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妖魔狩人 若三毛凛 if 第14話「千佳の覚醒 -中編-」

「大丈夫かい、凛……!?」
 すぐ後を、金鵄も飛び寄ってきた。
「優里お姉さん……、金鵄……、どうしてここが……?」
「セコが精霊を使って、僕に伝えたんだ。そして僕が優里を連れてきた!」
 金鵄の言葉に、セコが草陰から姿を現す。
「話はある程度、把握いたしました。たしかに千佳さんには同情いたします。でも……だからと言って、凛ちゃん貴方を殺させはいたしません!」
 優里は眼光鋭く、千佳と嫦娥を睨みつける。
「でも……千佳はわたしのせいで……」
「凛ちゃん!」
 優里はそう言う凛を制すると
「貴方の最大の弱点は、その優しさです。 その優しさがある限り、奴らはずっとそこに付け込むでしょう」
 冷静に言い放った。
「・・・・・・」
 凛は黙って項垂れる。
 そんな凛を見て、優里は密やかだが、優しく微笑んだ。
― でも、そんな優しい凛ちゃんだから、私も金鵄さんも、全力で守りたいと思うんだけど…… ―
 優里は再び目線を千佳に戻すと、薙刀を構え、千佳との間合いを測る。
「千佳さんとは、私が戦います!!」
 一気に千佳の間合いへ飛び込んだ!
 獣妖怪としての本能か? 優里の一閃を紙一重でかわし、間合いを開ける千佳。
 そして、口から炎の玉を吐き出した!
 咄嗟に薙刀で炎の玉を切り裂く優里。
 それでも次々に炎の玉を吐き出す、千佳。
 飛び交う炎の玉を、負けじと撃ち落としていく優里。
 そして、隙を見て、一足飛びで間合いを詰めると、薙刀を横払いした。
 微かだが、手応えはあった!
 千佳の胸元に、かすり傷であるものの、明らかに一筋の血が流れている。
 千佳の息が更に荒くなった。
 そして……
「もっと…速く・・・、もっと…速く動かないと・・・・」
 微かだが、そんな呟くような声が聞こえた。
「あ……、千佳の足がさっきより赤く光って……?」
「え? どういう事だい凛……?」
「う…うん、よくわからないけど……、千佳の足の力が増したような……」
 凛が言葉を終える前に、今度は千佳が爪を振りかざし、攻撃を仕掛けた。
 優里に負けない速度で、間合いに入り込む千佳。
 その鋭い爪を振り下ろすが、優里が薙刀で弾き返す。
 それでも、二振り…三振りと、腕を振り回す。
 さすがの優里もその勢いに、数歩引き下がった。
― 少し……動きが速くなった……? ―
 優里は冷静に見定める。
「もっと…っちゃ……。もっと速く動かないと……、攻撃が当たらない…ちゃ……」
 先程よりも、ハッキリとした声が聞こえた。
「更に、千佳の足の力が増している!!?」
 追うように、凛が叫んだ!
「ほぅ……、様子が変わってきているようじゃの……?」
 様子を見ていた嫦娥がそう呟いた時・・・
「コソコソと何をしているのかと思って来てみれば、こういう事か……」
 背後から声が聞こえた。
 そこには、色白で長髪の青年と、褐色で大柄な髭男の姿が。
「白陰……、ムッシュ……! なぜ…お前さんたちがここに!?」
「吾輩が案内したのですよ。どうも最近……マダムの様子が可怪しいのでね」
 ムッシュがそう言いながら、自慢のカイゼル髭を摘み上げる。
「あの娘、妖怪と融合したのか……? 融合の術は条件が揃わなければ成功しない、相当高度な術。 そんな手間隙掛けて、なぜこんな事を……?」
 そう問いかける白陰に対し、嫦娥は目線を千佳たちに戻すと、
「あの娘、消滅して消え去る運命じゃった。だったら…最後に使い道は無いかと、試してみただけじゃよ……」
 そう言い捨てた。
「なるほど、もっともですな!」
 まるで嘲笑うように、ムッシュはまたも、髭を摘み上げた。
 すると・・・・
「懐に入ったぁぁぁぁぁっ!!」
 同時に、嫦娥が叫び声を上げた!!
 見ると、優里の振り払った一撃を避け、その胸元に千佳の鋭い右腕が入り込んでいる!!
 そのまま右腕を突き上げ、優里の胸を貫くっっっ!!?

キンッッッ・・!!
 
 まるで金属が弾けるような音が聞こえた。
 それは、突き上げた鋭い爪・・・右腕は、優里の胸を貫くどころか……、その胸に備え付けられている『鎧』に弾き返されていた。
「す……すごい……」
 凛が、思わず溜息を漏らす。
 優里の戦闘服や鎧。 それらは霊獣麒麟が寿命でこの世を去る前に、自らの霊毛を使って仕立てあげた物。
 一見、軽装だが、その防御力は凛のソレを上回り、特に胸元の鎧部分は、銃弾すら弾き返す強度がある。
「危なかったわ……。 でも、これで勝負あったわね!」
 優里がそう言い放った。
「参ったのぉ……、こりゃ…決まりじゃわい!」
 嫦娥もそう呟いた。
 たしかに、獣化した千佳の動きは、最終的に優里の速さを上回った。
 だが、肝心な攻撃力が通じない。
 すなわち、優里を倒すことはできないということだ。
 それを理解したのか、千佳も肩で息をしながら、攻撃の手を止めた。
「千佳………」
 凛も心配そうに見守る。
「負けない……ちゃ・・」
「えっ!?」
「ウチは絶対に……負けないっちゃ! 絶対にアンタを倒すっ!!」
 誰もが耳を疑った。
 獣人化した千佳が、ハッキリと言葉を・・・、自分の気持ちを言葉で現した!
 見ると、たしかに姿形は獣化したままだが、その瞳は獣の瞳でなく、光を持った人間の瞳・・・。
「優里お姉さん・・・、千佳・・・・」
 なにやら考え事をしていた凛だが、一大決心をしたように口を開いた。


凛の言葉は・・・・・・・?
 ① 優里お姉さん、最後まで千佳と戦って・・・
 ② 千佳、もう勝ち目はないよ。諦めて・・・!

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『-後編-』へ続く。

そのまま、下のスレをご覧ください。

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