2012.08.20 Mon
妖魔狩人 若三毛凛 if 第一話「プロローグ」
ちょっと夏バテ気味ですが、その割には予定入れまくりの るりょうりに です。
久しぶりに創作更新です!
ですが、「みら!エン」ではありません。
前回更新でチラッと書きましたが、SSを書いてみました。
私は殆どSSを書いたことがなく、たまに書いても不評ですが、今はこういう形でもいいからモチベーションを上げないと、一生創作更新はできないと思いますw
そんな訳で、下手なSSでも良いという方は読んで頂ければ幸いです。
ただし!!
この物語、基本的に状態変化よりカニバリズムネタがメインとなります。
今回の第一話も、状態変化はなく、食材扱いです。
ですから、ソレ系に耐性のある方のみ、お読みください。
尚この物語、展開が分岐型になっております。
①・②と展開が分かれていますので、その点を注意してお読み下さい。
では、また後ほど・・・・・。
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暑くなってきたな…。
5月だというのに、燦々と照らす日差しのせいで、全身に汗が滲む。
白いハンカチで額の汗を拭いながら、凛はそう呟いた。
ゴールデンウィークの真っ只中、宿題の答え合わせをしようとクラスの友人…千佳から、急に連絡が入った。
答え合わせと言ったって、きっと千佳は全然やっていないだろう。
ただ凛の宿題を写すのが、千佳の言う答え合わせなのだ。
今までだって、ずっとそうだった。
要領のいい千佳とは対照的に、いつだって損な役回りが多い。
なぜそんな日常になったのか、凛は薄々気付いている。
口数が少なく、感情表現もあまり出さない。
何かに積極的なわけでもなく、でも…頼まれたら断りきれない。
クラスでも一人でいる事が多く、今日だって外出なんかしないで、家で本でも読んでいた方が、よほどいい。
良く言えば、年齢の割には落ち着いた女の子。
悪く言えば、どこにでもいる、ちょっと内気な女の子だ。
路肩に生えている雑草が、さわさわと騒めく。
すぅーと、心地よい風が身体を吹き抜ける。
凛のトレードマークとも言える、黒く長めのサイドテールがふわりと風になびいた。
少しの間足を止め、目を閉じ吹き抜ける風を感じ取る。
気持ちいい。
ゆっくりと目を開き、見慣れた道のりを眺める。
周りを山々に囲まれた、小さな村の農道。
車が通る事も殆どない。
あと10分も歩けば、千佳の家につく。
「先を急ごう…。」
家につけば、冷たい麦茶の一杯くらい出るだろう。
そこでゆっくり涼めばいい。
おそらく千佳特製のシュークリームも出ると思う。
千佳はスイーツ作りに関しては、凄い腕前なのだ。
特にシュークリームは、カスタードクリームの味付けが絶妙で、下手な売り物よりずっと美味しい。
もっとも、そういう美味しい思いがなければ、わざわざ千佳の為に家にまで出向きたくないけどね。
まだ12歳だが、妙に大人びた冷めた眼差しで目的地付近を見定め、再び歩みはじめた。
しばらくして凛は、背筋がヒヤリとするような気配を感じ足を止めた。
左手にある森の手前で、何者かが立っている。
ロングヘアーで、最近流行りのワンピースを着こなした、若い女性。
20代前半くらいだろうか?
