまま、キミから受け継いだ霊力を全て使って、凛を探し廻っていたようだ」
 金鵄はそう言って、鎌鼬の身体を琉奈に預けた。
「逃げたのでは、なかったのか?」
 更に、
「黒い妖魔狩人だけじゃ、ないよ!」
 瀬織が耳にしたことのない声が聞こえると、新たに天井から二人の人影が飛び降りてきた。
「なんか、やばそうな気がしたので、あたし達も付いてきた!」
 それは、雪女郎とサラマンダーの二人。
「ついでだから、あたし達とも契約しない? いい仕事するよ♪」
 そう言ってニッコリ微笑む、雪女郎。
 先の戦いで、雪女郎・・サラマンダーとは、直接相まみえている。実力は充分承知だ。
「いくら黒い妖魔狩人でも、あれだけの数のグールを相手にするのはキツイ。あたし達と契約しろ!」
「そうだ・・・。ワタシ・・たちなら・・・、グールにも・・・負けない・・・」
 サラマンダーも一緒に問い詰めてくる。
 その間、凛はたった一人でグールを相手にしている。
 たしかに、この中では一番戦闘力のある凛だが、弓使いである凛は、遠距離攻撃型。
 こういう室内では、その力は半減する。
 それに比べ、中距離ながらも、広範囲の攻撃術を持っている、雪女郎やサラマンダーの方が、この場は有利だろう。
 それは、瀬織もよくわかる。
 だが、瀬織は妖怪を・・・・・
 そんな心を読んだかのように、雪女郎はこう付け加えた。
「あんたは鎌鼬を信じたんだろう? そして鎌鼬はそれに応えた。あたし達も同じだ!」
― た・・たしかに、そうだ・・! 鎌鼬を信じたことで、黒い妖魔狩人が駆けつけてくれた。―
 その言葉に、瀬織は心を決めた!
「手を貸せ! 疲れて消耗しているが、残っている霊力を、お前たちに分け与える!」
 そういって、雪女郎とサラマンダーの手を握った。
 白い光が、二人の身体に流れ込む・・・
 みるみるうちに、力が復活していくのがわかる!
 小さく、ガッツポーズをとる二人。
「契約完了! それじゃ~っ、早速給料分働くよ!」
 そう言った雪女郎は、凛の前に出た。

妖魔狩人若三毛凛 17話06


 片手を上げ、ゆっくり回転させると、周囲にチラホラと雪が舞いだした。
 そのまま上げた手を、グールに向ける!
 すると雪は、激しい吹雪となってグールに襲いかかった!!
 サラマンダーは、天井の穴から外へ飛び出すと、入り口付近に集まっているグールたちの背後に周り、大きな炎の渦を放った!!
 炎の渦で、複数のグールが一気に倒れる。
 雪女郎、サラマンダー。
 たった二人の精霊の加入で、戦況は一気に逆転!
 倒れていく同族の姿を見て、他のグールたちは次々に逃げ始めた!
 そんなグール達に・・
「逃げるな! 最後まで戦えっ!!」
 と命令し続ける、グーラ。
 そのグーラの左腕に、青白い閃光が突き刺さる!!
 もちろんそれは、凛の霊光矢。
 それが何を意味しているか!?
 理解しているグーラは左肩に己の爪を突き刺し、肩口から力任せに腕を引きちぎった。
 肩口から、大量の血をたれ流しながら、凛を睨みつけるグーラ。
「この傷、絶対に忘れない。いずれ、必ず貴様を喰らってやる!!」
 そう吐き捨てると、他のグールに紛れて、その場を去っていった。

「た・・助かった・・・」
 安堵の溜息をつきながら、琉奈と涼果は腰を抜かす。
「若三毛凛・・、雪女郎・・、サラマンダー。お前たちが来てくれなかったら、ワタクシ達は確実に敗れていた。本当にありがとう」
 瀬織も深々と頭を下げる。
「違いますよ、瀬織さん。わたし達は鎌鼬さんの必死の呼びかけに応じただけ。本当にお礼を言ってあげてほしいのは、鎌鼬さんにです」
 凛の言葉に、瀬織は静かに頷き
「そうだったな・・・」
 と、琉奈に抱かれている鎌鼬に、頭を下げた。
「いいんだ・・・、あんた達が助かって・・くれれば・・・」
 もはや鎌鼬は、虫の息であった。
「この子・・・、なんとか助けてあげられないの?」
 琉奈が瀬織に懇願する。
 しかし、瀬織は首を振ると、
「さっきも言ったが、生きているのが不思議なくらいの重体なのだ。もはや、治癒の術を掛けても効果は無いし、受け付けるだけの気力も残っていないだろう」
「わかって・・いる・・。」
 鎌鼬は、静かに頷いた。
「一つだけ、聞きたいことがある」
 瀬織は振り返り、雪女郎やサラマンダーを見ると、
「なぜ、ワタクシと従僕の契約を結ぼうとした? 探せばワタクシ以外にも、多少の霊力を分け与えられる人間が、他にもいるはずだ。とても偶然や成り行きとは思えない」
 と問いかけた。
 その問いに、雪女郎たちはニッコリと笑みを浮かべると
「妖怪はさ~ぁ、結構義理堅いんだよ!」
「・・・?」
「あんた達妖魔狩人は、あたしらをマニトウスワイヤーから開放してくれた。 だから、その恩返しをしたかったんだ!」
「それで・・、わたし達に・・?」
 凛も、初耳といった表情で、問い返した。
「特に、あたしとサラマンダーは、融合までされちゃったからね。 こうして元の身体に戻る事ができたのも、みんな・・あんた達のお陰だよ!」
「ワタシたちの・・力で・・、貴女たちに・・・恩を返したかった・・・」
 雪女郎とサラマンダーの、嘘偽りの無い眩しい笑顔が、そこにあった。
「妖怪が、義理を重んじるなんて・・・」
 複雑な心境の瀬織。
 その時、
「かまいたちーっ!?」
 琉奈の泣き声にも似た叫び声が、響き渡った。
「どうしたんですか?」
「鎌鼬が・・・、鎌鼬が・・・、死んでしまった・・・・」
 琉奈の言葉に、金鵄が鎌鼬に触れる。
 心音を探るかのように、静かに診ていたが、
「駄目だ。息を引き取っている」
 と首を振った。
「鎌鼬・・・」
 瀬織もそっと手を触れ、亡骸を見つめた。
 まるで、全てに満足したかのように、安らかな表情だった。



 その頃、柚子村・・犬乙山麓の洞窟。
 白陰と嫦娥の二人が話し合っていると、
「な・・なんなのであるか? この大きな、闇の波動は!?」
 大声で、ムッシュ・怨獣鬼が駆け込んできた。
「一週間ほど前にも、丘福市の方向から大きな闇を感じたが、今回のは、それに劣らない波動。 それも、この柚子村からであるぞ!」
 いつになく険しい表情のムッシュ。
 そんなムッシュに、冷ややかな笑いを見せる白陰。
「そうか、ムッシュは知らないのだな。 この波動の持ち主を・・・」
「!?」
「やっと、お目覚めのようじゃな」
 嫦娥も白陰同様・・・冷めた笑みを浮かべる。
「お目覚め・・? まさか・・・!?」
 呆然とするムッシュに、二人は揃ってこう言った。
「妖木妃様が、ついに目覚められる!」


 第18話につづく(正規ルート)


