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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第20話「 終結~戦いの終わり~ -後編-」

「凛ちゃんは、もっと離れた位置から頭部の花を狙って! 瀬織さんは、神経毒の水泡で、触手の動きを鈍らせて!!」
 指示を繰り出しながら、次々と襲いかかる触手や黒炎弾を避けては懐に飛び込み、斬撃を繰り返す優里。
「わかりました!」「承知っ!」優里の指示に従い、支援に徹する凛と瀬織。
 よく考えてみれば、このメンバーが組んで一匹の敵を相手にするのは、今回が初めてなのだ。だが、一番戦い慣れている優里が前衛に入り指示することで、まるで初めてとは思えない連携を見せている。
 それが証拠に、妖木妃の身体には無数の斬撃の跡がある。並の敵ならば、とっくに仕留めていただろう。
 だが、想像以上の怪物となった妖木妃には、まだ決め手となる一撃が加えられていない。そして、当然優里もそれに気づいている。
「この巨体……。私の斬撃も、瀬織さんの術も、そして凛ちゃんの霊光矢も、その表面の浅い箇所を傷つけるのが精一杯。今のままでは倒すどころか、先に私たちのほうが力尽きてしまう」
 そう心配するのも当然だ。霊力を使った術や攻撃は、精神的負担だけでなく、体力すらも消耗させる。ここへ来て最大の敵との長時間の戦い。その疲労は極限まで達しているだろう。
(おそらく、妖木妃の弱点は頭部の花の中央にある、単眼の奥。きっと、そこが妖木妃の核にあたる部分。だから、他の箇所はどれだけ攻撃を受けても、そこだけは完璧に守り通している。そこを凛ちゃんの霊光矢で浄化できれば……)
 だが、肝心な頭部は四~五メートルもの高さに位置する。しかも、花の中央を狙うには上空……真上から狙うしかないが、それができぬとなれば、この巨体を倒すなり体勢を崩させ、単眼を狙える位置に向けさせるしかない。だが、どうやって体勢を崩させる?
(いえ、一つだけ方法はある! でも、こう連続で攻撃を受けていては、それを避けるだけで精一杯……)
 止まらぬ触手と黒炎弾の攻撃。これだけの執拗な攻撃の中、今……その前衛を努められるのは、運動能力と洞察力に長けた優里しかいない。
「高嶺優里の考えはわかっている。なんとか妖木妃の隙を突いて体勢を崩し、弱点と思われる単眼に若三毛凛の一撃を加えることができれば……。しかし、わたくしでは高嶺優里の代わりを務めることはできない」
 毒の水泡による援護、そして回復術での支援。だが、それしか役に立てない自分を、瀬織は嘆いていた。
「……んなことでへこんでいる暇があったら、さっさとウチを回復させろっちゃ!」そんな瀬織を叱咤するように、背後からあの彼女の声が聞こえた。
「し……しまった!?」激しい連続攻撃を避け続けている優里。その疲労は彼女の足を鈍らせる。足がもつれて、その場に腰をついてしまった。そこへ触手の先端、ワニのような大きな口が襲う。
 グザッ!! 肉を貫くような鈍い音。
 優里の眼前には、触手の口を赤く鋭い爪で貫いた、千佳の姿が!!
「千佳さん!?」「千佳っ!?」優里と凛が、歓喜の声を上げる。
「高嶺さん、ツンデレ姫(瀬織)から話は聞いた。なんか、あの怪物をひっくり返すような攻撃をせないかんちゃろ? だったら、攻撃の惹きつけ役は、ウチにまかせろっちゃ!」牙のような八重歯を剥き出し、ニヤリと笑う千佳。
「ありがたいわ。でも、千佳さん。貴女……まだ身体は回復しきっていないんじゃ?」
「ラーメンを作るくらいの時間なら、まだ全速力で動けるっちゃよ!」
「ふふっ!三分ってとこね。それだけあれば、十分だわ」優里はそう言うと、薙刀を水平に構え、その柄をゆっくりと引く。
「ツンデレ姫、ウチが全力で動けるように、あの回復の碧い霧を、ぶち撒けろ~~ッ!!」千佳はそう叫ぶと、右手の灼熱爪を振り上げ、妖木妃に突進して行った。

