2015.12.23 Wed
マニトウスワイヤー 第七章 闇からの襲撃
「あの虫けら妖怪と天女の子の足取りは、あれからサッパリなの?」
とあるファミレス風の一室で、アンナ・フォンはベーコンを頬張りながら話していた。
その側には、女性の皮膚で作った面を被っているクエロマスカラ。
何の肉を使っているのか? 聞くのが怖いハンバーグやベーコンを作っている、長身の年配男性ドレイトン。
そして・・・・
「今日は良い人形が手に入ったから、久しぶりにメンテナンスをしようかしら?」
全身にマントを羽織った人物、パペット・マスターは一人の若い女性にそう告げた。
野球のチーム名とロゴが入ったTシャッツにミニスカート。
どうやら、その若い女性はチームのマスコット兼チアガールのようだ。
いや、若い女性には違いないが、よく見ると・・何かが違う・・。
光沢のある硬質の肌。 湿りの無い唇・・・・。 そして、まるでガラス球のような瞳。
それは若い女性の形をした人形、マネキン人形である。
パペット・マスターは人形の頭部を両手で支えるように握ると、ゆっくりとその首を捻りだした。
一回転……二回転と捻ると、人形の首はスポっと胴体から外れた。
ゴロリと転がる美しい頭部。
パペット・マスターは嬉しそうに頷くと、羽織っていたマントを取り払った。
そこには眩いほどの全裸の女性の肉体が・・・・。
いや、よく見るとツヤツヤに輝く肌。だが、お世辞にも柔らかそうとは言えず、むしろ硬質化しているように見える。
そして・・その頭部はツルツルのスキンヘッド。ガラス細工のような瞳・・・。
そうなのだ。
パペット・マスターの全身も、まさしく・・マネキン人形の身体。
だが、恐ろしい光景はそれだけでは留まらない。
パペット・マスターは自身の頭部も両手で掴み、二~三回転させるとスッポリと引きぬいたのだ。
そしてその頭部を、頭を失ったマネキン人形の胴体に乗せた。
同じように二~三回転させ頭部と胴体をしっかり固定させると、それまで動いていたパペット・マスターであった身体が、崩れるように倒れた。
そして新たに首を付け替えた身体がコキコキと動き始める。
「メンテナンス終了・・・。定期的に替えていかないと動きは悪くなるし、なにより飽きるわよね」
パペット・マスターはそう言って楽しそうに微笑み、再びマントを頭から羽織った。
「さて、次は新しい人形たちの作成ね・・・」
彼女が振り向いた先には先程と同じコスチュームを着たチアガールが、四人程立ち尽くしている。
しかし先ほどと違うのは、こちらの四人は生きている人間の女性だということ。
平均年齢21歳の健康的な女性たち。
パペット・マスターは一番左にいるサンバイザーを被ったポニーテールの女性の前に立った。
彼女は先程取り外された人形の頭部から目を離せずに、ガタガタと震えている。
「んっ!?」
なにやらツンと鼻につく匂いを感じパペット・マスターは視線を下げると、彼女の太腿には湯気が湧き上がり黄金色の液体が滴っていた。
「そうか・・・。先ほどの人形は元々貴方の大切な友人・・だった・・娘(こ)よね。貴方はあの娘を人形にするところから、こうして私の身体になるまでの一部始終を見ていたからね。それで恐怖しているのね?」
そう言うとパペット・マスターは、その黄金色の液体を指先ですくい取り自身の口でしゃぶり始める。
酸っぱいような、しょっぱいような味が口の中に広がる。
「お前の恐怖の味。とても可愛くていいわ! 特別にもっとも可愛らしい人形に変えてあ・げ・る!」
パペット・マスターはそう言うと、彼女の口に自分の口を覆い被せた。
チュパッ・・チュパッ・・と口内で舌と舌が絡みあう。
「あ・・あ・・・っ・・」
先ほどまでとは打って変わったように、青ざめていた彼女の顔色が薄桜色に変わっていった。
更にパペット・マスターの両手は、彼女の胸や尻そして股間を弄り始める。
「あぁぁ・・ん・」
焦点の定まらない瞳に甘い喘ぎ声・・・。
完全に心も身体の自由も奪われ、為すがままにされていくチアガール。
すると時を見計らったかのように、パペット・マスターは重ねた唇を大きく開き、まるで深呼吸でもするかのように大きく息を吸い込んだ。
まるでバネ人形のように、ブルブル・・と小刻みに震えだすチアガール。
次第に身体の動き自体がぎこちなくなり、更に柔らかそうな肌はプラスチックのように照り輝いていく。
虚ろな瞳もまるで輝羅やかなビー玉のように変わって。
数分後には、彼女は一体のマネキン人形と化していた。
そう・・・。
パペット・マスターは生きている人間の口からその魂を吸い込み、残った肉体を自由に人形に変えることができる。
あのバレンティアの友人ルゥも、こうしてマネキン人形にされていたのだ。
「うふふ・・。いい出来だわ~、可愛い!」
それを間近で見ていた他のチアガールたち。 怯える彼女達に視線を移したその時・・・・
「パペット・マスター! さっきからアタクシの話・・・聞いているの!?」
アンナ・フォンはパペット・マスターの肩をマント越しに掴み怒鳴りつけた。
「?」
感情の欠片も無いビー玉のような瞳で睨み返すパペット・マスター。
「街中に放っている人形たちは、まだ天女の子の足取りと掴めないのか?・・って、聞いているのよ!」
「大凡の見当はついているわ・・・」
「なら何故すぐに捕らえに行かないの!?」
「探せ・・とは聞いていたが、捕らえてこい・・とまでは聞いていない」
「その位……言わなくてもわかるでしょ!? 馬鹿なの~っ、あなた!?」
アンナ・フォンがそう言った瞬間・・!
