2012.09.24 Mon
妖魔狩人 若三毛凛 if 第二話「妖魔狩人『凛』登場!?-前編-」
こんばんわ!
モチベーションは上がってきているものの、リアルが忙しいため、続きが不安な るりょうりにです。
さて、お約束しました、第二話です!
今回もバッドエンドは、カニバリズム ですので、耐性の無い方は、ご遠慮ください。
また、前回と違って『-前編-』『-後編-』と、二つのスレを使って公開しております。
したがって、続きはそのまま下のスレをご覧ください。
では…。(o・・o)/
----------------------------------------------------------------
「妖魔狩人~~~~っ!!?」
ここは田畑に囲まれた村の一軒家。
ここの二階に凛の部屋がある。
「なかなか清楚でいい部屋だ。霊的にも悪くないね。」
机の上に立ち、部屋の中を見渡す金鵄。
凛はというと、窓際にあるベッドの上で外を眺め、考え事をしていた。
妖魔狩人…か・・・・。
短い息を漏らす。
ここまでの経緯はこうであった。
森の中で妖木妃と呼ばれる中国妖怪から、日本の霊鳥…金鵄を守った凛。
その凛が持つ霊力の資質に驚いた金鵄は、妖魔狩人となって、自分の代わりに妖木妃を倒し、村を日本を守ってくれと言い出したのだ。
「ちょ…ちょっと待って!」
慌てて話を制す、凛。
「それより一旦場所を変えないかしら?森の中だし、それに……」
「それに?」
「わたし、先程の攻撃で服が焼け落ち下着姿だから。このままじゃ…ちょっと。」
「僕は何とも思わないけど。」
「貴方が思わなくても、私は困るのよ!」
「ふむ、たしかに人間は自分の裸体を見られるのを恥ずかしがる生き物だったね。わかった!」
そう言って金鵄は嘴で、自らの羽を2~3本抜き取った。
それを凛の体の上に乗せ、金色の光を放った。
眩しい黄金の光が凛を包む。その眩しさに目を覆う凛。
数秒で光は静かに消えていった。
ゆっくりと目を開くと・・・・
「え…え…っ!? なに…この服…!?」
自らの目で、手触りで、身体に装着された衣類を確かめる。
全身、『黒』をベースにしたカラーリング。
肩口に羽のようなフリルのついた、ノースリーブ。
ネックバンドに、大きめのリストバンド。
プリーツっぽいスカパン。
革のブーツ。
「ゴスロリ服!?」
「うん、この時代の少女の戦闘服だろ、ソレ。本やテレビというもので見ていたから間違いないと思うけど。」
金鵄…、それアニメやマンガじゃないの?
ていうか、戦闘服?
「そうだよ。妖魔狩人になったら、妖怪達と激しい戦闘になる。
その服は僕の霊力の篭った羽で編んであるから、軽くて…かなり防御力があるよ。」
わたし、まだ妖魔狩人になるとは言っていないのだけど。
「さて…たしかに君の言うとおり、ここで話をするのもなんだし、君の家にでも行こうか。」
こうして、ちょっと強引な金色の霊鳥…金鵄と共に自宅に戻ったわけだけど、帰ったとたん母から
「凛、何度も千佳ちゃんから電話が掛かっているわよ。」
と、呆れた声が。
忘れていた! 千佳の家に行く途中だったわ。
「もしもし…」
「ちょっと凛~っ、アンタ…何しとっとぉ!? あたし、ずぅ~っと待っとっとだけんねーっ!」
鼓膜を破る勢いで、独特の方言混じりの音波が・・・・。
「ごめんなさい、今日…ちょっと行かれなくなったの。」
「なんでよー!? あたしの宿題答え合わせ、どげんすっとぉ~っ!?」
いや、それ…答え合わせでなくて、丸写しでしょう?
