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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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マニトウスワイヤー 第十章 妖魔狩人たちの苦戦

「しかし今更ながら、高嶺優里と斉藤千佳の二人だけを残し、先へ進んで大丈夫なのでしょうか?」
 銀髪長身、禰々子河童一族の二代目である祢々は心配そうに漏らした。

「大丈夫。あの二人は凛が信用している強い仲間。それに、セコに様子を見てもらっている。いざとなったらすぐに連絡してくれるはずだ」
 凛の頭上を飛びながら一緒について来る金鵄は自信を持って答えた。

「仮にあの二人が倒れても、ワタクシ達がエノルメミエドの復活を阻止すればいいだけの事。余計な心配は無用」
 先頭を走る青い妖魔狩人も坦々と返した。

 グランドへ向かう通路に入ると、そこはもう外野席に繋がっていた。

 外野席に足を踏み入れグランド内を眺める。
 ピッチャーマウンド辺りに二つの人影があった。


「フェアウェイっ!!?」

 思わず都が叫び声を上げた。


 そこには仰向けに寝かされているフェアウェイの姿と、アンナ・フォンの姿が。

 それを見て駆け出そうとする一行に、

「おやおや。ここから先は、部外者は立ち入り禁止ですよ!」
 と、外野席に腰掛けている一つの影が囁いた。

 それは、頭までスッポリとマントで覆い隠した黒い影。
 そう・・言わずと知れた、パペット・マスター!

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 ゆらりと陽炎のように立ち上がると、同時に数十のマネキン人形が凛たち一行を包囲した。
 子どもから主婦……会社員まで。

 そして、あのチアガールたちの姿も見える。

 おそらく、この球場に来た人々全てをマネキンに変えているのだろう。

「この人たちを元に戻して!!」

 これにはさすがの凛も憤りを隠せなかった。

「人形は私の大事なコレクション。 『戻して』と言われて『ハイそうですか!』と、すんなり戻す気はないわ」
 パペット・マスターはそう言ってニヤリと笑う。

「どうしても元に戻したいのなら、私の息の根を止めることね。そうすれば私からの魔力供給が無くなり、こいつらは人間に戻るわ」

「なるほど、お前を殺せばいいだけの事か。簡単な事だな」
 そう言って青い妖魔狩人と祢々が一歩前に出た。

「青い妖魔狩人さん!?」

「先へ急げ若三毛凛。見境無く命を大切に考えるお前では、たとえ化け物相手でも簡単には殺す気にはなれないだろう?」
 青い妖魔狩人の予想外の言葉に凛は言葉を失った。

「わたくしは敵の命などなんとも思っておりませんが、そんな人形の出来損ないより、今はフェアウェイの方が先決! 先へ進ませていただきますわよ」
 都は何のためらいもなく手の平から糸を噴出し天井にある照明に貼り付け飛び上がると、マネキン人形たちを一気に飛び越え、グラウンド内に降り立った。

 そんな都を横目に青い妖魔狩人は話を続ける。

「そして儀式を妨害し、エノルメミエドの復活を阻止するのだ。それくらいならお前でもできるだろう?」

「ハイ、必ず復活を止めてみせます!」

 凛は大きく頷くと座席に飛び乗り、強化された跳躍力でマネキン人形たちを飛び越えていく。

「頼む、若三毛凛・・・」

 凛の後姿を見送りながらそう呟くと、パペット・マスターと対峙した。

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 その頃、クエロマスカラたちと戦う為にショッピング通路に残った千佳。

 妖怪火山猫と融合し、半妖となった彼女の得意な戦法は一言で言えば『狩り』。

 今、千佳はファミレス店内に侵入し、テーブルや椅子を森の草木に見立て気配を消している。
 更にクエロマスカラが手にしているチェーンソーの大きなエンジン音が、逆に・・その効果を高めていた。
 気配を完全に消し静かに近寄り間合いに入ると・・・・。

 一気に飛び掛り、その右腕の鋭い灼熱の爪で喉元を切り裂くっ!!


ザクッッッ!!


「うぎゃあああああっ!!」


 断末魔の叫びを上げ、血飛沫を撒き散らしながらクエロマスカラの大きな身体は、地響きを立てその場に沈んだ!

