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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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ターディグラダ・ガール  序章

「はい、県警110番です。事件ですか、事故ですか?」

「た……助けてっ! 化け物に追われて……、友達もさらわれて……!」
 インカムから、十代らしき若い女性の悲鳴にも似た声が流れた。
「緊急連絡。丘福市中央区薬陰にて、未確認生物らしきものに追われているとの通報あり。付近の警官は、至急現場へ直行してください!」
「おぃ、CCSへの連絡も忘れるな!?」同時に上司らしき人物の怒鳴り声も響き渡る。


「はぁ……、はぁ……、はぁ……」
 もう、息も途切れ途切れ。県立高校二年生の城島茜は、何度も何度も後ろを振り返りながら、狭い雑居ビルの間を通り抜けていた。
 なんとか人の多い所まで逃げ切れれば……!
 それだけを望みにビルの間を抜け出ると、そこは時間制駐車場に繋がっていた。金網のフェンスに設置された扉を潜り抜け、辺りに追っ手の気配がないことを確認すると、安心したようにその場に腰を落とし、大きく溜息をついた。
 再び握りしめたスマートフォンの画面を覗き込み、警察が来るのを、今か……今かと待ちわびる。時間はすでに午後10時を回っていた。
 友人、松本美南と共に予備校を出たのが、午後9時半。二人きりで人通りの少ない街道を歩いていると、突然……まるで力士のような巨体の生物に襲われたのだ。
 生物……? 人間では……無い? なぜなら、そいつはまるで豚のような顔つきをしており、その口には牙のような歯が並んでいた。

予告2

 手にした棍棒のようなものを振り回し、その一撃を喰らった美南は、その場に崩れるように倒れてしまった。
「いやぁぁぁぁっ!!」それを見た茜。友人の心配よりも恐怖が心を支配してしまい、泣き叫ぶようにその場を駈け出してしまったのだ。
 だが、恐怖はそこで終わらない。なんと、もう一匹の化け物が姿を見せ、そいつは同じように棍棒を振り上げ、茜の後を追ってきた。必死にスマホを取り出し110番したあと、逃げ回りながら今に至るのである。

 四方八方見渡しても、化け物が追ってきた気配が無い。「助かった……」そう思った瞬間。
 ガチャッ!ガチャッ! 金網が揺さぶられるような音が、耳に入る。
「グヘェヘェヘェヘェ……ッ、見ぃぃ~~つけた♪」
 野太い、下衆な声が頭上から聞こえた。恐る恐る見上げると、フェンスの天辺に先ほどの化け物がよじ登っていた。
「きぃゃゃ……」茜が悲鳴を上げるより速く、フェンスから飛び降りた化け物は、素早く回りこみ退路を閉ざす。
「い…いや、いや……」
 もう走る気力もなく、ただ恐怖心のみだけで後退していく茜。だが……。ガシャッ!! すぐ背後で鳴った金属音と、押し戻されるような感覚で、フェンスまで追い詰められたことを察しした。
 目の前の丸々と肥えた巨体は、棍棒を握ったまま両手を広げ、どうやっても逃げ場は無いよ!とアピールしているかのように見える。豚のような大きな鼻は、クンクンと茜の身体の匂いを嗅ぎ、更には素肌が露わになっている太腿や頬に舌を這わせ、「ちょっと塩っぱいけど、こりゃ……なかなかの味だぁ♪」と、目を細めた。
「もう……ダメ。」茜が全てを諦めた、その瞬間!!

 ヴィィィィィィィン!! ヴィぃィィィィン!! 