「とにかく、ごめんなさい。明日、必ず行くから…。」
「…んもぅ。じゃ、明日ねー、必ずやけん。シュークリーム用意して、待っとるよ。」
やっぱりシュークリーム用意していたのね。
正直面倒くさいけど、それがあるなら行く価値はあるか。
「わかった。それじゃ、また明日。」
ふぅ…。
部屋に戻り、ベットに身を投げ出し大の字になる。
窓から外を眺めていると、今日あった事がまるで嘘のようだ。
「へぇーっ、君は弓を射るのかい? 武器としては丁度いい。」
金鵄が部屋の隅に立てかけてある和弓に目をつけた。
「それ、部活で使っている弓だけど?」
「弓なら、君の霊力を一点に集中して放つ事ができる。それと知っているかい? 僕のご先祖様の話。」
「わたし、貴方に会ったのも今日が初めてだし、貴方の種族の事、見たこともなければ、聞いたこともないわ。」
「僕のご先祖様、初代金鵄は、神武天皇の弓に止まり、勝利に導いたと言われている。
これは、弓に霊力を宿したためだけど、それだけに僕の一族は弓とは相性がいいんだ。」
金鵄はそう言うと、弓に止まり光輝いた。
「凛、君も弓に触れてくれないか!」
え…っ!?
ベットから起き上がり、その手を弓に当てた。
すると凛の身体からも眩い光が。
凛から放たれた光は、金鵄の光と交わり光は更に輝きを増していった。
「これでいい。これでこの弓は君の霊力を矢として放つ事ができる。普通の弓より妖怪に対して、高いダメージを与える事ができる。
急所を狙えば、一撃で妖怪を倒す事も可能だ。」
人の部活道具を断りもなしに、殺人…いや殺妖怪武器にしてしまったよ。
「これで、武器と防具も揃ったし、いつでも妖怪相手と戦えるね。」
だから、まだ…妖魔狩人とやらをやるとは言っていないのだけど…。
どうしてもこの金鵄は、わたしを妖魔狩人にしたいらしいわね。
「いくら妖怪相手でも、誰かと争ったり、戦ったりするのはあまり好きでないの。」
凛は再びベットに横たわると、呟くように言った。
「そうかい……。」
さすがに金鵄もそれ以上、その件を口に出すのをためらう。
そんな時・・・・。
「凛~~っ、隣の優里ちゃんが来たわよ~~っ!」
階段下から母の声が響く。
え…っ、優里お姉さん!!
珍しく音速のスピードで凛が飛び出した。
一気に階段を駆け下り、玄関先へ飛び込む。
「こんにちわ、凛ちゃん。」
「こ…こんにちわ、優里お姉さん♪」
おそらく、滅多に見ることの無い、凛のハイテンションバージョン。
その理由は、玄関先に立っている【女子高生】にある。
【高嶺 優里】、山を隔てた街、丘福市の高校に通う17歳。
日の光で山吹色に輝くロングヘア。
まるで女神のような、優しい微笑み。
10人の男性がすれ違ったら、最低9人は振り返ると思われる。
優里の真似をしてロングヘアにもしたが、無愛想に近い無表情な自分にまるっきり似合わないと、サイドテールにした苦い経緯がある。
しかし、凛が優里を憧れている理由・・・いや、尊敬している理由はそれだけではなかった。
凛は幼い頃から霊感能力がある。
それが原因で、友達や大人達から嘲笑され、気味悪がられ、本来なら心が折れ人間不信に陥っていただろう。
だが、ただ一人だけ凛の言葉を真剣に聞き、受け入れてくれた人がいた。
五つ年上の女の子…『優里』だ。
凛が友達に馬鹿にされた時は、優里が怒ってくれた。
凛が大人達に嘲笑された時は、優里が庇い励ましてくれた。
だから凛にとっては、実の姉のように尊敬している存在なのだ。
そんな優里がたまにこうして誘ってくれる。
凛のテンションが上がらないわけがない!
「凛ちゃん、時間ある? 帰りがけにスイーツを買ってきたんだけど、うちへ食べに来ない?」
「ハ…ハイッ♪」
瞬速で返事をすると、「お母さん、ちょっとお姉さんの家に行ってくる!」と靴を履き始めた。
「じゃ、私は先に帰って用意しておくね。」
優里は微笑んで先に立ち去っていった。
そんな優里が見えなくなるのを見計らったように…
「凛、僕もついて行って、いいかい?」と耳元で声が。
「ダメよ。他人に貴方の姿を見られたら、何て言うの!?」
「それは大丈夫。僕は以前にも言ったが、霊力で実体化している。逆に言えば、霊体化すれば、誰にも姿を見られることはない。」
「・・・・・・・・・。」
「君やこの村の日常を知っておきたいんだ。ヤツ…妖木妃は絶対にこの村を襲ってくるからね。」
「わかった。でも、絶対に誰にも見つからないようにね。」
「わかっているよ。」
凛と霊体化した金鵄は、隣の高嶺家へ向かった。
凛の家とは違い、割と洋風なデザインのリビング。
洒落たテーブルの上には、ショートケーキと紅茶が並んでいる。
「どう? 新発売のを買ってきたんだけど…?」
「とても美味しいです。少し大人っぽい味なんですね。」
「うん、隠し味でリキュールが入っているみたい。」
たしかにケーキは美味しいが、憧れのお姉さんと一緒に食べるから、余計に美味しい。
今ここに、年に何度見れるかわからない、凛の笑顔があった。
「そう言えば、さっきから気にかかっていたんだけど…凛ちゃんのその服?」
ブッ…! 予期せぬ所を突かれ、思わず紅茶を吹きこぼすところだった。
「ちょ…ちょっとした気分転換と思ってください…。」
まさか、霊鳥が編んだゴスロリ服とは言えない。
「そうそう、おばさんはまた泊りがけで取材ですか?」
とりあえず、話題を変えて…。
「そっ! 三日前からね。今日辺り帰ってくるとは連絡があったけど…。」
優里の母【美咲】は、丘福市でローカルテレビ局のキャスターをしている。
その為、取材で家を数日空ける事もざらにあるのだ。
美咲が留守の時は、優里が家事を行なっている。そんな女性らしさも凛の憧れの一つだ。
ガチャガチャ…!!
玄関からノブを回す音が聞こえた。
「あ…、おばさんが、帰ってきたのでは…?」
「待ってーっ、すぐ鍵を開けるから~っ!」
そう言って優里が立ち上がった瞬間…。
グァシャーン…!!と激しい音が玄関から鳴り響いた。
「な…何…っ、今の音…!?」
「優里お姉さん、行かないで!」
嫌な気を感じる。邪悪な…、そう…あの妖木妃に感じたような気…。
グゥゥ…ッ
獣のうめき声のようなものが、ゆっくりとこっちへ向かってくる。
さすがに異様な気配を感じたのか、優里は凛を庇うように、その前に立ちふさがる。
グフゥゥゥ…
ついに、リビングに入ってきた獣のような声の持ち主…
「お…お母さんっ!?」
思わず優里が声を上げ、立ち寄ろうとする。
「違う! おばさんだけど…おばさんじゃありません!!」
たしかに見た目は優里の母…美咲なのだろう。
だが、本物の獣のように全裸姿。
荒々しく乱れきった髪。
鋭く伸びた、爪。
耳まで裂けているような口。
なにより、金色に光る瞳…。
どう見ても、人間とは思えない。
「ど…どういう…こと!?」
何が起こっているのか理解できないように、身動き一つできない優里。
そんな優里の目の前まで近寄った美咲は腕を上げると、風を引き裂くように一気に振り下ろした!!
「危ないっ!!」
咄嗟に優里に飛びかかる凛。
振り下ろされたその腕…いや、その爪は、飛び込んだ凛の背中を切り裂いた。
勢い余って、大きく床を転がり込む二人。
「イタタ…」
無意識に切り裂かれた背中に手を回す凛。
あれ…?
手探りで触ってみても、背中には服も切り裂かれた痕が感じられないし、痛みも気のせいだったように思える。
どういうこと…?
「たいした防御力だろう?」
金鵄!?
黄金の光と共に、金鵄が実体化した。
「言っただろう、その服は僕の霊羽で編んであるから、高い防御力があるって。」
たしかに並の服だったら、わたしはあの爪で切り裂かれて・・・・。
見た目さえ気にしなければ、ゴスロリ服…様様だ。
あっ!?
そうだ、それよりお姉さんは!?