「よしっ! ちょろいもんやね!!」
 ドヤ顔で倒れた『死体』を見下ろす。

「さて、あとはあのオッサンやけど・・・・?」
 そう言って店内を見渡すと、ドレイトンは厨房のコンロでハンバーグを焼いていた。

「なんだっちゃ、あのオッサンは!?」
 思いもよらないその姿に大きな溜息をつくと。
「ま・・・あんなオッサンなら無理して倒す必要はねぇっちゃね!」
 と、その場を後にしようとした。


 その背後に、チェーンソーを振り上げた大きな身体が立ち上がっている事も気づかずに。









バリッ・・! バリッ・・! バリッ・・!


 眩い光と音が響き渡る。

 巨大な雷撃のエネルギーを自らの身体に蓄積し、それをレーザーのように凝縮し連続攻撃を繰り返すサンダーバード。
 だが、その攻撃は全て優里の薙刀に防がれていた。

 いくらレーザーのような攻撃であっても、その根本は電流であると見抜いた優里は、野外イベント用の照明機器に繋がっている配線。すなわち『銅線』を薙刀に巻き、片方を金属製の電柱に結びつけアースにし電気伝導線を作り上げたのだ。
 これにより、薙刀で受けた電撃は銅線を伝わって電柱へ流れていく。

