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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第15話「姑獲鳥の子どもたち -後編-」

① なんで、凛に手を出したっちゃ!?

「なんで、凛に手を出したっちゃ!? 凛も前・・・トイレで先輩を助けたっちゃよ?」
 千佳の問いに、涼果はヤレヤレと言わんばかりに手を広げると
「この子はね、あたしに説教しながら弓を向けたの」
 思い出すように語りだした。

 千佳が来る十分以上前、赤子に囚われた凛は、涼果に哺乳瓶を咥えさせられた。
「先輩、それは邪悪な妖怪の力! 妖怪に心を支配されては駄目です!!」
 凛は、必死に抵抗しながら、そう叫ぶ。
「五月蝿いわね、もうあたしは虐められるのは沢山! この力を使って、あたしに歯向かう者は、みんな赤ん坊に変えてやる!」
「だ…駄目っ!!」
「さぁ、貴方も赤ん坊になりなさい!」
 そう言って、涼果は強引に哺乳瓶の乳首を凛に吸わせる。
「んぐっ……んぐっ……」
 凛の喉に、乳が流れこむ。
― あ……、なんか…懐かしい気分……―
 凛がそう感じ始めると、身体が徐々に小さくなっていった。
 手も、足も。 ドンドン縮んでいき、頭の身体も小さくなっていく。
 霊力も衰えたのか? 霊装で身につけた戦闘服も自然消滅し、数分後には元のセーラー服に包まれた、赤ん坊の姿に変わっていた。
 制服の中から赤ん坊の凛を引き上げると、ブカブカの下着が足に絡みついていた。
「まぁ~っ、イチゴのプリント下着。可愛いわね♪」
 涼果は下着を剥ぎ取ると、ベビーパウダーを塗り、オシメに付け替えた。

「ちょっとええね?」
 涼果の語りに水を指すように、千佳が口を挟んだ。
 その千佳の腕の中には、白いオシメに包まれた凛が抱かれている。
「ウチ、どうしても納得できんわ!」
― 千佳、頑張って! そして、みんなを・・・わたしを元に戻して!―
 凛も意識は元のままだ。
 その為、赤ん坊の姿になっても、その強い眼差しは、そう語っていた。
「アンタ・・誰の許可得て、凛のパンツ下ろして、お尻見たっちゃ!?」
― はい~っ・・・?!―
「凛のパンツ下ろすのも、お尻触るのも・・・舐めるのも! それをやっていいのは、この世でウチだけなんよ!!」
― そこなの!? てか、アンタでも下ろしたり、触ったり……まして最後のは、絶対に駄目ーっ!!―
 凛はその小さな拳を握りしめていた。
 もし、腕を動かすことができたなら、その拳は千佳の顔面に入っていただろう。
 千佳は涼果を指さし、こう告げた。
「そんな理由で先輩……。 アンタ、ウチの敵や!」
「そういう理由で~っ!?」
 黙って聞いていた金鵄も、思わず突っ込んだ!
「…………」
 涼果は、しばらく無言で千佳を睨みつけていたが、
「そう……。貴方はあたしを理解してくれたから、いい友だちになれると思ったんだけど・・・」
 そう言って、十数匹の赤子を生み出した。
「言ったやろ。ウチ、正しいとか、悪いとか…ようわからんって」
 そう言っている千佳の髪が、炎のように逆立ち、真っ赤に染まっていく。
「けど、一つだけ断言できる・・・」
 更に、右手が一回り……二回り大きくなり、その爪は鋭く、高熱を帯び始め、
「凛に手を出したヤツは、全て・・・敵っちゃ!」
 黒と赤のパンク風戦闘服に身を包み、不敵な笑みを浮かべた。
パチンッ! 
 涼果が指を鳴らす。それは戦闘開始の合図。
 一斉に十数匹の赤子が、千佳に襲いかかった。
「金鵄、凛を頼むっちゃよ!」
 凛を金鵄に預け、千佳は赤子の群れに飛び込んでいく。
 一匹、二匹と右手の灼熱の爪は、赤子を切り裂いていく。
 しかし、いくら小回りのきく右手の爪でも、一度にソレ以上の敵を攻撃できるわけではない。
 まして、動きを制限される狭い教室内。
 だが、凛を・・・金鵄を驚愕させたのは、これからだ。
 二匹撃退すると、千佳は後方に飛び退け、机と机の間に身を隠す。
 そして、その間を潜り抜けたかと思うと、予期せぬ場所から飛び出し、一気に1~2匹を仕留める。
 それでも深追いはしない。
 敵が気づくと、またもや机の間に身を隠す。
 森や草原で、木や草に身を隠しながら忍び寄り、素早い動きで一気に飛びかかる。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第15話(6)