まるで案山子のように身動き一つせずじっと立ち尽くし、凛を見つめている。
よく見ると、若々しいはずの顔にはまるで血の気が感じられず、それどころか、額からかなりの血が滴り落ちている。
またか…。
たしか…2~3日前に隣町から来た車が、この辺りで大事故を起こしたって村の人達が言っていたな。
運転していた若い男性と女性が亡くなったとか。
「ねぇ、ここはもう…貴女の住む場所じゃないんですよ。自分の死を受け入れてください。」
凛は女性に向かって、悟らせるように話しかけた。
若い女性は、しばらく凛を見つめていたが、やがて霧が蒸発するように静かに消えていった。
女性が消えていくのを見納めると、凛は短い溜息をつく。
凛が口数が少なく、感情を表に出さなくなったのも、実はこの力が原因なのだ。
霊感体質。
凛は幼い頃から、この力を持っていた。
子供の頃は、霊を見るたび恐怖し、泣き喚きもした。
親や友達、村の人達にも、霊が見える事を話もした。
だが、大人たちの反応はいつも同じだ。
見間違いだよ。
気のせいだよ。
怖い…怖いと思っていると、なんでもそんな風に見えるんだよ。
霊体が見えない大人達は、誰一人信じようとしなかった。
友達も同じだ。
どこにそんなのがいるんだよ?
嘘つき!
大人と同じように信じない子もいれば、
なんか…凛って薄気味悪い。
何かに摂り憑かれているんじゃないの?
と、気味悪がって離れていく子達もいた。
言っても誰も信じてくれない。
言えば言う程、わたしが悪くなる。
そうした経験を繰り返すたび、凛は次第に口数の少ない子に育っていった。
最初は怖かった霊の姿も、何度も見るうち見慣れていき、恐怖を含め感情もあまり表にでなくなってきた。
無口で無表情な少女。
今の凛になったのは、この霊感体質のせいだと言っても過言ではない。
でも…いい。
こんな生活も、もう慣れた。
たしかにこんな自分は正直、あまり好きではない。
でも、そこまで嫌いでもない。
わたしはまだ中学生になったばかり。
とりあえず今は、勉強に励んでおこう。
周りで何と言われようと、やるべき事さえやっておけば、きっと将来役に立つことがある。
そう…きっと。
心の中で気を取り直し、先へと進む凛。
もうじき千佳の家に着く。
そう思った時だった。
ぞくっ!!
一気に悪寒が走った。
さっきまで汗すらかいていたのに、いつの間にか全身に鳥肌が立っている。
寒気なんてものじゃない。
まるで心臓に氷の塊を押し付けられたような感覚。
どき…どき…
激しい鼓動が聞こえる。
今まで何度も霊気を感じ、身の毛のよだつ思いはした事がある。
でも、そんなのとは何か違う。
もっと、邪悪な…、霊気とはまた違う気配。
「な…なんなの…、この感じ…!?」
身震いをしながら辺りを見渡してみる。
どこ…?
来た道を振り返りながら、森へと目をやってみる。
先程とは反対方向の森から、それは感じられた。
………。
その方向を見つめているだけで、口の中が乾いていく。
間違いない。
何か、悪意の塊のような…、それでいて大きな気。
でも、待って…?
もう一つ、何か気配を感じる。
邪悪な気よりはかなり小さいけど、清らかで…光のような気?。
どうする?
どうするって、何を…?
もしかして、わたしはそれを確かめたいと思っているの?
これほどの悪意の気だよ…。
見に行って、どうするのよ?
でも……。
久しぶりに感じる、激しい心の迷い。
凛の頭の中は、すっかり混乱していた。
にも関わらず、身体は初めて経験する好奇心を抑えきれなかったのだろう。
凛の意識とは関係なく、その足は森の中へ入っていった。
薄暗い森の中を引き寄せられるように進んでいく。
どきどきどき…。
明らかに、鼓動が早まっている。
同時に、冷水のような汗が、全身を覆っているのもわかる。
「あ……っ。」
足を止めたその先に見えるもの。
そこには一人の女性がいた。
それは、妖艶な佇まいの美女…
深い森のこぼれ日に輝く、禍々しい花の髪がざり。
日本のそれとは違う、中国の皇帝貴族のような服装。
妃…一言で著せば、まさにそれだ。
そして、自信に満ち溢れた冷たい眼差しの先には、一羽の鳥の姿が。
その鳥は落下したかのように、地面の上で身体を横たわらせ、苦しそうに羽根をばたつかせている。
だが、驚くのはそこでは無い。
その鳥の大きさと色だ。
鷲…?鷹…?
大型の鳥のようだが、どちらかと言うと鷹に近いようだ。
しかし問題なのは、その色。
その身も、大きな羽根も、輝くような金色なのだ。
本好きの凛だが、そんな鳥は今までどの文献でも見たことがない。
その美しい金色の鳥は怪我をしているのか? 見るからに弱りきっている。
そして必死に羽根をばたつかせ、立ち上がろうとしている。
ニヤリ…。
妃は冷たい笑みを浮かべると、手のひらに黒い炎の塊のような球を浮かび上がらせた。
それだ。
先程から感じ取れる冷たく大きな邪悪な気配。
それが、妃から…、そしてその球からハッキリと感じ取れる。
「終わりだ。」
妃はそう呟くと、黒い球を金色の鳥に向けて放った。
「これまでか…。」
先程まで必死に立ち上がろうと羽根をばたつかせていた金色の鳥だったが、まるで覚悟を決めたように身動きするのを止めた。
*どうなる?*
① 凛は考える間もなく、金色の鳥を庇う。
② 凛は恐怖に足がすくみ、見過ごしてしまう。
①→
妃が放った黒い球は、命中すると共に激しい振動と土埃が舞い上がり視界を覆い隠した。
もうもうと舞い上がる土埃の中で、何一つ動く者の気配が無いと感じた妃は小さく息をもらすと、何事も無かったように立ち去っていった。
「う…うぅぅ…、僕は…助かった…のか…?」
消えゆく土埃の中で金色の鳥が目を開ける。
「うん? 視界が暗い…? いや、何かが僕の上に覆い被さっている…?」
羽根を腕のように動かし、覆い被さっている何かから這い出た金色の鳥は、その覆い被さっていたものを見て驚いた。
「女…の子…? 人間…の…!?」
それは服は殆ど燃え尽き、全身に大火傷を負って倒れている瀕死の少女…。
「この…子が…、僕を…庇った…のか!?」
少女…凛はうっすらと目を開くと
「よかった…、助か…った…のね…。」
そこまで言うと、凛は意識を失った。
呼吸も、そして心臓の鼓動も完全に止まってしまった。
「このままにはしておけない。」
金色の鳥は羽根を羽ばたかせ飛び上がり、凛の身体の上で制止する。
「君は僕を助けた。だから今度は僕が君を助ける。」
同時に金色の鳥の輝きが増し、その付近一帯が黄金の光で包まれた。
眩い目も開けられないような光の中で、金色の鳥の体から金色の光の塊が浮き出るように分離する。
そしてそれは、凛の体の上で漂っている。
光の塊が分離したためか、鳥の体が今までより一回り、ふた回り小さくなった。
先程まで鷲くらいの大きさだった金色の鳥は、今では鳩くらいまで小さくなっているのだ。
「それは僕の霊力の殆どだ。さぁ…それを受け入れて、蘇るんだ!」
光の塊はゆっくり降下し、少しずつ凛の身体の中に入り込んでいく。
そして全てが凛の身体に吸い込まれると、黄金の光は凛の体から発光し始めた。
凛の体が黄金色に染まっていく。
みるみるうちに、大火傷を負っていた全身も回復していった。
しばらく黄金の光と化していた凛の体だったが、それはゆっくりと輝きを減らし、そして消えていった。
すぅー。
すぅー。
凛の呼吸音が聞こえる。
そして、ぴくっと、凛の手が動く。
「君…、僕の声が聞こえるかい?」
だ…誰…、わたしに話しかけているのは…?
お母さん…?
今日もゴールデンウィークだから、学校は休みよ…。
あ…あれ…、なんか胸の中が暖かい…。
何だろう…これ?
「君…、返事をするんだ!?」
だから、今日は休みだって~っ。
ん…、なんか、お母さん…声が変?
お母さんじゃ、ないの…?
うっすらと目を開けると、そこには金色の鳥の顔が真ん前に!