パペット・マスターの片腕がアンナ・フォンの首を掴み、そのまま吊るし上げた。
「貴女・・一つ大きな勘違いをしていない? 私もサンダーバードも。そしてここに居る誰もが、貴女ごときに命令される筋合いは無いのよ? 貴女の背中にマニトウスワイヤー様が『宿っている』から、協力してあげているだけ」
そう言いながら首を掴む力を更に強める。
「二度とでかい口を叩いてみなさい。貴女の肉体を傷つけず、精神だけ殺す事も可能なのだからね?」
パペット・マスターの言葉に涙目のアンナ・フォンは無言で何度も頷いた。
その様子を面白そうに眺めていたドレイトン。
「まぁ、喧嘩はそこまでにして。その・・天女の子を捕らえにミーとエイダの二人で行ってきましょう」
そう言って立ち上がり、美味そうに焼きたてのハンバーグを食しているクエロマスカラに声をかけた。
「エイダ、ちょっと仕事に行くよ。ついておいで・・・」
「・・・・」
ドレイトンの言葉にクエロマスカラはしばらく名残惜しそうにハンバーグを眺めていたが、やがて決心したように立ち上がった。
「出来ましたわ!」
ミシンの前で黙々と作業をしていた都は、嬉しそうに声をあげた。
早速縫い終えた服を手に取ると、フェアウェイの元に駆け寄った。
「うん、予想通り可愛いですわ!」
フェアウェイに服を着せてやりその姿を確かめて、都は満面の笑みを浮かべた。
「どれどれ・・・?」
香苗と女将も寄ってきてその姿を眺める。
「あら・・、とてもお似合いね」
「たしかに可愛いね~~♪ でも・・・」
香苗はそこまで言うと苦笑する。
「可愛いけど・・・。この真夏に、なんで『ポンチョ』なの?」
都が作ったのは、身体をスッポリ包む可愛らしいポンチョであった。
「この子のネイティブ・アメリカンな雰囲気に、一番ピッタリ合うと思ったからですわ」
「ハハ・・、なるほどね・・・」
「それに・・・・」
「ん・・?」
都は優しくフェアウェイの頭を撫でてやると、
「あの方がこの子を守るには、身を包んであげるものがいいと思うし・・」
と、微笑んだ。
その時・・・!!
ガガガガガガッッッ!!
激しいエンジン音が店内に響き渡ると、入り口の扉が大きく×印で切り裂かれていく。
前に出て待ち構える女将。
ガーンッ!!
激しく扉を蹴り破り、チェーンソーを手にしたクエロマスカラが入り込んできた。
「この店は幾重もの結界と迷路を組み合わせているから、簡単には辿りつけないはずなのに・・・」
日頃冷静な女将も、さすがに驚きを隠せなかった。
「やはりここにいましたね・・・天女の子」
クエロマスカラの背後から長身の年配男性ドレイトンが姿を見せる。
「お客様、ここは反物屋ですよ。 女の子を買いたいのなら色街へ行かれたほうがいいですわ」
「いやいや、我々は買い物に来たのではない。そこにいる天女の子を返して頂きたいだけだ」
「その子はうちの常連さんのお連れ様・・。見も知らぬ方にお渡しはできません。お引取りください」
凛とした態度で一歩も引かない女将。
「ただでは帰れない・・・と言ったら?」
「その時は不本意ですが・・・・」
そう言いながら両手を水平に広げると、
「強制退場していただきます!」
クエロマスカラ、ドレイトンに向けて振りかざした。
すると店中に展示されていた反物が一斉に宙に浮き、クエロマスカラ達に襲いかかる。
反物に包まれるように動きを封じられる二人。
「都さん、今のうちに裏口から!」
女将の言葉に、都はフェアウェイと香苗を連れて裏口から飛び出した。
まるでミイラのように、反物でグルグル巻になり拘束されたクエロマスカラとドレイトンの二人。
「このまま、絞め殺してやるわ・・・」
更に力を込めるように反物を縛り上げていく女将。
グィィン~グィィィ~ン!!
突然エンジン音が鳴り響くと、ズサッ!ズサッ!とクエロマスカラを包み込んでいた反物が切り刻まれていく。
「ま・・まさか、私の妖力を篭めた反物を・・・!?」
自身を縛り付けていた反物を切り落とすと、ドレイトンを包んでいる反物も切り刻んでいくクエロマスカラ。
「なるほど……。 この国流で言う、付喪神系の妖怪ですか?」
女将の正体をあっさり見破ったドレイトン。
「もう・・充分永く生きたでしょう。そろそろ、あの世に戻りなさい」
その言葉と同時に、女将に向ってクエロマスカラが突進してきた。 クエロマスカラの激しい当りに、店の外まで吹き飛ばされる女将。
たったの一撃だが、かなりのダメージを負ってしまった。
更に手にしたチェーンソーを振り上げ女将に狙いを定める。
「くっ・・・」
クエロマスカラがチェーンソーを振り下ろそうとした瞬間!
その手に細い光る物が巻き付いた。
「都さんっ!?」
女将の目に飛び込んできたのは、ビルの壁に這いながら糸を引っ張る都の姿。
「アレですか? 我々の邪魔をする蜘蛛の妖怪というのは・・・。エイダ、先にあの蜘蛛娘を捕らえて頂いちゃいなさい」
ドレイトンはそう言ってニヤリと笑った。
「蜘蛛なんか食べても美味しくなさそう・・・」
だが、当のクエロマスカラは渋々とした表情。
「あら!? 脂身ばかりのおデブさん体型の方に、そんな言われ方するとは心外ですわ!」
負けずと言い返す都。
「デ・・デ・・デ・・デ・・、デブって、イウナ~~~~~っ!!」
それまで無表情に近かったクエロマスカラに、明らかに怒りの色が見える。
「誤解ですわ! わたくし・・貴女がデブだなんて、一言も言っておりません。 デブの方が貴女の体型によく似てらっしゃると言っているだけですわ!」
「コ・・・コ・・・殺すっっっっ!!」
沸騰したヤカンの様に、真っ赤になって怒り狂うクエロマスカラ。
腕に巻き付いた糸を、そのまま力任せに引き寄せる。
都も成人男性を片腕で釣り上げる程の力を持っているが、こと・・相手が妖怪や化け物だと勝手が違う。
都の力など魔物の世界ではまだ非力な方だ。
簡単に引き寄せられ、路上に思いっきり叩きつけられてしまった。
「うぐっ・・・!」
口から血が吹きこぼれる。いくら妖怪とはいえ相当なダメージだ。
更にチェーンソーを振り回しながら駆け寄ってくるクエロマスカラ。
都はよろめきながらも手短な建物に糸を貼り付けて、糸を手繰りながら移動して一旦その場から逃げ出した。
頭に血の上ったクエロマスカラは、見境なく後を追っていく。
都の逃げ込んだ場所は路地裏から出た大通り。 夜の十時を過ぎているとはいえ、さすがに商業都市である丘福市。 大通りでは、まだまだ多くのトラックや自動車が走っている。
シュッッッ!!
