2ntブログ

自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

妖魔狩人 若三毛凛 if 第12話「対決!独楽勝負 -前編-」

 ムッシュ・怨獣鬼が妖魔狩人と初対決したその翌日。
「どうであった、妖魔狩人と戦ってみた感想は?」
 いつもの犬乙山、麓の洞窟に白陰、嫦娥、ムッシュは顔を合わせていた。
「うむ、なかなか美味そうな素材でしたな。悪くない・・・」
「強さや能力でなく、そう見方をしておったのか? ふざけたヤツじゃ」
「ふざけてなんかおりませんよ。吾輩にとって人間・・・それも若い娘は食材としての価値しかない。それにそこそこは強い娘だったが、恐れる程のものでもないですな」
「汝(うぬ)にとって、どんな人間も家畜としての対象でしかないということだな」
「さよう・・・」
 ここまで話すとムッシュは紅茶を口に含み、その香りと味を噛みしめる。
 妖怪であっても、このひと時がたまらない。
「ところでムッシュよ、もう一つ聞きたい事があるんじゃが?」
 嫦娥の問いに、せっかくのティータイムを邪魔するなと言わんばかりの目をしたムッシュ。
「なにかね?」
「お主の血は、どんな生き物でも妖怪に変化させることができるのかの?」
 更なる問いに、残りの紅茶を全て飲み干し、天を仰ぐように目を閉じた。
「吾輩の血は怨念の血。したがって、恨みや復讐・・・そんな強い念を持った者にしか効き目はない」
「手当たり次第に飲ませても、意味はないというわけじゃの?」
「そういう事ですな」
 ムッシュはそう言うと、ティーポットに湯を入れる。
 茶葉が広がるまでの、ゆったりとした時間。
 一見無駄なように感じられるが、この無駄がいいのだ。
 その無駄を楽しみ、再度カップに入れた紅茶を口に含む。
 十分に香りを楽しむと思い立ったように、
「そう言えば、この村の人間の生活状況を把握しておりませんでしたな。 ゆっくり見てみたい。どちらか案内してもらえませんかね?」
 ムッシュの問いに、白陰と嫦娥は顔を見合わせたが
「良いじゃろう、あたしも色々気になることがある。案内してやろうて」
と、嫦娥が立ち上がった。
「ありがとう、マダム!」


 昔から農業を育んできた、柚子村。
 しかし、今では農業を続ける若者も減り、また農業だけでは生活も苦しいため、職を求めて丘福市へ移転する家族も少なくない。
 数軒の民家が並んではいるが、長年空き家になっている家も珍しくはないのだ。
 そんな中、ムッシュと嫦娥は一軒の古民家へ入った。
 雨戸を締め切り陽も入らぬ室内、溜まりに溜まった埃。
 ここも長年人が暮らしている気配は無い。
「どうやら、この付近はこの国の年号で言う『昭和』で、時間が止まっているようじゃのう・・・」
 嫦娥は残された家具や衣類を見て、呟いた。
 たしかに・・・。
 当時の人々の生活を思い浮かべながら、家内を眺めるムッシュ。
 フト、部屋の隅に置いてある、数々の道具が目に入った。
 その内の一つを手に取る。
「マダム、ここにあるのは何かわかるかね?」
「ん・・・?」
 ムッシュの問いに、手にした物に目を向ける。
 それは、手の平くらいの大きさで、木製の円錐型、中央に一本の芯棒が通っているものだった。
「ああ・・・、それはこの国の子どもが遊ぶ、玩具じゃろう?」
「玩具?」
「そうじゃ……。今、お前さんが手にしているのは、たしか……独楽という物じゃの!」
「ほほぅ~」
「中国の独楽とは、形も遊び方も違うが、今どき珍しいのぉ」
「たしかに年代を感じるが・・・、うむ……悪くない!」
 ムッシュはそう言って、独楽を隅々まで眺める。
「おや、お前さん……指をどうかしたのか? 血が流れているぞ」
 嫦娥の言葉にムッシュは、自身の両手に目をやった。
 右手の人指し指から、僅かだが血が流れている。
「おお……、これか! これは先日、鶏を妖怪化するために自ら傷つけたもの。 アレコレ触っているうちに、傷口が開いだのだろう」
 ムッシュはそう言って、人差し指をしゃぶりだした。
「ま、すぐの止まるはずだ」
 ムッシュは手にした独楽を放り投げると、そのまま民家から出て行った。
 見ていた嫦娥も苦笑いしながら、後に続く。
 実はこの時、ムッシュが手にした独楽に血が付着していたことを、二人は知るよしも無かった。


 それから数時間が経ち、ここは柚子村立中学校。
 丁度授業が終わり、各教室清掃時間になっていた。
 一年二組の教室で窓ふきをしている凛。
 そこへ一人の少女が近づいてきた。
 丸顔でショートヘア。身長は凛よりもまだ小柄で、その分……身軽そうな体つき。
 アンダーリムの眼鏡を掛けたその少女は・・・・
「んっ、千佳……なんか用?」
 そう、凛の幼なじみで最も親しい同級生、斎藤千佳。
 だが、いつもはイタズラっ子のような口元が、なぜか真一文字に結ばれている。
「凛、ウチ……凛と戦った事があるとよね?」
「えっ!? 戦う・・・って?」
「死闘・・・。文字通り、殺し合いの戦い……ちゃ」
「なんの話? そんなわけないじゃない……」
「覚えているっちゃよ、うちの家で戦った事。うちの気持ちを打ち明けた事……」
「お……覚えて……いる……?」
― そんなはずは無い。 
 わたしの霊光矢は、確実に千佳を浄化し、その悪しき記憶も消したはず…… ―
 その時・・・・
(凛、聞こえるかい?)
 頭の中に、金鵄の声が聞こえた?
― き……金鵄……? ―
(ここだよ、外を見て!)
 凛の思ったことに返答するかのように、新たな声が頭の中へ入ってくる。
 声の通り窓の外に目をやると、目と鼻の先ほどの距離に金鵄が飛んでいた。
(ちょ…ちょっと、人に見られたら……!?)
(大丈夫、今の僕は霊体だ。普通の人間には見えない)
(あなたの声が聞こえるのは……?)
(出会った頃、僕と君は魂を共有しただろう。だから霊波動が協調しやすく、こういった至近距離なら、直接発声しなくても霊力で会話ができるんだ)
(そういうことは早く言ってよ。いらない心配をするじゃない!)
(ごめん、僕もつい最近気がついたんだ)
「ねぇ……凛、もしかして……その金色の鳥と話しをしているの?」
 唐突に千佳が話しに加わってきた。
「えっ、千佳……わたしたちの会話が聞こえるの? ていうか……金鵄が見えるの!?」
「会話? そんなのは分からんけど、鳥は見えるっちゃよ」
― 今の金鵄は霊体。だから霊力の高い人間でないと、見えないはず…… ―
 驚きを隠せない凛は、思わず千佳の姿をマジマジと見つめた。
 すると千佳の体から、薄っすらと赤い煙のようなものが見える。
 霊気・・・いや、これは……妖気・・・!?
― まさか……、千佳はまだ……!? ―
(それよりも凛、大変なんだ!!)
 凛の不安をよそに、再び金鵄が頭の中へ話しかける。
(この村の小学校が、妖怪に襲われたらしい!)
(村の小学校が・・・!? 中国妖怪の仕業・・・?)
(セコからの情報だから僕もまだ見ていないからわからないけど、そうではないみたい。だけど、どちらにしろ子供たちが被害に遭っている!)
(優里お姉さんは?)
(セコが、他の精霊を使って連絡した。直接向かうだろう)
(わかった! わたしたちもすぐに向かいましょう!)
 凛はすぐに清掃用具を片付け始める。
「ねぇ……凛、どうかしたん?」
 そうだった、千佳の事もあるんだ・・・。
 でも、今は小学校の子供たちの身が危ない・・・
「ごめん千佳! わたし、急用ができたから帰るね!」
 軽く謝ると、凛はダッシュで教室を飛び出していった。


-------------------------------------------------------------------


 今回はいつもより、かなり長めになっております。ww
引き続き、下のスレ「中編」を御覧ください。

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 22:07 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://kenitiro.blog.2nt.com/tb.php/336-7798ace5

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT