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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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マニトウスワイヤー 第十三章 闇の女神

「フェアウェイ・・・、しっかりしなさい!!」

 都は倒れているフェアウェイを抱え起こし、しきりに声を掛ける。
 その声が耳に届いたのか、フェアウェイがピクリと反応した。

 更に・・・

「バレン・・ティア・・・・」
 と、言葉を返した。

「どうやら無事のようですわね・・・」

 都は肩の荷を降ろしたように、ホッと溜息をついた。

「てんこぶ姫っ!! なんか・・おかしくない!?」
 安心する都とは裏腹に動揺した凛の叫び超えが聞こえる。

 凛の声に眉を潜めながら辺りを見回してみる。

「これは・・いったい!?」

 エノルメミエドは凛と都で倒したはず。フェアウェイは元に戻っている・・・。

 だが、すぐ目と鼻の先で、青い妖魔狩人と祢々は、エノルメミエドが召喚した精霊とまだ戦い続けたまま。

 バックスクリーンのモニターに映し出される光景は今も変わらず、邪悪な精霊が蠢き人々を襲い続け、街は火の海と化している。

 たしかに凛が驚くのも無理は無い。

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「まさか・・・?」

 驚きを隠せない二人。そんな二人の耳に・・・・


「ククク・・・ッ!」


 低く、不気味な笑い声が聞こえてきた。

 同時に、抱き起こされているフェアウェイの身体から、黒い靄のようなものが抜けだした。
 黒い靄は、まるで蛇のようにクネクネと蠢きながら空中を移動すると、焼き焦がれたアンナ・フォンの死体の上で停止する。

 すると、アンナ・フォンの口から気体のようで、また半液状のゼリー状の白い物体が浮き上がってきた。

「エクトプラズム・・・!?」

 先程エノルメミエドの支配下に置かれ、都に糸で拘束された金鵄が元の口調で答えてきた。

「金鵄、正気に戻ったの!?」
 凛が慌てて駆け寄る。

「うん、迷惑かけてすまなかった・・・。もう・・エノルメミエドの命令は僕には届いていない」
 金鵄はそう言って、コクリと頷いた。

「で、エクトプラズムって・・?」

「エクトプラズムとは、霊体と肉体の中間に位置する幽体を作る素材のようなもの。誰の身体にも備わっているものだ」

 そう言っている間に、アンナ・フォンの身体から抜き出したエクトプラズムを黒い靄はその中に取り込んでいった。
 すると、黒い靄は次第に、人間の様な形に変化していく。

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「サラマンダー、雪女郎・・。その力、その身体を余によこせ!!」

 人型になった黒い靄はハッキリとそう叫んだ。

 その言葉を聞いたサラマンダーと雪女郎は戦闘を中断し、黒い靄へ駆け寄る。

 二人の身体はそのまま黒い靄に取り込まれていった。

「どういうことだ・・・!?」
 戦いを中断された青い妖魔狩人も肩で息をしながら状況を見守る。

アンナ・フォンのエクトプラズム。サラマンダーと雪女郎の身体を取り込んだ黒い靄。

 中途半端に形成された人型は更に細部に渡って形成され、やがて一人の美しい女性の姿へと変貌した。

 それは、怪しく輝く・・長く真っ直ぐな髪。切れ長の目に、深い・・深い湖のように暗く蒼い瞳。長身で非の打ち所のない見事なプロポーション。

 日本の卑弥呼とエジプトのクレオパトラを足して割ったような、見るからに女王の威厳を持った雰囲気。

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「どうやら、アンナ・フォンと呼ばれる女のエクトプラズムをベースに他の二人の精霊を融合させ、一つの器となる肉体を形成し魂を取り憑かせたようだ・・・」

 凛に糸を解かれた金鵄は、ゆっくりと羽ばたきながらそう答えた。

「危ない所だった。せっかく手に入れた天女の身体だったが・・・。だが、肉体を切り捨てなければ魂までもが浄化されてしまうところだった・・・」

 先程以上に、重く冷たい言葉が新たな肉体から発せられる。

「一時的に新しい身体を形成したが、この肉体はそう長くは保たぬ。再び転生の儀式を施し、再度改めて天女の肉体に融合する日。それまでにまた・・・深き眠りにつき、幾年も魔力を貯めこまなくてはならない・・・。」

 沈んだ面影でそう語るエノルメミエド。

「それだけに、この度・・永遠の命を手に入れるチャンスを邪魔してくれた貴様らに天罰を与えてくれようぞ!」

 黒い、光を通さないオーラを纏わせ、エノルメミエドはゆっくりと左手を上げた。

 その先が祢々に向いた瞬間・・・!!
 螺旋状に舞う、無数の粉雪が祢々の身体を覆った。

「あぁぁぁっ!?」

 瞬時に氷漬けに固められた祢々。


「祢々・・っ!!」

 青い妖魔狩人が、直ぐ様治癒の術を使おうと右手を上げる。


 だが、その青い妖魔狩人にも粉雪の舞いが襲いかかる。
 なんと青い妖魔狩人も、そのまま凍らされてしまった。

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「気をつけろ・・凛! 雪女郎の時より、はるかにレベルの高い吹雪の術だ!!」
 金鵄の警告が響く!!