「うぁっっっ!!?」
バネじかけの玩具のように、飛び起きる凛。
「と…鳥が、喋ってるぅー!?」
あまり物事に動じない凛だが、さすがにこれは驚いたようだ。
「ごめんよ、驚かせてしまったようだね。でも、無事に生き返って良かったよ。」
そう言って、ニコッと笑う金色の鳥。
しかし、そうやって鳥が笑う事自体、驚きだ。
「あなた、一体…何なの? それとわたしはどうしたの?」
「僕は『金鵄』。遥か昔からこの日本を守護する霊鳥の一族だ。」
「日本を守護する…霊鳥?」
「そうさ、僕の一族は太古の昔から、この地を妖怪や妖魔から守ってきた。
まぁ…僕自体は、その役目を負ってから、まだ十数年しか経っていないけどね。」
「あぁっ、そうだっ!!
わたしは、あなたと貴族のような女性が対峙しているのを見て……」
「あいつは、中国妖魔一族の女王、『妖木妃』。」
「妖木妃…?」
「そう、ヤツはこの日本を征服しようと中国からやって来たんだ。
僕はそれを阻止しようとヤツと戦ったんだが、ヤツの強大な力に太刀打ちできず敗北寸前だった。
その時、君が僕を助けてくれたんだ。」
「そうだ!なんか…あの女性から黒い火の玉みたいなのが出て、わたしは無我夢中で…。」
「ありがとう、君が庇ってくれなかったら、僕は間違いなく殺されていた。」
「その後わたしはどうなったの? その辺りから覚えていないんだけど。」
「その後、君は一回死んだんだ。まぁ、正確には身体の機能が停止したと言った方がいいかな。
でも、君の魂はまだ生きていたんだ。
だから、僕の霊力を君に分け与えた。その力で君の魂は活性化し、身体の機能も復活したんだ。」
霊力を分け与えた…? どういう事…?
「僕は霊鳥…、基本的に僕は霊力の塊と言ってもいい。この身体も、霊力によって実体化したもの。
それを君に分け与えた。」
「そう言えば、あなたの身体…、最初見たときよりも小さくなっている。」
身を乗りだり、金鵄の身体を舐めるように見渡す。
「さっきも言ったけど、僕は霊力の塊のような存在。
だから、君に分け与えた分、僕の身体は小さくなったわけだ。」
「ごめんなさい、わたしを助けたばかりに…。」
凛はそこまで言うと思い出したように正座して
「そう言えば、まだわたしの自己紹介をしていなかったね。
わたしは『若三毛 凛』、由子村中学一年生。
金鵄って言ったよね。助けてくれて、本当にありがとう。」
深々と頭を下げた。
「礼には及ばないよ。なぜなら君が蘇る事ができたのは、凛…君自身の霊力が高かったからなんだ。」
「わたし自身の…霊力?」
凛は、まじまじと己の身体を見つめた。
「そうさ、普通なら妖木妃の邪悪な波動の炎で、君の身体は骨一つ残さず焼き尽くされていたはずだ。
なのに、君は大火傷を負ったが肉体は残り、そして魂も生きていた。
それは、かなり強い霊力に守られていたからだよ。」
「そ…そうなの? わたしの霊感って、そんなに凄かったんだ?」
「うん、相当強力な霊力だ。それに僕の霊力が加わった今の君は、妖怪とも渡りあえる力を持った事になる。」
金鵄はそこまで言うと、しばらく考え込むような仕草をしていたが、空を見上げ決意したように…こう切り出した。
「若三毛凛、『妖魔狩人』になって、僕の代わりにこの地を守ってくれないか?」
つづく
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②→
妃が放った黒い炎の球が、金色の鳥を包み込むように飲み込んだ。
一気に舞い上がる土煙の中で激しい爆音と振動が襲った。
それはまるで目の前に雷でも落ちたかと思える光景だった。
2分~3分たったのか?
感覚的には数十分たったような感じだが、次第に土煙が晴れていく。
薄れていく土煙の中に仁王立ちした一人の姿が。
紛れもなく、妃の姿だ。
そして、その目線の先には・・・・・
クレーター?