ふと見ると、優里が傍で倒れている。
「お姉さん…、お姉さんっ!!」
凛は必死に揺り起こす。
「大丈夫、床に頭をぶつけたのだろう。気を失っているだけだ。」
金鵄が脈を確認したような仕草で語った。
「そう…っ。」
よかった。
「それより…金鵄、おばさんは一体どうしたの?」
体制を立て直し、美咲と向かい合う凛。
「どうやら妖怪化しているようだ。」
「妖怪……化…!?」
「そうだ。おそらく妖木妃の仕業・・・。」
「そのとおりよ~ん♪」
新たな人影が姿を現す。
右手に酒瓶を持った、大柄で太めの女。
「あたしの名は、ボンディァォフーニュ。金鵄とか言ったわね…、アンタ生きていたんだ?」
ゴクッ…ゴクッ…。
そう言いながら、酒瓶を口に当てる。
「その女は妖木妃様の術で妖怪になっている。この村も…この国も、全ての人間は妖怪となって妖木妃様の手下になるか、もしくは……」
ゴクッ…ゴクッ…♪
「食料になるだけ!」
アハハハハハハハッ♪
「さぁ…美咲よ、金鵄も…そしてそこにいる小娘達を殺しちゃいなさい。」
シャアアァァァッ…!
美咲が再度、攻撃態勢に入った。
「凛…、想像するんだっ! 君の武器…君の和弓を…!」
「わたしの弓を…?」
言われるままに、自分の愛用の弓を想像する。
すると、その手には、部屋に置いてきたはずの弓が握り締められている。
「な…なぜ!?」
「その弓には、さっき君の霊力を注いだだろう。それによって君の身体の一部と化している。
だから君が想像すれば、どんな場所にいても、一瞬に移動してその手に持つ事ができる!」
わたしの身体の一部・・・・
「さぁ…凛! 今こそ妖魔狩人として、妖怪達と戦うんだっ!!」
① 妖木妃…許せない! 凛は弓を構え、戦う決意をする。
② ダメよ。 たとえどんな力を持っていても、戦いなんかしたくない。凛はその場を離れようとする。
----------------------------------------------------------------
『-後編-』へ続く。
そのまま、下のスレをご覧ください。
モチベーションは上がってきているものの、リアルが忙しいため、続きが不安な るりょうりにです。
さて、お約束しました、第二話です!
今回もバッドエンドは、カニバリズム ですので、耐性の無い方は、ご遠慮ください。
また、前回と違って『-前編-』『-後編-』と、二つのスレを使って公開しております。
したがって、続きはそのまま下のスレをご覧ください。
では…。(o・・o)/
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「妖魔狩人~~~~っ!!?」
ここは田畑に囲まれた村の一軒家。
ここの二階に凛の部屋がある。
「なかなか清楚でいい部屋だ。霊的にも悪くないね。」
机の上に立ち、部屋の中を見渡す金鵄。
凛はというと、窓際にあるベッドの上で外を眺め、考え事をしていた。
妖魔狩人…か・・・・。
短い息を漏らす。
ここまでの経緯はこうであった。
森の中で妖木妃と呼ばれる中国妖怪から、日本の霊鳥…金鵄を守った凛。
その凛が持つ霊力の資質に驚いた金鵄は、妖魔狩人となって、自分の代わりに妖木妃を倒し、村を日本を守ってくれと言い出したのだ。
「ちょ…ちょっと待って!」
慌てて話を制す、凛。
「それより一旦場所を変えないかしら?森の中だし、それに……」
「それに?」
「わたし、先程の攻撃で服が焼け落ち下着姿だから。このままじゃ…ちょっと。」
「僕は何とも思わないけど。」
「貴方が思わなくても、私は困るのよ!」
「ふむ、たしかに人間は自分の裸体を見られるのを恥ずかしがる生き物だったね。わかった!」
そう言って金鵄は嘴で、自らの羽を2~3本抜き取った。
それを凛の体の上に乗せ、金色の光を放った。
眩しい黄金の光が凛を包む。その眩しさに目を覆う凛。
数秒で光は静かに消えていった。
ゆっくりと目を開くと・・・・
「え…え…っ!? なに…この服…!?」
自らの目で、手触りで、身体に装着された衣類を確かめる。
全身、『黒』をベースにしたカラーリング。
肩口に羽のようなフリルのついた、ノースリーブ。
ネックバンドに、大きめのリストバンド。
プリーツっぽいスカパン。
革のブーツ。
「ゴスロリ服!?」
「うん、この時代の少女の戦闘服だろ、ソレ。本やテレビというもので見ていたから間違いないと思うけど。」
金鵄…、それアニメやマンガじゃないの?
ていうか、戦闘服?
「そうだよ。妖魔狩人になったら、妖怪達と激しい戦闘になる。
その服は僕の霊力の篭った羽で編んであるから、軽くて…かなり防御力があるよ。」
わたし、まだ妖魔狩人になるとは言っていないのだけど。
「さて…たしかに君の言うとおり、ここで話をするのもなんだし、君の家にでも行こうか。」
こうして、ちょっと強引な金色の霊鳥…金鵄と共に自宅に戻ったわけだけど、帰ったとたん母から
「凛、何度も千佳ちゃんから電話が掛かっているわよ。」
と、呆れた声が。
忘れていた! 千佳の家に行く途中だったわ。
「もしもし…」
「ちょっと凛~っ、アンタ…何しとっとぉ!? あたし、ずぅ~っと待っとっとだけんねーっ!」
鼓膜を破る勢いで、独特の方言混じりの音波が・・・・。
「ごめんなさい、今日…ちょっと行かれなくなったの。」
「なんでよー!? あたしの宿題答え合わせ、どげんすっとぉ~っ!?」
いや、それ…答え合わせでなくて、丸写しでしょう?
「とにかく、ごめんなさい。明日、必ず行くから…。」
「…んもぅ。じゃ、明日ねー、必ずやけん。シュークリーム用意して、待っとるよ。」
やっぱりシュークリーム用意していたのね。
正直面倒くさいけど、それがあるなら行く価値はあるか。
「わかった。それじゃ、また明日。」
ふぅ…。
部屋に戻り、ベットに身を投げ出し大の字になる。
窓から外を眺めていると、今日あった事がまるで嘘のようだ。
「へぇーっ、君は弓を射るのかい? 武器としては丁度いい。」
金鵄が部屋の隅に立てかけてある和弓に目をつけた。
「それ、部活で使っている弓だけど?」
「弓なら、君の霊力を一点に集中して放つ事ができる。それと知っているかい? 僕のご先祖様の話。」
「わたし、貴方に会ったのも今日が初めてだし、貴方の種族の事、見たこともなければ、聞いたこともないわ。」
「僕のご先祖様、初代金鵄は、神武天皇の弓に止まり、勝利に導いたと言われている。
これは、弓に霊力を宿したためだけど、それだけに僕の一族は弓とは相性がいいんだ。」
金鵄はそう言うと、弓に止まり光輝いた。
「凛、君も弓に触れてくれないか!」
え…っ!?
ベットから起き上がり、その手を弓に当てた。
すると凛の身体からも眩い光が。
凛から放たれた光は、金鵄の光と交わり光は更に輝きを増していった。
「これでいい。これでこの弓は君の霊力を矢として放つ事ができる。普通の弓より妖怪に対して、高いダメージを与える事ができる。
急所を狙えば、一撃で妖怪を倒す事も可能だ。」
人の部活道具を断りもなしに、殺人…いや殺妖怪武器にしてしまったよ。
「これで、武器と防具も揃ったし、いつでも妖怪相手と戦えるね。」
だから、まだ…妖魔狩人とやらをやるとは言っていないのだけど…。
どうしてもこの金鵄は、わたしを妖魔狩人にしたいらしいわね。
「いくら妖怪相手でも、誰かと争ったり、戦ったりするのはあまり好きでないの。」
凛は再びベットに横たわると、呟くように言った。
「そうかい……。」
さすがに金鵄もそれ以上、その件を口に出すのをためらう。
そんな時・・・・。
「凛~~っ、隣の優里ちゃんが来たわよ~~っ!」
階段下から母の声が響く。
え…っ、優里お姉さん!!
