2ntブログ

自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

妖魔狩人 若三毛凛 if 第20話「 終結~戦いの終わり~ -終章-」

エピローグ


 妖木妃との戦いが終わって一週間後。霊獣麒麟が眠る祠の前で、凛は一人、手を合わせていた。よく見ると、祠の前には、金色に塗った小さな鳥の像が立てかけてある。
「あれから一週間。何事もなく平穏な日々が続いているよ。日笠先輩と初芽先輩は、受験勉強に専念。風花さんとシュナさんは、瀬織さんから霊力を貰いながら、まだ柚子村に滞在している。優里お姉さんは、大学受験に備えて予備校に通いだしたし。千佳は相変わらず、ワガママ言い放題! 一緒に寝てあげたら、荒い息しながら触ってくるし!!」少しずつ口調が荒ぶる凛。だが、フトっ……我に返ったように軽く溜息をつくと、「だから、麒麟さんと一緒に、安心して眠ってね……。金鵄!」そう告げた。
 そして、少しだけ。本当に気づくか……気づかないか、わからない程度の微笑みを見せた。
「でも……、やっぱり、もっと早く言ってほしかったな。僅かな命しか残されていなかったことを……」
(もし言っていたら、君は僕にあの最後の戦いをさせたかい?)
 フトっ、金鵄の声が聞こえた気がした。凛は軽く首を振った。

 あの妖木妃たちとの戦いが終わった直後。凛の足元に舞い降りた金鵄は、そのままバタリと倒れ伏せてしまったのだ。
「どうしたの…、金鵄……っ!?」慌てて金鵄の身体を手に取る凛。だが、その身体は今にも消えそうに、半透明と化している。
「どう……やら、ここで……お別れのようだよ、凛……」
「どうしたの!? なんで、消えかかっているの!?」
「知っているだろう……? 僕は本当は……実体の無い、霊力の……塊。だけど……その霊力は、もう……全て使い果たしてしまった……んだ」
「そ…そんな!? 今朝はまだ、大丈夫そうだったじゃない!? なのに、そんな……急激に霊力を消耗するなんて……」ここまで言うと、凛はハッと何かを思い出した。
「弦……、ゲイの弓の弦になったとき……?」
「そう……。まぁ、ここ数日前から……危ないことは気づいていたけど……、一気に消耗したのは……、やっぱり弦かな……」金鵄はそう言うと、照れ隠しのように目を細めた。
「なんでよ!? なんで、そんな大事なことを言わないの!? それがわかっていれば、わたしは……」そう叫ぼうとする凛の口を、金鵄は消えかかった翼で覆い隠した。「その先を……言っちゃだめだよ、凛……。こうなることも、僕の……使命だったんだ」
「金鵄……」
「でも、君と……出会えた、この半年間……。僕は……本当に幸運だった。日本を……守れた。そういう……ことだけでなく、個人的にも……ね!」
 金鵄はここまで言うと、側で見守っている優里たちに視線を送った。
「優里……。これからも……凛を守って……くれ」金鵄の言葉に優里は無言で頷く。その目には涙が零れている。
「千佳……。凛の……心の支えになれるのは、君だ……。頼む……よ」「任せておくっちゃ!身も心も支えたるちゃっよ!」千佳はそう返しながら、ニカっと笑った。
「瀬織……。君の知識が凛には……必要だ。これからも……知恵を貸してやってくれ……」「承知!」瀬織は、そう一言だけ返した。
 そこまで聞き取ると、金鵄は嬉しそうに微笑み……、そして静かに消えていった。
「き……金鵄……?」それ以上、言葉が出ない凛。代わりに出てくるのは、溢れるような大粒の涙。
 やがて、その感情が一気に高まると、腰を抜かしたようにその場に座り込み、頭を抱え込んで泣き崩れた。
 それは、普段あまり感情を表にしない凛の、初めて見せた慟哭だった。

「わたしね、今でも金鵄と会えて良かったと思っている。出会う前のわたしは、日々……流されるように日常を過ごし、霊が見えるという能力も、内心では恨めしく思っていた。でも、その能力のお陰で金鵄と出会えたし、みんなと一緒に村を……、日本を守ることができた。あの出会いが、わたしを一転させてくれたんだ」
 凛はそう言うと、辺りを見渡すように振り返った。木々の深い緑色。見上げるような高い青い空。今、その景色を感じ取れる。それがどれほど……嬉しいことか。
「また来るね、金鵄。今度来る時は、優里お姉さんも千佳も瀬織さんも……。みんな連れて来るからね」
 そう言って優しく微笑む凛。それは、まだあどけない、十三歳の少女の笑顔であった。


妖魔狩人若三毛凛if第20話E01



 妖魔狩人 若三毛凛 if  終わり

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 11:13 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://kenitiro.blog.2nt.com/tb.php/434-5b063529

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT