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妖魔狩人 若三毛凛 if 第12話「対決!独楽勝負 -中編-」

 凛が小学校へ到着したとき、そこはまるで無人のように、人の気配が無かった。
 いや、微かだが人間の気・・・霊力を感じる。それも数多くだ・・・。
 そう思って凛は校内へ入った。
 校庭には、無数の小さな丸い物体が転がり落ちている。
「なに・・・これ?」
 凛は小さな物体を手に取った。
 円錐型で中央に芯棒が通っている。凛には見たこともない物体。
「それは昔の玩具・・・、独楽というものみたい」
 背後から声と同時に、優里が姿を見せた。
「でも・・・、この玩具から僅かだけど、人の気を感じるんです」
 凛は信じられない表情で独楽を見つめている。
「さすがですね……凛さん。その独楽は、この小学校の子供たちが姿を変えられた物です」
 優里の影からセコも姿を見せる。
「なんて事・・・! それで子供を独楽に変えた妖怪っていうのは!?」
 独楽を持つ凛の肩は、怒りからかワナワナと震えている。
「あれがそうね・・・?」
 優里が薙刀の尖先を向けた先に、若い女性を引き摺るように歩いてくる人影が見える。
 子供とも、年老いた男性とも見える、その異様な姿。
 体つきは小柄。頭はまるで河童のように、おかっぱだが天辺だけが禿げ上がっている。
 キョロキョロした子供のような大きな目に、薄っすらと髭のようなものが見える口元。
 そして右手に大きめの独楽、左手に市松模様の紐を手にしている。
 そんな異様な男に、自分より大きい若い女性がしがみついたまま、こちらへ歩いてくる。
「子供たちを・・・子供たちを、元に戻してっ!!」
 男にしがみついた女性は、そう叫び続けている。
「あ…あれは、音羽(おとは)先生っ!!?」
 凛は女性を見て驚きの声を上げた!
 そうだ。考えてみれば、凛は去年まで、この小学校の児童だったのだ。
「高橋音羽先生、二年前に赴任してきた音楽の先生です!」
「ええっ~い、邪魔ばい……女!!」
 男はそう叫ぶと、持っていた紐を音羽に巻きつけた。
「あっ・・!」
 音羽が短い悲鳴をあげたのもつかの間。
 ポンッ!!という音と共に白煙が立ち込めると、そこには音羽の姿は無く、校庭に転がっている独楽より、少しだけ大きな独楽が落ちていた。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第12話(1)

「あっ……音羽先生ーっ!!?」
「やはり、あの男が子供を独楽にした、妖怪のようですね!」
 凛と優里は、音羽を独楽にした男・・いや、妖怪の前に立ち塞がった。
「なんだ、お前たちは・・・・?」
 そんな二人を怪訝そうに見る妖怪。
「私たちは妖魔狩人。どこの妖怪か知りませんが、今すぐ独楽に変えた子供たちや先生を元に戻しなさい!」
 優里が薙刀の尖先を妖怪の眉間に向けた。
「妖魔…狩人……? なんばいね、それは?
 おいどんの名は、ネンカチ。 ここのガキ共は、おいどんとの独楽勝負から逃げたから罰として独楽にしてやったばい!」
 ネンカチと名乗る妖怪は、そう言って自慢げに持っている独楽を見せ付けた。
「独楽……勝負……?」
「そうばい、喧嘩独楽勝負ばいっ!!」
 ドヤ顔のネンカチに対し、凛は・・・・
「金鵄、喧嘩独楽勝負……って?」
「い…いや、僕もわからない……」
「回転する独楽と独楽をぶつけ合い、先に倒れた独楽が負けという、結構昔の子供の遊びです」
 永遠の子供妖怪・・・セコがフォローしてくれた。
「意気地の無いガキ共ばかりで、話にならんからお仕置きをしてやっただけたいよ」
 ネンカチは鼻で笑う。
「意気地なくて勝負を避けたのではなく、今の子供たちは独楽なんて遊ばないですから。
だから勝負しなかっただけと思いますよ」
 という優里の言葉に、
「そう! だからみんなを元に戻して!」
 と、凛が付け加えた。
「そんな事は知らん。それより元に戻す方法は、おいどんが勝負に負けた時だけばい!」
 ネンカチはそう言うと、持っていた独楽を凛たちに突きつけるように見せ、
「どうばい? おいどんと独楽勝負をせんか・・・? もし、お前たちが勝ったら、ガキも教師も元に戻してやるばい!!」
 と言って口元を緩ませた。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第12話(2)

「独楽勝負? わたしたち・・・独楽なんかした事が無いし、第一……独楽も持っていない・・・」
「独楽なら、その辺に沢山転がっているばい!」
「それは、姿を変えられた子供たちでしょう! 使えるわけがないじゃない!!」
 凛が当然のように拒むと、
「だったら、お前が独楽になって、もう一人の女がお前を回せばいい」
 とネンカチが凛を指差した。
「えっ・・・!?」
 驚きのあまり、顔を見合わせる凛と優里。
「知ってのとおり、おいどんならお前を独楽に変えてやる事ができるばい」
 ネンカチはまだら模様の紐を振り回す。
 言葉に詰まった凛。
 ネンカチと手にした独楽を見つめ、さらに校庭に散らばった独楽を見渡し、再度ネンカチと独楽を見つめなおした。
 そして決心したように
「わかった、わたしを独楽にして・・・」
 と、ネンカチに返答した。
「凛ちゃん・・・落ち着いて! 冷静に考えて他の手を・・・!!」
 優里が慌てて止めに入る。
「そうだ凛、何かの罠かもしれない! 君と優里なら、普通に戦ってもアイツに勝てるはずだ!」
 いつも黙っている金鵄も、さすがに反対する。
 しかし凛は静かに首を振り、
「なんか……勘みたいなものだけど、この方法が一番いいような気がするの」
 と付け加えた。
「凛ちゃん・・・・・」

 普段はあまり我を通さない凛、優里はそれをよく知っている。
 だが、あまりに不利な勝負である事も否めない。
 金鵄の言うとおり、自分たちの戦い方に持ち込んだ方がいいのか?


 
どうする?

① 優里は凛を信じ、独楽勝負に挑む
② いや、自分たちの戦いをしよう!


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『-後編-』へ続く。

そのまま、下のスレをご覧ください。

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