みら!エン 第4話
STG17 天女戦士ミオ登場(4)エピローグ「ミオ…! ミオ…!!」キャンバスから抜け出たまま倒れて意識を失ったミオ。
その耳元で、ニコが叫ぶ。
「う…うん…? ニ…ニコ…?」「大丈夫ぅ…ミオ!?」「ボ…ボク、どれだけの間…倒れていたっ!?」そう叫ぶと、ミオはガバッと飛び起きた。
「えっと…5分くらいかなぁ?
急激に魔力を高めて封印魔法を解いたから、その反動で気を失ったみたいぃ。」「しまった…!!」ミオは、一気に外へ飛び出す。
中華レストラン外 入り口レストランの入り口に飛び出したミオ。
そこには、メダルを脇に抱え…店内へ戻ろうと歩いているシグーネの姿があった。
「キ…キミは!?」「あらら…もう目が覚めたの? 残念…寝顔を楽しもうと思ったのに…」シグーネは、悔しそうな表情をした。
「え…っ!?」「ま…その話は後で。 それよりもホラ、約束どおりメダル化した娘は返すわよ。」そう言うと、メダル化した昴をミオへ手渡した。
「あ…ありがとう。
でも、この人達…どうやって元に戻したらいいの?」ミオはメダルを大事そうに抱えながら問い返してきた。
「ハムカツ化した娘は、アタシの魔法で、一旦油で揚げられる前に戻してあげるわ。
その後は、そのメダル娘同様…フニャフニャパウダーで変化しているだけだから、水属性の治癒魔法で元に戻せるはずよ。」「水属性…治癒魔法…。
そ…そんな…。ボク、天女族だから、そっち系の魔法は使えないよ!」そう、天女族が使える魔法は風(大気)属性の魔法。
したがって、天女族であるミオには、水の属性魔法は無い。
「ん…?
別にアンタがやらなくても、さっきから…あの電柱に隠れている人魚にやらせれば、いいじゃない。」シグーネはそう言いながら、ある電柱を指差した。
「人魚・・・!?」シグーネの指差した電柱を見つめるミオ。
そこから、ひとりの少女の姿が現れた。
青く腰まである…ストレートな髪。
ややタレ気味だが、パッチリとした目。
鼻筋が通り、小さめだがふっくらとした唇。
その見覚えのある美少女は・・・・・
「水無月…先輩!!?」「ミオ…ちゃん…」セイナは、恐る恐る…ミオを見つめる。
「人魚なら、水魔法くらい使えるだろ。」シグーネは、当たり前のように話す。
「えっ…!?」驚いたミオは、セイナに駆け寄った。
「ちょっと待って。
ボク、全然…話しが見えないんだけど!?」「んっとね、ごめんなさい。
今まで黙っていたけど、私…人魚族なの。」セイナは、そう言って深々と頭を下げた。
「み…水無月先輩が、に・ん・ぎょ・!?
で…でも、足もあるし…どう見たって人間にしか…!?」「だけど…」「ん…?」「だけど…、ミオちゃん…私を食べないでーぇ!!」セイナはそう叫ぶと、号泣しだした。
―ハァ~っ!?―「だって、ミオちゃんだって、私を人魚と知ったからには、その肉を食べようって思っているでしょ!?」
「?????」セイナの顔には、滝のように流れる涙。
「人間界には、人魚の肉を食べると不老不死になるっていう言い伝えがあるでしょ。
だから…ミオちゃんも私を・・・」「喰わねぇーっよ!!」ガンッ!!ミオ、セイナの頭に会心の拳骨と、ツッコミ!