追ってくるクエロマスカラの両手両足に糸を巻付けそのまま高く飛び上がり、建築中の十二階建てビル屋上に設置されているクレーンの先に糸を潜らせた。
その後、すぐにトレーラー型の大型トラックの荷台にその糸を貼り付ける。
それは大型トラックの力を借りて、クエロマスカラを宙吊りにする作戦だ!
さすがのクエロマスカラも500馬力程のパワーにいきなり引き寄せられたらどうにもならない。
ピンと張った糸は一気にクレーンを伝ってクエロマスカラの身体を引き上げ、屋上近くに宙吊りにした。
それを見届けると、都はトラックに繋がっていた糸を一気に切り裂く。
十二階建ての高さからクエロマスカラは真っ逆さまに落ちていった。
ズシィィィ―ン!!
粉塵と化したアスファルトが舞い、激しい振動が響き渡る。
クレーターのように陥没した路上の真ん中で、倒潰したクエロマスカラが沈黙していた。
「やれやれ・・。しばらくは肉まんを食べる気も失せますわね」
勝利を確信した都は小さな溜息をつき、その場を離れようとした。
その時・・・
「!?」
都の身体が急にふわりと浮き上がり、そのまま逆さ吊りとなった。
「ま・・まさか・・・、たしかに殺したはず・・なのに!?」
都の目に映ったのは逆立ちしたクエロマスカラ。いや、都が逆さまに釣り上げられているので、両手を真上に上げ仁王立ちしたクエロマスカラだ。
「グフゥゥゥゥッ・・・・」
大きく荒い息を継ぎながらクエロマスカラはそのまま都を振り上げ、勢いをつけて路面に叩きつける!!
「ゲボッ!!」
激しく吐血する都。
ガンッ!! ガンッ!! と、二度・・三度、路上に都を叩きつけた。
クエロマスカラは、まるでボロ雑巾のようにズタズタとなり失神した都の身体を確認すると、クン・・クン・・クン・・・と匂いを嗅ぎ、
「やっぱり、旨ぐなさそうだ・・・」
とその場に放り捨てた。
「蜘蛛のお姉ちゃん・・!!?」
路地裏から都の敗北を目のあたりにしたフェアウェイと香苗。
「お姉ちゃん、死んじゃいや~ぁ!!」
「ダメだ、逃げるんだ!!」
都の元へ駆け寄ろうとするフェアウェイを必死で制止する香苗。
その背後から・・・
「見つけましたよ♪」
香苗が振り返ると、そこには長身の年配男性の姿が。 ドレイトンは嬉しそうにフェアウェイに手を伸ばす。
「この子に触るなぁぁっ!!」
香苗が懸命に対抗するが、ヌイグルミであるこの姿では当然勝ち目がない。 簡単に放り投げられ、壁に叩きつけられた。
「フェ・・ア・・・ウェイ・・」
気絶寸前の香苗の目に入ったのは、クエロマスカラに抱え上げられるフェアウェイの姿であった。
第八章 丘福ドームスタジアムへ続く。
================================
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とあるファミレス風の一室で、アンナ・フォンはベーコンを頬張りながら話していた。
その側には、女性の皮膚で作った面を被っているクエロマスカラ。
何の肉を使っているのか? 聞くのが怖いハンバーグやベーコンを作っている、長身の年配男性ドレイトン。
そして・・・・
「今日は良い人形が手に入ったから、久しぶりにメンテナンスをしようかしら?」
全身にマントを羽織った人物、パペット・マスターは一人の若い女性にそう告げた。
野球のチーム名とロゴが入ったTシャッツにミニスカート。
どうやら、その若い女性はチームのマスコット兼チアガールのようだ。
いや、若い女性には違いないが、よく見ると・・何かが違う・・。
光沢のある硬質の肌。 湿りの無い唇・・・・。 そして、まるでガラス球のような瞳。
それは若い女性の形をした人形、マネキン人形である。
パペット・マスターは人形の頭部を両手で支えるように握ると、ゆっくりとその首を捻りだした。
一回転……二回転と捻ると、人形の首はスポっと胴体から外れた。
ゴロリと転がる美しい頭部。
パペット・マスターは嬉しそうに頷くと、羽織っていたマントを取り払った。
そこには眩いほどの全裸の女性の肉体が・・・・。
いや、よく見るとツヤツヤに輝く肌。だが、お世辞にも柔らかそうとは言えず、むしろ硬質化しているように見える。
そして・・その頭部はツルツルのスキンヘッド。ガラス細工のような瞳・・・。
そうなのだ。
パペット・マスターの全身も、まさしく・・マネキン人形の身体。
だが、恐ろしい光景はそれだけでは留まらない。
パペット・マスターは自身の頭部も両手で掴み、二~三回転させるとスッポリと引きぬいたのだ。
そしてその頭部を、頭を失ったマネキン人形の胴体に乗せた。
同じように二~三回転させ頭部と胴体をしっかり固定させると、それまで動いていたパペット・マスターであった身体が、崩れるように倒れた。
そして新たに首を付け替えた身体がコキコキと動き始める。
「メンテナンス終了・・・。定期的に替えていかないと動きは悪くなるし、なにより飽きるわよね」
パペット・マスターはそう言って楽しそうに微笑み、再びマントを頭から羽織った。
「さて、次は新しい人形たちの作成ね・・・」
彼女が振り向いた先には先程と同じコスチュームを着たチアガールが、四人程立ち尽くしている。
しかし先ほどと違うのは、こちらの四人は生きている人間の女性だということ。
平均年齢21歳の健康的な女性たち。
パペット・マスターは一番左にいるサンバイザーを被ったポニーテールの女性の前に立った。
彼女は先程取り外された人形の頭部から目を離せずに、ガタガタと震えている。
「んっ!?」
なにやらツンと鼻につく匂いを感じパペット・マスターは視線を下げると、彼女の太腿には湯気が湧き上がり黄金色の液体が滴っていた。
「そうか・・・。先ほどの人形は元々貴方の大切な友人・・だった・・娘(こ)よね。貴方はあの娘を人形にするところから、こうして私の身体になるまでの一部始終を見ていたからね。それで恐怖しているのね?」
そう言うとパペット・マスターは、その黄金色の液体を指先ですくい取り自身の口でしゃぶり始める。