 駐車場の入り口から、甲高いエンジン音が鳴り響いた。
 何度も何度もアクセルを空吹かしし、高々とエンジン音を鳴り響かせるそれは、一台のオフロードタイプのオートバイ。
 車体の色は真っ白で、小さなカウルの付いたヘッドライトの両脇には、回転灯ではなく、方向指示器ほどの大きさの赤い点滅ライト。前輪の両脇には、サイレンを鳴らすためのスピーカーも取り付けられている。
 それは、全国でもあまり導入されていない、オフロードタイプの白バイであった。
 ヘッドライトの眩しい光が、茜と化け物を照らしだす。
 ヴィィィィィン!再びアクセルを吹かすと、白バイは二人に向かって真っ直ぐに突進し始めた。そして、二人のすぐ目の前まで迫ると、大きく前輪を上げウィリー走行! そのまま前輪で、化け物の頬を横殴りに薙ぎ払った!
 更に反転し、白バイに乗ったまま脚を伸ばし、丸々した図体に横蹴り!!
 かなりの威力があったのだろう。化け物は有無言う暇もなく、数メートル先まで吹っ飛んでいった。
 キィィッ! 白バイはその場に急停車すると、運転していたその人物はバイクを降り、茜に近寄ってきた。
 その姿は、白い硬質ラバースーツらしきもので身を固め、各関節部分は、黒色の柔らかいゴムのような物質で繋がっている。胸部には防弾チョッキとファンタジー風バストアーマーを掛けあわせたような防具を身につけ、頭部は戦隊ヒーローのようなヘルメットを装着していた。

ターディグラダ・ガール 登場

「警察です、怪我はありませんか?」その人物は、開口一番そう問いかけてきた。
「は……はい!」咄嗟に返事をする茜。
 女性の声……?返事をしながらも、茜の頭を過ぎったのは、その疑問だった。たしかにその人物は、茜より身長は高いが、それほど屈強な体つきではない。むしろ細めで、女性であれば納得できる体つきだ。
 その人物は静かに頷くとヘルメットの耳の辺りを操作し、「こちらTG01、現場に到着。通報者らしき少女を保護いたしました。」と話しだした。
 ああ、ヘルメットの中の通信機で連絡しているんだな? 茜にも、すぐに理解できた。
「はい、未確認生物は、まだ行動可能の模様。外見から、ファイルNo,4 オーク型と見受けられます」
「対策室……和(かのう)、了解。これまでの統計から、オーク型は極めて凶暴性高い。また、銃火器による攻撃が最も有効であるため、応戦する場合、M4カスタムの使用を許可する」
「了解しました。」TG01と名乗った人物はそう答えると、再びオートバイへ戻り、リアのサイドケースから拳銃らしきものを取り出し、その場で組み立て始めた。
 それは、M4カービンと呼ばれるアサルト・カービン銃のカスタムタイプ。
 簡単に説明すると、0.56弾を使用した自動小銃で、銃身にも擲弾式グレネードランチャーを装着。更に携帯しやすいように、銃身を短くするなどの改良を施している。要は近接戦闘用の軍用銃である。
 TG01が銃を組み立て構えたのと、オーク型と呼ばれる化け物が身構えたのは、殆ど同時であった。
「神田川県警です。大人しく投降しなさい、抵抗するならば撃ちます!」
 一片の怯えもない凛とした女性の声に対し、「オマエ……女……っ!? グヘェッ…グヘェッ! さっきの餌と一緒に、オマエも喰う!!」と、オークは悪びれもせずに、そう答えた。
「グヘェェェェェッ!!!」そして、地響きが起きそうな重く大きな雄叫びを上げると、棍棒を振りかざし猛突進。
 すかさずTG01は夜空に向けて一発二発と威嚇射撃をするが、オークはまるで怯まない。
 アッという間にTG01の間合いに入り込み、横薙ぎに棍棒を振り払った。だが、なんとTG01は、それを細い左腕一本で受け止める。更に驚くオークの土手っ腹を、至近距離から一発、二発と撃ちこんだ。
 たじろいで一瞬後退したオークだが、尚且つ牙を剥きだして、再び襲い掛かろうとする。しかし……
 ダダダダダッ!!! 
 セミオートで連射された銃弾がオークを襲う。オークは、ゆっくりとその場に倒れ伏せた。
 倒れたオークに近寄り、膝を落として生死を確認するTG01。その時・・・
「お巡りさん、危ないっっ!!」茜の叫び声が聞こえた。
 振り向くと同時に重い衝撃が頬を貫く。TG01は、そのまま数メートル先まで吹っ飛んでしまった。
 そこには、美南を小脇に抱えたまま棍棒を振り払った姿勢の、もう一匹のオークが立ちはだかっていた。
「二匹目……?」相手を確認しながらも、平衡感覚を失ったようにフラフラと立ち上がるTG01。
 新たに現れたオークは、足元に美南の身体を放り投げると、再び棍棒を振り上げTG01に襲いかかってきた。朦朧とした意識のまま、右腕を上げ棍棒を受け止めようとするTG01。
 ガツッッ!!
「し……しまった!?」棍棒を受け流したのはいいが、その衝撃で手にしていた唯一の武器、M4カスタムを弾き落とされてしまった。
 しかも、あろうことか、落としたM4カスタムをオークが拾いあげ、銃口をTG01に向けたのだ。
「グへェェェェッ! コレ、仲間を殺った……武器! オマエに、やり返す……!」
 勝利を確信したように、オークはニタリと笑うと、「死ネッ!!」と引き金を引いた。
 カチッ!カチッ!カチッ! だが、いくら引き金を引いても、一向に弾を撃つことができない。
「な……なんだ、コレ……壊れている!?」 
 ウンともスンとも言わない銃を、振り回したり、叩いたりしてなんとか作動させようとするオーク。
 実はこのM4カスタム。こういったように、敵に奪われた場合を想定して、使用登録者の手形センサーを備え付けている。つまり簡単に言えば、TG01の手とサイズが合わない者は、使用することが出来ないということだ。
「クソッタレ!!」諦めたオークは、銃を放り捨て再び棍棒を手に取ると、ブンブンと振り回して襲いかかってくる。あまりの執拗な攻撃に、なかなか銃を拾いにいく暇が無い。
「舐めないでよ! 銃が無くても倒す術くらいあるんだから!」
 そう呟いたか……どうかは不明だが、そう言わんばかりに体勢を立て直すと、「たぁーっ!」と掛け声を上げながら、大きくジャンプした。その高さ、約7メートル。とても生身の人間の跳躍力ではない。
 そのまま雑居ビルの壁面に着地するかのように足をつけると、ブーツの足首あたりに取り付けられている、ツマミのようなものを回した。爪先から足首にかけて、青白い火花が散りだす。
 三角跳びの要領で大きく壁面を蹴りだすと、オークに向かって跳び蹴りの体勢!!

