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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第17話「瀬織の選択 -前編-」

「改めて、ワタクシの名は棚機 瀬織(たなばた せおり)。今まで隠していて申し訳なかった・・・」

 一人のポニーテール少女が、深々と頭を下げた。
 凛よりは少しだけ背が高く、やや細めだが、ほぼ標準的体型で色白の肌。
 クリクリとした瞳が愛らしい、どこにでもいそうな美少女。
 凛も改めて見る、『青い妖魔狩人』が頭巾を外した素顔。
 それが、この瀬織であった。
 ここはマニトウスワイヤーの時の戦いで、負傷した凛が運び込まれたホテルニューオーニタの一室。
 どうやら瀬織はこの部屋を、長期に渡って借りきっているようだ。
「今・・着ているのが、学校の制服ですか?」
 凛の問いに無言で頷く。
 白地のブラウスに、大きめの襟。それに通ったネクタイ。
 襟とネクタイ、そしてミニのプリーツスカートは、水色地に白いチェック模様。
 そう、あのとき・・・柚子村のゲームセンターで、ゲーム機に取り込まれた女子高生たちと同じ制服。

妖魔狩人若三毛凛 17話01

「そうだ、來愛(くるめ)女子大学付属高等学校一年生。それが普段のワタクシの姿だ」
「そして、真の姿は・・・・神族の一人である、瀬織津(せおりつ)姫!」
 今まで黙って聞いていた金鵄が、ここぞとばかりに口を開く。
 その言葉に瀬織はすぐに反応せず、しばらく間をおいてから頷くと、
「正確には、今のワタクシは、もう神族ではなく、普通の人間となんら変わりがない」
 と答えた。
「たしかに霊鳥金鵄が言った通り、ワタクシの真名は瀬織津。日本神話の時代・・、水神とも呼ばれていた」
「そんな古い時代から・・!?」
「勘違いしないでほしい。別に1000年以上も、生き続けているわけではない」
 先日まで、頭巾越しで常に無表情だったように思えたその目だが、珍しく苦々しくも目尻を垂らしたように見えた。
「話せば長くなるので掻い摘むが、当時ワタクシは神として崇められていた。だが、妖怪どもの企みによりその地位から落とされ、ついには神族であることからも追われてしまった」
「それって、マニトウスワイヤーみたいに・・・?」
「そう。地位だけでなく、永き寿命も消され、人間と同じ寿命になり、何度も~何度も転生し、今に至っている」
「なるほど・・・。それで妖怪を憎んでいるんだね」
 金鵄のその言葉に、瀬織はキッと目尻を上げたが、それ以後この件について、何も語ろうとしなかった。
「しかし・・若三毛凛。マニトウスワイヤーの件では本当に感謝している。貴方がいてくれなかったら、ヤツを倒すことはできなかっただろう」
「いいえ、わたし一人の力ではありません。あの場に駆けつけた人、みんなの力があったからこそ、解決できたんです。もちろん棚機さん、あなたも居てくれたから・・こそです!」
「瀬織でいい。勝手で悪いが、これからも力を貸してほしい・・」
「こちらこそです!」
 たった一日の戦い・・・。
 だが、そのたった一日が、これまでに無い、厳しく激しい戦いだった。
 そんな戦いを乗り越えてきたからだろう。
 今、凛と瀬織の気持ちはしっかり繋がっている。
 金鵄はそう感じ取っていた。

