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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第06話「妖怪鯵坊主 -前編-」

 妖怪化した千佳との戦いの後、わたしと金鵄はその足で霊獣麒麟を訪ねた。
妖怪化しても、千佳は自我と記憶を引き継いでいた。
被害者も、そして千佳の両親も、千佳が妖怪化して襲ってきた事を覚えている。
 それは、あまりにも千佳が可哀相だ。不本意ではあるけど、なんとかこの事実を隠蔽したい。
 そこで老いてはいるものの、博識な霊獣麒麟に助言をもらおうと、こうして訪ねたみたわけ。
「方法はある。幻獣獏(バク)の力を借りるのだ。」
 麒麟の話はこうだった。
幻獣獏は、悪夢を食べる妖怪。だが、悪い記憶も夢と同じようなものらしく、食べる事ができるらしい。
 翌日わたし達は妖怪セコの案内で獏と会い、千佳本人はもちろん、両親…そして警察関係者、この事件に関わった者全員の記憶を獏に食べてもらった。
 こうして、数日に渡って続いた『通り魔連続傷害事件』は、世間上真相が不明のまま、幕を閉じた。

 それから5日後、週末の土曜日。
 わたしは弓道部の部長と共に、丘福市の東に位置する、樫井という町へ来ていた。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第六話(1)

来週の日曜日、この町の中学…樫井中学校弓道部と練習試合を兼ねた合同練習を行う。
その打ち合わせで、わたしは書記として部長に連れてこられたということだ。
 この樫井という町は、樫井浜と呼ばれる浜辺があり、昔から多くの海産物が採れる場所として名高い。
 実質この町は、神田川県の観光土産用海産物加工工場で経済を賄っている。
そのため、浜辺近辺には、数多くの加工工場が立ち並んでいた。

「あぁ、腹が減ったダヨ…」
 まだ陽が真上に昇っていない午前中、樫井浜の浜辺で丸々太った、子ども並みの背丈の男が、トボトボと項垂れて歩いていた。
「あれから10日…、辛うじて逃げ延びてはいるけど、もし…白陰様に見つかったら、間違いなく殺されるダ。それにしても最近何も食ってねぇ…、腹減ったダヨ」
 そう、10日前、妖木妃の手下白陰の命令で、凛を騙して殺害しようとした最弱妖怪、猪豚蛇である。
 凛殺害に失敗し、その凛に命は見逃してもらったものの、命令を実行できなかった場合は白陰からの裁きが待っているため、そのまま由子村を逃げ出したのだ。
 本来なら真っ直ぐ母国中国へ帰りたいところだが、船賃もなく…まして密航する勇気も持ち合わせていない。
結局、街の中を彷徨う毎日となっている。
 項垂れたまま浜辺をトボトボ歩いていると、前から麦わら帽子をかぶった物売りが歩いてきた。
 すれ違いざま、肩に掛けられた籠の中を覗くと、美味そうな干し肉のような物が見える。
ついつい立ち止まり、物欲しそうにしていると・・・
「腹が減っているようだな? 一つ食うか?」
と、物売りは干し肉を手渡してきた。
「い…いいんダカ!?」
猪豚蛇は喜んで頂くと、一気に干し肉にかぶりついた。
「う…うめぇーっ!!」
硬過ぎもなく、軟らかすぎもなく、しっかりした歯ごたえに、噛めば噛むほど口に広がるジューシーな味わい。香ばしい匂いが更に食欲を誘う。
 猪豚蛇は手渡された干し肉を、ものの数秒で平らげた。
「もっと欲しいか?」
物売りは、そう声をかけてきた。
「ああ…、もっと…もっと喰いてぇーダヨ!」
「ならば、干物売りを手伝え。そうすれば、もっと食わせてやるぞ。」
「本当ダカ!? やる!売るのを手伝うダヨ!!」
「ならば商品を渡すから、わしの小屋までついてこい。」
 物売りはそう言うと、浜辺の外れにある小さな小屋へ猪豚蛇を案内した。
 その小屋は、外には干物を干すような網が張ってあり、中に入ると漬け汁のような液体が入った樽。
いくつかの調理機器、並べられた干物や干し肉。まるで昔ながらの干物加工場のようである。
「ほら、この籠に干物が入っている。これを担いで浜辺で売り歩いてくれ。」
 物売りは、そう言って大きめの籠を手渡してきた。
「この干し肉、えらく旨かったけど…、いったい何の肉なんダ?」
「人間の干物だよ・・・・」
「えっ!? お…おめぇは、いったい・・・!?」
 猪豚蛇の問いに、物売りは深くかぶった麦わら帽子を外した。
そこには青光りする肌、ギョロギョロとした魚のような大きな目。よくみると服の隙間から鱗のようなものが見える。
「わしの名は、鯵坊主。1000年生き延びた鯵が妖怪化したものだ。」
「鯵…坊主…さん?」
「わし達は遥か昔から多くの仲間が人間に捕獲され、食べられてきた。
しかし、それは生きる為に仕方が無いこと。わし達だって小魚や小さな海老などを食べて生きている。
 だが、この数十年…、人間は必要以上に乱獲し、余分な魚は食べもせず廃棄処分にしている。
 わしは、そんな人間に復讐するため、人間を捕まえては干物にして売り捌いているのだ。」

妖魔狩人 若三毛凛 if 第六話(2)

「あわわ・・・大それた事を・・・・」
「ここまで聞いたからには、お前も道連れだ。」
「オ…オラ、そんな話…教えてくれだなんて、一言も言ってねぇーダ…」
「黙れ! もし口外したり、裏切ったりすれば、お前も干し肉にして売ってやる!」
「な…なんで…オラ、こんな目ばっかり…遭うダヨ…?」


「お疲れ様でしたー!」
 打ち合わせが終わり、部室を出たわたしと部長。そこへ…
「あっ、そうそう・・・」と後ろから声を掛けられた。
「あのね、最近この辺で行方不明者が相次いでいるらしいの。
なんでも、誘拐されている可能性があるらしく、特に観光客とか地元以外の人が狙われやすいみたい。貴方達も気をつけてね。」
「わかりました、お気遣いありがとうございます。」
 部長は丁寧に頭をさげ、その場を後にした。
「さてと私は私用で丘福駅前の繁華街へ寄るけど、若三毛さんはどうする。一緒に来る?」
 別に今日は部活も休みだし、帰ったところでこれといって予定は無い。部長と一緒に繁華街へ行くのも悪くない。
でも、なんだか…行方不明者っていうのが気になる。まさかとは思うけど、また妖怪が絡んでいるかもしれない。
「すみません部長、わたしはもう少しこの辺を歩いて、何か家へのお土産でも買ってから帰ります。」
 わたしはそう言って、深々と頭を下げた。
「OK、じゃあ…ここから別行動っていう事で。月曜日にミーティングするから、ノート忘れないで来てね。」
「はい、ではお疲れ様でした。」
 部長と別れた後、わたしは浜辺へ向かって歩き出した。
今はまだ5月。浜辺もそれほどの人はいないだろう。わたしの霊感は人通りの少ない場所の方が、色々と感知しやすい。
 浜辺へ着いたけど思ったとおりだ。人数は少ない、もちろんカップルや友人同士などの小グループは所々で目に入る。しかし夏場程の大人数ではない。
 霊感を澄まし、妖気を探る。
 いた!
 浜辺沿いを歩いて1~2分の所に、小さいけど妖気を感じる。
すぐさまその場所へ駆け寄ると、小柄で丸々太った見覚えのある人物が・・・
「あなたは、猪豚蛇っ!?」
「ひぃぃぃぃっ・・妖魔狩人!!?」
「あなたがどうしてこんな所に…、んっ・・・!?」
 猪豚蛇が担いでいる籠から、微かだけど…人間の霊気を感じる。
「なんなの…その籠の中身は?」
「こ…これは、干し肉で…、で…でも…オラが作ったんじゃ…ねぇーダ! 鯵坊主っていう妖怪が人間を攫って…、オ…オラは…仕方なく…。でないと…オラも、干し肉に…されてしまうダヨ…」
「人間を攫って…干し肉…? えっ…、それって…!!?」
 わたしは全身に鳥肌が立った。なんて残酷なことを・・・
「信じてくれーっ、オラがやったんじゃ…ねぇーダ!!」


選択
①猪豚蛇の言う事を信じ、他に妖怪の気配が無いか・・気を探る。
②猪豚蛇の言う事を信じず、猪豚蛇を退治しようとする。


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『-後編-』へ続く。

そのまま、下のスレをご覧ください。

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 13:22 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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