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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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マニトウスワイヤー 第十一章 妖魔狩人の反撃

 千佳が逃げ込んだファミレスの厨房で、ドレイトンは焼き上げたハンバーグを美味しそうに頬張っている。

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 ドレイトンは逃げ込んだ千佳に気づき、
「まだ、生き延びていたのか? 思ったよりしぶといですね!」
 と嬉しそうに微笑んだ。

 人間なのに人間とは思えない・・不気味な笑顔。

「ここに、いたか・・・」
 更に背後にクエロマスカラが追いついてきた。

「エイダ、いつまで遊んでいるんです? 早く捕まえて、その娘も美味しいハンバーグにしてしまいなさい♪」

「うーん。でも・・・・パパ。コイツ人間じゃなくて獣のような匂いがする。きっと・・美味しくない」

「相変わらずエイダは好き嫌いが多いですね。そんな事だから大きくなれないんですよ?」
 ドレイトンの言葉に千佳は唖然とした。

 大きくなれない・・・だって? 十分・・デカイっちゃ!

 それよりアンタの方がずっと食べ続けていて、よく太らないもんだっちゃ!?  きっと栄養がどっかに飛んでるんじゃないっちゃね?

 千佳は頭の中でそう突っ込んでいた。

 ん・・っ!? 栄養がどっかに飛んで・・・?

 何かが頭に引っかかる。

「ねぇ・・パパ。アタシこんな獣より、さっき見た黒い子どもの肉が食べたい」

「黒い子ども・・? ああ、先へ進んだ、黒い衣服に身を包んだ少女の事ですか?」

「ウン、あの子・・・♪ 霊力も高そうですごく美味しそう!」

 霊力が高くて黒い衣服の少女・・・・?

「凛の事・・ちゃかぁぁっ!?」

 千佳は思わず叫び声を上げた。

「凛・・? ほぅ、あの少女・・凛という名ですか? 良い名ですね。たしかにあの子は小柄で肉付きはたいした事はなさそうでしたが、身質は良さそうでした。きっと美味しいだろうね♪」
 そう語るドレイトンの口元には涎が垂れている。

「ふざけんなぁぁぁっ!!」
 凛を食べると聞いて、千佳の顔に血の気が戻ってきた。

「てめえ等なんかに、絶対に凛は喰わせねぇっちゃよ!」

 逆立った髪も更に炎上するかのように赤みを増し、灼熱爪もモクモクと蒸気を放っている。
 そう、誰よりも凛を大事に・・・。いや、凛を愛しているといっても過言ではない千佳の想いが、一気に彼女を立ち直らせた。

「んっ、凛・・・?」

 と同時に何かが頭の中で繋がり始めた。

 そう言えば、以前ウチが記憶を取り戻し始めた時に見た凛が戦っていた相手・・・・。
 それは、土人形を操る・・・独楽(こま)の妖怪・・・!!

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 喰っても太らないオッサンと、好き嫌いの多いデブ。 一見まるで繋がりのない、点と点。

 もしかして、あのデブと・・あのオッサンは・・・!?

 何かを掴んだ・・千佳。灼熱爪の右腕を振り上げ飛びかかった先は・・・

「な・・なんですとーっ!?」

 まさかの突撃に必死に身を避けるドレイトン。

 振り払う灼熱爪。

「ぎゃぁぁぁっ!!」

 血飛沫と共にドレイトンの胸元に大きな爪痕が残る!

 悲鳴は背後からも聞こえた。

 なんと、背後から襲いかかろうとしていたクエロマスカラの胸元にも、ドレイトンと同じ・・大きな爪痕が!!

「やっぱりそうっちゃ!」 
 千佳は二人に付いた同じ爪痕に確信を感じた。

「詳しい理屈はわからんけど、このデブの本体は・・・オッサン!! だから、このデブは死なないっちゃね・・・?」

 千佳の推測通り、クエロマスカラはドレイトンの思念が生み出した魂の無い・・もう一つの肉体のようなもの。

 十数年前、ドレイトンは事故で実娘エイダを喪った。
 その頃のドレイトンはある宗教を信仰していた。
 それは動物も人間も同じ命。だから、差別なく同様に殺しても食べても良いものだという教え。
 そのせいか、いつの頃からか・・闇の魔力を身につけ、ついにはその力でエイダを実体型思念体として蘇らせた。
 実体型思念体の為、蘇ったその身体は生命体本来の『命』というものは持ち合わせていない。
 だから、どんなに致命傷を負っても何事もなかったように動き続けられるのだ。