いや、そう思わせる程、地面に大きな穴が剔り取られている。
草も木も何もない。
あの…金色の鳥の姿も。
身体はおろか、骨も美しかった羽すら、残っていない。
一体、何があったの・・・?
あまりにも想像を超えたその力に、状況が読み取れない。
「くたばったか。」
勝ち誇る笑みは、あまりの悍ましさに背筋をぞっとさせる。
に…逃げなきゃ…。
直ぐ様振り返って、ダッシュで逃げ出したい。
でも…
目が離せない…。
妃から目を離すのが怖い…。
ゆっくりと、それこそ…ゆっくりと、妃を見つめたまま後ずさりをしていく。
ドンッ!!
後ろも見ず後ずさりをしていた為、背中がモロに森の木に当たってしまった。
「ん……っ?」
妃の冷やかな目と目が合ってしまった!!
あぁぁぁっ…
「村の子供か? 何にせよ、見てはならぬ物を見てしまったようだの。」
妃の右手に再び、黒い炎の塊が湧き上がる。
「どうせ、お前の村も、そしてこの国も、ワシの手に落ちる。
今ここで命を落としても、変わりなかろう。」
わたしも、消える……。
先程目のあたりにした、クレーターのような大穴。
骨も羽も残らなかった、あの金色の鳥のようにわたしも……。
ポカンと立っていた。
逃げようとするわけでもなく、防ごうとするわけでもなく…
ただ、全てを諦めて、無造作のポカンと立ち尽くしていた。
「妖木妃様、ソレ…あたしに頂けますか?」
背後から声が聞こえた。
でも振り返って確認する事ができない。
したくない…、これ以上、何も見たくもない…聞きたくもない…。
言葉に反応した妖木妃と呼ばれる妃は、凛のその先に目線をやった。
「ボンディァォフーニュか。」
妖木妃は考え込むように言葉の主と凛を交互に眺めていたが、うっすらと微笑み、
「良かろう、お前に任せよう。楽しみにしてるぞ。」
そう言って踵を返すと、まるで霧のように姿を消していった。
「いい霊力を持っているわね、これは最高の物が出来上がりそうだ。」
この言葉を聞いた瞬間、大きな両手が凛の肩を掴み、強引に振り変えさせる。
凛の目に、大柄で太めの女性の姿が入った。
誰? そう思った瞬間、何かが口の中にねじ込まれる。
ん…んん…っ!?
喉に液状の物が流れ込んできた。
独特の匂いで、少し喉が熱くなる…。
息をする間もなく、液体が次から次へと流し込まれる。
苦しい…、吹きこぼれる…。
その思いが通じたのか、口にねじ込まれた物が引き抜かれた。
はぁ…はぁ…
なんか…酒臭い……?
「どうだい、あたし特製の黄酒の味は?」
ボンディァォフーニュと呼ばれた女が、自慢気に半升位の瓶を見せつける。
さ…酒…?
…と、いきなり足がガクガクしたかと思うと、ドスンと尻餅をついてしまった。
な…なに?
目の前がチカチカ、クラクラ…。
ああ…地面が、地面がまるで海の上のように波打っている?