 それは、ネコ科動物の『狩り』の仕方。
 千佳は、この狭い教室も、自分に有利な狩場にしてしまったのだ。
― す……凄い……―
 予想外の戦闘力に、凛も息を飲むだけだった。
「この戦い方は、凛や優里のように人間としての戦闘技術ではない。獣・・・、そう……融合された獣妖怪、火山猫の野生の本能に任せた戦い方だ・・・」
 金鵄は、改めて千佳の半妖としての能力に驚かされた。
 そして数分後、凛ですら倒しきれなかった十数匹の赤子を、全て撃退してしまったのだ。
「ふぅ……」
 衣類についた埃を叩き落としながら、千佳は一息ついた。
 その瞬間!
 頭上から、涼果が飛びかかる。
「油断したわね!」
 あっと言う間に、千佳の右手を押さえつけると、手にした哺乳瓶を千佳の口の中に押し込もうとする。
― 千佳っ、それを飲んだら駄目ーっ!!―
 声が出ない事を承知で叫ぶ凛。
「さぁ、これを飲んで、イイ子ちゃんになりなさい!」
 強い力で、哺乳瓶の乳首を千佳の口内に入れた瞬間・・・
ガブッ!! 
 なんと、千佳は鋭い牙で、乳首を噛み千切った!
 そして驚いた涼果を、そのまま押し払う。
「肉食獣の顎の強さを、舐めたら駄目だっちゃ!」
 千佳はそう言って、口の中の乳首を吐き出す。

「なんでよ・・・。なんで、あたしばかりが虐げられるの・・・・」
 目に一杯の涙を貯め、涼果はそう漏らすと・・・
ガチャーン!!
 窓ガラスを突き破り、中庭に逃げ出して行った。
「待つっちゃっ!!」
 直ぐ様、千佳も後を追う。
― 千佳っ、待って!!―
 凛もすぐに後を追いたい。 だが、指先すら自由に動かせない赤ん坊の姿では無理というものだ。
― 金鵄、聞こえる?―
 凛は、金鵄に思念を送った。
 凛と金鵄は過去に一度、魂を共有している。
 そのため、近距離ならば、思念で会話することができるのだ。
― わたしを掴んで、千佳を追って!―
「だけど、今の君では追っても何もできないよ」
― わかっている。だけど……千佳には浄化の技が無い。このままでは先輩を殺してしまう! 行って、千佳を止めなきゃ!!―
「凛、今の君は霊力すら操る事ができない。つまり、君でも浄化できないよ」
― だからと言って、放っておけない!!―
 赤ん坊の姿でありながら、その金鵄を見つめるその眼差しは、いつもの凛のものだった。
「わかったよ。いざとなったら、僕の残り全ての霊力を君に授けよう」
 金鵄は根負けし、凛の両脇を抱え上げると、千佳の後を追って飛び出していった。
 その様子を校舎の影から、一人の人物が眺めていたことを、凛も金鵄も気づかなかった。

「い……行き止まり!?」
 体育館裏の金網に行く手を遮られ、辺りを見回す涼果。
「もう逃げられないっちゃ・・・。観念しいや!」
 そこに千佳が姿をみせる。
 そして、灼熱の右手を突き出し、一歩・・また一歩と間を縮める。
「やだ・・・、助けて・・・・」
「待つんだ、千佳っ! 殺しては駄目だ!!」
 間髪入れず、凛を抱えた金鵄が追いついた。
「なんでね? 敵は息の根を止める・・・。当然やろ?」
 千佳はまったく聞く耳を持たず、一歩一歩、涼果に向かっていく。
「どんなに怒っても、わたしの知っている千佳は、必要以上に相手を傷つけたりしなかったよ!」
 金鵄が、大声で叫ぶ。
「はぁ……?」
 思わず振り返る千佳。
「今のは、凛から送られてきた思念だ。 そして今から言うのも、全て凛の言葉だ」
 金鵄はそう告げ、
「千佳はいつでもわたしを第一に想ってくれた。本当に嬉しい・・・。そして、わたしにとっても、千佳は一番大事な友達。だから、千佳に人殺しになってもらいたくない!」
 と続けた。
「凛・・・?」
 千佳は、金鵄に担がれている赤ん坊の凛を見つめた。
 凛の力強い眼差しが、語るように、一直線に千佳に向けられている。
「ふぅ……」
 千佳は溜息をついた。
「ホント、凛には……いつもいつも、教えられるっちゃね」
 そう言って苦笑する千佳。
 それを見た凛は、ニッコリ微笑む。
「けど、どうするっちゃ? このまま、放っておくわけには、いかんやろ?」
 千佳の問いに、凛も金鵄も返す言葉が思い浮かばなかった。
 その時・・・
「貴方も、黒い妖魔狩人も、本当に甘い性格なのね!」
 金鵄と凛の背後から、一人の人物が姿を現した。
 全身を『青い衣』で包んだ、その人物。
 おそらく女性と思わせる、その体型。
 だが、顔は忍者のように頭巾で覆われており、まるでわからない。
 ただ、後頭部の布地の切れ目から、ポニーテールのように長い髪が下がっていた。
「アンタ、誰だっちゃ!?」
 千佳が、凛たちを庇うように前へ出た。
 青い衣の人物は、そんな千佳を無視するように、右腕をまっすぐ頭上に上げた。
 そして円を描くようにゆっくり回す。
 すると、頭上に渦潮のように回転する、水流の輪が浮かび上がった。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第15話(7)

「な…なんだ……!?」
 驚く一行を他所に、青い衣の人物は、その水流の輪を、涼果に向けて投げ放った。
 水流の輪は、まるで輪投げのようにスポッと涼果の身体を潜ると、風船のような水泡を吹き出し、涼果の身体を包み込んだ。
「あああっ!!」
 水泡の中で、悶え苦しむ涼果。
「な、なにをしているんだっ!?」
 金鵄が慌てて止めようとする。
「黙って見ていなさい」
 青い衣の人物は、冷たい口調で言い返す。
 数十秒後、風船が割れるように水泡が弾け消えると、涼果はその場にバタリと倒れ伏せた。
「重っ・・!?」
 見ると、同時に金鵄に担ぎ上げられていた凛も、元の中学生の身体に戻っている。
 ただし、全裸だが・・・・
「きゃあああああっ~~!」
 思わず両手で胸を隠し、その場に座り込む凛。
 もちろん…そんな凛を、涎を垂らし・・・悶々とした眼差しで、千佳が凝視していたのは、言うまでもない。
「霊装っ!!」
 慌てて霊装し、ゴスロリ戦闘服に身を包んだ凛。
「これはいったい、どういう事だ?」
 理由も分からず驚く金鵄。
 凛は倒れ伏せている涼果に近づき、全身を見渡した。
「妖気が・・・消えている?」
「まさか、浄化の術!?」
「それで、凛も元の姿に戻ったっちゃか?」
 驚く一行を前に、青い衣の人物は更に付け加える。
「驚くのは早いわ。これで他の生徒や教師たちも、元の姿に戻ったはずよ」
 その言葉に凛は、喜悦の表情を浮かべた。
「君は一体、何者なんだ?」
 金鵄はそう問いかけると
「わたくしが誰であろうと、今はどうでもいい事。ただ一つ言わせてもらうわ」
 青い衣の人物は、そう言って凛たちを指さすと
「今回は貴女たちの戦い方に合わせてみただけ。でも、こんな戦い方では、妖怪たちを滅ぼす事はできない!」
 と、言い放つ。
「わたしたちは、妖怪を滅ぼすために戦っているのではありません!」
 だが凛は、そっくりそのまま言い返した。
「…………」
 無言で凛を睨みつける、青い衣の人物。
 しかし、そのまま何も言わずに踵を返すと、金網を飛び越え、姿を消した。