「電線に止まっているスズメが感電しない理屈ね」

 幾重もの攻撃を防がれ、さすがのサンダーバードも困惑の色が見え始める。

「ナルホド。オマエワ雷・・・。イヤ、電撃ニツイテ、アル程度ノ知識ヲ持ッテイルヨウダ」
 攻撃を止め、サンダーバードは優里に話しかけた。

「ダガ見タトコロ、ソノ仕組ワ、攻撃ヲ防グ事ワ出来テモ、自分カラ攻撃ヲ仕掛ケル事ワ、出来ナイヨウニ見エル」

「・・・!」

「ズット、タダ攻撃ヲ、防ギ続ケル”ダケ”ノツモリナノカ?」
 サンダーバードの予期しない問いに、優里は少し躊躇いを見せたが

「ええ。私がここに残った一番の目的は貴女を倒すことでなく・・・、仲間がマニトウスワイヤーの復活を阻止する時間を稼ぐこと」
 そう言い返した。

 その返事にしばらく沈黙を守ったサンダーバードだが


「ツマラン!!」


 そうキッパリと吐き捨てた。

「ワタシガ、ナゼ貴様一人ヲ、ココニ残ス事ヲ許シタト思ウ?」

「?」

「ワタシワ空ヲ飛ブ事ガデキル。ソノ気二ナレバ、スグ二貴様ノ仲間ノ後ヲ、追ウ事モ出来タ。ダガ、ソレヲシナカッタノワ、貴様ガ『一番強ソウ』ダッタカラ」

「!?」

「貴様トノ、一対一ノ戦イノ方ガ、面白ソウダッタカラ。ダカラ・・アエテ残ッタノダ」

 思わぬサンダーバードの言葉に優里は身震いをした。
 それは恐怖による震えではなく、一人の武術者としての武者震いに近いもの。

「ダガ、貴様ワ時間稼ギナドト、我々ノ戦イヲ侮辱シタ。トンダ・・侍ガールダッタ」
 心の底から失望したように、大きな溜息をつくサンダーバード。

「・・・・・・・」

「モウ貴様トノ戦イワ、ココマデダ。ワタシワ球場ヘ行キ、マニトウスワイヤー復活ノ援護ヲスル」
 サンダーバードはそう言うと、背中の翼を大きく広げた。

「それは許しません!!」
 今まで何も言い返せなかった優里だが、これだけはキッパリ言い返した。

「・・・?」

「たしかに私は武術者として貴女を・・・この戦いを侮辱したかも知れない。その非礼はお詫びします。でも・・・」

 そこまで言うと、優里は鋭い目つきでサンダーバードを睨みつける。

「でも・・・貴女が球場へ行けば、また凛ちゃんと戦う事になる。それだけは何があっても許しません!!」
 優里はそう叫び、薙刀に巻きつけていた銅線を全て解き捨てた。

「いいでしょう! 北真華鳥流の奥技を持って貴女をこの大地に倒し伏せてみせます!!」

 爛々と瞳を輝かせ、優里は薙刀を水平に構えた。

「ククク・・・! オモシロイ!」

 サンダーバードは満身の笑みを浮かべると、背中の翼をたたみ大地にしっかり足を降ろした。










「でやぁぁぁぁっ!!」

 長い金棒を振り回し、襲い掛かるマネキン人形たちを次々に薙ぎ倒す祢々。

 河童の一族と馬鹿にしてはいけない。
 禰々子河童は全ての水棲妖怪の頂点に立った一族。 そしてその怪力は地獄の鬼にも、全く引けをとらない。

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「ふ~ん・・・。妖怪とはいえ戦う女の姿は美しい。私のいいコレクションになりそうね♪」
 パペット・マスターは激しい戦いをする祢々を見つめ、不敵に微笑んだ。

 そんなパペット・マスターに一輪の水流の輪が襲い掛かった!

 寸前に気づき、そばに居たマネキン人形を盾にしてそれを防ぐ。

「ほぅ・・・? こんな不意打ちみたいな攻撃をしてくる奴もいるとは・・?」
 攻撃を仕掛けた青い妖魔狩人を見つけると嬉しそうに笑う。

「水流輪っ!!」
 それでも次々に攻撃を仕掛ける青い妖魔狩人。


バサッ!!


 身に着けていたマントを振り払い、水流輪を弾き落とす。

「見縊られたものね。この程度の霊術で私がやられるわけが無いじゃない!?」
 パペット・マスターは鼻で笑った。

 だが……そんなパペット・マスターも、足元に少しずつ迫っている『水溜り』には、気がついてはいない。

 狙ったように青い妖魔狩人は指先をクィっと上げる。
 すると水溜りは一気に壁のように跳ね上がり、パペット・マスターを覆い囲んだ!

「な・・・なにっ!?」

 仰天したパペット・マスターを、水の壁は包み込むように被さっていく。

「ワタクシも水流輪でお前を倒せるとは思っていない。この術から注意を逸らすための目くらましにすぎない」

 大きな青い水疱の中でもがき苦しむパペット・マスターを見つめながら、青い妖魔狩人は勝利を確信していた。
 数十秒が経ち水泡が静かになった事を知ると、青い妖魔狩人は術を解いた。
 流れ落ちる水の中から現れたのは・・・・

「な・・!?」

 そこには、五~六人の若い女性が倒れている・・・!?

「ど・・どういう・・事だ!?」

 思いもしない出来事に、その場に固まったように立ち尽くす青い妖魔狩人。

「それは、私が持ち歩いていた、フィギュア人形が元の姿に戻ったもの」
 倒れていた女性たちを跳ね除け、その下からパペット・マスターが立ち上がった。

「私は人間を好きな人形に変える事ができる。それがマネキンだろうと・・ヌイグルミであろうと。そして・・・フィギュアであろうと!」
 ドヤ顔で語るパペット・マスターに呆然とする青い妖魔狩人。

「貴方の術が相手を傷つける為の攻撃魔法ではなく、浄化する為の霊術だということは最初の水流で気がついていた」

「・・・・・・・」

「だから水泡の中で持ち歩いていたフィギュアをばら撒いたわけ。案の定・・・貴方の浄化の術は、私の呪術で人形になった者たちを優先して浄化し、私の浄化まで及ばなかったという事」

「く・・・・っ」

「私を殺すとか言っていたけど、貴方は水属性の術者。浄化や治癒の術は得意そうだけど、たいした殺傷能力は持っていない。だからあんな戦闘力の高い河童なんか連れ歩いているわけね」

 おそらく、凛や金鵄ですら気づいていない青い妖魔狩人の特性を、パペット・マスターは次々に言い当てた。

「フッ・・!」

「?」

「たしかにワタクシは物理的威力を発揮する術は持ち合わせていない。だが、それだけでワタクシの全てを解ったつもりになってもらっては困る」

 青い妖魔狩人はそう言うと、周囲に無数の小さな水泡を漂わせた。

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「なに・・これ?」

 パペット・マスターは、シャボン玉のように漂う水泡の一つを指先で弾いた。


パツン!