「カラクリはわかったっちゃ。一気に決着(ケリ)をつけて、凛を喰いたいなんて言ったこと後悔させてやんよ!!」

 再び千佳は、灼熱の右腕振り上げドレイトンに向かう。

「パパを・・虐めるなぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 そんな千佳にクエロマスカラが立ちはだかる。

 轟音と共に振り下ろされるチェーンソー。

 闇の魔力が篭ったチェーンソー。その攻撃力は防御力の高い戦闘服を着ていても、並みのダメージでは済まない。

「ちっ! 鬱陶しい回転ノコギリっちゃね! せやけど・・、まずはアレをぶっ壊さないとあのオッサンを攻撃できそうにないし・・・」

 そう呟くと、千佳は自らの右腕・・・灼熱爪に目をやった。

「いくらウチにとって最強の灼熱爪でも、あんなノコギリとまともにぶつかりあったらズタズタになるやろね・・・」

 当然の躊躇いだ。
 だが、またも頭の中で凛の顔が浮かぶ。

「絶対に負けないって、約束したっちゃね・・・」

 そう呟き決心したようにニコリと微笑む。

 迷いが吹っ切れた千佳。
 それは精神的だけでなく、半妖としての能力すら高めていた。

 頭部には燃えたぎるような髪の中に猫のような三角耳が立っており、鋭く睨みつける瞳は瞳孔が縦長になっていた。

「ぶっ壊してやるちゃ! 後悔すんなよ、この・・デブぅ~っ!!」

「・・んだと!? このクソチビがぁぁっ!!」
 一目でわかる弩級の怒り!

 チェーンソーを振り上げ千佳に襲い掛かるクエロマスカラ。


「うっせぇぇぇぇぇぇっ!!」


 その高速回転している刃に向けて、千佳は右腕の灼熱爪を突き出した!

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ガリッ!ガリッ!ガリッ!ガリッ!


 耳障りな音が鳴り響く!


バギッッッ!!!


 クエロマスカラのチェーンの刃が・・・・・。

 そして千佳の右腕の中指、薬指、小指・・三本の爪が・・・。


 鈍い音と共に砕け散った!!


「うぎゃぁぁぁぁぁつ!! アタシの・・アタシの・・・チェーンソーがぁぁぁぁ!!?」

 狂ったように慌てふためくクエロマスカラ。

 今、この時をおいてドレイトンを討つ間は無い。
 千佳は激しい痛みを堪えながら、一気にドレイトンに詰め寄ると・・


ズブッ!!


「ひぃぃぃぃっ!!」

 千佳は残った人差し指の爪でドレイトンの胸を貫いた!

 突き刺さった爪から灼熱の炎が流れこむ。 同時にその体内のアチコチから炎が吹き出し、


ゴォォォォォッ!!


 激しい火の粉を撒き散らしながら、ドレイトンは全身火達磨となった。

「ぎゃぁぁぁぁぁつ!!」

「パ・・パパ・・!?」

 火達磨となり、のたうち回るドレイトン。
 慌てて駆け寄ろうとしたクエロマスカラだが・・・・

「あぎゃぁぁぁぁぁっっ!!」

 ドレイトンの身体とリンクしているクエロマスカラも、身体のアチコチから炎が吹き出す。
 瞬く間に二体の火達磨が蠢く店内。

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「エイダ・・・」

「パパ・・・」

 手と手を触れ合う事もできず、闇が生んだ狂気の親子は文字通り地獄の業火に包まれ焼け落ちていった。

「やったよ・・凛・・」
 激しく肩で息をしながら千佳はその場に座り込んだ。

 そして砕け散った右手を満足そうに・・。それでいて少し悲しげな表情で見つめると、そのまま眠るように気を失った。











「凄い!! 優里さんの霊力が尖先に凝縮されている・・・? その力は雷撃の威力に匹敵するかもしれない・・・!?」

 薙刀を水平に構える優里。
 薙刀の尖先に白い光のようなものが浮かび上がり徐々に大きくなっていく。

 それだけでは無い。

 それに釣られるように優里の周囲は大気が陽炎のように歪み、地響きのような振動すら感じられる。

 物陰に隠れて様子を見ていたセコは初めて見る優里の奥技に・・。 そして、その『気』の大きさに驚きを隠せない。

「確カニ、貴様ガ繰リ出ソウトシテイル技ワ、ワタシノ雷撃ト同レベルノ威力ガアリソウダ。ナラバ、ワタシワソレ以上ノ最強ノ術ヲ繰リ出ソウ!」

 サンダーバードはそう言うと右腕を高々と上げる。
 激しい雷鳴が轟く。


バリッ!バリッ!バリッ!


