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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

2015年11月 | ARCHIVE-SELECT | 2016年01月

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マニトウスワイヤー 第五章 最強の精霊

 都の後を追い路地裏を通り抜けると、そこは四方が雑居ビルに囲まれているにも関わらず、意外にもやや大きめな有料駐車場であった。

「てんこぶ姫っ!?」

 その駐車場の中では都がうつ伏せに倒れている。

 そして、その数メートル先には二つの人影が・・・。

 一人はフェアウェイを小脇に抱えた小柄な『せむし女』・・・アンナ・フォン。

 そしてもう一人は藍色の肌の長身の女性。

 だが、問題はその異様な姿。
 南米の踊り子のような露出の高い身なりで、その背中には翼が生えている。

 そして頭部は異常に縦長の兜のような物を被っている。

 しかもその兜らしき物には上から、鳥・男性・女性の三つの顔が並んでおり、仮面ではなく明らかに生きた表情を持っていた。

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「な・・なんなの・・・あれは!?」

 さすがの凛も、その異様さに驚きを隠せない。

「や・・はり貴女たちのお友達ってわけでは、なさそうですわね・・・」

 肩で息をし、よろめきながら身を起こした都。

「まぁ、正義の味方である妖魔狩人の仲間にあんな凶悪そうなのがいたら、それこそ・・イメージダウンですものね」
 軽口を叩いているが、大きなダメージを受けているのは容易にわかる。

「おや? 新たに小ジャリが一人、迷い込んだみたいね。イイ子だから天女の子は諦めて早くお家に帰りなさい」
 凛の姿を見たアンナ・フォンはクククと笑いながら、小馬鹿にしたように言葉をかけた。

「天女の子!? ねぇ、金鵄。もしかして・・あの人たちが『マニトウスワイヤー』っていう者の一味かな?」

 その凛の言葉に金鵄よりも都が先に反応した。

「なぜ、貴女がその名を知っているのかしら?」

「風の噂みたいなものよ。今日わたし達が丘福市へ来たのも、それが理由」

「ふっ・・! 風なんかと噂話をしないでくださる。道理で偶然にしては都合よく重なると思いましたわ」

「さっきまではてんこぶ姫。 あなたもマニトウスワイヤーの一味だと思ったんだけど、この状況を見る限りそうではなさそうね」

 その言葉に都は赤い瞳を更に輝かせ凛を睨みつけると

「わたくしを、あんな下衆な連中と一緒にしないでくださる? 二度とそんなしょぼい勘違いをなさったら・・・」
 そう言って爪を立てると、

「真っ先に殺しますわよ!」

「それよりも凛・・・・」
 口を挟むように金鵄が話しかけてきた。

「奴ら・・・。特にあの翼の生えた三つの頭を持ったヤツ・・・」

「三つの頭・・・? あの・・トーテムポールみたいなやつ?」

「トーテムポール・・・? まさしくトーテムポールだ!! アイツと戦ってはいけない!!」

 今まで見せたことのない怯えた様子で叫ぶ金鵄。

 その直後であった。

 三つの頭の女性が高々と右手を上げると、その遥か上空で眩い閃光が輝き始める。

 ゴロゴロゴロ・・・と低く重い音が鳴り響く。
 それは正に雷雲・・・。

 そのまま右手を振り下ろしその指先を凛へ向けた。


ガガガガガガッッ!!

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 一瞬、目の前が真っ白。いや黄金色になったかと思うと激しい衝撃に襲われ、気が付くと凛の身体は数メートル後ろにあった雑居ビルの壁に叩きつけられ、めり込んでいた。

「あ・・ああ・・・っ・・?」

 凛には何があったか、まるで記憶が無い。

 わかるのは全身を襲う激しい痛みと、きな臭い焼け焦げた匂いがすること。


「や・・やはり・・そうだ・・・」

 青ざめた顔で金鵄が呟く。

「サンダーバード・・・・。遥か昔からアメリカ先住民族から恐れられ、そして崇拝されてきた伝説の霊鳥・・・・」

「サンダーバード・・・? 伝説の霊鳥・・・?」

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 意識が朦朧としている凛の代わりに尋ねてやるかのように、都が問いかけた。

「そうだ・・・。ある時はその激しい雷で一夜にして村を消滅させ。ある時は同じようにその力で、悪魔を追い払う。北米最強の霊鳥であり精霊。トーテムポールとはそれを見た人間が、その大いなる力を魔除けとして偶像化した物なんだ」