 水泡が弾け散ると同時に緑色の半透明の液体が指先に付着する。

「これは・・・毒っ!?」

「そう。たとえどんな妖怪でもその動きを封じ込める事のできる・・神経性の猛毒! お前を直接殺すことは出来なくとも、その動きを封じる事はできる」

 ただでさえ頭巾越しで表情のつかめない青い妖魔狩人だが、今回ばかりは目の動きだけで笑みを浮かべていることが容易につかめた。

「ククク・・・・・♪」

「!?」

「たしかに頭巾越しで表情は掴みにくいけど、どれだけ平静を失っているかは容易につかめるわ!」
 パペット・マスターは口端が耳まで届きそうなくらい大口を開けて笑い始めた。

「仰るとおり私が生物である妖怪ならば、この毒は大きな効力を発揮したでしょう。だが・・私のこの肉体は血も肉も・・・、まして神経など全く無いただのマネキン人形。したがって毒などまるで通用しない!! そこまで頭が回らないとは、どれだけ平静を失っているのやら」

 そう言って一足飛びで間合いに入ると、青い妖魔狩人の首筋を鷲掴みした。

「まずは、その頭巾の下の顔を拝見させてもらいましょうか?」
 パペット・マスターは青い妖魔狩人の頭巾に手をかける。

「ま・・待てっ、貴様ぁぁっ!!」
 その様子が目に入った祢々は、加勢に向かおうとマネキン人形たちに背を向けた。


グサッッ!!


「!?」


 その瞬間、わき腹に何かが突き刺さる感触が・・・。 それは、真っ赤な蒸気のような靄を発する短剣。

「あ・・あ・・・・」

 祢々は呆然としたまま二~三歩進んだが、その長身でグラマラスな身体は消滅したかのように姿を消し、代わりのその場所に、小さなヌイグルミが転げ落ちていた

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 それは祢々にそっくりなヌイグルミ。
 例の赤い短剣で、祢々はヌイグルミに変えられてしまったのだ!

「祢々・・・!?」

 目を皿のように丸くする青い妖魔狩人。

「驚くことはないわ。貴方もその素顔を拝見したあと、可愛いお人形に変えてあげる♪」
 パペット・マスターはそう言って青い妖魔狩人の頭巾を剥ぎ取った!












「な・・・なんだっちゃ・・、あいつは・・!?」

 最初に戦いを開始したファミレスから離れ、別の店に駆け込み・・カウンターの下に身を潜める千佳。

「なんで・・。なんで……あいつは死なないっちゃ・・?」


 一番最初にクエロマスカラの喉元を灼熱爪で切り裂いた千佳。

 だが、ヤツは再び起き上がり千佳に襲い掛かってきた。

 それでも千佳は自分の戦法を守り、二度目はクエロマスカラの胸を貫き・・・。

 三度目はその腹を引き裂いた。

 どちらも間違いなく致命傷だった・・・・。

 にも関わらず、ヤツは三度立ち上がってきた。まるで何事もなかったかのように。

 ついに千佳は戦いから背を向け、逃げ出したのだ。
 倒しても・・・・、倒しても・・・起き上がってくる恐るべき敵から。


 エンジン音が通路に鳴り響く。 ヤツが行ったり来たりしているのがわかる。

「探している・・・・。あいつがウチを・・探している・・・。」

 身体の震えが止まらない。 心の奥底から来る、心臓を握りつぶされるかのような震え。

「怖い・・・・怖い・・・・」

 いつも強気な千佳が初めて恐れをなしている。
 人間が持つ『恐怖』という感情に付け加え、『勝てない敵』に対する妖怪としての本能から来る脅え。
 芯から味わう絶望感。

「見ヅけた・・・・・」

 頭上から声が聞こえた。
 見上げると、カウンター越しにクエロマスカラの皮膚マスクが目に入る。

「あぁ・・あ・・・」


ガガガガガ・・ッ!!


 クエロマスカラのチェーンソーが、容赦なくカウンターを切り裂いた。


「うあぁぁぁぁっ!!」


 悲鳴を上げ、尻込みしたまま逃げまとう千佳。
 彼女が逃げ込んだ先は、最初の戦いの場・・・。 ファミレスだった。




第十一章 妖魔狩人の反撃へ続く。
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| 妖魔狩人若三毛凛VSてんこぶ姫 | 18:26 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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