 狙い撃ちされぬよう大きく二手に分かれる凛と都。

 都はそのまま観客席に飛び入り、抱えていたフェアウェイを寝かしつけた。


「くらえっ!!」

 凛の弓から、青白い閃光・・霊光矢が放たれる!!

 エノルメミエドは慌てた様子もなく凛に向い吹雪を舞い起こすと、霊光矢を押し戻すように弾き返す。

 一方都は、そんなエノルメミエドの背後に廻っており、その背に鋭い爪を突き立てた!!


「な・・っ!?」


 突き立てた爪はエノルメミエドの身体に触れることなく、黒い靄によって取り押さえられている。

 黒い靄は強力なバネのように、そのまま都の身体を弾き飛ばした。
 激しくグラウンドに叩きつけられる都。

「なんですの・・・。あの黒い靄は・・・?」

「闇の障壁・・・・・」
 金鵄がポツリと呟く。

「闇の・・障壁・・・?」

「そうだ、青い妖魔狩人が言っていたよね。マニトウスワイヤーの属性は『闇』だと。その闇属性による強力な防御壁をヤツは身に纏っているんだ・・・」

 そう語る金鵄の表情は硬い。

「凛の属性は僕と同じ・・風(大気)。そして、てんこぶ姫の属性は、おそらく・・土(大地)のはずだ。だが、マニトウスワイヤーのような強い闇属性の持ち主だと、風・土・火・水による自然の四大属性では打ち破ることが難しいかもしれない」

 金鵄の悲痛の言葉に、凛の表情も更に硬くなる。

 そんな凛たちにお構いなく、エノルメミエドは追い打ちを掛けるよう攻撃を続ける。
 周り全てを焼きつくすような強力な炎の渦が、凛を・・・都に襲いかかる!!


「うあぁぁぁつ!!」


 いくら強力な防御力を誇る戦闘服を着ていても、それを上回る攻撃を受ければダメージは必至だ!

「くそっ!!」

 凛も霊光矢で必死に反撃を試みてみるが、炎や吹雪の術に阻まれてしまう。

 また、それらを潜り抜けても、闇の障壁によってエノルメミエドの本体に矢が届く事はなかった。

「凛の霊光矢が命中さえすれば、浄化して倒す事も可能かもしれない・・・。だが、あの闇の障壁は今の僕等には打ち破る術がない・・・・」

 今まで数々の助言で凛を支えてきた金鵄。しかし、その金鵄すら・・全てを諦めかけている。

 そして、凛や都にも長時間の戦いによる激しい疲労やダメージの色が、ハッキリ表れている。
 いや、むしろ立っている事自体が、奇跡なのかもしれない。

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「さすがに打つ手無しといったところかしら? こんな事なら素直に家でも帰って、ドレスでも縫っているんでしたわ」
 そんな状態なのに、相も変わらず都の軽口。

 くすっ・・♪

 凛は思わず吹き出してしまった。

「・・・?」

「ううん。てんこぶ姫って、あまりに人間っぽくて妖怪とは思えない」
 凛は、そう微笑みながら答えた。

「フッ・・! そう言う貴女こそあまりにお人好しすぎて、あの中国妖怪共が恐れをなしている・・妖魔狩人とは思えないですわ!」
 都もお返しとばかりに微笑みながら、そう答える。

「お人好し・・なのかな? でも・・・・」

「うん?」

「でも、諦めの悪い・・ひねくれた性格だと思うよ!」

 真面目な凛にしては珍しく黒い発言。
 その言葉に同調するように、不敵な笑みを浮かべる都。

「それは、わたくしもですわ!」

 その言葉を合図に、二人はエノルメミエドに向って再び駈け出した。

「てんこぶ姫! わたしの浄化の力で強引に障壁に穴を開けてみせる。だから貴方はその時を狙って一気に貫いて!!」
 そう叫びながら、凛は弓を構えた。

「心得ましたわ!」

 都は一層爪を鋭く尖らせる。


シュッッ!!


 風切音と共に霊光矢が放たれた。だが案の定・・それは闇の障壁に突き刺さるだけで、本体へは届かない。

 だが凛は更に霊光矢を形成すると、そのまま逆手に握りしめ大きく振りかぶる。

 そして障壁に突き刺さっている矢の筈を目掛けて、矢尻で押し込むように振りぬく・・・


 いや、振りぬこうとした瞬間・・・


バキッッッ!!


 逆に振りぬいたエノルメミエドの左腕が、凛の身体を弾き飛ばした!!


ガンッッッ!!