酸っぱいような、しょっぱいような味が口の中に広がる。
「お前の恐怖の味。とても可愛くていいわ! 特別にもっとも可愛らしい人形に変えてあ・げ・る!」
パペット・マスターはそう言うと、彼女の口に自分の口を覆い被せた。
チュパッ・・チュパッ・・と口内で舌と舌が絡みあう。
「あ・・あ・・・っ・・」
先ほどまでとは打って変わったように、青ざめていた彼女の顔色が薄桜色に変わっていった。
更にパペット・マスターの両手は、彼女の胸や尻そして股間を弄り始める。
「あぁぁ・・ん・」
焦点の定まらない瞳に甘い喘ぎ声・・・。
完全に心も身体の自由も奪われ、為すがままにされていくチアガール。
すると時を見計らったかのように、パペット・マスターは重ねた唇を大きく開き、まるで深呼吸でもするかのように大きく息を吸い込んだ。
まるでバネ人形のように、ブルブル・・と小刻みに震えだすチアガール。
次第に身体の動き自体がぎこちなくなり、更に柔らかそうな肌はプラスチックのように照り輝いていく。
虚ろな瞳もまるで輝羅やかなビー玉のように変わって。
数分後には、彼女は一体のマネキン人形と化していた。
そう・・・。
パペット・マスターは生きている人間の口からその魂を吸い込み、残った肉体を自由に人形に変えることができる。
あのバレンティアの友人ルゥも、こうしてマネキン人形にされていたのだ。
「うふふ・・。いい出来だわ~、可愛い!」
それを間近で見ていた他のチアガールたち。 怯える彼女達に視線を移したその時・・・・
「パペット・マスター! さっきからアタクシの話・・・聞いているの!?」
アンナ・フォンはパペット・マスターの肩をマント越しに掴み怒鳴りつけた。
「?」
感情の欠片も無いビー玉のような瞳で睨み返すパペット・マスター。
「街中に放っている人形たちは、まだ天女の子の足取りと掴めないのか?・・って、聞いているのよ!」
「大凡の見当はついているわ・・・」
「なら何故すぐに捕らえに行かないの!?」
「探せ・・とは聞いていたが、捕らえてこい・・とまでは聞いていない」
「その位……言わなくてもわかるでしょ!? 馬鹿なの~っ、あなた!?」
アンナ・フォンがそう言った瞬間・・!
パペット・マスターの片腕がアンナ・フォンの首を掴み、そのまま吊るし上げた。
「貴女・・一つ大きな勘違いをしていない? 私もサンダーバードも。そしてここに居る誰もが、貴女ごときに命令される筋合いは無いのよ? 貴女の背中にマニトウスワイヤー様が『宿っている』から、協力してあげているだけ」
そう言いながら首を掴む力を更に強める。
「二度とでかい口を叩いてみなさい。貴女の肉体を傷つけず、精神だけ殺す事も可能なのだからね?」
パペット・マスターの言葉に涙目のアンナ・フォンは無言で何度も頷いた。
その様子を面白そうに眺めていたドレイトン。
「まぁ、喧嘩はそこまでにして。その・・天女の子を捕らえにミーとエイダの二人で行ってきましょう」
そう言って立ち上がり、美味そうに焼きたてのハンバーグを食しているクエロマスカラに声をかけた。
「エイダ、ちょっと仕事に行くよ。ついておいで・・・」
「・・・・」
ドレイトンの言葉にクエロマスカラはしばらく名残惜しそうにハンバーグを眺めていたが、やがて決心したように立ち上がった。
「出来ましたわ!」
ミシンの前で黙々と作業をしていた都は、嬉しそうに声をあげた。
早速縫い終えた服を手に取ると、フェアウェイの元に駆け寄った。
「うん、予想通り可愛いですわ!」
フェアウェイに服を着せてやりその姿を確かめて、都は満面の笑みを浮かべた。
「どれどれ・・・?」
香苗と女将も寄ってきてその姿を眺める。
「あら・・、とてもお似合いね」
「たしかに可愛いね~~♪ でも・・・」
香苗はそこまで言うと苦笑する。
「可愛いけど・・・。この真夏に、なんで『ポンチョ』なの?」
都が作ったのは、身体をスッポリ包む可愛らしいポンチョであった。
「この子のネイティブ・アメリカンな雰囲気に、一番ピッタリ合うと思ったからですわ」
「ハハ・・、なるほどね・・・」
「それに・・・・」
「ん・・?」
都は優しくフェアウェイの頭を撫でてやると、
「あの方がこの子を守るには、身を包んであげるものがいいと思うし・・」
と、微笑んだ。
その時・・・!!
ガガガガガガッッッ!!
激しいエンジン音が店内に響き渡ると、入り口の扉が大きく×印で切り裂かれていく。
前に出て待ち構える女将。
ガーンッ!!
激しく扉を蹴り破り、チェーンソーを手にしたクエロマスカラが入り込んできた。
「この店は幾重もの結界と迷路を組み合わせているから、簡単には辿りつけないはずなのに・・・」
日頃冷静な女将も、さすがに驚きを隠せなかった。
「やはりここにいましたね・・・天女の子」
クエロマスカラの背後から長身の年配男性ドレイトンが姿を見せる。
「お客様、ここは反物屋ですよ。 女の子を買いたいのなら色街へ行かれたほうがいいですわ」
「いやいや、我々は買い物に来たのではない。そこにいる天女の子を返して頂きたいだけだ」
「その子はうちの常連さんのお連れ様・・。見も知らぬ方にお渡しはできません。お引取りください」
凛とした態度で一歩も引かない女将。
「ただでは帰れない・・・と言ったら?」
「その時は不本意ですが・・・・」
そう言いながら両手を水平に広げると、
「強制退場していただきます!」
クエロマスカラ、ドレイトンに向けて振りかざした。
すると店中に展示されていた反物が一斉に宙に浮き、クエロマスカラ達に襲いかかる。
反物に包まれるように動きを封じられる二人。
「都さん、今のうちに裏口から!」
女将の言葉に、都はフェアウェイと香苗を連れて裏口から飛び出した。
まるでミイラのように、反物でグルグル巻になり拘束されたクエロマスカラとドレイトンの二人。
「このまま、絞め殺してやるわ・・・」
更に力を込めるように反物を縛り上げていく女将。
グィィン~グィィィ~ン!!