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②は 》続きを読むをクリックしてください。


② 鎌鼬を信じられず、自分たちの力で迎撃する。


「だめだ。やはり、妖怪は信用できん!」
 瀬織は呟くように答えると、首を振った。
「そ・・そんな・・・、このままだと・・・グフッ!!」
 鎌鼬はここまで言うと、口から血を吐き出した。
「鎌鼬っ!?」
 瀬織や琉奈、涼果が見守る中、鎌鼬はそのまま息を引き取った。
 ・・と同時に、
ガッシャァァァン!!
 入り口から大きな音が聞こえると、ドタドタと駆け込んでくる音が聞こえる。
「くっ! 奴らが入ってきたか。お前たちも死にたくなければ、必死で抵抗しろ・・・」
 瀬織はそう言いながら、両手で水流輪を編み出す。
 涼果も、髪の毛を引き抜き、妖怪赤子を生み出した。
「獲物・・・見つけた・・・♪」
 一体のグールが部屋に侵入し、ニタリと笑う。
 同時に、他二体のグールも駆け込んできた。
「やれっ!!」
 瀬織の合図で、水流輪が放たれ、赤子も飛びかかる。
 一体に水流輪が命中。一体に数匹の赤子が飛びかかって押さえつける。
 突破してきたもう一体は瀬織に接近。鋭い爪先で斬りつけてきた。
 数歩身を引いて、再び水流輪を放つ瀬織。
 見事に命中して、このグールも浄化。
 だが、入り口からは、他のグールが数体入り込んでいた。
 壁を背にし、盾とすることで、前方からの敵だけに集中すればいいが、それでも瀬織たちの防衛力より、グールの突破力の方が高い。
 間髪入れず攻撃しても、敵との間合いはどんどん縮まっていく。
 室内には数体のグールが蠢き、もはや逃げ場も無くなった。
「きゃあああああっ!!」
 最初に捕まったのは、妖怪に対して何の抵抗力の無い琉奈だ。
 琉奈を捕まえたグールは、鋭い牙で食いつこうとする。
 だが、
「喰うなっ!!」
 入り口から、他のグールに守られるように入って来たのは、グール族の雌(女性)であり、この中では女王蜂的存在のグーラ。
「そこの娘たちは、なかなかの食材だ。貪るよりも、料理して、より美味しく頂きたい」
 涎を拭きながら、ニタリと笑うグーラ。
 グーラの言葉に、他のグールたちも互いに顔を見合わせ、賛同したようだ。
 今までとは違った笑みを浮かべながら、瀬織と涼果を取り囲んでいく。
パラリ・・・・
 涼果が手にしていた髪が、力なくこぼれ落ちた。
「も・・もう・・力が・・・」 
 当然だ。
 一度は妖怪化したとはいえ、瀬織によって浄化され、今では赤子を生み出す術が使えるだけでも奇跡なのだ。
 グールのような、強力な妖怪を相手にするのは、酷すぎる。
「諦めるなっ!」
 瀬織の叫びも虚しく、涼果もグールたちに捉えられてしまった。
「その青い娘は、特に丁重に扱えよ。そいつの霊力は並みの妖怪以上で、とっても美味そうだからな」
 その言葉に頷きながら、残り全てのグールが瀬織にゆっくりと向かっていく。
「舐めるなっ!」
 瀬織は両手を広げ大の字になると、全身から小さな~、小さな水泡を吹き出し、撒き散らした。
 無数の水泡は、瀬織を中心に辺りに漂う。まるで瀬織を守るように。
「なんだ・・これは?」
 一体のグールが、掻き払うように水泡を退けた。
 パチッ!パチッ!と水泡が破裂すると、緑色の半透明の液体が、その腕に付着している。
「うぅ・・っ!」 
 すると、とたんに苦しみだすグール。
 その場に倒れこむと、ピクピクと痙攣し、起き上がることができない。
「神経麻痺系の毒で作られた水泡か・・?」
 グーラは一目で術を見破ると、三~四体のグールを指定し、水泡に向って突入するように命じた。
 水泡を掻き分けながら突っ込み、液を浴びるたびに倒れ伏すグールたち。
 だが、その三~四体のグールが犠牲になったことで、瀬織との間に、一直線の花道ができた。
「今だ、行け!」
 別のグールたちが、その花道を通り、瀬織に飛びかかる。
 こうなると為す術もない瀬織。
 仰向けに倒され、取り押さえられてしまった。
コツ・・コツ・・コツ・・・。
ゆっくり近寄り、足元で身動きできない瀬織を見下すグーラ。
 そんなグーラーを、
「ワタクシは、最後まで諦めないぞ」
 鋭い眼光で睨みつける瀬織。
「フッ!」
 グーラは鼻で笑うと、片膝を付き、瀬織の胸に手を当て、
「いいぞ! もっと強く睨みつけてこい♪」
 と囁き、瀬織の蒼い瞳の奥の奥を覗きこむように、目を合わせる。
「あ・・あ・・・」
 すると、どうしたことか?
 グーラと目を合わせていると、全身の力が抜け、頭の中も真っ白になっていく。
「ま・・まさか、これは・・・?」
「そう、魅了の術! この程度の術くらいは、使えるんだよ♪」
 魅了の術。
 一種の催眠術のようなもので、軽度のものでも身体の自由を奪われ、強度のものになると、相手の意のままに動くようになってしまう。
「だ・・だめ・・だ・・・」
 抵抗しなければと、考えれば考えるほど頭が混乱し、更に術中にハマっていく。
「あ・・ひぃ・・・@・@@・@@@・・・」
 完全に術に掛かってしまった、瀬織。
 もはや、有機質で作られた人形か? もしくは、人の形をした肉の塊でしかなかった。


 大生堀公園内では、色々な調理器具が並び、グールたちによる大掛かりな料理の準備が行われていた。
 一つは、火に掛けられた大きな寸胴鍋。
 中には、体育座りで熱湯に浸された、下着姿の涼果が。
 グツグツと煮立てられ、茹でタコのように真っ赤なその姿は、とっくに意識が飛んでいるのがわかる。
「数時間程煮立てれば、ほどよく液状になるだろう」
 もう一方では、平らなコンクリートの上に寝かせられた、琉奈の姿。
 仰向けに寝かせられたその上に、大きく厚い鉄板を乗せられ、更にその上に数体のグールが乗って、飛び跳ねている。
 跳び跳ねる度に、鉄板が・・ギュッ!ギュッ!と、琉奈の身体を押し潰していく。