妖魔狩人若三毛凛if第20話05

 それは、四人の妖魔狩人が、気持ちを一つにした瞬間であった。
「任せろっ!!」瀬織はそれに応えるように、千佳の周りに碧い水泡を散りばめる。水泡が弾けるたびに、わずかだが千佳の体力が回復していく。
 千佳は、誰にも真似できないような素早い動きで妖木妃の攻撃を避け、時折灼熱爪で攻撃を加える。
 その間、優里は薙刀の先端に、自身の白い霊力を集中させる。
 凛も渾身の霊力を込めた霊光矢を形成し、その時に備える。
「千佳さん、敵の注意を左側に惹きつけて!!」
「了解~っ!!」優里の指示に千佳は、妖木妃の身体を引き裂きながら左へ回った。全ての触手が千佳を狙う。同時に優里が、その反対側を狙って薙刀を突き出し、突進を始めた!
「今日、二発目の……!?」思わず身を乗り出す、凛と瀬織。「北真華鳥流奥技! 不撓穿通!!」
 白い光の刃が、妖木妃の下半身……右半分を、バッサリと刳り落とした!!
「グォォォォォッ!!」地獄の亡者のような悲鳴を上げ、重心を崩した妖木妃は、地響きを上げながら身体を傾ける。
「狙うは、一撃っ!!」凛は、一撃で花の中央を狙えるように、拝殿の屋根へ駆け上った。慌てず冷静に、ゆっくりと弦を引く。
「今だっ!!」指を離した瞬間、過去一番の眩い光を放ちながら、青白い閃光は一直線に突き進む!!
 閃光は、カッと見開いた単眼を、真っ直ぐ貫いていった!!
 優里や瀬織の読みは正解だった。その単眼の奥に妖木妃の核があったのだ。巨大な花の中心から、青白い粒子がウィルスのように全身を覆いはじめ、やがて少しずつ花が散るように崩れていく。
「お……おのれ、黒い妖魔狩人……」そんな中、重く低い声が辺りを包んだ。
 すると、何を血迷ったのか、全ての触手の口を自分の全身に向け、一斉に黒炎弾を繰り出した。
 ゴォォォォォッ!! 激しい黒い炎が全身を覆う。
「お前が……、お前が全ての……元凶だ。お前さえ……いなければ、ワシは……ワシは……」呪いの呻き声を上げながら、潰れた単眼は凛の姿を捉える。そして、炎に包まれたその身体を引き摺り、凛に向かって突進していった。
「ワシと……一緒に、死ねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「凛ちゃん!」「凛ーっ、逃げろっちゃ!!」
 優里、千佳。二人の声に頷き、慌てて拝殿の屋根から飛び去ろうとする凛。だが……、ここへ来て疲労が彼女を襲った。
 もつれた足を滑らせ、拝殿から真っ逆さまに落下したのだ!!
 ガンッ!! 激しく大地に叩きつけられ、鈍重な痛みが全身を襲う。しかも、当たりどころが悪かったのか、その場からなかなか起きあげれそうにない。
 優里、千佳、瀬織が凛を助けようと走りだすが、火塗れの妖木妃は凛の直前まで来ていた!!
「若三毛凛~~~っ!!」
 もはや、これまでか!? と誰もが思った瞬間!!
 身動き取れないはずの凛が、まるで重力に逆らうように宙に浮き、風のように飛び去っていったのだ!!?
「な……なんだとっ!?」突進を止められない妖木妃は、そのまま拝殿に激突!
 アッという間に黒い炎は拝殿にも飛び火し、妖木妃諸共……空を焦がすような、高い火柱となった。
 不可思議にも、妖木妃の突進を避けることのできた凛。そのまま優里たちの足元に、滑り降りるように辿り着いた。
「いったい、どういう事だ? 若三毛凛!?」狐につままれたような顔で、話しかける三人。
「わ……わからない……」凛も、呆然としたまま自身の身体を見つめなおす。
「あっ!?」そして、身体に纏わりついている何かを見つけた。それは目を凝らして見ないと判らない程の、細い、細い一本の糸。触ると、ベタベタと粘着力がある。
「まるで、蜘蛛の糸のようね……」優里がそう呟いた瞬間、「ま……まさか、彼女が……!?」凛の表情が、パァ~ッと明るくなった。
 慌てて辺りを見渡す。すると森の一本の木から、何者かが飛び去る気配が……。
(ありがとう……、てんこぶ姫!)凛は、嬉しそうに目を細めた。