突然エンジン音が鳴り響くと、ズサッ!ズサッ!とクエロマスカラを包み込んでいた反物が切り刻まれていく。
「ま・・まさか、私の妖力を篭めた反物を・・・!?」
自身を縛り付けていた反物を切り落とすと、ドレイトンを包んでいる反物も切り刻んでいくクエロマスカラ。
「なるほど……。 この国流で言う、付喪神系の妖怪ですか?」
女将の正体をあっさり見破ったドレイトン。
「もう・・充分永く生きたでしょう。そろそろ、あの世に戻りなさい」
その言葉と同時に、女将に向ってクエロマスカラが突進してきた。 クエロマスカラの激しい当りに、店の外まで吹き飛ばされる女将。
たったの一撃だが、かなりのダメージを負ってしまった。
更に手にしたチェーンソーを振り上げ女将に狙いを定める。
「くっ・・・」
クエロマスカラがチェーンソーを振り下ろそうとした瞬間!
その手に細い光る物が巻き付いた。
「都さんっ!?」
女将の目に飛び込んできたのは、ビルの壁に這いながら糸を引っ張る都の姿。
「アレですか? 我々の邪魔をする蜘蛛の妖怪というのは・・・。エイダ、先にあの蜘蛛娘を捕らえて頂いちゃいなさい」
ドレイトンはそう言ってニヤリと笑った。
「蜘蛛なんか食べても美味しくなさそう・・・」
だが、当のクエロマスカラは渋々とした表情。
「あら!? 脂身ばかりのおデブさん体型の方に、そんな言われ方するとは心外ですわ!」
負けずと言い返す都。
「デ・・デ・・デ・・デ・・、デブって、イウナ~~~~~っ!!」
それまで無表情に近かったクエロマスカラに、明らかに怒りの色が見える。
「誤解ですわ! わたくし・・貴女がデブだなんて、一言も言っておりません。 デブの方が貴女の体型によく似てらっしゃると言っているだけですわ!」
「コ・・・コ・・・殺すっっっっ!!」
沸騰したヤカンの様に、真っ赤になって怒り狂うクエロマスカラ。
腕に巻き付いた糸を、そのまま力任せに引き寄せる。
都も成人男性を片腕で釣り上げる程の力を持っているが、こと・・相手が妖怪や化け物だと勝手が違う。
都の力など魔物の世界ではまだ非力な方だ。
簡単に引き寄せられ、路上に思いっきり叩きつけられてしまった。
「うぐっ・・・!」
口から血が吹きこぼれる。いくら妖怪とはいえ相当なダメージだ。
更にチェーンソーを振り回しながら駆け寄ってくるクエロマスカラ。
都はよろめきながらも手短な建物に糸を貼り付けて、糸を手繰りながら移動して一旦その場から逃げ出した。
頭に血の上ったクエロマスカラは、見境なく後を追っていく。
都の逃げ込んだ場所は路地裏から出た大通り。 夜の十時を過ぎているとはいえ、さすがに商業都市である丘福市。 大通りでは、まだまだ多くのトラックや自動車が走っている。
シュッッッ!!
追ってくるクエロマスカラの両手両足に糸を巻付けそのまま高く飛び上がり、建築中の十二階建てビル屋上に設置されているクレーンの先に糸を潜らせた。
その後、すぐにトレーラー型の大型トラックの荷台にその糸を貼り付ける。
それは大型トラックの力を借りて、クエロマスカラを宙吊りにする作戦だ!
さすがのクエロマスカラも500馬力程のパワーにいきなり引き寄せられたらどうにもならない。
ピンと張った糸は一気にクレーンを伝ってクエロマスカラの身体を引き上げ、屋上近くに宙吊りにした。
それを見届けると、都はトラックに繋がっていた糸を一気に切り裂く。
十二階建ての高さからクエロマスカラは真っ逆さまに落ちていった。
ズシィィィ―ン!!
粉塵と化したアスファルトが舞い、激しい振動が響き渡る。
クレーターのように陥没した路上の真ん中で、倒潰したクエロマスカラが沈黙していた。
「やれやれ・・。しばらくは肉まんを食べる気も失せますわね」
勝利を確信した都は小さな溜息をつき、その場を離れようとした。
その時・・・
「!?」
都の身体が急にふわりと浮き上がり、そのまま逆さ吊りとなった。
「ま・・まさか・・・、たしかに殺したはず・・なのに!?」
都の目に映ったのは逆立ちしたクエロマスカラ。いや、都が逆さまに釣り上げられているので、両手を真上に上げ仁王立ちしたクエロマスカラだ。
「グフゥゥゥゥッ・・・・」
大きく荒い息を継ぎながらクエロマスカラはそのまま都を振り上げ、勢いをつけて路面に叩きつける!!