 教室へ戻ると、青い衣の人物が言っていた通り、赤ん坊に変えられた人達は、全て元の姿に戻っていた。
 金鵄は大急ぎで、セコや精霊達に呼びかけ、霊獣『獏』を使って、関係した人物のこの時の記憶を消し去っていく。
 ただし、涼果と琉奈の記憶だけは残しておいた。
 事件のきっかけになった、虐めについて考えてもらいたいからだ。
 もちろん、凛や千佳の正体に関してだけは、記憶を消し去っているが。

 後からわかった事だが、琉奈が涼果に対して虐めを始めるきっかけになったのは、モデルの仕事を涼果が見学に来た時のことだった。
 琉奈が読者モデルの仕事を始めたのは、己の美貌に自信を持っていたこともあるが、それ以上にその事務所で働く、男子高校生の読者モデル、萩原桐人に心を惹かれていたからであった。
 琉奈は桐人に会うたび少しずつ話しかけ、親しい仲になっていると思っていた。
 そんな頃、涼果が琉奈の仕事を見学に来た。
 楽しく過ごしたその日、涼果が帰った後、桐人が話しかけてきた。
「今の子、友達なの? 同じ中学生?」
 実は桐人は『妹属性』と呼ばれる嗜好の持ち主で、歳相応より大人びて見える琉奈には、あまり興味は持っておらず、むしろ幼く見える・・涼果に興味を示した。
 その日から桐人からの話題は、涼果に対する質問ばかりだった。
 小学生高学年から美しい容貌を持ち、誰からもチヤホヤされてきた琉奈。
 だが本気に想っている人の対象は、自分ではなく、幼なじみでそこそこ可愛い程度の涼果であった。
 プライドも傷つき、涼果に対し、激しい『嫉妬』が芽生えた。
 そう、全てにおいて涼果より優っていると思っていたが上の、敗北。
 それが、涼果への虐めのきっかけだった。

 元の姿に戻ったその日、涼果と琉奈の二人は、ゆっくり話しあった。
 
 涼果に対しての、琉奈の嫉妬。
 逆に全てにおいて自分より優れている琉奈に対しての、涼果の密かな妬み。
 どちらも完全ではない、不完全な中学生・・・。いや、人間であることをわかち合った。
 元の仲良しまで戻れるかは、わからない。
 でも、お互いの心境を理解することは、できたはずだ。

 余談だが、桐人は新たに、妹っぽい女性を見つけ、交際を始めたらしい。
 だが、実はその女性、とうに成人を迎えており、幼く見える容貌を利用して、桐人に声をかけたようだ。
 妹どころか、自分より年上と知って、桐人は死人同然となり、しばらく立ち直れなかったらしい。
 もちろん、その話は琉奈の耳にも入り、あまりの情けなさに百年の恋も冷めたと聞く。


 それから数日後・・・
「そう言えばあの時、田中先輩は教室にいなかったっちゃよね?」
 千佳が思い出したように問いかけた。
「うん、あの日・・・・」
 千佳の問いに凛は、事件翌日の心美の言葉を思い出した。
「いや~~っ。 前日の夜、アイス食べながらゲームしていたせいか、お腹壊しちゃったみたいで。 それで、ずっとトイレに篭っていた」
 と屈託のない笑顔で話していたそうだ。


第16話へつづく


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② あの子、ウチ…貰うていいか?