 勢い良くすっ飛び、フェンスに直撃する凛!
 フェンスは粉々に崩れ落ち、凛もグッタリとしたまま起き上がれない!


「黒い妖魔狩人!?」


 慌てて駆け寄ろうとする都をエノルメミエドは吹雪で遮る。

 そして右腕をあげ炎の渦を巻き上げると、狙いを凛に定めた。

「凛ーっ!!?」

 金鵄の悲痛な叫び声が響き渡る!



 その時・・・・


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「サンダー・・ブレイクーっ!!」




 真横一直線に飛び交う雷撃が、炎を纏うエノルメミエドの右腕を直撃した。

 その威力は激しく、一瞬で纏っていた炎すらも消し飛んでしまった。


「うむ・・? まだ他にも余に歯向かおうとする奴がいるのか・・・?」

 エノルメミエドは雷撃が飛んできた方角を睨みつける。


 その方角から一つの人影がゆっくりと歩み寄る。都も金鵄も呆然としたまま人影を見守る。

 人影はやがてグッタリと倒れている凛の側に寄ると、優しく右手を差し出した。


「だ・・・だれ・・・?」


 虚ろな目で見つめる凛。


 凛の目に映る・・その人物は。

 小柄で10代前半か半ばくらいの凛々しい顔立ちの少年・・・・?
 いや、胸にはチューブトップ。そして・・ミニスカートを履いている・・・。


「お・・女・・の子・・・?」


 凛がそう呟いた瞬間・・・



「遅れてごめんね! ボクの名は『神楽 巫緒』。


周りのみんなは・・『ミオ』って呼んでくれている」


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そう言って、ニッコリと微笑んだ。




 その頃、ドームスタジアム外の野外イベント場。

 次から次へと湧き出るように現れる地霊や死人に、優里は大苦戦を強いられていた。

 地霊や死人・・。いつもの優里なら『雑魚』と言っても過言ではない敵。

 だが、強敵・・サンダーバードとの戦いで体力も・・そして霊力も使い果たし、立っているのさえ苦しい状態で、当然・・・薙刀を振るえるような力なんか残っていない。

「凛ちゃん・・・、今行くわ・・待っていて・・・」

 それでも必死で立ち上がるのは、球場内の闇の力が更に増していったことを感じ取っていたから。
 その中心で凛が戦っていると思うと、とても居ても立ってもいられない。

 しかし、その気持とは裏腹に、足が一向に前に進まない。


「凛・・ちゃん・・・」


 そんな優里に十数匹の地霊が襲いかかる。

 必死で迎え撃とうとする優里・・・。だが、構えることすらままならない。


 その時・・・!?




「ロック・ダイビング!」


 何処からか呪文のような掛け声がかかったかと思うと、まるで豪雨のように無数の岩石が降り注いできた。
 降り注ぐ岩石に次々に押し潰される地霊や死人。


「こ・・これは・・・!?」


 驚く優里。そんな優里に・・



「そこの球場には、アンタにとって大切な子でもいるのかい?」



 背後から、張りのある力強い口調の言葉が・・・。

 それは、若草のような鮮やかな翠色の髪。艶やかな褐色の肌。誰もが羨むような、整ったプロポーション。

 しかし、尖った耳・・。金色に光る瞳・・・。口元から覗く牙のような歯・・。

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「あれは・・『魔族』の女性・・・!?」

 物陰で様子を見ていたセコは新たに現れた人物を見て、思いがけない言葉を呟いた。


「そんな死にかけの身体のくせに、それでも向かおうとするなんて。アンタにとってよっぽどその子は大切なんだろうね~♪」

 褐色の肌の女は、再び優里に問いかける。

「アタシにも、とっても美味し・・いや、大切な子がいてね! どうやら今回の事件の関係者の一人らしいんだけど」
 女性はそう言って、目を細めると・・

「そろそろ…その子が、アンタの大切な子がいる場所に辿り着いているはずだよ!」

「関係者・・・? 貴女はいったい・・・?」

 優里の問いに女は不敵な笑みを返した。


「アタシ・・? アタシは、ノーストル=シグーネ=アスタロト」











 ここ、スタジアム内の飲食店が並ぶ通路で、千佳が這いずりながらグラウンドに向って進んでいた。

 千佳も体力はまるで残っていない。
 それに付け加え、唯一の武器である灼熱爪の右手は完全に粉砕している。

「凛・・・今・・行くっちゃ・・・」

 それでもグラウンドから増強した邪悪な魔力を感じ取り、凛のために動かぬ身体を引きずっている。

 そんな千佳にも死人や骨だけとなったアンデットモンスターが襲いかかる。

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 必死で払いのけながら前へ進む千佳だが、当然・・その抵抗にも限界がある。
 あっと言う間に抑えこまれ、鋭い歯がその体に食い込もうとしていた。


「ウェポンアーム・・レーザーモード!!」


 その時、若い女性の声が響き渡ったかと思うと、行く束の赤い閃光が駆け巡った。

 赤い閃光は、千佳にのしかかっていた死人共を撃ち倒していく!!