「ところで、高嶺優里と斉藤千佳の具合はどうだ?」
 急に切り替わった話題に、凛は一瞬戸惑ったが・・・ 
「優里お姉さんは、精密検査で予想以上に深い傷を負っているのがわかり、今・・中央区の病院に入院しています。もっとも、水無月さんの応急手当てと、この一週間の入院で、だいぶ身体の傷は癒えたようですが。それでもまだ動ける状態ではないみたいです」
「聞く所によると、奥技とやらのせいで、相当身体に負荷が掛かり、身体の機能が停止状態近くまでなったらしいからな。回復が長引きそうだ」
「はい。もうしばらく入院が必要みたいで、三日に一度、お見舞いに行ってます」
「斉藤千佳は・・・・?」
「千佳の灼熱爪はあの戦いで、粉々に砕けてしまいました。水無月さんの話によると、元々・・全身を覆っていた妖力を、右手に集中させる事によって、あの灼熱爪は出来ていたそうです。
 だから、妖力が完全に元に戻れば、灼熱爪も再構成できるらしいので、毎日妖力の回復のために、水無月さんのお宅に通っています」
「なるほど。それにしても・・・痛いな。貴重な戦力が三人も欠けてしまっている」
「三人?」
 金鵄が不思議そうに聞き返した。
 それに気づいたように凛が
「そう言えば、あの祢々さんという、禰々子河童の女性はどうされたんですか?」
 と尋ねた。
「祢々はトラブル処理で、先日から地元栃木に帰っている。アイツはああ見えても、関東一円の水棲妖怪を束ねる、女党首だからな」
「噂は聞いているよ。過去、数多くの妖怪を退けた女傑だということをね」
「そう・・。だからこそ高嶺優里、斉藤千佳、祢々。この三人が欠けている今、なにか事があると戦力が足りない」


「幸い、この一ヶ月間、中国妖怪の動きはない」
 ホテルニューオーニタを後にし、JR丘福駅へ向かう途中、思い出したように金鵄が呟いた。
 わかっているとは思うが、霊鳥である金鵄は一般人には見えない。当然、言葉も聞こえないが、魂を共有した凛とならば、近距離という限りはあるものの、直接声は出さなくとも会話は可能である。
「でも・・中国妖怪にしろ、マニトウスワイヤーのような敵にしろ、どんどん強敵が現れている。瀬織さんの言うとおり、今・・何かあったら防げるか、どうか・・?」
「とにかく、優里や千佳が復帰するまで、何事もなければいいんだけどね」
 そう話しながら駅まで、あと1~2分というところで
「あ・・っ、やっぱりそうだ! 黒い妖魔狩人~っ!?」
 と声を掛けられた。
「えっ?」
 振り返るとそこには、一人の若い女性が立っていた。
 それは雪のように白い肌・・白く長い髪。
 流し目が得意そうな、潤んだ色気のある目。
 その割には、タンクトップにTシャツを重ね着。キュロットパンツというスポーティーな出で立ち。

妖魔狩人若三毛凛 17話02

 凛には、まるで見覚えがなかった。
「あ・・あの・・、どちら様でしょうか?」
「あら、あたしの事・・見覚えがない? じゃあ・・こうしたら、ど~ぅ!?」
 と女性は、なにやら魔法攻撃でもするような仕草をとった。
「り・・凛・・・、気を・・妖気・・を感じ取るんだ・・!」
 そのとたん、何かに気づいたように声が振るえる金鵄。
「う・・うん・・、この・・妖気、初めてじゃ・・ない!? まさか・・・」
 同じように驚きを隠せない凛。
「やっと思い出してくれた!? そう、あたしは雪女郎よ~~っ♪」
 雪女郎!?
 雪女と同種族の妖怪で、マニトウスワイヤーに召喚され、凛や瀬織と戦った・・。
「た・・たしかに雪女郎だけど、だけど・・・なんなんだいっ! その格好は~っ!?」
 雪女と言えば、白い和服姿が定番だ。現にマニトウスワイヤーに召喚された時も、そういった姿だった。
「あんなもん、イメージ合わせ、コスプレみたいなもんよ~っ!(笑) 黒い妖魔狩人だって、ゴスロリ服着ていたじゃなぁーい!?」
「わ・・わたしのは戦闘服であって・・、コスプレじゃ・・ありません!」
「あ、そうなんだ!? どっちにしろ~、いくら妖怪でも、町中であんな格好している方が、恥ずかしくない?」
 お前は本当に妖怪なのか!?
 そうツッコミたくなるのも抑えて、凛も金鵄も、ただ・・唖然とするばかりだった。
「・・・で、その雪女郎が、どうしてこんな所にいるんだい?」
 呆れたように問いただす金鵄。
「その前に、もう一人・・、そこで待っている子がいるんだ!」
 雪女郎はそう言って、背後に目を送る。
 すると、今まで気付かなかったのが不思議なくらい、雪女郎のすぐ背後から、もう一人の女性が姿を現した。
 赤みがかった肌に、赤毛のショートカットヘアにカチューシャ。
 強気そうなツリ目だが、瞳は挙動不審のように、おぼつかない。
 雪女郎とは真逆に、清楚な感じのするブラウスにリボン。そしてジャンパースカート。
「あ・・あの・・ぉ・・、こ・・こんにち・・わ・・」
 性格も控えめなのか、オドオドしたところも見受けられる。