 千佳の目に入ったのは、セーラー服に包まれた、小さな赤ん坊。
 髪の毛は短くなっているものの、サイドに束ねられたチェックのりボン。
 ちょっと冷めた目元・・・。
 たしかにこれは、凛が赤ん坊化した姿だ。
 静かに近寄り、ゆっくり丁寧に赤ん坊を抱え上げる。
「か……かわいい………」
 まるで松阪牛を目の前にした犬のように、大きく生唾を飲み込む。
 柔らかそうなホッペに頬擦りしてみる。
 プニュ…プニュのモチ肌が気持ちいい!
「ええなぁ~。ええなぁ~」
― ん……んっ……?―
 千佳にアチコチ触られて、意識を取り戻した凛。
 そう、凛も姿は赤ん坊になっているが、意識は元のままであった。
チュッ♪ チュッ♪
 そうとは知らず、凛のほっぺに口づけをしまくる千佳。
― ちょっ…、千佳っ! キミ、何…トチ狂ってるの!?―
 凛は力いっぱい怒鳴りまくる。
 だが、赤ん坊化している凛は、一切言葉を話すことができず、口から出てくるのは、「オギャーァ! オギャーァ!」という、泣き声だけだった。
「ん? ん? どうしたっちゃ? お腹すいた? それとも、おしっこ?」
 泣き声では、当然千佳には通じない。
 凛を机の上に寝かしつけると、ブカブカの制服を剥ぎ取り、ズリ落ちかけている、イチゴ模様の下着も引きずり下ろした。
 そこには、赤ん坊の姿とは言え、千佳が心から愛して病まない、愛しの凛の全裸姿!
「えへ…っ、えへ…っ・・・」
 鼻血を垂らしながら、隅々まで全裸姿を堪能する。
― バカ千佳っ! アンタ、ホントに狂ってんじゃないのっ!?―
 更に怒鳴りまくる凛だが、やはり泣き声にしかならない。
 その泣き声に、少しだけ我に戻ったか・・・
「おっと! もう少しで意識が天国に行く所だったっちゃ。 えっと・・・、おしっこ? …じゃ、なさそうやね」
 そう言って、パンツを履かせようとしたが
「パンツより、オシメの方がいいやね! ねぇー先輩、オシメあります?」
 と涼果に声を掛けた。
 
 この時点で、涼果が行った悪行に関しては、すっかり頭から抜け落ちている千佳だった。

 涼果から受け取ったオシメを、鼻歌まじりで凛に巻いてやる。
― 最悪・・・、なんで中学生にもなって、オシメなんか・・・・―
 もはや、凛の恥辱ライフはゼロに等しい。
「凛、なぁ~んも心配せんでいいんよ! ウチが責任持って、育ててあげるっちゃ!」
 そう言って、凛を抱きかかえ、優しくあやしてやる。
 もう完全に、目的が変わっていた。
 それまで黙って様子を見ていた金鵄だが、さすがに拉致があかないと感じたのだろう。
 最後の頼みの綱・・・優里の元へ飛び立っていった。

  