 更に・・・

「ウェポンアーム・・ヒートソードモード!!」

 閃光のように走る人影が次々にアンデットを薙ぎ倒す。


「右手が・・銃になったり・・・、剣に・・なったり・・・?」

 九死に一生を得た千佳が見たものは、剣化した右腕でモンスターたちを切り払う・・紫色の髪をした若い女性。


「もう心配ありませんよーっ♪」

 突然、頭の上から・・甘い声が振りかけられる。

 驚いて見上げると、そこには一人の少女が立っていた。

 少女は十代半ば・・女子高校生くらいの年頃。
 水色の長く透き通るようなストレートヘアに、海のように綺麗な瞳。

 それは、優里に負けないくらいの美少女であった。

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「酷い怪我をしちゃってますねぇ。特に右手がぁ・・・!?」

 少女は千佳の身体を見て縦線が入るくらい顔をしかめる。

 そして、右手で優しくその身体に触れると、
「全ての水の源・・その身体を癒やし給え。ヒーリング!!」
 と呪文を唱えた。

 光り輝く霧が千佳の身体を覆うと、見る見るうちに傷が癒えていく。

「青い妖魔狩人のような・・治癒の術なんね?」

「私のは魔法ですけどね。あとぉ・・その右手ですけど、それって妖力で変化した手ですよねぇ?」

 少女の言葉に千佳は頷いた。

「なら、今すぐでは無理ですけど・・・、私と私の師である神官さんの二人でやれば、きっと治せると思います~ぅ!」

「マ・・・マジ・・ね・・!?」

「ハイ~っ♪」

 そう微笑む少女の笑顔は、それだけで癒されるような心地良い笑顔だった。

「アンタ、一体・・何者っちゃね!?」

「あ・・っ、申し遅れました。私は~、水無月 聖魚(セイナ)。そっちの人は・・黒祥 紫亜(シア)さんっていいます!」



「神楽・・・巫緒・・・・?」

「噂で聞いた、光属性の・・奇跡の天女・・?」

 その名を聞いて驚く都・・そして金鵄。


「貴女が、そのミオさん・・?」

 凛の問いに、ミオは凛の手を握り引き起こしてやると・・

「本当はもっと早くボクがフェアウェイを預かる予定だったんだけど、ボク等の方にも彼奴(アイツ)等の邪魔が入ってね。それで遅れてしまった。本当にごめん!」
 申し訳無さそうに微笑んだ。

「それにしてもキミは凄いね。いくら霊力が高いと言っても生身の普通の人間。なのに、ここまで頑張れるなんて! 初めて見たよ、キミのような凄い子!!
 そちらの妖怪さんも凄い方だね! ここまで人間に力を貸して戦ってくれるなんて!」

「フン・・、人間の為なんかではありませんわ。 ああいう輩が嫌いなだけですわ!」

「そっか♪」

 ミオは、少年のような屈託のない笑顔で返す。

 そして二人の前に出ると、今度は鋭い眼光でエノルメミエドを睨みつけ・・
「ヤツの属性は闇。その闇属性を破るには光属性が一番効果的・・。だから、ボクの光属性魔法で奴の障壁に風穴を開ける!」

 そう言って振り返り凛を見つめた。

「そうしたら、キミの浄化の技でトドメを刺して欲しい!」

 ミオの言葉に凛は強く頷く。

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「妖怪さん、援護をお願いっ!!」

 ミオはそう言って都に目で合図を送ると、エノルメミエド目掛けて駆け出していった。

 エノルメミエドの腕がミオを狙う。


シュッッ!!


 だが、同時に駆け出した都が糸を噴出し、その腕を縛り上げた。
 一瞬、身動きを封じられたエノルメミエド。

 その隙を逃さず・・

「ホーリー・ライトっ!!」

 ミオの腕から眩い光の魔法が放出された!

 七色に輝く光魔法はエノルメミエドを包む闇の障壁に直撃・・・!

「こ・・これは、光属性魔法・・・!?」

 驚くエノルメミエドをよそに、それ程大きくは無いがその障壁にポッカリと風穴を開ける事ができた!!

「今だ、凛っ!」
 金鵄の掛け声に合わせ凛が弦を離す!

 青白い閃光が一直線にエノルメミエドへ突き進む!


ズサッッ!!


 鈍い音と共に霊光矢は障壁を通りぬけ、エノルメミエドの胸のど真ん中に突き刺さった!!

「やった!」
 ミオが小さくガッツポーズを取る。

 突き刺さった傷口から、青白い粒子が徐々に・・徐々に、蝕むように広がっていく。

「バ・・バカな・・、余が・・浄化なんか・・・されるはずが・・無い・・・」

 苦し紛れの言葉か・・。
 いや、たしかにエノルメミエドを包む黒い魔力は霊光矢の刺さった傷を包囲し、浄化の進行を食い止めようとしているようにも見える。

「嘘だろう? 今まで矢が刺さった身体の一部をもぎ落として浄化を食い止めたヤツはいたけど、自身の魔力や妖力で、凛の浄化を止めた奴はいない・・」

 そのあまりの魔力の強さに、金鵄はただ・・ただ・・呆然としている。

「彼女(凛)の浄化の力よりマニトウスワイヤーの魔力の方が上回っているのか・・? 予想以上の魔力だね・・・」

 予想外の出来事に、さすがのミオも驚きを隠せない。


「だったら黒い妖魔狩人の霊力に、わたくし達が手助けをしてやればいいだけの事ですわ!」

 そう言って都は凛の背後にまわり、その肩を抱き抱えた。
 そしてそのまま右手から糸を噴出し、エノルメミエドに突き刺さっている矢に巻きつける。

「なぜだ・・? てんこぶ姫の糸が凛の霊光矢に触れても浄化されない・・?」

 夕時の戦いでは、都の妖力で形成されている蜘蛛の糸は凛の霊光矢に触れると消滅していたはず。
 一体、何がどうなっているのか? 

「今わたくしは自分の妖力の波長を、黒い妖魔狩人の霊力の波長に合わせていますの。だから糸が消えないのですわ・・・」
 不敵な笑みを浮かべる都。

 しかし、その身体からシュウ・・シュウ・・と蒸気のようなものが吹き出している。
 よく見ると・・都の肌の表面はグツグツと煮えたぎるように泡立っており、誰の目から見てもこのままでは焼き崩れるのは明らかだ。

「てんこぶ姫・・・、貴女・・?」

 都の異変を感じ取り、思わず声をあげる凛。

「妖怪が浄化の波長に妖力を合わせるなんて、それって自殺行為じゃないか! なんでそんな事を!?」
 ミオも驚いて問い返す。

「今はそんな事はどうでもいいのです! それよりも黒い妖魔狩人。 わたくしの身体と糸を使って、貴女の霊力をもっとアイツに送り込みなさい・・・。そうしなければアイツを倒す事はできません!」

 そう、都は凛の浄化の力で追撃できるように、自らの身体をパイプラインとしたのだ。
 当然そんなことをすれば、妖怪である都の身体もただでは済まない。


「てんこぶ姫・・・」

 唇を噛み締める凛。

 全ての思いを霊力に変えたかのように、青白い光が都の身体を……蜘蛛の糸を伝わって、エノルメミエドに突き進んでいく!!


「ぐわぁぁぁ!!」


 次々の送り込まれる凛の霊力。さすがのエノルメミエドも悲鳴を上げ始めた!

「くたばらん・・・、これくらいではくたばらんぞ・・!」
 それでも、必死の抵抗を続けるエノルメミエド。

「妖怪さん・・ごめん! ボクの力も使わせてもらうよ・・・」
 ミオはそう言って反対側から凛の肩を抱きしめた。

 すると、ミオの身体からも光属性の魔力が糸を伝わってエノルメミエドの身体に流れ込んでいく!


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 凛の浄化の霊力と、ミオの光属性の魔力・・。

 二つの闇と妖魔を消し去る力が重なりあって、ついにエノルメミエドの全身に亀裂が入る。
 亀裂はまるで蜘蛛の糸のように細かく全身に広がり・・・


「バカなぁぁぁぁっ! 余は・・余は・・・余わぁぁぁぁぁぁっ!!」


ギャァァァァァァァッ!!!!!!


 断末魔の叫びと共に、ついにエノルメミエドの身体は粉々に砕け散っていった。



エピローグへつづく・・・。

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もし・・・も・・




最終決戦で、

都が先に朽ち果ててしまったら?








 そう、都は凛の浄化の力で追撃できるように、自らの身体をパイプラインとしたのだ。
 当然そんなことをすれば、妖怪である都の身体もただでは済まない。

「てんこぶ姫・・・」
 唇を噛み締める凛。

全ての思いを霊力に変えたかのように、青白い光が都の身体を……蜘蛛の糸を伝わって、エノルメミエドに突き進んでいく!!

「妖怪さん・・ごめん! ボクの力も使わせてもらうよ・・・」
 ミオはそう言って反対側から凛の肩を抱きしめる。

 すると、ミオの身体からも光属性の魔力が糸を伝わって、エノルメミエドの身体に流れ込んでいく!

 凛の浄化の霊力とミオの光属性の魔力・・。

 それは、確実にエノルメミエドにダメージを与えていた・・・・。


 そして、それ以上に都にも・・・・。


「残念ですが、わたくしはもう・・・持ちこたえることができません・・・」
 言葉の通リ、ポロポロと焼き崩れていく都の身体。

「てんこぶ姫っ!?」

「ごきげんよ・・・・」


 とうとう・・灰だけを残し、都の身体は朽ち果ててしまった。

 パイプラインになっていた都が消えれば、当然エノルメミエドへの追撃も途絶えてしまう。

「そ・・そんな、あともう少しだったのに・・・」

「あと数十秒遅ければ、余の身体も消滅してしまうところだった・・・」
 生き延びたこの状況を冷静に認識するエノルメミエド。


「それにしても、やっかいな者たちだ。あの浄化の術を使う小娘もそうだが・・余の闇の力を打ち破れる光属性の天女・・・。まずはこいつか・・・」

 エノルメミエドは空高く浮かび上がると、神経を集中させ風の音に耳を傾けた。

「この街に住む風の精霊たち。あの天女と敵対しているものの名を上げよ・・・」
 エノルメミエドの問いに一筋の風が吹き通った。

「なるほど・・・」

 再びグランドに足を下ろすと、二言・・三言術を唱える。


 すると当然突風が吹き荒れ、中から複数の人影が・・・。



「な・・なんデスカ・・、ここは・・!?」

「なんか・・・えらく嫌な予感がしまっせ!?」

 一人は年端もいかない、小学低学年くらいの金髪少女。
 もう一人は長身オカッパ。だが・・全身金属風のまるでロボットのような身体。

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「プウーペ・・・!? カタワクオンナ!?」

 ミオが驚きの声を上げた!

「か・・神楽・・巫緒・・。なぜ貴女がここに!?」

 同様に驚きの声を上げるプウーペという名の金髪少女。

「プウーペ様・・、それより新入りのアイツが居てまへんで!?」

 カタワクオンナという金属体の女性が叫ぶと同時に、何者かがミオに襲いかかった!


 それは自動販売機のような物を背負った、同様の金属体の女性。

「し・・新入りっ!?」

「ジハンキオンナ・・、何を勝手に行動しているのデス!?」

 プウーペが呼び止めるがジハンキオンナは耳を貸さない。

 再び、ミオと凛に襲いかかる。

「ミオさん、この人達は敵なんですか!?」
 状況がさっぱり掴めていない凛に対し、

「たしかに敵は・・・敵なんだけど・・・」

「なぜ・・、言うことを聞かないのデス? ジハンキオンナ・・・?」
 オロオロと戸惑うプウーペの姿を見て

「どうやらこのツーレムも、マニトウスワイヤーに操られているんだ!」
 と呟いた。

 そんな中、攻撃をためらっている凛をエノルメミエドは見逃さない。

「まずは、黒い小娘から攻撃せよ!」
 エノルメミエドの命令に頷くジハンキオンナ。

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 背負っていた自動販売機を取り外すと、それを凛にスッポリと覆い被せた!

「な・・なんなの・・っ!?」

 自動販売機の中でジタバタと藻掻く凛。

 だが、それも次第に収まり静かになると、コトンっという音と共に取り出し口に小さな物体が落ちてきた。

 取り出し口に手を入れ、それをエノルメミエドに手渡す。

 なんと、それは・・・小さな紙パック飲料の姿となった凛であった!!?


「り・・凛が・・ジュースに!?」

 呆然とする金鵄。

「若三毛さんっ!?」

 凛を取り戻そうとジハンキオンナに背を向けたミオ。

 そんなミオに背後から自動販売機を覆い被せる!!


「し・・しまったぁぁっ!!」

 バタバタ・・藻掻きまわるミオであったが、凛同様・・やがて静かになり。


コトンっ!!


 やはり、紙パック飲料姿となったミオが取り出し口に落ちてきた。

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「霊力少女の生ジュースか・・・。どれどれ、どんなものかの?」

 エノルメミエドは付属のストローを取り出し、


プスッ!


 凛の頭部にある挿入孔に突き刺した。


ズズズッ・・・


「あ・・いや・・・」

 吐息のような喘ぎ声を漏らす凛。

 ストローから流れる爽やかな喉ごし。

「ほぅ・・・? 野草のような土臭さと苦味も若干あるが、ほのかな甘味と酸味。これは今まで味わったことのない美味さじゃ!」
 頬を赤らめ少女の味を堪能するエノルメミエド。


 ちょうどその時・・・


「ミオジュース!? いいじゃない~っ、それ!!」

「いいわけないだろ!?」

 ボケとツッコミ口調で登場したのは、褐色の肌・・・金色の瞳を爛々と輝かせるシグーネと、眉間に皺をよせ・・そんなシグーネを睨みつける紫色の髪をしたシア。
 そして、オマケのように着いて来た・・セイナの三人。

 ちなみに優里と千佳の二人はあまりに傷が深く、特に優里に至っては霊力も底をつき、霊装も解け立つことすらままならない。
 そのため、水無月家のメイド軍団が二人を看護している。

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「また、新たな虫ケラか・・・? 何し来た?」

 飲みかけの凛ジュースと手付かずのミオジュースを両手に、エノルメミエドは不機嫌そうな面影を見せる。

「決っているだろう・・。貴様を倒し、ミオ様とこの世を救う」
 シアはそう言いながらベルトのポケットから小さなカードを取り出し、右腕のカードリーダーに装着する。

「やれ・・」

 静かに指示を出すエノルメミエド。それに応えるようにシアに飛びかかるジハンキオンナ。


「だ・・だめデス! 戻りなさい・・ジハンキオンナ!!」
 プウーペが必死に止めに入ろうとする。

「あかん・・プウーペ様~~っ!!」

「ヒートソードモード・・・、ヒートファング!!」
 高熱の剣を突き出し、勢い良く突進するシア!