 大きな落雷がサンダーバード自身を襲った!!
 だが、サンダーバードは更に右腕を高々と上げる。

 漂う雷雲から、再び大きな落雷が爆音と共にサンダーバードを襲った。


バリッ!バリッ!バリッ!・・・


 二発の雷撃を受け、そのエネルギーを蓄積したサンダーバード。

 さすがに少しダメージを受けたのか? 足元がやや・・ふらついている。 

 サンダーバードはそのあと左右の手から片方ずつ、青白い火花を放つ二つの球体を繰り出した。
 その二つのエネルギー球を強引に一つに組み合わせ凝縮し、一つの大きなプラズマエネルギー球に変えた。

「な・・・なんて、凄まじいエネルギーの球体!? 雷、二発分の威力を持った術なんて、そんな術は見るのも聞くのも初めてだ・・・」

 セコの言うとおり、それは雷二発分の威力を持ったプラズマエネルギーの凝縮体。
 おそらく半径数百メートルは一瞬で焼け野原になるだろう。

 一方、薙刀を構えたまま霊力を尖先一点に集中し技を仕掛ける準備をしていた優里。
 白色の大きな霊力の塊を刃に備え、水平の構えのまま右腕を引き左手で刀身を軽く支える。

 妖魔狩人と北米の精霊。

 最強同士の二人が、意地と底力を掛けてぶつかり合う瞬間!!

「プラズマトワイス・・・」

 先に仕掛けたのはサンダーバード。
 大きく腕を振りかぶり、火花散る大きなプラズマエネルギーの球体を爆音と共に撃ち放った!!

 火花と暴風を放ちながら突き進むプラズマトワイス。

 その球体が通り過ぎたあとは、アスファルトもタイルもボロボロに焼き崩れ、大地がむき出しになっている。

 それに対し優里は一呼吸・・間を置おくと、見極めたように一気に駈け出した!


「北真華鳥流奥技! 不撓穿通(ふとうせんつう)!!」


 霊力の塊を纏った薙刀を突き出しながら、優里自身が白色の閃光となり高速で突進していく。

 本来は闘気を一点に纏い、自らを刃と化し突進するのが北真華鳥流不撓穿通。
 だが優里の不撓穿通は、闘気どころか生まれ持った強力な霊力をも纏っている。
 その威力は本家不撓穿通の十倍以上。

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ズザザザァァァン!!


 中央でぶつかり合う、プラズマエネルギー球体と白色の閃光!!
 一見互角に見えるぶつかり合いだが、徐々に・・・徐々に・・に、プラズマトワイスが不撓穿通を押しのけていく。

 それは、サンダーバードの操る通常の雷撃エネルギーを仮に『3』という数値で表すと、優里の不撓穿通の威力はほぼ同格くらいである。

 それを察知したサンダーバードは二つの雷撃エネルギーを足し合わせ二倍の威力にした。

 したがって現状のままではプラズマトワイスが不撓穿通を跳ね除け、優里が吹き飛ばされるのは目に見えている。

「このままでは、優里さんが・・・・!」
 徐々に後退する白色の閃光を見つめながら、セコは焦りと恐怖を隠せない。

「たしかに・・・凄い術です! でも・・・」
 押し返されないように歯を食いしばりながら踏ん張っていた優里。

 だが・・ここでフトっ、口元を緩ませると、

「乗っ!!」

 そう叫び、手首をグルっと捻りこむ。。
 その途端、薙刀に纏っていた白色の霊力が大きな螺旋状に回転し始めた。

 激しい地響きと軌道上の大地・・。
 アスファルトや石が土砂が・・・。そしてまわりの電柱や樹木ですらも、回転で抉られるように舞い上がっていく。
 その激しい回転に合わせ突進する優里は、いわば白色のスクリュー。

 威力を増した不撓穿通は、逆にプラズマトワイスを押し返していく!

「ナ・・・ナンダ、コノ・・威力ワ・・・ッ!? 何故、私ノ術ヲ上回ル・・威力ニナッテイル!?」

「見誤っていましたね。今の私は高嶺優里という一人の武術者ではなく、白い妖魔狩人というある意味・・別の存在であるということを・・・!」

 揺るぎない自信を秘めたその表情。

「私は白い妖魔狩人という存在になったその時から、霊獣…麒麟の力も受け継いでいるのです!」

「そうか! 地響きを上げている螺旋状の術は麒麟の霊力によるもの・・・!?」
 セコが思い出したように呟く。

「貴方が見定めた不撓穿通の威力『3』というのは高嶺優里個人の力。ですが・・この技・・『不撓穿通・乗』は、白い妖魔狩人になったことで二乗化された威力になっているのです!」

「ツマリ、私ノ術ヨリモ、大キク上回ル!!?」

 サンダーバードが全てを諦めたように大きく溜息をつく。

 その瞬間、不撓穿通に押し返されたプラズマトワイスは大きく四散し、そのまま白色のスクリューがサンダーバードを貫いた!!