「ゲボッ!!」
激しく吐血する都。
ガンッ!! ガンッ!! と、二度・・三度、路上に都を叩きつけた。
クエロマスカラは、まるでボロ雑巾のようにズタズタとなり失神した都の身体を確認すると、クン・・クン・・クン・・・と匂いを嗅ぎ、
「やっぱり、旨ぐなさそうだ・・・」
とその場に放り捨てた。
「蜘蛛のお姉ちゃん・・!!?」
路地裏から都の敗北を目のあたりにしたフェアウェイと香苗。
「お姉ちゃん、死んじゃいや~ぁ!!」
「ダメだ、逃げるんだ!!」
都の元へ駆け寄ろうとするフェアウェイを必死で制止する香苗。
その背後から・・・
「見つけましたよ♪」
香苗が振り返ると、そこには長身の年配男性の姿が。 ドレイトンは嬉しそうにフェアウェイに手を伸ばす。
「この子に触るなぁぁっ!!」
香苗が懸命に対抗するが、ヌイグルミであるこの姿では当然勝ち目がない。 簡単に放り投げられ、壁に叩きつけられた。
「フェ・・ア・・・ウェイ・・」
気絶寸前の香苗の目に入ったのは、クエロマスカラに抱え上げられるフェアウェイの姿であった。
第八章 丘福ドームスタジアムへ続く。
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もしも、作者(るりょうりに)が、
本編から何も・・
オマケ特典のネタを思いつかなかったら?
「こんにちわ、ドレイトンです」
ドレイトンは軽く会釈した。
「よくは判りませんが、ネタがないので上手い具合に場を乗り切ってくれと頼まれました」
「そういう理由(わけ)で、私と・・・」
「アシスタントのエイダと一緒に繋いでいこうと思っております」
「さて、まずは私のプロフィールから」
「私は北米・・テキサス州で、『meat shop Hello』という小さな精肉店を営んでおります」
「お陰様で自家製ベーコンとハンバーグが好評で、最近ではインターネットを通じて世界各国から注文を頂くようになりました」
「自分で言うのもなんですが、たしかにうちの商品は世界でもトップクラスと自負しております。なぜなら他店と違い、厳選された材料で作っているからです」
「それゆえ材料に対する目利き。特に人と呼ばれる動物の雌に関しては、誰にも負けないと自負しております」
「今は私用で日本という小さな国へ来ておりますので、ここで入手できる材料を使って説明いたしましょう!」
「まずは材料の熟成期間による違い。要は年齢による旨味の違いですが、幼い肉・・成熟した肉。人によって好みは様々ですね」
「10歳前から10代前半。
淡白で軟らかい肉質が特徴ですが、脂身が少なく淡白過ぎて奥深さが無いことと。
若干・・土臭さやアンモニア臭に似た臭みがありますね。 もっともそれが良いというお客様もいらっしゃいますが」
「お薦め料理は、生(刺し身)・湯引き・唐揚げ。レモンやマスタード。 日本では『わさび』などを薬味に使うと美味しく頂けます」
「次は10代半ばから後半。
相変わらず軟らかい肉質に程よい脂身が加わり、ミルキーな甘味が増しています。 しかし臭みはまだ少し残っており、上質な素材と悪質な素材の差が激しいのもこの世代です。 刺し身や唐揚げ、すき焼き、焼き肉によく合います」
「今度は20歳から20代半ばまで。
ちょうどこの位の年頃は肉質は軟らかい。 全体的に質の良い脂身も張り巡らされ、甘味・・コクの深さ、そしてフルーティーで甘い香りもあり、ステーキ、ハンバーグ・・ベーコン。 何にでも良く合い、誰にでも喜ばれる最高の品質です」
「20代後半から30代半ば。
これくらいは肉質はやや硬めになります。 しかし上品な脂身はもはや絶品で、そのとろけるような味わいは若い肉は敵いません。ステーキやシチューにしたら最高の逸品です!」
「それ以降の年代は肉は硬く・・脂身は更に増え。正直・・・肉料理には不向きです。 しかし、シチューやスープの出汁にするには逆に良い素材と言えましょう」
「以上、年代別による肉の違いでした。次は部位による違いの説明に入ります。」
「エイダ、材料を運んで・・・」
クエロマスカラに引かれ野球チームのチアガールらしき若い女性が現れる。
「この子は堀北智美さん・・22歳」
「我が同胞パペット・マスター氏が人形の素材として入手したのですが、人形にするには勿体無いほどの良い肉質でしたので、頭を下げて譲っていただきました」
「見てください、この健康的な身体。年齢的にも丁度いい頃合いです!」
「では服を脱がして・・・」
ドレイトンがそう言うとクエロマスカラが堀北智美の服を脱がず。
白地にピンクの可愛い下着が目に入る。
部位は大きく分けて食肉部位と内臓部位と分けられますが、本日は食肉部位についてお話いたします。
「まずは肩・腕の部分。人間は手を使う生き物ですので、主に筋肉で構成されています。
脂肪分の少ない赤身の筋肉はやや硬めではあるものの、あっさりしていてそれでいて深い旨味があります。
部位によるお薦め料理法は、カレーやシチューのような煮込み料理にむいています」
「胸。雄と雌では大きく違いのある部分。
今回は雌をつかっての説明ですが、雌の胸は殆ど脂肪で構成されています。 したがって脂分が強く味もくどいため、好き嫌いがハッキリ別れる部位ですね。
お薦め料理法は、小麦粉とまぶしてパイ包み焼きなどがいいでしょう」
「バラ。お腹付近の肉ですね。
脂肪と赤身が層になっておりやや硬めですが、様々な料理に使え特にベーコンには最適ですね。
お薦め料理としては、角煮・焼き肉・シチュー・すき焼き・炒めもの。本当になんにでも使える万能肉です」
「尻、下腹部。
牛や豚ではあまり使わない部分ですが、人間の雌なら結構人気のある部分です。
尻は殆ど脂肪で柔らかく甘味がありますが、ややくどいのが特徴。 しかし尻皮の部分をパリパリに焼いて削ぎ落とし、小麦粉で作った生地やレタスなどの葉野菜に巻いて食べると、皮の食感と脂肪の甘さが最高にマッチし最高の料理となります。
股間部分は歯切れの悪いゴムのような食感。匂いも強く好みの別れる部分ではありますが、他にないコクの深い味が楽しめ、唐揚げのようにしっかり火を通す料理ならお薦めです」
「腿(もも)。
人間の雌ならイチオシ部分です。・・というのも他の動物と違い、人間は直立二足歩行動物です。 したがって脚は、ただ突っ立っているだけで全体重を支えるという運動を常にさせられているのです。
そのため発達した筋肉に加え、運動エネルギーとなる脂肪分が筋肉細胞そのものに交わっており、類の無い・・甘味とコクのある赤身の肉になっているわけです。
しかも雄と違い雌は、さらに質の良い脂肪も含まれ、肉質も非常に柔らかい。
全ての動物の精肉の中でも、最高級の特上肉と断言してもいいでしょう!。
どんな料理にも合いますが、お薦めはやはりステーキか焼き肉。レア状に焼いて、肉の柔らかさ旨味をしっかり味わって頂きたいものです」
「ふくらはぎ。
発達した筋肉に混ざった脂肪分。もも肉に近い味ですが、他の脂肪が少ない分旨味も落ち、肉も硬めになります。
お薦めは、唐揚げなどにピッタリです」
「足裏。
足の指、踵、足の裏の肉全般です。 肉は硬めで、雌の育ち方次第では強烈な臭気を伴います。 ですが、シュールストレミング(にしんの塩漬け缶詰)、くさや、ドリアンなどと同様に「その臭さが癖になる」と、逆に好まれる方が多い部分でもあります。
生でその匂いを楽しんだ後、炭火で焼いて食べるのが通だと言われます。」
「その他にも内蔵部分もあり、それまで含めれば人間の雌は捨てるところが無いといっても過言では無いくらい、美味しく味わえる動物です」
「最後に残りの時間は冒頭でもお話した当店の人気メニューの一つ、ハンバーグ作りをお披露目しようと思います」
「ご存知の通り一般的にハンバーグにはひき肉を混ぜあわせたものを使います」
「ですが当店自慢のハンバーグは一切ひき肉を使わず、塊肉から作り上げていきます」
ドレイトンがそう言うとクエロマスカラは側にいた智美の足首を掴み、逆さまに釣り上げた。
そして、そのまま地面に二度・・三度と叩きつける。
「ひき肉を使わず塊肉を使う理由は、食感・・味、共に損なわないようにするためです」
「ひき肉というのは精肉を細かく切り刻んだり、すり潰した物を言います。当然肉の繊維や細胞もすり潰してしまうため、食感は落ち、更に肉汁などの旨味成分も垂れ流してしまう事になります」
智美を数回叩きつけたクエロマスカラは、そのまま智美の身体を力いっぱい捏ね回し始めた。
「しかし塊肉のまま食べやすいように柔らかく捏ねてしまえば、素材の持つ繊維質や旨味をそのままで楽しめるようになります」
何度も何度もこね回された智美の身体はついに原型を無くし、楕円形の肉の塊と化した。
「この状態ならば皮に含まれるコラーゲンも摂取できますし、一石二鳥とも言えますね」
「あとはタンドリーに入れて、ゆっくりじっくり焼き上げるだけ・・・」
チ~ン!!
智美のハンバーグ
「では早速味わってみましょう!」
パクっ!!
モグ・・モグ・・モグ・・・
ゴクリ♪
「うん、健康的で発達した筋肉の繊維質がそのまま残り、食感も赤身肉の旨味もしっかりそのまま。 更に筋肉細胞に含まれた脂肪もすり潰されていないため、あとからフルーティーな甘味がゆっくり溶け出してくる!」
「最高の出来です!!」
「どうです? ご覧の方々も美味しそうに見えるでしょう?」
「当店のハンバーグはご覧の通り一匹の雌材料から一品しか作れないため、同じものを楽しんで頂くことはできませんが、具体的な希望をそれに見合った価格で注文して頂ければ、最高の逸品をお届けすることを約束いたします」
「では、本日はここまで。作者から依頼があれば、また続きをお届けいたします」
本編から何も・・
オマケ特典のネタを思いつかなかったら?
「こんにちわ、ドレイトンです」
ドレイトンは軽く会釈した。
「よくは判りませんが、ネタがないので上手い具合に場を乗り切ってくれと頼まれました」
「そういう理由(わけ)で、私と・・・」
「アシスタントのエイダと一緒に繋いでいこうと思っております」
「さて、まずは私のプロフィールから」
「私は北米・・テキサス州で、『meat shop Hello』という小さな精肉店を営んでおります」
「お陰様で自家製ベーコンとハンバーグが好評で、最近ではインターネットを通じて世界各国から注文を頂くようになりました」
「自分で言うのもなんですが、たしかにうちの商品は世界でもトップクラスと自負しております。なぜなら他店と違い、厳選された材料で作っているからです」
「それゆえ材料に対する目利き。特に人と呼ばれる動物の雌に関しては、誰にも負けないと自負しております」
「今は私用で日本という小さな国へ来ておりますので、ここで入手できる材料を使って説明いたしましょう!」
「まずは材料の熟成期間による違い。要は年齢による旨味の違いですが、幼い肉・・成熟した肉。人によって好みは様々ですね」
「10歳前から10代前半。
淡白で軟らかい肉質が特徴ですが、脂身が少なく淡白過ぎて奥深さが無いことと。
若干・・土臭さやアンモニア臭に似た臭みがありますね。 もっともそれが良いというお客様もいらっしゃいますが」
「お薦め料理は、生(刺し身)・湯引き・唐揚げ。レモンやマスタード。 日本では『わさび』などを薬味に使うと美味しく頂けます」
「次は10代半ばから後半。
相変わらず軟らかい肉質に程よい脂身が加わり、ミルキーな甘味が増しています。 しかし臭みはまだ少し残っており、上質な素材と悪質な素材の差が激しいのもこの世代です。 刺し身や唐揚げ、すき焼き、焼き肉によく合います」
「今度は20歳から20代半ばまで。
ちょうどこの位の年頃は肉質は軟らかい。 全体的に質の良い脂身も張り巡らされ、甘味・・コクの深さ、そしてフルーティーで甘い香りもあり、ステーキ、ハンバーグ・・ベーコン。 何にでも良く合い、誰にでも喜ばれる最高の品質です」
「20代後半から30代半ば。
これくらいは肉質はやや硬めになります。 しかし上品な脂身はもはや絶品で、そのとろけるような味わいは若い肉は敵いません。ステーキやシチューにしたら最高の逸品です!」