「ガール・ライトニングゥゥゥッ・キィィィック!!」

 青白い電流を帯びた跳び蹴りが、オークの胸元に炸裂した!!
 蹴りの威力と電流の衝撃が交わり、まるでバネ人形のように、オークは吹き飛んでいく。
 勢い良く転がり続け、その身体が止まった頃にはプスプスと煙を燻らせながら、オークは完全に沈黙していた。
「ふぅ……っ」戦いが終わり、ふと溜息をつくTG01。そして、思い出したかのように美南の元へ駆け寄ると、脈を取り「良かった。気を失っているだけね」と生存を確認した。
 すると、戦いが終わるのを待っていたかのように多数のサイレンが鳴り響き、同時に大勢の警官が駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか!?」警官の問いにTG01は黙って頷くと、少女二人の身柄を警官に手渡す。
「あ…あの……、お巡りさん?」去り際に茜は振り返り、TG01に声を掛けた。「今日は本当にありがとうございました!」そう言って深々と頭を下げる。
「後日、親と一緒にお礼に伺いたいんですけど、良かったらお名前を教えてもらえますか?」
 茜の問いにTG01はしばらく考えこむように沈黙していたが、やがて静かに首を横に振った。
 その様子を見ていた警官が、ここぞとばかりに口を開く。「この人は、ターディグラダ・ガールって言うんだよ!!」
「ちょ……っ、ちょ……っ、それは言わなくて……」すると、今まで貝のように口を閉ざしていたTG01が、急に慌てふためいた。
「ター……、ターディ……?」
「う~~~ん、じゃあ……! 別名、クマムシ・ガールって言うんだよ♪」と訂正する警官。
「クマムシ……ガール……? なんか、可愛い~~~っ!!」そうはしゃぐ茜。
 だが、当のTG01は、ワナワナと肩を震わせ……
「クマムシ、言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 オークにも披露しなかった強烈な右ラリアットが、警官の胸に大ヒット!
 なんと、5メートル程……宙に浮いたその警官は、落下と同時にピクピクと痙攣し、その後……起き上がることは無かったとか、あったとか?
 我に返ったTG01は、大慌てで白バイに飛び乗ると、そのまま逃げるように去っていった。

| ターディグラダ・ガール | 17:05 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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