バキッ・・バキッ・・バキッ・・!!


 激しい閃光がサンダーバードの覆い隠す。

「やったぁぁっ!! 優里さんの勝利です!」
 大喜びで駆け寄るセコ。

 そんなセコに優里はニコリと微笑むと・・・
「うう・・・っ」
 その場に跪いてしまった。

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「優里さん、大丈夫ですか!?」
 心配そうにその身体を擦るセコ。

「ええ・・大丈夫。あの技は文字通り・・私の全身全霊の力を振り絞らないと使えない技」

「今まで使わなかったのは、そのためですか?」

「そう。先程までの私は後の事を考え、力を温存しておこうと本気で勝ちにいきませんでした。でも・・それは一対一の戦いにおいて最大の侮辱」
 優里はそう言って己の手のひらを見つめる。そこには・・わずかに残った霊力が漂っていた。

「だから全霊力を・・、全身体能力をも・・出しきりました。そうしないと勝てない相手だったから・・・・」
 優里は跪き、フラつきながらもそう微笑んだ。

「アリガトウ・・・」

 閃光が消えると、仰向けに倒れたサンダーバードがそう話しかけてきた。

「素晴ラシイ技ダッタ。アレニ敗レタノナラ、納得ガイク・・・」
 そう言うサンダーバードの全身はズタズタで激しい出血をしており、もはや虫の息だ。

「全力デ戦ウ。ソレワ相手ニトッテ、最高ノ敬意。ソノ敬意ヲ表シテクレタ侍ガールニ、私モ礼ヲシタイ・・・」
 サンダーバードはそう言って右手を突き上げた。

 手の平から青白い火花が散っている小さなエネルギーの球体が浮かび上がる。
 それはゆっくりと宙を漂いながら優里の薙刀へ辿り着くと、その中へ消えていった。

「こ・・これは・・・?」

「僅カダガ、私ノ力モ引キ継イデモラッタ・・・」

「サンダーバードっ!?」

 サンダーバードは初めて安らかな笑顔を浮かべると

「goodbye・・・」

 そのまま粒子となり、そして静かに消えて無くなった。












「フーン。偉そうな口を叩くから、どんだけふてぶてしい顔かと思いきや、結構可愛らしいじゃない♪」

 青い妖魔狩人の首筋を鷲掴みにしたまま頭巾を剥ぎ取ったパペット・マスターは、大きく口端を上げた。

 初めてその素顔を見せた・・青い妖魔狩人。
 その素顔は十代半ばくらいの愛くるしい美少女のものだった。

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「その可愛らしさは、マネキン・・・よりも、フィギュアの方がいいわね! うん、決めた! フィギュアにして、私の部屋に飾ってあげるわ♪」
 そう言って、不気味な笑顔を近寄せるパペット・マスター。

 青い妖魔狩人はパペット・マスターの手を外し逃れようとしたが、逆に取り囲んでいるマネキンたちに両腕両足を取り押さえられてしまった。
 一気に青褪める・・青い妖魔狩人。

「恐れなくていいわ。すぐに気持ちよくさせてやるから・・・」

 パペット・マスターはそう言って青い妖魔狩人の胸に手を触れた。
 そして優しく擦ってやる。それはまるで、産まれたての雛を触るように優しく丁寧に・・・。

「うっ・・・」

 まるで現実から逃避するかのように、思わず顔を背ける青い妖魔狩人。

 胸を擦るパペット・マスターの動きが少しずつ速くなり、時折揉みほぐしたり指先で胸の先端をクリクリと摘んだりする。
 それに伴い、青ざめていた青い妖魔狩人の頬もほのかに赤身を帯びてくる。

「フフ・・・」
 それを確認すると、パペット・マスターのもう片方の手は青い妖魔狩人のスカートの中へ忍んでいった。
 柔らかい内腿をなぞり、そして・・その付け根にある薄く白い布地に触れる。

「あ・・・っ!?」

 思わず声を漏らす青い妖魔狩人。
 パペット・マスターの指先は、そのまま白い布地を行ったり来たりと撫ででいく。

「だ・・・ダメっ!!」

 硬直したように、大きく仰け反る青い妖魔狩人。

「ウフッ! やはりまだ、そういう経験はないのね♪」
 ハァ・・ハァ・・と息を荒げながら、暖炉のように火照った青い妖魔狩人の表情を楽しむパペット・マスター。
 小さな口端から一筋の涎が垂れているのを見ると、ペロリと舌ですくい取った。