バキッッッッ!!


 金属が砕け散る音と共に、バラバラになった・・ジハンキオンナが宙に舞う。


「あ・・ああ・・・」

 止めに入ろうとしたプウーペの前に、その残骸が散らばり落ちた。

 そのうちの一つ・・・ジハンキオンナの頭部がプウーペの前に転がりこむ。
 その頭部を抱きしめ・・・

「ジハンキ・・・オンナ・・・」
 頬から一滴の雫が滴り落る。 

「プウーペ様・・・」
 言葉を詰まらせるカタワクオンナ。

「あ・・っ!? プウーペ様? なんで、泣いてはるん?」

 プウーペに抱きしめられたまま、キョロキョロと眼を動かすジハンキオンナ。
「てか・・・、あたし・・なんでバラバラなん!?」

「そや、ウチら・・ツーレムは、プウーペ様から魔力を分け与えてもらって命を得てる! せやから、魔力が少しでも残っていれば、まだ死なずにすむんや!」

 どうやらバラバラにはなったものの、そのお陰でエノルメミエドの呪縛も解けたようだ。

 そんなジハンキオンナをプウーペは優しく微笑み・・・

「おかえりデス、ジハンキオンナ」



 「ふん、とんだ茶番だ・・」
 そんな様子を冷ややかに見つめるエノルメミエド。

「貴様に、奴らを蔑む資格はない・・・」
 ヒートソードを向けたシアはエノルメミエドをそう窘めた。

 そして再び腕を引き突進の構えをとると・・・

「喰らえっ! ヒートファング!!」
 真っ赤な閃光が、突撃する!


ズボッッ!!


 エノルメミエドに突き刺さったはずのヒートソード。
 だが、それは闇の靄に包まれ、本体には届いていなかった。

「魔法とも・・霊力とも、神通力とも違う。全く初めて見る武器だ・・・。だが、それでも余には通用しない」

 エノルメミエドがそう呟いた瞬間、闇の靄はトランポリンのようにシアと弾き飛ばした。


ガンッッッ!!


 フェンスに激突するシア。

「く・・くそ・・」
 必死に起き上がり別のカードをリーダーに差し替える。

「ヒートバルカン・・モード・・・」


「やめとけ・・・・」

 重い一言がシアを制した。

「アンタの武器じゃ、アイツは倒せないよ」


 それは、今まで何も言わず戦況を眺めていたシグーネ。

「アンタの手にある・・ミオジュース。それを置いて行くなら見逃してやるよ」

 不敵な笑みを浮かべながら、ゆっくりとエノルメミエドに向かっていく。

r-vs-m_1418.jpg

「魔界の住人・・・? なぜそんな者が人間の味方を?」

「勘違いしないで。アタシは誰の味方でもない。アタシはアタシの好きな事の為だけに動くの。さぁ、どうする?」

「くだらない。余は神の一族・・・そして精霊の支配者。戯言を聞くほど暇ではない」

 そんな二人のやり取りを見ていた金鵄。同じく何もできず見ているだけのセイナに声を掛ける。

「あの魔族の女性(ひと)の属性は・・・?」

「シグーネさん? えっ・・と、好んで使うのは土属性だったけどぉ、でも・・いちおぅ四大元素属性魔法全て使えるみたいです~ぅ」

「ダメだ! エノルメミエドは闇属性・・。四大元素属性では太刀打ちできな・・・」


 金鵄がそう言っていた矢先、信じられない出来事が目に映った!
 それはシグーネの突風魔法が、エノルメミエドの闇の靄を全て吹き飛ばしていたこと。


「バ・・バカな・・!? 余の闇の靄が・・風魔法なんかに・・・?」

「たしかに近いレベル同士なら、四大元素魔法は闇属性に対して圧倒的に不利だわ。でも・・・」
 シグーネの口から鋭い牙のような歯が見える。

「ケタ違いのレベル差があるなら、それこそ・・そんな事は戯言でしかないのよ♪」

「き・・貴様は・・いったい? ただの・・魔族ではないのか・・?」

「アタシ・・?」

 エノルメミエドの問いにシグーネは更に上から目線になると・・

「アタシは作者さえ挫折しなければ・・・、作中で『真の正体』『真の目的』が明らかにされるはずだった・・・、最強の登場人物だったのよ!!」


「とんでも無いことぶっちゃけたよ!あの女性(ひと)!!」


 思わずツッコむ金鵄!