上半身ですら起きていることがままならず、大の字に横たわってしまった。
はぁ…はぁ…
目が…目がまわるっ…。
「ククク…やはり子供、この程度の酒でだらしないねぇ~♪」
グビッ…グビッ…♪
ボンディァォフーニュは残りの酒を美味そうに飲み干すと、
凛のサイドテールを鷲掴みして身体を引き起こし、一気に自らの肩に担ぎ上げた。
「帰ってから、あと一晩酒に漬け込んでおけば、臭みもとれ、味も引き立つだろう。」
凛を担ぎ上げたまま、ボンディァォフーニュは、森の奥深くへと消えていった。
翌日、夕日が辺りを照らし、山々がまるで紅葉したように赤く輝いている。
いや、赤く輝いているのは夕日のせいだけでないようだ。
由子村のアチコチで炎が舞い上がっている。
妖魔女王…妖木妃を筆頭に、数人の中国妖怪達が、村を占拠したのだ。
そこはまるで地獄絵図だった。
村は焼き払われ、村人達は全員囚われの身となった。
ある者たちは、妖怪達の食料となり、その身を焼かれ、引き千切られ喰われている。
ある者たちは、奴隷となり、妖怪達の世話をしている。
そしてある者たちは、妖木妃の魔力によって、妖怪として転生していた。
妖木妃は、こうやって部下の妖怪を作り出すことができるのだ。
そんな様子を楽しそうに見つめていた妖木妃の前に…
「妖木妃様、特製霊力鍋をお持ちいたしました。」
と、ボンディァォフーニュが現れた。
「霊力鍋…?」
人一人が楽々に入りそうな大きな土鍋が運ばれてくる。
蓋を開けると、濛濛とした湯気が立ち上がった。
「ふむっ…?」
興味深そうに鍋を眺める、妖木妃。
鍋の中身は山で採れた山菜の数々。
だが、その山菜よりも、ひときわ目立つ具が真ん中に。
それは、すっかり茹で上がっている、凛の姿だ。
「まずは汁からご賞味ください。いい出汁が出ていますよ♪」
「ほほぉーぅ!」
お椀に汁を注ぎ、妖木妃に手渡す。
クン…クン…。
「ほぉ、これはいい匂いだ。」
ズズッ…。
蓮華で一口啜ってみる。
「たしかにいい出汁だ。甘く…それでいて、微かな酸味が味を引き立てている。」
「それだけですか?」
「…ん?」
ズズズッ……。
もう一口啜ってみる。
「先程と変わらぬ。なかなかいい味の汁だが、他に何か……
ん…!? すまぬ、もう一杯くれんか?」
「どうぞ、お好きなだけ。」
ズズズッ…。
「やはりそうだ! 魔力が…、ワシの魔力が活性化しておる。これは…!?」
「この小娘の霊力です。」
ボンディァォフーニュは手にしたオタマで、茹で上がっている凛の身体を突き回した。
「この小娘、並の人間とは思えない霊力を備えておりました。
ですから妖木妃様に食して頂ければ、きっと、魔力増加に役立つだろうと・・・・。」
ゴクッ…ゴクッ…。
「ぷはっ…。
たしかに、凄い効果だ。あのまま消してしまわんで良かった。
ボンディァォフーニュ、お主のお陰だぞ。」
「ありがとうございます。」
「出汁でこれだけの効力があるのだ、きっとその肉は更に効き目があるだろう。」
「もちろん♪」
ボンディァォフーニュはそう返事をしながら、凛の身体を切り分けていく。
細切れにした肉をお椀に入れ、妖木妃に手渡した。
クククッ…
「美味い! だがそれ以上に、凄い霊力だ。ワシの魔力が数倍に跳ね上がりそうだ。」
ガツガツと凄い勢いでたいらげていく。
こうして、この世から『若三毛 凛』の存在は亡くなった。
「皆の者…よく聞け! この村を拠点に、この国を制圧する!
まず明日は、そこの山を隔てた市街地…『丘福市』を襲撃する。」
おわり。
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…という訳で、いかがだったでしょうか?
①はお判りの通り、正規ルートです。次回へと続きますw
②を選んだ場合は、これで終了…BADENDですw
なぜこんな書き方をしたか?
それは、次回詳しく。
とりあえず、しばらくこの形で更新していこうと思っております。
では、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。<(_ _)>
| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 20:43 | comments:9 | trackbacks:0 | TOP↑
待ってました。
面白かったです。毎日ここを覗いていた甲斐がありました。
バッドエンドでの凜の調理される過程(酒漬けと、鍋に入れられて煮込まれる描写)をもっと描いて欲しかったです。
| 竜鬚虎 | 2012/08/21 08:25 | URL | ≫ EDIT