 金鵄の連絡を受け、優里が駆けつけたのは、それから二時間後。
 学校では、多くの赤ん坊の泣き声で響きわたっていた。
 しかも、異常事態に駆けつけたのだろう。
 警察や消防署の制服に包まれた赤ん坊もいる。
 金鵄の手引で、窓から教室内に侵入する、優里。
 それに気づいた涼果。
 自分より年上で、コスプレのような容姿。
 どう見ても、中学校に関係する人ではなさそう。
 涼果はそう判断し
「どなたです? 先程のサイドテールの一年生の仲間ですか?」
 と問いかけた。
「サイドテールの一年生・・・? 凛ちゃんの事かしら? だとしたら、その通りよ」
 優里はきっぱりと答えた。
 教室内には二十匹近くの、妖怪赤子の姿が目に入る。
 だが、優里の実力なら、物の数ではない。
 金鵄はそう信じて疑わなかった。
パチン!
 戦闘開始の合図が、涼果の指から鳴り響く。
 一斉に飛びかかる、赤子たち。
 迎え撃つ優里。
 だが、ここに大きな誤算があった。
 飛びかかってくる赤子を、鋭い蹴りで一匹一匹弾き飛ばす。
「え……っ! 蹴り!?」
 思わず金鵄は声をあげた。
 そうか! 戦う優里の姿を見て、その理由を納得する。
 痛々しく両手に巻かれた包帯。
 それは先の千佳との戦いで、優里の両手は大火傷をし、薙刀を握る事すらできない。
 ミスだ・・・痛恨のミス。
 金鵄は悔やんだが、もう後の祭りである。
 両手を使えない優里は、脚や両肘を使って打撃技で赤子と戦っている。
 武術に長けた優里ならではで、さすがと言わざるえない。
 だが、相手は低い戦闘力とは言っても、妖怪である。
 人間を相手にするのとは、わけが違う。
 ダメージ回復の早い妖怪であるため、形勢は徐々に押されてきている。
「優里っ!」
 見ていられなくなった金鵄は、嘴や爪を使って優里の援護に入った。
「邪魔な鳥ね・・・」
 涼果は一足飛びで金鵄に迫ると、なんと…手にした哺乳瓶を金鵄の口内に押し込んだ!
「んぐ…っ、んぐ…っ」
 金鵄の喉に、乳が流れ込む。
 見ると霊鳥である金鵄ですら、その身体は徐々に小さくなり・・・・
「うふっ♪ 可愛いくなったわね!」
 涼果の手の中で、ピーッ…ピーッ…鳴く、雛鳥になっていた。
 実体化ならではの悲劇。
 涼果は一匹の赤子に雛となった金鵄を手渡した。
「小腹も空いてきているから、ソレ・・・串刺しにして、焼き鳥にしておいてね」
「金鵄さん!!」
 金鵄の身を案じる優里だが、彼女自身も後が無い。
 いくら武芸百般とは言え、武器無しで妖怪と戦うにはハンデがありすぎる。
 疲れも溜まり、ついに手足を拘束されてしまった。
 身動きできない優里の元に歩み寄る涼果。
 改めてじっくりその姿を見つめなおし、こう漏らした。
「き…綺麗な女性(ひと)・・・! 琉奈とは違う、理知的な美しさを感じるわ!」
 涼果は頬を染めると、思わず優里の唇に自分の唇を重ねた。
「ちょ・・!?」
 さすがに理解不能の優里。
 そんな優里に対し、さらに理解不能の言葉を付け加えた。
「この女性(ひと)を、あたしの手で、一から育て直したい。そう…琉奈と一緒に理想の女の子に・・・」
 涼果は、優里の口に哺乳瓶をあてがう。
 嫌々ながらも、乳を飲まされていく優里。