「魔王クラスの力、もっと見せようか?」
 そんなシグーネの言葉を、思いもよらないほど真剣な表情で聞くエノルメミエド。

「わかった・・・。余もこの特別企画作品では最凶最悪の敵。 ここで貴様と戦って敗れては、せっかくのイメージが壊れてしまう・・」

 そう言って手にした二つのジュースを地に置くと・・

「ここは静かに身を引くとしよう」


「なんか・・妖魔狩人の世界観。ぶち壊しの展開に進めたよ・・あの二人!?」





 エノルメミエドが消え去ったあと、どう・・収集をつけていいのか分からない空気だけが残ったグランド。

「でもミオちゃんも取り返せたし、妖魔狩人の女の子もまだ中身のジュースが残っているから、私と神官の二人で治癒すれば元に戻ると思います~ぅ!」
 セイナの言葉に金鵄も安堵の溜息をつく。

「そうそう~結果オーライよ!」
 シグーネは他人ごとのように笑い飛ばしながら、ジュース化したミオを手に取ると・・・

「それじゃ・・待望のミオジュース、頂くとするわ~♪」
と、涎を垂らした。

「ちょっと待てっ!! 貴様、ミオ様を飲むことは許さんぞ!」
 当然のことながらシアがその手を掴む。

「うるさいわね。アンタはしばらくの間おとなしくしてなさいよ!」
 シグーネはそう言って、シアに魔法を掛けた。

 その瞬間、シアの動きがピタリと止まる!

 それは一定時間、掛けられた者の時間の流れが、1/10000になるという・・シグーネの奥の手である時間魔法。


 邪魔者がいなくなると、紙パック(ミオ)にストローを突き刺しクンクンと香りを楽しむ。

― ま…待てっ、バカ…シグーネ・・! ボ・・ボクを飲むな!!―

 そんなミオの心の叫びが届いているのか・・いないのか?
 ストローを咥え、ゆっくりその中身を口の中に吸い込んだ。

 鳥肌が立つような快感が全身を走る!!

「甘くて・・酸っぱくて、それでいてコクがあって・・・。あぁ~~っ、言葉では表せない美味しさだわぁ~~っ!!」
 歓喜の声を上げるシグーネ。

「おぃ! 君たちは平然と仲間を飲むのか!!?」
 突っ込まずにはいられない金鵄。

「ミオちゃんは天女族だから、細胞の核さえ残っていれば何度でも再生できるの。だから、いつもシグーネさんに食べられているんです~ぅ(笑)」

「食べられているんです~ぅ(笑)・・・じゃないだろ!!? どんな日常を送ってるんだ!?」

「・・んと、敵と戦って・・ミオちゃんが食べ物にされて。それをシグーネさんが食べて・・。復活したら、また敵と戦ってぇ~っ。でまた食べ物にされてぇ~~・・・」

「異常だよ! しょっちゅう仲間が食べられているなんて、異常な世界だよ!」
 思わず興奮せずにはいられない金鵄。


「んっ!? なんか・・騒がしいっちゃね? もうボスは倒したとね?」

 応急手当が済んだ千佳がフラリとグランドに姿を現した。

 そんな千佳の足元に、ストローが刺さったままの一本の紙パック飲料が。
 思わず手に取り容器を見つめる。


― 千佳・・たすけて・・! ―


 必死に千佳に助けを求める凛。
 だが一本のジュースとなった今、その声は千佳に届かない。


「なんか、凛みたいなデザインのジュースっちゃね!?」
 凛大好きの千佳にしてみれば、当然興味は唆られる。

 ストローを通して中身の香りを嗅ぐ。
「あ・・・凛の匂い・・・♪」

 それは、まさしくフェロモン! 
 今、千佳の脳内ではひと嗅ぎ300m走れるほどのアドレナリンが駆け巡っている。


ズズズ・・・ッ


― ダメ・・千佳、飲んじゃ・・ダメ・・! ―


 冷やりとした、柔らかい液体が喉を通る!

「うま~~っ♪ ちょっと土臭くて麦茶を牛乳で割ったような味だけど、でも・・・ゾクゾクする美味しさやん!!」

 麦茶を牛乳で割った味なんて想像もしたくないが、だが千佳にとって凛の身体を想像させるものであれば、たとえそれが生ごみであっても、三星レストラン以上の豪華料理になる。

「凛や・・。まさしくこの味・・この香りは、凛・・そのものっちゃ!!」
 喜びのあまり、アッと言う間にジュース(凛)を飲み干してしまった千佳。

r-vs-m_1419.jpg

 そして、いつ気づいたのか?
 金鵄はそんな千佳を、青ざめた顔で表情で見つめていた。


「こっちの世界も異常だ・・・・」













 収集つかない状態で、おわり

| 妖魔狩人若三毛凛VSてんこぶ姫 | 21:06 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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