「子どものころ小学校や公園で見たトーテムポールが、あんな化け物を奉ったものだとは・・・。これからは何事にも疑いの眼差しを向けますわ」

 さすがの都も、そのあまりの凄さに呆れ顔を通り越していた。


「ねぇ・・金鵄、わたし・・一体、何をされたの・・?」

 朦朧とした意識を振り払うように、頭を振り金鵄に問いかける凛。

「凄まじい雷撃を喰らったの。先程のわたくしと同じように・・・」
 代わりに都が薄ら笑いを浮かべながら答えた。

 そう言う都は無意識に自身の胸を擦っている。

「喰らった瞬間、意識も何もかも吹っ飛んでしまう・・・。それ程強力な雷撃ってことか・・・」
 金鵄が改めて、その恐ろしさを実感していた。

「これでわかっただろう! お前たち虫ケラや小ジャリなどお呼びではないのだ。さっさと退却するなら見逃してやろうぞ!」

 相変わらず、クククと笑いながら話すアンナ・フォン。

「蜘蛛の・・お姉ちゃん・・・・」

「蜘蛛女・・・・」


 アンナ・フォンの腕の中で、為す術もなく呟くフェアウェイと香苗。

「ちっ!」 

 打つ手立てが見当たらず思わず舌打ちをしてしまう都。

「てんこぶ姫・・・・」

 そんな都に凛が声を掛けた。

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「なにかしら? もう~っ寝る時間だから帰る・・というのならば、止めませんわよ」

「姫と名乗る割には軽口が多いのね?」

「余計なお世話です。それより要件をさっさとおっしゃいなさいな・・・」
 苛立ちを隠せない都の様子に凛は軽く微笑んだが、再び表情を硬くすると、

「サンダーバードとか言う精霊はわたしが引き離す。 だからあなたはその間に、天女の子を助けだして・・・」

 予想もしない凛の提案に目を丸くする都。

「なぜ妖魔狩人である貴女が、妖怪のわたくしを手助けしようとするのですか?」

「あなたを助けたいんじゃない。天女の子を奴らから助け出さないと日本が・・・。いえ・・世界が滅びるかもしれないからよ!」

「貴女、どこまで事情を知っているのかしら?」

「今はその話を詳しくしている暇はないわ。どうする? 一時、協力する?」
 凛の真っ直ぐな眼差しが都を見定めている。

 ふっ・・!

 都は軽く鼻で笑うと、

「今どき、こんな少年マンガの定番シチュエーションは流行らないのですけど、今はそれが一番ベストな選択のようですわね」
 ぶっきらぼうながらも、少し和らいだ目で返す都。

「しっかり惹きつけてくださいな!」

「うん!」

 凛は軽く頷くと、弓を構えながらサンダーバードに向かっていった!


シュッ!!


 青白い閃光・・霊光矢が、サンダーバードとアンナ・フォンの間を裂くように飛んで行く。

 更に二発目、三発目は、明らかにサンダーバードに向けて放っている。


バサッ! バサッ! バサッ!


 翼を広げ空高く飛び、その場を離れるサンダーバード。

「今よ・・・てんこぶ姫っ!!」

 凛の叫びに、アンナ・フォンに向かって突進する都。

「小賢しいっ!」
 アンナ・フォンは手の平を都に向けると呪文を唱えようとした。

 だが・・・

「いたたたたたっ!!」

 鋭い痛みが腕を襲い、思わず腕を振り払ってしまった。

 術を仕掛けようとしたその瞬間! 囚われていたフェアウェイがその腕に噛み付いたのだ!

 それを見逃さない都。

 直ぐ様・・蜘蛛の糸を放つと、フェアウェイと香苗に巻きつけ一気に引き戻した!

 フェアウェイと香苗の身体を抱え上げると、都は凛に目で合図を送る。
 そしてそのまま一目散に路地裏を駆け抜け、その身を隠してしまった。

「あんだけ傷を負っているのに動きが素早いよね・・」
 都の逃走を見届けると、ふっ・・と安堵の溜息をついた。

「本当に小賢しい小ジャリ・・・・。 サンダーバード! もう~っ容赦なくあのガキを焼き殺してしまいなさい!」

 怒りが収まらないアンナ・フォンは、八つ当たりするようにサンダーバードに命じた。

「ダレ二向ッテ、命令シテイル?」

 それに対し、感情の欠片もないような無機質な返事が返って来た。

「えっ!?」

「勘違イスルナ。ワタシハ、貴様ノ部下デハナイ。マニトウスワイヤーヲ復活サセル為二、今ダケ手ヲ貸シテヤッテイルノダ」
 サンダーバードは、そう言って指先をアンナ・フォンに向けた。

「二度ト命令シテミロ。先二貴様ヲ殺ス」

 その表情も口調も、感情の欠片も感じさせない。変に凄まれるより逆にそれが恐ろしい。

 それが証拠に先程まで勢いの良かったアンナ・フォンが、すっかり怯えガタガタと震えている。

「コノガキハ、ワタシガ殺シテオクカラ、貴様ハ先程ノ蜘蛛妖怪ノ後ヲ追エ・・・」

 逆に命令するサンダーバードにアンナ・フォンは無言で何度も頷くと、脱兎のごとく路地裏に駆け出していった。

「凛、サンダーバードが襲い掛かってくる。こうなったらヤラれる前にやるしかない! 全力でいくぞ!!」

 金鵄の言葉に、凛はわかっているとばかりに霊光矢を放った。
 先程の威嚇と違い、今度は真っ直ぐサンダーバードを狙っている。

 だが、サンダーバードは少しも慌てること無く向かってくる霊光矢に両手を突き出すと、青白く光る火花を散らし始めた。

バリッ・・バリッ・・バリッ・・バリッ!!