「それ以降の年代は肉は硬く・・脂身は更に増え。正直・・・肉料理には不向きです。 しかし、シチューやスープの出汁にするには逆に良い素材と言えましょう」
「以上、年代別による肉の違いでした。次は部位による違いの説明に入ります。」
「エイダ、材料を運んで・・・」
クエロマスカラに引かれ野球チームのチアガールらしき若い女性が現れる。
「この子は堀北智美さん・・22歳」
「我が同胞パペット・マスター氏が人形の素材として入手したのですが、人形にするには勿体無いほどの良い肉質でしたので、頭を下げて譲っていただきました」
「見てください、この健康的な身体。年齢的にも丁度いい頃合いです!」
「では服を脱がして・・・」
ドレイトンがそう言うとクエロマスカラが堀北智美の服を脱がず。
白地にピンクの可愛い下着が目に入る。
部位は大きく分けて食肉部位と内臓部位と分けられますが、本日は食肉部位についてお話いたします。
「まずは肩・腕の部分。人間は手を使う生き物ですので、主に筋肉で構成されています。
脂肪分の少ない赤身の筋肉はやや硬めではあるものの、あっさりしていてそれでいて深い旨味があります。
部位によるお薦め料理法は、カレーやシチューのような煮込み料理にむいています」
「胸。雄と雌では大きく違いのある部分。
今回は雌をつかっての説明ですが、雌の胸は殆ど脂肪で構成されています。 したがって脂分が強く味もくどいため、好き嫌いがハッキリ別れる部位ですね。
お薦め料理法は、小麦粉とまぶしてパイ包み焼きなどがいいでしょう」
「バラ。お腹付近の肉ですね。
脂肪と赤身が層になっておりやや硬めですが、様々な料理に使え特にベーコンには最適ですね。
お薦め料理としては、角煮・焼き肉・シチュー・すき焼き・炒めもの。本当になんにでも使える万能肉です」
「尻、下腹部。
牛や豚ではあまり使わない部分ですが、人間の雌なら結構人気のある部分です。
尻は殆ど脂肪で柔らかく甘味がありますが、ややくどいのが特徴。 しかし尻皮の部分をパリパリに焼いて削ぎ落とし、小麦粉で作った生地やレタスなどの葉野菜に巻いて食べると、皮の食感と脂肪の甘さが最高にマッチし最高の料理となります。
股間部分は歯切れの悪いゴムのような食感。匂いも強く好みの別れる部分ではありますが、他にないコクの深い味が楽しめ、唐揚げのようにしっかり火を通す料理ならお薦めです」
「腿(もも)。
人間の雌ならイチオシ部分です。・・というのも他の動物と違い、人間は直立二足歩行動物です。 したがって脚は、ただ突っ立っているだけで全体重を支えるという運動を常にさせられているのです。
そのため発達した筋肉に加え、運動エネルギーとなる脂肪分が筋肉細胞そのものに交わっており、類の無い・・甘味とコクのある赤身の肉になっているわけです。
しかも雄と違い雌は、さらに質の良い脂肪も含まれ、肉質も非常に柔らかい。
全ての動物の精肉の中でも、最高級の特上肉と断言してもいいでしょう!。
どんな料理にも合いますが、お薦めはやはりステーキか焼き肉。レア状に焼いて、肉の柔らかさ旨味をしっかり味わって頂きたいものです」
「ふくらはぎ。
発達した筋肉に混ざった脂肪分。もも肉に近い味ですが、他の脂肪が少ない分旨味も落ち、肉も硬めになります。
お薦めは、唐揚げなどにピッタリです」
「足裏。
足の指、踵、足の裏の肉全般です。 肉は硬めで、雌の育ち方次第では強烈な臭気を伴います。 ですが、シュールストレミング(にしんの塩漬け缶詰)、くさや、ドリアンなどと同様に「その臭さが癖になる」と、逆に好まれる方が多い部分でもあります。
生でその匂いを楽しんだ後、炭火で焼いて食べるのが通だと言われます。」
「その他にも内蔵部分もあり、それまで含めれば人間の雌は捨てるところが無いといっても過言では無いくらい、美味しく味わえる動物です」
「最後に残りの時間は冒頭でもお話した当店の人気メニューの一つ、ハンバーグ作りをお披露目しようと思います」
「ご存知の通り一般的にハンバーグにはひき肉を混ぜあわせたものを使います」
「ですが当店自慢のハンバーグは一切ひき肉を使わず、塊肉から作り上げていきます」
ドレイトンがそう言うとクエロマスカラは側にいた智美の足首を掴み、逆さまに釣り上げた。
そして、そのまま地面に二度・・三度と叩きつける。
「ひき肉を使わず塊肉を使う理由は、食感・・味、共に損なわないようにするためです」
「ひき肉というのは精肉を細かく切り刻んだり、すり潰した物を言います。当然肉の繊維や細胞もすり潰してしまうため、食感は落ち、更に肉汁などの旨味成分も垂れ流してしまう事になります」
智美を数回叩きつけたクエロマスカラは、そのまま智美の身体を力いっぱい捏ね回し始めた。
「しかし塊肉のまま食べやすいように柔らかく捏ねてしまえば、素材の持つ繊維質や旨味をそのままで楽しめるようになります」
何度も何度もこね回された智美の身体はついに原型を無くし、楕円形の肉の塊と化した。
「この状態ならば皮に含まれるコラーゲンも摂取できますし、一石二鳥とも言えますね」
「あとはタンドリーに入れて、ゆっくりじっくり焼き上げるだけ・・・」
チ~ン!!
智美のハンバーグ
「では早速味わってみましょう!」
パクっ!!
モグ・・モグ・・モグ・・・
ゴクリ♪
「うん、健康的で発達した筋肉の繊維質がそのまま残り、食感も赤身肉の旨味もしっかりそのまま。 更に筋肉細胞に含まれた脂肪もすり潰されていないため、あとからフルーティーな甘味がゆっくり溶け出してくる!」
「最高の出来です!!」
「どうです? ご覧の方々も美味しそうに見えるでしょう?」
「当店のハンバーグはご覧の通り一匹の雌材料から一品しか作れないため、同じものを楽しんで頂くことはできませんが、具体的な希望をそれに見合った価格で注文して頂ければ、最高の逸品をお届けすることを約束いたします」
「では、本日はここまで。作者から依頼があれば、また続きをお届けいたします」
| 妖魔狩人若三毛凛VSてんこぶ姫 | 19:54 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