妖魔狩人若三毛凛 17話03

「ま・・まさか、貴方は・・・?」
 今度はすぐに妖気を探った凛と金鵄。
 だが、あまりの驚きにそれ以上、声が出ない・・!
「はい・・、サ・・サラマンダー・・・です・・ぅ・」
「いや、嘘だろぉ!? キミが・・あの火トカゲぇぇっ!?」
「ていうか・・、女の子だったの!?」
 珍しい、凛と金鵄によるダブルツッコミ!
「いやぁ~っ、まさか!そこまで驚くとはね~ぇ!?」
 ニヤニヤとほくそ笑む雪女郎。
「クールなイメージと程遠い雪女郎にも驚いたけど、サラマンダーに関しては、仮にマニトウスワイヤーが復活したと言われても、それ以上に驚くよ!」
 もはや、金鵄にも何がなんだか、解らなくなってきた。
「でも、どうして二人ともそんな姿で、こんな所に・・・?」
「その前に、駅構内のファーストフードでも入らない? 雪妖怪のあたしとしては、やっぱ・・この暑さは辛い」

 雪女郎の申し出により、丘福駅構内にあるドーナッツチェーン店に入った一行。
「知っての通り、あたしとサラマンダーの二人は、マニトウスワイヤーに召喚されて、この地に来た。ちなみに黒い妖魔狩人は、召喚ってどんな契約になっているか、知ってる?」
「いえ・・?」
「基本的に召喚って、魔力や霊力などの供給という見返りがあって、そこで力を貸してやるという、従僕の契約を結ぶんだよ」
「はい・・・」
「だが、マニトウスワイヤーは違った。ヤツはあたし達の力を借りるのではなく、あたし達そのものを操ることができたからね。だから~なんの見返りも無い、無料(タダ)働きってやつだったのよね」
「それは僕もやられてわかった。自分が自分でなくなるんだ・・・」
「そんな訳で、マニトウスワイヤーには恩も縁もないから、事が済んだら、みんなすぐに、元の世界や国へ帰っていくのよ」
「そういうものなんですね・・・」
「で・・あたし達も本当なら、即座に地元に戻りたいんだけど・・。ほらっ、あたし達って、マニトウスワイヤーに融合されたじゃない?」
「ああ・・、はい!」
「その時に妖力の殆どをヤツに持ってかれて、帰る力も残っていないわけ」
「なんと!?」
「そこで、地元に戻る力が回復するまでここに滞在することにしたんだけど・・、知らない土地で生きていくのも大変じゃない?」
「はい・・?」
「だから、あたし達が完全回復するまで、従僕契約をして、その日~その日を生き延びる程度の霊力供給を、あたし達にしてくれないかな?」
「はい~~~っ!?」
「もちろん、無料(タダ)で霊力を貰おうなんて思っていないよ? その分、ちゃんと働くからさ!」
 そう言って、雪女郎とサラマンダーは満面の笑みを浮かべた。
 もっとも、状況を今ひとつ理解していないサラマンダーに至っては、笑顔がぎこちなかったが。
「状況は理解したけど、なぜ・・凛なんだい? キミ達は、その凛を殺そうとしただろう?」
「やだな~~っ! あれは~ゎ、あたし達の意思じゃなく、マニトウスワイヤーに操られていたせい。金鵄ちゃんも同じことやってたじゃん!」
「き・・金鵄ちゃん・・?」
「そうだね~!」
 思わず微笑んでしまう凛。
「いいですよ! わたしの霊力で良ければ、少しくらいならお分けします」
「さすが、黒い妖魔狩人! あの時戦ってみて、一番優しそうだな~って思っていたんだよね!」