妖魔狩人若三毛凛 17話07

 そして最後は女王グーラ自らが監修する、瀬織を材料とした、本格的調理が行われようとしていた。

「今から、この娘を使った、『小娘のパイ包み焼き』を作る!」
 まな板代わりのベニア板に寝かされた、下着姿の瀬織。
 魅了の術がしっかり効いているようで、完全に目を回して意識不明。

妖魔狩人若三毛凛 17話08

「まず、下ごしらえ。旨味の引き立てと、臭みを消すために、白コショウをよく馴染ませるのだ!」
 グーラの指示に従い、瀬織の下ごしらえを始めるグール達。
 白コショウを満遍なく振りかけ、その身体を揉みほぐしながら、しっかり身に馴染ませていく。
 口の中や肛門など、体内にも塗り込めるところには、しっかり馴染ませていく。
 その後、数時間ほど風通しのいい場所で食材を寝かせて、しっかり芯まで染み込ませていくのだ。
 
 それから数時間経った。
 涼果はトロ~リと液状化し、琉奈は厚さ1~2㎝程まで潰されている。
 そして、瀬織も意識を失ったままだ。
「さて、他の食材はそれぞれ調理を続けて、こちらはパイ生地の準備をせよ! 下に敷くパイ生地は予め、軽く火を通しておけよ」
 言いつけ通り、薄いパイシートを乗せた鉄板を、先程完成した大きなカマドに入れる。
 下に敷くパイ生地は、食材を乗せると重みで潰れ、火が通りにくくなる。
 だから、予め6~7割程度、火を通しておく事が大切!
 数分後、軽く焼かれたパイ生地。その上に、溶いた卵白を隅々まで塗っておく。
「お肉を生地の上に乗せよ!」
 下ごしらえの終わった瀬織を担ぎ、丁寧に生地の上に寝かしつける。
 生地同様、瀬織本体にも卵白を塗り、更にその上に数枚のハーブの葉を乗せていく。
「パイ生地を被せて、しっかり型どるんだ!」
 瀬織に大きなパイシートを被せ、身体に密着させるように、シートを押しつけていく。
 身体に沿って余分な生地を切り離し、髪型や表情、下着のラインなど、出来る限り本来の姿を模すように、模様を切り刻んでいく。
 仕上げに、水で溶いた卵黄を、全体に満遍なく塗っていくと、
「うん、凄くいい出来だ。食欲を誘うのぉ!」
 グーラも満足そうな笑みを浮かべた。
 数体のグールが、パイに包まれた瀬織を鉄板ごと担ぎ上げ、そのまま熱くなったカマドの中に押し入れた。
 一時間弱もあれば、美味そうなパイ包み焼きが出来上がるだろう。

 その間、他の調理に目をやると、トロトロに溶け、液状化した涼果の寸胴鍋は、火から降ろされ、次の過程に移っていた。
 一体のグールが寸胴鍋に、スプーンでクリーム状のものを、二つ~三つ放り込んでいく。
 それは、乳酸菌が増殖した、ヨーグルトの素。
 続いて寸胴鍋ごと紐で吊るし上げ、池の中に浸らせ冷やしていく。
 そうすることで、乳酸菌は鍋の中で更に繁殖していく。
 そう、トロトロに溶けた涼果は、『ヨーグルト』に加工されるのだ。
 もう一人、綺麗に平らに潰された琉奈。
 ゆっくり、じっくり潰されたことで、中身が破裂することなく、むしろ肉も骨も細胞レベルで混ざり合いながら潰されていた。
 潰された琉奈は、綺麗に磨かれツルツルとした鉄板に敷かれると、数体のグール達が麺棒を手に、手足の先からゆっくりと、押し伸ばしていく。
 クルクルと押しては引き、時には麺棒に巻きつけ、ギュッ!ギュッ!と伸ばしていく。
 まるで手慣れたうどん職人のような技に、琉奈の身体は徐々に、数ミリ程度まで薄く伸ばされていった。
 さてその頃、メイン料理であるグーラの方では、ソース作りに入っていた。
 十数個の卵をボールに入れ、そのボールごと・・更に大きな、湯の入ったボールに浸らせる。
「お湯の温度は50℃。湯煎しながら、卵をゆっくり掻き混ぜていくんだぞ」
 ゆっくり丁寧に白身と黄身を混ぜ合わせ、程よく混ざったところでオリーブオイルを注ぎ込む。
 さらに混ぜ合わせながら、トマトピュレ。レモン汁も合わせていく。
 塩コショウで味を整えたら、仕上げに刻んだハーブを入れ、もう一度混ぜ合わせれば、ソースは完成。
 