珍しく音速のスピードで凛が飛び出した。
一気に階段を駆け下り、玄関先へ飛び込む。
「こんにちわ、凛ちゃん。」
「こ…こんにちわ、優里お姉さん♪」
おそらく、滅多に見ることの無い、凛のハイテンションバージョン。
その理由は、玄関先に立っている【女子高生】にある。
【高嶺 優里】、山を隔てた街、丘福市の高校に通う17歳。
日の光で山吹色に輝くロングヘア。
まるで女神のような、優しい微笑み。
10人の男性がすれ違ったら、最低9人は振り返ると思われる。
優里の真似をしてロングヘアにもしたが、無愛想に近い無表情な自分にまるっきり似合わないと、サイドテールにした苦い経緯がある。
しかし、凛が優里を憧れている理由・・・いや、尊敬している理由はそれだけではなかった。
凛は幼い頃から霊感能力がある。
それが原因で、友達や大人達から嘲笑され、気味悪がられ、本来なら心が折れ人間不信に陥っていただろう。
だが、ただ一人だけ凛の言葉を真剣に聞き、受け入れてくれた人がいた。
五つ年上の女の子…『優里』だ。
凛が友達に馬鹿にされた時は、優里が怒ってくれた。
凛が大人達に嘲笑された時は、優里が庇い励ましてくれた。
だから凛にとっては、実の姉のように尊敬している存在なのだ。
そんな優里がたまにこうして誘ってくれる。
凛のテンションが上がらないわけがない!
「凛ちゃん、時間ある? 帰りがけにスイーツを買ってきたんだけど、うちへ食べに来ない?」
「ハ…ハイッ♪」
瞬速で返事をすると、「お母さん、ちょっとお姉さんの家に行ってくる!」と靴を履き始めた。
「じゃ、私は先に帰って用意しておくね。」
優里は微笑んで先に立ち去っていった。
そんな優里が見えなくなるのを見計らったように…
「凛、僕もついて行って、いいかい?」と耳元で声が。
「ダメよ。他人に貴方の姿を見られたら、何て言うの!?」
「それは大丈夫。僕は以前にも言ったが、霊力で実体化している。逆に言えば、霊体化すれば、誰にも姿を見られることはない。」
「・・・・・・・・・。」
「君やこの村の日常を知っておきたいんだ。ヤツ…妖木妃は絶対にこの村を襲ってくるからね。」
「わかった。でも、絶対に誰にも見つからないようにね。」
「わかっているよ。」
凛と霊体化した金鵄は、隣の高嶺家へ向かった。
凛の家とは違い、割と洋風なデザインのリビング。
洒落たテーブルの上には、ショートケーキと紅茶が並んでいる。
「どう? 新発売のを買ってきたんだけど…?」
「とても美味しいです。少し大人っぽい味なんですね。」
「うん、隠し味でリキュールが入っているみたい。」
たしかにケーキは美味しいが、憧れのお姉さんと一緒に食べるから、余計に美味しい。
今ここに、年に何度見れるかわからない、凛の笑顔があった。
「そう言えば、さっきから気にかかっていたんだけど…凛ちゃんのその服?」
ブッ…! 予期せぬ所を突かれ、思わず紅茶を吹きこぼすところだった。
「ちょ…ちょっとした気分転換と思ってください…。」
まさか、霊鳥が編んだゴスロリ服とは言えない。
「そうそう、おばさんはまた泊りがけで取材ですか?」
とりあえず、話題を変えて…。
「そっ! 三日前からね。今日辺り帰ってくるとは連絡があったけど…。」
優里の母【美咲】は、丘福市でローカルテレビ局のキャスターをしている。
その為、取材で家を数日空ける事もざらにあるのだ。
美咲が留守の時は、優里が家事を行なっている。そんな女性らしさも凛の憧れの一つだ。
ガチャガチャ…!!