その後、天然系であるセイナとの、一進一退のボケとツッコミを挟んだ会話が続き、ミオが天女族であること。
都市伝説は、ミンスー、パンス達…魔族の仕業であること。
犠牲になった、昴…弥生の二人を元に戻すには、水属性の治癒魔法が必要であることが伝えられた。
「話の途中…悪いけど、この娘も返しておくわ。」声と同時に平面化にされている弥生を抱えた、シグーネがやってきた。
ハムカツにされたはずの弥生だが、パン粉はすっかり取り除かれ、平面ではあるものの、その身体には…火傷の跡一つ無い。
「あ…ありがとう。でも…いったいどうやって?」弥生を受け取りながら、ミオが訊ねた。
「アタシはね、時間を止めたり戻したりする魔法も使えるの。
ソレを使って、その娘の身体(時間)を、油で揚げる前に戻したのよ。
もっとも、コレを使うと…大量の魔力を使うから、あまり使用できないんだけどね。」シグーネはそう答えながら、ニヤリと微笑む。
「ありがとう。やっぱりキミは、それほど悪い魔族では無いんだね。」ミオが嬉しそうに礼を言う。
「さぁ…それは、どうかしら?」シグーネがそう返した時、
キキキキキキッ!一台のワンボックスカーが路上に停まった。
中から、3~4名の男女が降りてくる。
「メイちゃん、こっち…こっち~♪」セイナが手招きをする。
メイド服を着た18歳位の少女がセイナに話しかける。
「セイナお嬢様、神官様よりご指示承りました。
平面化したご友人をお屋敷にお連れし、治療を行ないます。」他の者達が、昴と弥生の二人を車の中へ運び込む。
「ではミオちゃん、私も一緒に帰って…昴ちゃん達を治すね。」セイナもそう言って、車に乗り込んだ。
「うん、水無月先輩…、後はお願いいたします。」二人の会話が済むと、セイナ達を乗せた車は再び発進し、戻っていった。
去っていく車を嬉しそうに見つめる…ミオ。
「やっぱ…いい匂いだわ~っ、アンタ♪」そんなミオを眺めながら、シグーネが呟く。
「いい匂い?」「そう~♪
最後まで諦めない…闘志。決して妥協しない正義感。
必要とならば、自らの身さえも委ねる勇気。
たとえ悪と知りつつも、相手を信じる純粋な心。
そして…全てを許せる、慈愛の心。
それらが具現化された、甘く…それでいて、少し酸味があって…コクのある匂い。
そんな匂いが、アンタからするのよ~♪」最上級のお菓子を目の前にしたかのように、唾を飲み込みながら話すシグーネ。
「な…なにそれ? ボクって…すごく臭いみたいじゃない。」「フフフ~♪ 大丈夫アタシだけに判る、素晴らしく…いい匂い。
それにしても、あ~ぁ…人間界に来てよかったわ~♪
ミオって言ったわね。
う~ん!! カワイイ。可愛すぎる~~~っ!!
もう…食べちゃいたいくらい最高だわ~っ♪」その目は、まるで獲物を狙う…捕食者の目と化していた。
「そう…貴女の匂い、味から身体の隅々まで。
全てを知りたいわ。」シグーネはそう言うとミオの身体を抱きしめ、その柔らかい唇に自らの唇を重ね合わせた。
深い…深い…シグーネの口づけ。
「う…ぐぐ…っ!?」ミオは、何がなんだかわからず混乱状態。
「ウフフ…、甘くて最高…。愛しているわよ♪」ゆっくりと唇を離し、耳元に息を吹きかけるシグーネ。
「はぁ…はぁ…はぁ…」息を切らし、初めての出来事で目を回す…ミオ。
「アナタの身体の事も詳しく知りたいわ。
ねぇ…イチゴのミルフィーユ、好きかしら?」頬を染め…潤んだ瞳で見つめながら、嬉しそうに問いかけるシグーネ。
「え…っ? うん、まぁ…大好きだけど?」頭の中が真っ白のまま、答えたミオだった。
午前2時 神楽家 ミオ寝室。『うーん…うーん…、やめてーっ、もう…食べないでー。
あ…でも、ちょっと気持ちいいかも…。
でも、やっぱ…食べないでー。』なんという凄まじい寝言だろうか?
いったいどんな夢を見ているのだろうか?
ベットの中で、悶え苦しむミオ。
そんなミオを見つめながら、なにやら…考え込んでいるニコ。
その時だ。
「状況はいかがですか…ニコ?」微かな声と共に、光の中から姿をみせる…天女族の女王。
「じょ…女王様、お久しぶりです!
すぐにミオも起こしますのでぇ!」ニコは、ミオを揺り起こそうとした。…が、
「そのまま寝かしておいてあげましょう。
それよりもニコ、今日は貴女に話があって参りました。」女王はそういって微笑んだが、すぐに厳しい表情となった。
「封印の効力がかなり落ちてきています。
数ヶ月…いや、早ければ十数日の間に、あの者が復活する恐れがあるでしょう。」「ついに…ついに、その時がぁ・・・」ニコの表情も険しくなっている。
「ミオの戦闘力は、どうですか?