 丁度その頃、ひんやり冷やされた寸胴鍋には、綺麗な肌色の『ヨーグルト』が完成していた。

妖魔狩人若三毛凛 17話10

 また、2~3ミリまで伸ばされた琉奈は、熱くたぎった油鍋に放り込まれた。
 香ばしい薫りが、辺りに漂う。
 数分後、カラっと揚がったところで引き上げる。
 それは、中東の家庭料理では割りと定番の、『シェルペック』と呼ばれる、平らな揚げパン。
 そう・・琉奈は、こんがり揚がった薄く平らな揚げパンに調理されたのだ。
 最後にメイン料理である、小娘のパイ包み焼きも、丁度今、焼き上がったところだった。
 大皿に移されたそれは、瀬織の姿を模した、こんがりとキツネ色の、香ばしい薫り漂う、大きなパイ。


 公園に置かれた大きなテーブルでは、今まさにグール達のパーティーが始まろうとしていた。
 テーブルの上には、大皿にのったパイ包み焼き(瀬織)と、シェルペックという揚げパン(琉奈)。
 一体のグールが、シェルペックを一口大に切り分け、一切れを上座に座るグーラの前に置いた。

妖魔狩人若三毛凛 17話09

「そのパンに、手元にあるヨーグルト(涼果)を乗せて、お食べください」
 言われるままに、一切れのパンにヨーグルトを乗せ、口へ運ぶ。
 口に入れた瞬間、ヨーグルトの酸味が口いっぱいに広がる。
 レモンのような、アンモニアのような? そんな酸味の中に、練乳のような甘味が混ざり、それはまさに、とろけた少女の味。
 その酸味に引き立てられながら、香ばしい薫りがじんわりと広がってくる。
 薄く揚げられたパンは、表面はカラッとしているが、中はしっとりと軟らかく、肉汁のような甘味がゆっくり流れ落ちてくる。
 その肉汁も、牛肉よりも豚肉に近い、少々脂っぽいが、蛋白な甘味。
 パン(琉奈)とヨーグルト(涼果)のコラボネーションは、それは見事なハーモニーであった。
「見事だ。単純に生のまま貪り喰っては、絶対に味わえない美味さだ♪」
 グーラを始め、その後料理に手をつけたグールたちも、会心の笑みを浮かべていた。
「次は、グーラ様の指導で作られた、小娘(瀬織)のパイ包み焼きです」

妖魔狩人若三毛凛 17話11

 一体のグールが、大きなパイを切り分ける。
 その断面は、キツネ色の生地に、ほんのりピンクの塊。まるで、ケーキの断面にも見える。
「パイ生地と肉を、お手元のソースに漬け、お食べください」
 たっぷりソースを漬け、口へ運ぶ。
 最初に、焼けたパイの香ばしい薫りが、鼻腺をくすぐる。
 それだけでも口元が緩むが、口に入れたときのパイのサクサク感!
 これが、更に身体を奮い立たせる。
 その後に続く肉の軟らかい、いや、まるで舌先でとろけるような食感。
 このアンバランスさが、鳥肌の立つような喜びを与えてくれる。
 トマトとレモンの酸味が活きたソース。
 有無言わさず、肉の甘味を最大限に引き出す。
 牛のサーロイン?
 豚のロースカツ?
 マグロの大トロ?
 いやいや、そんなものでは無い。
 少女特有の練乳のようであり、生クリームのような、ふんわりとした~、程よい甘味。
 それが、口いっぱい広がるのだ。
 これを、至高と言わず、なんと言おう!
「うむ、恍惚~っ♪」
 ちょっと、別の作品を思い浮かべるようなセリフだが、グーラはそう言わずにはいられなかった。
 
 それは、グールでも滅多に食さない、一級料理の数々。
 グルメパーティーと言っても過言でない、内容であった。

 この日を境に、グールたちは無差別に人間を襲うことをやめた。
 と同時に、獣に食いつくされたような遺体も、殆ど発見される事はなくなった。
 
 その代わり少数ではあるが、日々、若い女性が行方不明になり、そしてその日は、大生堀公園で宴会のようなものが行われているのが、目撃されるようになった。
 
 噂を耳にした凛も、単身・・・調査に出たが、二度と帰ってくることは無かった。



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