「甘く、上品な味・・・♪」
 更に白い布地の上で踊るように動きまわる指の動きに、もはや青い妖魔狩人は狂ったように仰け反るのみであった。

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「いいわね! その昂った魂・・・そろそろ頂くとするわ!」

 そう言ってパペット・マスターは青い妖魔狩人の唇に、強引に己の唇を押し当てた!
 舌で口内を舐めまわしその味を堪能すると、パペット・マスターは大きく息を吸い込む。

「う・・ぐっ・・・」

 小刻みに身体を震わせる・・青い妖魔狩人。

 どんなに弄ばれてもキリリと切り上げていた眉尻は、やがて力が抜けたように垂れ下がり、全身もグッタリし始める。

「ごちそうさま、過去・・1~2を争う程、美味しい魂だったわ♪」
 そう言ってパペット・マスターが唇を離すと、虚ろな表情の青い妖魔狩人は徐々にその身が縮んでいた。

コトンっ!!

 数秒後には、パペット・マスターの足元に小さな人形が転がっていた。
 嬉しそうに人形を拾い上げるパペット・マスター。
 それは、青い妖魔狩人をそのまま縮小したような高さ十数センチのフィギュア人形であった。

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「うん、予想以上に可愛い人形が出来上がったわ!」

 パペット・マスターは自身の目線より高めの位置に人形を持ち上げ、スカートの中を覗きこむ。

 本当に不思議な事だが、なぜかこの手のフィギュア人形というのはスカートの中を覗き込みたくなる傾向がある。
 それは、その手の人形を手にした人の九割はそうだろう。
 もちろんパペット・マスターもそうであった。スカートの奥から白い三角形が目に入り、ホッコリと表情を緩ませる。

「私の人形は見た目だけでなく、匂いなどもそのまま反映される。あとでじっくり楽しませてもらうわ!」
 パペット・マスターはそう言うと、青い妖魔狩人のフィギュアを座席の上に置いた。

 だが、その途端・・・・

「うぐぅ・・・っ・・!?」

 突然、パペット・マスターが胸を押さえ苦しみだした。
 その苦しみは尋常ではなく、辺りに設置された座席を蹴散らしながら右へ左へとのたうち回る。

「な・・・なんだ・・・この苦しみは・・・・」
 苦しみの中心となっている胸に目をやると、その胸を押さえている手が少しずつ消えかかっているのに気がついた。

「ま・・・まさか・・・!?」

 そう思った瞬間、

「そう、お前は今・・・浄化されつつある」
 と胸の中から声が響いた。

「まさか・・さっき吸い込んだ・・・魂・・。それか・・・!?」

「そうだ。お前が相手の魂を吸い込み、人形に変えるというのを知っていた。だから・・ワタクシは自身の魂に浄化の霊力を蓄えて、お前に吸い込ませたのだ」

「で・・では、平静を失い・・取り押さえられたのも・・、演技だったのね・・?」

「お前の言う通り、ワタクシは物理的な力でお前を倒す術がない。だから、お前がワタクシの魂を吸い込む・・・、そこにイチかバチか掛けてみた!」

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 青い妖魔狩人の言葉が進むにつれ全身に行き渡った浄化の力は、パペット・マスターの両手両足を消し去っていった。

「フフフ・・・ッ。やはり可愛い顔していても、性格はふてぶてしかったのね・・」

 パペット・マスターは何かに満足したようにニッコリと微笑むと、静かにこの世から消え去っていった。

 パペット・マスターが消え去るのと同時に座席に立てかけていたフィギュアがカタカタと揺れだし、そのままポトリと落ちる。
 落ちたフィギュアは拡大するかのように大きくなり、やがて苦しそうに佇む青い妖魔狩人の姿になった。

「恐ろしい敵だった・・・」
 そう呟くと、ドシンと腰を落とす。

 相当の疲労感を漂わせながら辺りを見渡す。

 そこには、ヌイグルミから元の姿に戻った祢々。
 同様にマネキンから人間の姿に戻った一般人の姿。
 皆、気を失っているが命には別状はなさそうだ。

 それだけ確認すると、青い妖魔狩人はその場に眠るように横たわった。




第十二章 蘇るマニトウスワイヤーへ続く。
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| 妖魔狩人若三毛凛VSてんこぶ姫 | 17:43 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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