2012.10.22 Mon
妖魔狩人 若三毛凛 if 第03話「妖木妃との対決!-後編-」
「ダメっ!!」
金鵄の言葉を反射的に返した凛。
今ここで妖木妃を倒しておかなければ、村中の…日本中の人間が滅んでしまう…。
凛はそう決心すると、弓を構え妖木妃目掛けて駆け込んでいった。
「くらえっ! 霊光矢!!」
凛の弓から、先程までより一回り大きな矢が放たれた。
それは、凛の全身全霊を込めた、一本の矢。
「まだ無駄な努力を続けるか。当たりはせぬ。」
余裕の妖木妃。
先程までと同様に、妖木妃に当たる寸前に矢尻の部分から舞い散るように消えていく。
だが・・・・
「なっ!!?」
妖木妃が思わず、驚きの声を上げた!
霊光矢は完全には消え散らず、矢柄が妖木妃の頬をかすめていったのだ。
妖木妃の頬から、蒼い血が滴り落ちる。
その血を指で拭うと、ワナワナと全身を震わせた。
「馬鹿な…、生まれてこのかた、ワシに傷をつけた者などおらぬ…。
たかが、たかが人間の小娘が……」
今までに無い鋭い視線が凛を刺す。
はぁ…はぁ…はぁ…
肩で息をし、立っているのもやっとの凛。
「許さぬぞ…、ワシを傷つけた罪、この世から消滅する事で償うがよい!!」
激しい怒りを露わにした妖木妃は、両手を真上にかざした。
すると、今までの十数倍もの巨大な黒炎弾が。
「消えて無くなれーっ!!」
凛目掛けて、巨大な黒炎弾が放たれた。
はぁ…はぁ…はぁ…
凛の瞳に巨大な黒炎弾が映る。しかし、もうかわす力もない。
「わたし…、死ぬの…?」
その瞬間、大きな鳥の足が凛の両肩を鷲掴みし、空中高く飛び立っていった。
ゴォォォ…
爆煙が吹き荒れ、まるで地震のような振動が轟音と共に大地を揺るがす。
地は半円球に抉れ、森の樹木も、鳥居も、山道も、数十メートルの広範囲に渡って、そこにあったもの全て消滅させていた。
危機一髪の凛を救ったのは、数倍もの大きさに変化した金鵄。
「大丈夫かい、凛?」
「金…鵄!?」
「今出せる霊力の全てを使い君を運んでいる。とにかく一旦安全な場所まで行こう」
そう言いながら飛び去る金鵄と凛の耳に、小さな声が聞こえた。
「こっちへ…。」
黒煙が晴れた神社で、飛び去る金鵄達を見つめ拳を握り締める妖木妃。
「嫦娥、白陰、銅角…、そこにおるか?」
その声を待っていたかのように、大きなガマ蛙と白い蛇が姿を現した。
「ここにおります、妖木妃様。」
「銅角はどうした?」
「この村に到着はしておりますが、おそらくどこかで飲み崩れているのでしょう。なにぶん、大酒喰らいの故に、事の重要性がわかっておらぬかと…。」
「まぁ…良い。
ところでワシとした事が怒りに我を見失い、妖力の殆どを放出してしまった。
そこでしばらくの間、眠りにつくとする。その間は、お前達に任せるぞ。」
「かしこまりました。村への侵攻…うち達で進めておきましょう。」
「うむ…」
妖木妃はそう頷くと二匹に背を向けた。
「ところで妖木妃様、どちらでお休みを? ご報告を申し上げる際、なにぶん困る故…。」
その言葉に妖木妃は静かに笑うと、
「それは言えぬ。ワシの寝首を掻こうと狙っている者がおるからな。」
それだけ言い、霧のように消え去っていった。
小さな声に導かれ、金鵄達は村とは正反対に位置する、山の麓に降り立った。
金鵄は凛を離すと、身体を元の大きさに戻す。だがその大きさは戦いの前より一回りもふた回りも小さくなっていた。。
「金鵄、前より体が小さく…?」
「僕の持っている霊力の殆どを使い果たしたからね。その影響によるものさ。」
「ごめんなさい、わたしのせいで…」
「凛のせいじゃない、君はよくやったよ。ただ妖木妃の実力を見余った僕のせいだ。」
「お話の途中、よろしいでしょうか?」
小さな声が再び語りかけてきた。
見ると、木の影から六~七歳くらいの子供の姿が。
「君は日本の妖怪だね。たしか…」
「はい、セコと言います。貴方方を案内するように申しつかりました。」
「案内?」
「はい、こちらです。」
セコはそう言って歩き始めた。凛と金鵄はその後を追う。
獣道のような樹木の中を歩いていくと、小さな祠が目に入った。
「ここは…?」
「よく来た、若き霊鳥…、そして人間の娘よ。」
祠の中から年老いた声がする。
「この波動は霊力! 貴方は霊獣ですね!?」
金鵄が驚きの声を上げた。
「いかにも。某(それがし)は霊獣…麒麟(きりん)。」
「麒麟!?日本…いや、アジアでもトップクラスの霊獣一族!