 火花によって行く手を遮られた霊光矢。まるで放電しているかのように激しい音と光を発すると、静かに消えて無くなってしまった。

「霊光矢が・・・通じない・・・?」

「ヤツは雷を操るだけでなく、自身の身体からも発電し操る事ができるのか・・・」
 呆然と立ち尽くす凛と金鵄。

 そんな凛たちにお構いなく、サンダーバードは右手を高々と上げた。

 上空では雷雲が激しい稲光を放っている。

 ゆっくりとその腕を降ろし、指先を凛に向ける。


バリッ・・バリッ・・バリッ・・バリッ!!


「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」


 眩い閃光と雷鳴が響き渡り、またもや衝撃で凛の身体は吹っ飛んだ!
 激しい痛みときな臭い匂い。

「くっ………ぅ」

 肩で息をしながら起き上がろうとする凛に、サンダーバードは更に追い打ちをかけた!


バリッ・・バリッ・・バリッ・・バリッ!!


 凛は自身が放つ霊力と金鵄の羽毛で編んだ戦闘服の防御力によって、あらゆる衝撃に耐えることができる。

 だが、それだって無敵ではない。

 その防御力を上回る攻撃を受ければ、相当のダメージを負うのは当然。

 サンダーバードの攻撃は、凛の防御力を遥かに上回っていた。

 そんな攻撃を立て続けに二発も喰らったのだ。

 なんとか必死に立ち上がろうとしてみるものの、意識は朦朧とし足はガクガクと震え・・・、しかも僅かではあるが失禁もしていた。

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 もう・・戦うどころか、虫の息といっても過言ではない。

「凛、もう起き上がるな! そのまま倒れていろ!」

 さすがの金鵄も、これ以上の戦闘は命の危険性があることを感じ取っている。

 だがサンダーバードは、例え虫の息でも容赦する気は無かった。
 再度、右手を上空に突き上げる。

「もう、やめてくれぇぇぇっ!!」

 懇願するように泣き叫ぶ金鵄。


 その時・・・・

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「水流輪っ!!」

 激しく回転する水流の輪が、サンダーバードの右腕の動きを遮った。

「!?」

 何事かと辺りを見渡すサンダーバード。

 もちろん、それは金鵄も一緒だった。

 すると小さな雑居ビルの屋上に人影が見える。
 やや小柄だが、青をベースにした和風の身なりに顔を隠した頭巾。

「あ・・・青い妖魔狩人・・・!?」

 それは柚子村で二度ほど一緒に妖怪を退治した女性で、自らを青い妖魔狩人と呼んでいる。

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 頭巾に隠されたその素顔は今持って謎だが、凛と同じく浄化の術を使える実力の持ち主だ。

 感情を見せないサンダーバードだが、邪魔をされたことに怒りを感じたのか?
 その眼(まなこ)は青い妖魔狩人を見据えて動かない。

 金鵄の目もそんな二人から離せなかったが・・


「逃げるぞ・・・・」

 微かに聞き取れる程度の小さなものだが、妙に力強い声が耳に入った。

 フトッ見ると、一人の女性が倒れている凛を抱き起こしている。

 鮮やかな銀色のボフヘアー(オカッパ)にまるでアクセサリーのように輝く皿を乗せ、露出度の高い身なりそれに似合う長身でグラマラスなボディーの美女。

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「あんたは確か・・・、祢々(ねね)とか言う・・・」

 それは祢々と言う名の禰々子(ねねこ)河童。
 青い妖魔狩人に付き従っている妖怪だ。

 丸太ですら軽々と持ち上げるその怪力で凛の身体を担ぎあげると、青い妖魔狩人にも合図を送った。

 祢々の動きに気づいたサンダーバード。

 再び右腕を真っ直ぐ突き上げると、その照準を祢々と凛に向ける。

「水泡幕!!」

 そうはさせじと青い妖魔狩人はまるでシャボン玉のような小さな泡を無数に撒き散らすと、サンダーバードの視線を遮った。

「!?」

 サンダーバードは雷でなく自ら発効した電気火花で水泡を撃ち落としていったが、ある程度の視界が見通せる頃には祢々や凛の姿・・・、そして青い妖魔狩人の姿すら消え失せていた。




第六章 精霊の支配者(マニトウスワイヤー)へ続く。
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