「ま、まさか……妖木妃様が倒されるとは!?」
 はぁ…はぁ…と、息を切らしながら森の中を駆け抜けていく長髪の男、白陰。日本妖怪の援軍により戦況が怪しくなったことを報告に来た彼は、そこで妖木妃の最後を目の当たりにした。よもやここまでと、ただ一人……日本離脱しようと走り去る。
「いや、待て! 妖木妃がくたばったことは、身共にとって好都合かもしれぬ。妖魔狩人たちは勝利を確信し、油断しておるだろう。そこへ、新たに本国から数百の妖怪を引き連れ襲いかかれば、完全に形勢は逆転され、この地で身共は妖怪の王となることができる!!」そう発想の転換をしていくうちに、自然と笑いがこみ上げてきた。
「一刻も早く新たな軍勢を組み直し、再攻撃を仕掛けなければ~ぁ! さぁ、更に忙しくなるぞぉーっ!!」よほど嬉しさが抑えきれなかったのだろう。もはや心の声は、完全にダダ漏れ。あまりの声の大きさに、戦いを中断し、振り返る妖怪たちもいたほどだ。
「楽しそうなところをスマンが、お前を本国(くに)へ帰すわけにはいかん」
 そう言って白陰の前に立ち塞がる、一人の女性の姿が。180センチメートルはあろうかと思える長身で、グラマラスな身体つき。露出度の高い服装。そして何より特徴的なのは、さらりと広がりを見せる……銀色のボブヘアー。
「何者だ?」立ち止まり、鋭い目つきで見返す白陰。
「お前と顔を合わせるのは初めてだったな。アタシは禰々子河童の祢々。妖怪仲間には『銀髪の頭領』とか呼ばれているが、そうだな……、それならいっそ……『銀の妖魔狩人』って通名にでもしておこうか!?」
「銀の妖魔狩人!? フッ…、所詮は河童とか言う水辺で暮らす下等な妖怪種族か。 …で、その河童が身共に何のようだ?」
「先程も言っただろう? お前を本国(くに)へ帰すわけにはいかないと。大人しく拘束されるならば、良し。さもなければ……」祢々はそう言うと、手にした金棒を白陰に向けた。
「ふんっ!河童ごときが、身共に戦いを挑むか? 愚かな」白陰はそう答え、腰に備えた剣を引き抜く。そして、間髪入れず祢々を斬りつけた!
 キンッ!! 高い金属音が鳴り響く。白陰の剣と祢々の金棒が、ぶつかり合う音。受けた剣を横に流し、そのまま白陰の胴を払うように金棒を振る祢々。一歩身を引き、寸前で金棒を避ける。そして剣で突き刺すように、再び飛び込む。
 祢々と白陰の攻防。それは互いにひけを取らない武術と武術の戦い。
(ま…まさか、こんな下等妖怪が、身共と互角に渡り合えるとは……!?)
(さすがは、幹部妖怪。少しも気が抜けない!)
 長いような……、それでいて短いような時が流れ、疲れが見え始めた二人。そのためか、白陰が体勢を崩し、大きく尻もちを着くように倒れこんだ。「今だっ!!」その隙を見逃さない祢々。金棒を大きく振りかぶり、そのまま白陰目掛けて叩きつける!
「!?」祢々が違和感を感じると同時に、ニヤリと口元を緩ませる白陰。
 地に倒れこんだ白陰の左腕は長く伸びる白蛇へと変化し、祢々の足元から背後へ回ると、そのまま背中を突き刺していた。
「油断したな……、河童女!」冷やかな目と不敵な笑み。
「そう言えば、お前はあの嫦娥に対しても、背後から狙い撃ちしたらしいな……」逆に怒りの篭った目で睨み返す祢々。
「ふん! 勝負はな、勝てばいいのだよ……勝てば!!」更に嬉しそうに、口の緩みが大きくなる白陰。
「そうか、それを聞いて安心したよ……」
「うん!?」
「いくら下衆なクソ野郎でも、同じ妖怪をブチのめすのは、少々抵抗があったからな。でも、これで心置きなく、てめぇーをブチのめすことができる!!」
 祢々はそう言うと、背中に突き刺さった白蛇を掴み、そのまま白陰諸共振り回すと、大きな弧を描いて大地に叩きつけた。「ゲボッ!!」その強烈なダメージに、激しく吐血する白陰。
「な……なんて、バカ力なんだ……。いや、それより……背を貫いたのに、なぜ……平気なんだ!?」
 その言葉に祢々は振り返り背を向けると、「アタシたち河童族の背中には、甲羅っつうもんがあってね。アンタが貫いたのは甲羅の一部で、身体内部まで届いていなかったのさ!」くり抜かれたように穴の開いた甲羅を見せた。
「河童……。たかが、河童のくせにぃぃぃぃぃぃぃっ!!」悔しそうに、金切り声を上げる白陰。
「その河童の手にかかり、くたばりな…クソ野郎!!」祢々はそう言って垂直に上げた金棒を、そのまま真っ直ぐ白陰の腹部目掛けて、突き落とした!
「あ…ぐぐ……っ」突き刺さりはしないものの、それでも内臓の一つは叩き潰されたような吐血。だが、まだ……わずかに息をしており、死に至ることはなかったようだ。


 その頃、ムッシュの言っていた犬乙山の麓の洞窟から、女児三人と女性警察官である百合を救出したセコと猪豚蛇。四人とも、あまりに衰弱した身体だったため、柚子村内ではなく、丘福市の病院へ搬送された。もっともこれは、妖怪料理の下ごしらえという、普通ではあり得ない症状であるため、内密に瀬織の息のかかった病院へ運ばれたというのが真相だ。
 また、首謀者の妖木妃。そして、その幹部が全滅したと聞くと、中国妖怪たちは日本妖怪との決着をかなぐり捨て、足早に本国へ逃げ帰ったそうだ。

 こうして凛たち妖魔狩人は、半年に渡って続いた中国妖怪の侵略を、見事食い止めたのだ。
 それは暑い日々が過ぎ、涼しく爽やかな風に切り替わる、秋の始まりでもあった。

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 11:13 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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