しかし、その貴方が何故…祠に!?」
「某は妖木妃の動向を追っていたが、奴らに敗れ、逆に封印されたのだ。」
「貴方ほど霊獣ですら、ヤツには勝てなかった…と!?」
「奴と戦ったお主達なら判るであろう、奴には一切の攻撃が通用しない。」
「たしかに…」
「だが、それを壊る方法があるらしい。」
「なんですって!?」
「奴の手下の中に誰かは判らぬが、密かに奴に反逆心を持つ者がいるらしいのだ。
そして、その者が奴の術を壊る方法を知っているらしい。」
「術を壊る方法…」
「おそらくその者もこの国に来ておるだろう。その者を見つけ出し、術を壊る方法を聞き出す、それしか手は無い。」
「解りました。それよりも貴方の封印を解かなければ!」
「それは無駄だ。某は特殊な封印を掛けられている。そして…その鍵は妖木妃の手下、銅角が握っておる。」
「つまり、そいつを倒さなければ封印は解けない…と。」
「そうだ。」
「よし、こうなれば、その銅角なる妖怪か、もしくは妖木妃に敵対している手下が誰か、それらを探すしか無い!
凛、すぐに手がかりを集めよう!」
「・・・・・・・・」
「凛…?」
金鵄の問いかけに、凛はうつむいたまま返事を返そうとしない。
「怖いのであろう?」
麒麟の声が、悟るように問いかけた。
「怖い…? 凛が…?」
「いくら高い霊力を持っていても、所詮は人間。しかもまだ子供だ。
あれ程の戦いをし、しかも死の寸前までいけば、恐怖心を感じるのは当然だ。」
「そうなのか…凛?」
「・・・・・・・・」
「そうか…仕方ないよね。
たしかに君はつい先日まで普通の人間として暮らしていた。
そんな君が、妖怪との戦いに恐怖を感じるのは仕方ない事…。
巻き込んですまなかった。
手がかりは僕一人で探す。君はまた今までの生活に戻るといい。」
「普通の生活ができるの…?」
「えっ!?」
「妖木妃は村を侵略しようとしている。それなのに、普通の生活が出来るの?」
「凛…?」
「馬鹿よね…わたし。
怖がっていても、戦いから逃げ出しても、結果は同じことなのに…。」
凛は一旦大きく息を吐き、そして力強く金鵄を見つめた。
「やるわ…わたし!