玄関からノブを回す音が聞こえた。
「あ…、おばさんが、帰ってきたのでは…?」
「待ってーっ、すぐ鍵を開けるから~っ!」
そう言って優里が立ち上がった瞬間…。
グァシャーン…!!と激しい音が玄関から鳴り響いた。
「な…何…っ、今の音…!?」
「優里お姉さん、行かないで!」
嫌な気を感じる。邪悪な…、そう…あの妖木妃に感じたような気…。
グゥゥ…ッ
獣のうめき声のようなものが、ゆっくりとこっちへ向かってくる。
さすがに異様な気配を感じたのか、優里は凛を庇うように、その前に立ちふさがる。
グフゥゥゥ…
ついに、リビングに入ってきた獣のような声の持ち主…
「お…お母さんっ!?」
思わず優里が声を上げ、立ち寄ろうとする。
「違う! おばさんだけど…おばさんじゃありません!!」
たしかに見た目は優里の母…美咲なのだろう。
だが、本物の獣のように全裸姿。
荒々しく乱れきった髪。
鋭く伸びた、爪。
耳まで裂けているような口。
なにより、金色に光る瞳…。
どう見ても、人間とは思えない。
「ど…どういう…こと!?」
何が起こっているのか理解できないように、身動き一つできない優里。
そんな優里の目の前まで近寄った美咲は腕を上げると、風を引き裂くように一気に振り下ろした!!
「危ないっ!!」
咄嗟に優里に飛びかかる凛。
振り下ろされたその腕…いや、その爪は、飛び込んだ凛の背中を切り裂いた。
勢い余って、大きく床を転がり込む二人。
「イタタ…」
無意識に切り裂かれた背中に手を回す凛。
あれ…?
手探りで触ってみても、背中には服も切り裂かれた痕が感じられないし、痛みも気のせいだったように思える。
どういうこと…?
「たいした防御力だろう?」
金鵄!?
黄金の光と共に、金鵄が実体化した。
「言っただろう、その服は僕の霊羽で編んであるから、高い防御力があるって。」
たしかに並の服だったら、わたしはあの爪で切り裂かれて・・・・。
見た目さえ気にしなければ、ゴスロリ服…様様だ。
あっ!?
そうだ、それよりお姉さんは!?
ふと見ると、優里が傍で倒れている。
「お姉さん…、お姉さんっ!!」
凛は必死に揺り起こす。
「大丈夫、床に頭をぶつけたのだろう。気を失っているだけだ。」
金鵄が脈を確認したような仕草で語った。
「そう…っ。」
よかった。
「それより…金鵄、おばさんは一体どうしたの?」
体制を立て直し、美咲と向かい合う凛。
「どうやら妖怪化しているようだ。」
「妖怪……化…!?」
「そうだ。おそらく妖木妃の仕業・・・。」
「そのとおりよ~ん♪」
新たな人影が姿を現す。
右手に酒瓶を持った、大柄で太めの女。
「あたしの名は、ボンディァォフーニュ。金鵄とか言ったわね…、アンタ生きていたんだ?」
ゴクッ…ゴクッ…。
そう言いながら、酒瓶を口に当てる。
「その女は妖木妃様の術で妖怪になっている。この村も…この国も、全ての人間は妖怪となって妖木妃様の手下になるか、もしくは……」
ゴクッ…ゴクッ…♪
「食料になるだけ!」
アハハハハハハハッ♪
「さぁ…美咲よ、金鵄も…そしてそこにいる小娘達を殺しちゃいなさい。」
シャアアァァァッ…!
美咲が再度、攻撃態勢に入った。
「凛…、想像するんだっ! 君の武器…君の和弓を…!」
「わたしの弓を…?」
言われるままに、自分の愛用の弓を想像する。
すると、その手には、部屋に置いてきたはずの弓が握り締められている。
「な…なぜ!?」
「その弓には、さっき君の霊力を注いだだろう。それによって君の身体の一部と化している。
だから君が想像すれば、どんな場所にいても、一瞬に移動してその手に持つ事ができる!」
わたしの身体の一部・・・・
「さぁ…凛! 今こそ妖魔狩人として、妖怪達と戦うんだっ!!」
① 妖木妃…許せない! 凛は弓を構え、戦う決意をする。
② ダメよ。 たとえどんな力を持っていても、戦いなんかしたくない。凛はその場を離れようとする。
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『-後編-』へ続く。
そのまま、下のスレをご覧ください。
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