「身勝手な解釈だね・・」
 呆れる金鵄を他所に、雪女郎は凛の手を握り・・
「それじゃ、あたしの言うとおりに契約の言葉を言ってみて!」
「はい」
「我・・汝と力の契約を結ぶ。汝は肉を・・我は血を・・、互いに分け与えると誓う」
 雪女郎の言うとおり、凛は契約の言葉を並べた。
 その瞬間、青白い凛の霊力が雪女郎に流れ込んだ。
 だが・・・
「あぁぁっ!!?」
 思わず仰け反る雪女郎!
「ど・・どうしたのぉ・・・?」
 サラマンダーが心配そうに顔を覗きこんだ。
「強すぎる・・・・」
「えっ!?」
「この子の霊力、浄化の力が強すぎて、あたし達妖怪の身体には合わない!?」
「そ・・そんなぁ・・・?」
 ガックリと落ち込む二人。
「ごめんなさい・・・」
「いや、黒い妖魔狩人のせいじゃない。でも・・浄化の力が、ここまで強いとは思わなかったわ」
「ねぇ・・雪女郎・・・」
 そんな雪女郎にサラマンダーが声を掛けた。
「もう・・一人・・・、青い・・妖魔狩人・・・なら、どうかな・・・?」
「青い妖魔狩人か・・・」
「あ、いいかも! 瀬織さんも強い霊力を持っているし!」
 だが、賛同する凛を諌めるように
「いや、おそらく無理だと思う。たしかに瀬織の霊力は、マニトウスワイヤーと同じ元神族だっただけに、精霊や妖怪との波長も合いやすいかもしれない」
「だったら?」
「だが、彼女は妖怪を憎んでいる。とても、妖怪のために霊力を分け与えるとは思えない」
 たしかにそうかもしれない・・。
 凛は金鵄の言葉に、何一つ言い返すことはできなかった。

 結局その後、話をまとめる事ができず、雪女郎たちと別れることなった。
「ごめんなさい、全然役に立てなくて」
 そう項垂れる凛に対し、雪女郎はニッコリ微笑むと・・
「ううん、快く引き受けてくれようとした気持ちだけでも嬉しい。契約はできなかったけどさ。もし、あたし達の力が必要な時は、いつでも言って!」
「ありがとう」
「あ、それと~っ、もう一つ! もしかしたら、あたし達以外でも、この地に留まっている精霊がいるかもしれない」
「え、雪女郎さんたちみたいに、帰れなくなった精霊や妖怪が他にも・・・?」
「帰れなくなったのか・・・、それとも『帰る気が無い』のか!? とにかく、ここ数日。この土地で、嫌な気を感じるのよ」
「わかりました」
 こうして一行は、その場は分かれ去っていった。

『続いて、次のニュースです。 あの謎の震災から一週間たった今日ですが、またしても大生堀公園近くで、新たな遺体が数体発見されました。
 ただ、遺体は比較的新しく、バラバラに切り刻まれたものや、動物に食い殺されたようなものもあり、警察は震災との関連性。身元の確認などを急いでおります』
 彼女達が去った駅前の建物に設置された大型モニターで、TVのニュースが報道されていた。

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 17:46 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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