手がかりを見つけ、妖木妃の野望を食い止める!」
「凛っ!!」
「よろしくお願いいたします、ぼく達…日本の妖怪も中国妖怪を追い返したいと思っていますので、出来る限り協力いたします。
ただ…全ての日本妖怪が手助けするとは限りませんが。」
セコも弱々しくも、そう告げた。
「頑張ろう、この村とこの国を守る為に!」
第4話へつづく。(正規ルート)
----------------------------------------------------------------
②は 》続きを読むをクリックしてください。
たしかに、一切の攻撃が通用しないのであれば、勝てる術は無い。
敗北は確実、待つのは死だけだ。
凛は金鵄の言葉に頷くと、妖木妃に背を向けた。
「逃げられると思っておるのか?」
妖木妃の、冷ややかな嘲笑する声が聞こえる。
そんな声も聞こえぬかのように走り出した凛達の前に、一匹の白い蛇が姿を見せた。
白蛇は大きく鎌首をもたげると、その姿を人間のような身体に変えた。
「手下の妖怪か!?」
驚く金鵄に向かって、まるで蛇の尾のような物が巻きついてきた。
それは、その妖怪の左腕だった。
「身共の名は、白陰。まずは霊鳥金鵄、貴君からくたばってもらおう。」
そう言うと、金鵄に巻きつけた左腕を締め付け始める。
「ぐっ!」
苦しげな金鵄の声。
「その手を離してっ!!」
凛は白陰に向けて弓を構えた。
「お前の相手は、ワシだ。」
いつの間にか凛の背後に妖木妃がおり、弓を構える手を止めた。そして…
「うぐ…!?」
その妖艶な唇で、凛の唇を塞いだ。
凛の口の中で、妖木妃の舌がまるで生き物のように蠢く。
甘い凛の唾液をじっくりと堪能する妖木妃。
「あ…、なに…こ…れ…? なん…か、いい…きも…」
その絶妙な舌の動きに、いつしか凛は抵抗する事を忘れていた。
いや、ある種…快楽を感じていたと言ってもいいだろう。
「たしかに高い霊力、しかも美味。殺すには惜しい存在じゃわ。
白陰よ、ワシはしばらくこの娘を楽しむ。邪魔するでないぞ。」
「かしこまりました。」
白陰はそう答えると、左腕に力を込め、締めつけを増した。
なす術もなく、金鵄は絶命していった。
妖木妃は抵抗力を失った凛を拝殿の中に連れ込み、その身を引き倒す。
そして、戦闘服を下着を剥ぎ取り、全てを露わにさせた。
「ほほーぅ、なかなか可愛い身体だ。今からワシが、ゆっくり可愛がってやるぞ。」
―な、なにを…?―
凛の首筋に、妖木妃の舌先が触れた。
―う…っ―
思わず息が漏れる。
舌先はゆっくりと動き、凛の右胸に向かう。
まだ膨らみかけ始めたばかりの小さな胸。そして突出していないベージュ色の先端。
妖木妃の舌は、その小さな先端を、転がすように舐めている。
恐怖でも、快感でも、なんとも言い難い感覚が身体を身震いさせる。
「怖がらなくていい。」
妖木妃の舌はゆっくりと優しく、先端を舐め回していく。
まるで全身に電流でも走ったように、小刻みに震えが走る。
ちぅ…
―あ…っ!?―
先程まで先端を舐め回していた妖木妃が、そのまま口を窄め吸い付いてきた。
それは、赤子が母親の乳を吸うように。
ちぅ…ちぅ…
―だ…だめ…っ、も…もう、頭の中が…―
初めて味わう刺激に、凛の身体は思いっきり仰け反り、もはや思考能力は失われていた。
その後も妖木妃の貪りは続き、1時間も経つ頃には、凛はまるで死人のようだった。
虚ろな瞳は視点が定まらず、半開きの口端から涎を垂らし、全身ぐったりと力が抜けきっていた。
「美味しかったぞ、ご馳走さん。」
妖木妃は満足気に、凛の頬に手をやる。
「最後の仕上げだ。」
そう言って、口の中に小さな植物の種のような物を入れた。
翌日、神社の拝殿の横に、小さな木が一本増えていた。
細い、その木の幹は、凛の姿…そのものだった。
大きく広げた両腕は木の枝となり、初々しい若葉を茂らせていた。
更に翌日、木の枝には一つの木の実を実らせていた。
その実には、生気の無い、凛の表情が浮かんでいた。
二日後、木の実は地に落ちており、パックリと二つに割れていた。
中身は空で、その大きさは子供一人が十分に入れる位だった。
その日の夕方、村に一匹の未確認生物が現れ、村人達を襲ったと大騒ぎになっていた。
目撃者によると、その生物は、素早い動きで、長い爪を持ち、見た目は裸体の女子中学生のようだったと言う。
そして、若三毛家の一人娘によく似ていたという事らしい。
BADEND
| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 09:41 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑
凛の活躍、いつも楽しみにしてます!
妖怪と対魔士の物語という事もあり、次にどんな妖怪が出てる来るのか、その度凛がどうなってしまうのか非常に気になりますw
こういったゲームブック形式のストーリーは良いですね……私も今度やってみたいですw
| 見学者@ケンガー | 2012/10/31 23:28 | URL | ≫ EDIT