あの者を封じ込められる状況でしょうか?」「魔力ランクから言えばぁ、まぁまぁですけどぉー。でも…まだ、光属性までは…」「そうですか。ならば尚更…彼女の眠りを覚ます必要がありますね。
ニコ…貴女と同じように、230年前…ミオを守りたい一心で、自らを凍結させ…永き眠りについた、あの戦士を・・・。」女王はそう言って、ニコを見つめた。
「彼女なら、ミオの大きな助けになると思いますぅ。」コックリとうなずくニコ。
「お願いしましたよ・・・ニコ。」翌朝「…ん? しばらく家を出る!?」意味が理解できず、思わず問い返した…ミオ。
「うん、まだ詳しい話はできないけどぉ、しばらくの間、この家…ミオの傍を離れる事になったのぉ。」寂しそうに返事を返す、ニコ。
「ちょっと待ってよ、昨日だって…あのシグーネっていう魔族にミルフィーユにされて、食べられちゃったし…、しかもアイツ、これからもボクを狙うって言っているし…。
今こそニコに傍にいてもらいたいのに~ぃ!!」半切れ状態のミオ。
「ごめん、どうしても行かなきゃいけないんだぁ。
それに、今度帰ってくるときは、凄く頼りになる仲間を連れてくるから♪」
そう言ってニッコリ笑う、ニコ。
「仲間・・・?」「うん、期待していて~ぇ。本当に強くて頼れる女性(ひと)だよぉ!!」この日よりニコは、ミオの許を離れ…神楽家を後にした。
それから一ヵ月後・・・・―ムスッ!―不機嫌そうに、膨れっ面で登校するミオ。
いつものように下足場で靴を履き替えていると…
「おっはよぉ~っ! ミ・オ・ちゃ・ん~♪」例のアノ声が聞こえる。
「おはよう、セイナさん。」ご機嫌斜めのまま、簡単に挨拶を返すミオ。
「アララ…、今日も不機嫌そうだね。」「当たり前でしょ!! あの…シグーネっていう魔族と出会ってから、ろくな事がない!」そう、シグーネはあの日以来、ずっと人間界に留まっている。
そして…ミオとは宿敵(ライバル)同士となり、幾度となく戦っているようだ。
もっとも、その結果は・・・
「あの日…セイナさんが帰った後、平面化…イチゴのミルフィーユにされたのが始まりで、
その後もステーキにされ…、ペロペロキャンディーにされ…、サンドウィッチにされ…、パイにされ…と、
4~5日に一度は弄ばれ、食べられているんだよっ!!」顔を真っ赤にし、激怒するミオ。
そうなのだ。
ミオはシグーネと戦うたびに敗北し、その都度…身体の状態を変化させられ、弄ばれたり、食材やお菓子にされ…食べられていたりしていた。
もちろん、再生能力の高い天女族。
身体の核さえ残って入れば、数時間から数日で完全再生、回復できる。
またシグーネも、より早く再生回復できるように、その都度…回復薬と時の魔法を使用しているようだ。
つまり、愛しているゆえに(?)、シグーネ自身には、本当の意味で…ミオに危害を加えようという気持ちは、一切無いようである。
あまりの事に、イマイチ状況を理解できないセイナ。
「でも・・・・
でも、ミオちゃん自身は、以前よりも…すごくいい顔しているよ。」唐突にセイナが、切り出した。
「いい…顔?」「うん、以前のミオちゃんって、なんか…真面目すぎるっていうか、なにもかも…一人で背負ってしまっているような、そんな感じが少ししていた。
でも、今のミオちゃんは、そういうのが取れて…逆に活き活きしているように見える♪」「なによ…それ? てことは…ボクはアイツに弄ばれて、逆に優越感を感じているというの!?」火に油を注いだ?
更に激怒の表情のミオ。
「そうは言わないけど、でも…私は今のミオちゃんの方が好きだなー♪」セイナはそう言って、ニッコリ微笑む。
「セイナさんにはわかんないよ、あの屈辱は・・・。
そう言えば、今日も新しい魔法を試したいからとか言って、挑発してきたけど。
今日こそは、アイツ…ぶっ倒してやるっ!!」そう言って、ミオは拳を握り締めた。
「うーん…、ねぇ…ミオちゃん。
その戦い、私もついて行ったらダメかな?」「セイナさんが、シグーネとの戦いに参加するの?」「うん、一応…治癒魔法も使えるし、どうかな~?」セイナの言葉に、考え込むミオ。
そして、セイナの言動…行動を入念に想像、シミュレーションする。
「かえって、悲惨な運命が待ち受けていそうな気がするので、遠慮しておきます。」つづく。なんてことは無い。これで終わりです(笑)
でも、この後の展開が気になる人は、こちらをクリック(爆)