― 優里…お姉さん……―
 千佳の腕の中で、一部始終を見ていた凛は、優里の敗北に涙していた。
 そして、それにより全ての望みを絶たれた事を実感した。
 溢れ出る涙・・・・
 だが、そんな凛に、もう一つの悲劇が襲いかかってきた!!
― やばい! おしっこ・・・したくなってきた!―
 赤ん坊にされて、もう二時間以上経っている。
 そして、何度も乳を飲まされた事もあり、ここに来て催してしまった。
― 千佳、お願い……トイレに連れて行って!―
 凛は、心ばかりの願いを込めて、そう叫んだ。
 しかし、やはりそれは、泣き声にしかならず、千佳の耳に届かない。
 それどころか千佳は、
「おやおや、どうしたっちゃ? またお腹空いた・・? それとも・・?」
 とすっかり母親の顔になっている。
― お願い千佳! トイレに連れて行って!!―
 心の中で、そう叫んだ瞬間っ!
ブルブル・・・・
 心地よい振るえが、全身を伝わる。
― あっ・・・!?―
 凛の思考が、そこで一旦停止した。
 お尻に巻かれた白い布地から、湯気が立ち込める。
 赤ん坊化したため、指一本…自分の意思では動かせないその身体。
 当然、我慢するというのも無理な話である。
 湧き上がる湯気と、白い布地から滴る温かい液体で、千佳は全てを悟った。
「やっぱ、おしっこしちゃったんやね~♪」
 千佳は嫌がる素振りもなく、むしろ嬉しそうに凛のオシメを外していく。
 グッショリ濡れたオシメに、湧き上がる湯気。
 まるで糸の様に細く、優しい眼差しで見つめる千佳。
 そこで、驚くべく行動に出た。
 千佳は、自身の舌を長く伸ばすと、ゆっくり・・・ゆっくり、そして優しく。
 凛の秘部を舐め始めたのだ!
― ち……千佳…っ! だ…駄目ーっ!!―
 顔からも湯気を立ち込めそうな勢いで、真っ赤になる凛。
ペロ…ペロ……
 何度も、何度も、優しく掬い上げるように、凛の秘部を舐める千佳。
― 千佳さんっ!?―
 赤ん坊にされ、涼果の腕の中で優里が見たその光景は・・・
 千佳の姿が変貌していく、その様であった。
 全身に、燃えるような赤い体毛が包み始めると、腰に長い尾が伸び始める。
 耳は鋭く尖ったと思うと頭上に移動し、口元・・マズルが膨らみ始める。
 そう、その姿は数日前に戦った、獣人化した千佳の姿。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第15話(8)

 獣人化した千佳は、ついに秘部だけでなく、凛の全身も舐め始める。
 そうなのだ!
 千佳が凛の秘部を舐めたのは、性的嗜好からでなく、獣の母性本能から来る行為だったのだ。
 赤ん坊の凛を愛おしく思う千佳は、その『母性本能』が人間の『理性』を上回った。
 妖怪は、本能に従う生き物。
 半妖である千佳は、本能が上回ることで、その姿も獣化していったのだ。
 それは、母猫が子猫を優しく舐めてあやす姿、そのものだった。

 凛も今は赤ん坊という、理性ある人間というより、一つの無抵抗な生き物に近い状態。
 やがて、千佳の母性本能に身を委ねることに安心感を覚え、ついに自身の思考は止まってしまった。



 数時間後、県警から派遣された警官隊が学校へ突入した時には、廊下や教室で泣き喚く、身元不明の大勢の赤ん坊の姿しかなかった。
 そして、その赤ん坊とほぼ同数の、行方不明になった教師と生徒たち。
 もちろん、行方不明者の名簿には、『同校一年生、若三毛凛』『同校一年生、斎藤千佳』『同校三年生、初芽涼果』『同校三年生、日笠琉奈』『私立大生堀高校三年、高嶺優里』の名前もあった。


 余談だが、隣町・・・丘福市での都市伝説『蜘蛛女』は、衰えることなく増え続けていったが、最近この柚子村においても、新たな都市伝説が生まれた。
 一つは犬乙山山頂に、二人の人間の赤ん坊を育てているという、鳥女の伝説。
 そしてもう一つは、同山麓で、やはり人間の赤ん坊を育てているという、真っ赤な山猫のような獣人伝説。
 時折村人に目撃されるが、基本的に人間に危害を加える事は無いと言う。
 だが赤ん坊に近寄ると、鋭い嘴に突かれるか、鋭い爪で引き裂かれると言われている。


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