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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第16話「昔のゲーセンって凄いよね -前編-」

 柚子中学校の生徒赤ん坊化事件は、妖怪獏によって一部を覗いた殆どの者が、その記憶をすっかり食いつくされていた。
 あの日、なぜ警察や消防署まで出動したのか、誰も覚えていない。
 
 話は少し飛ぶが、柚子駅から徒歩五分程に、柚子村商店街がある。
 かなり古くから立ち並ぶ商店街だが、最近では郊外に大型量販スーパーが完成し、客足はすっかりそちらに流れ、今では一部の年配者が通うだけの寂れた町並みになってしまった。
 そんなある夜、ムッシュ怨獣鬼はその商店街を彷徨っていた。
 まだ宵の口だというのに、不思議なくらい物音や光の無い空間。
 すっかり時代から取り残され、亡霊のように佇む町並み。
「この柚子村というのは、平成という時間軸にある、落とし穴のような空間であるな」
 哲学ぶった言葉を並べるムッシュ。
 なぜなら彼は『酔っている』のだ。
 珍しく丘福市まで足を伸ばし、都会の美女を数人・・・カクテルにして飲み干してきたのだ。
「久しぶりに、優雅な気分を味わったものだ」
 人間のフリをしてJRに乗り込み、今先程・・・駅から降り、今ここにいるのである。
 元々褐色の肌を更に赤くし、千鳥足で商店街を彷徨う。
「うむ・・・? なにやら…念のようなものを感じる」
 それは商店街をくぐり抜けた先から感じられる。
 フラフラと足を運ばせるムッシュ。
「うむ、念はここから感じ取れるな・・・」
 そこには、古ぼけた平屋のような建物があった。
 元々、店舗だったかのように、表側はシャッターを下ろしてある。
 強引にぶち破れば入れないことはないが、あまり激しい物音をたてるのは、好みではない。 
 シャッターの上には、大きな看板が掛けてあったが、今はそんな事はどうでもいい。
 裏からでも入れないか? そう思い裏口へ回ってみた。
 裏口にも施錠してあるが、シャッターをぶち破るよりは簡単で静かだ。
 ムッシュは取っ手を掴むと、強引に捩じ切るように回し、扉を開けた。
 中に入ると、そこは外以上に暗闇の空間。
 もっとも、闇の世界で生きるムッシュにとって、むしろ心地よい明るさだ。
 内部をゆっくり歩いてみる。 ムッシュにとっては見たことの無い機器が並んでいた。
「ん・・・?」
 一台の機器の前で足を止める。 なんとも言えない、気のようなものを感じ取れた。
「お前さんか・・・。 うむ、悪くない・・・!」
 そう呟くと、自らの指を切りつけ、滴る血を機器に擦り付けた。


 それから数日が経ち、柚子中学校も夏休みに入っていた。
「うわっ、田中電器店…って、もしかして個人商店ってやつ!? 小さいお店!」
「こっちなんか…もっと凄いよ! 八百屋さんっていうの!? 初めて見た~っ!」
 カンカンと照らす日差しの中、商店街の中を制服を着た五人の女子生徒らしき少女たちが、まるで動物園にでも来たかのように、はしゃぎながら歩いていた。
 制服は白地のブラウスに大きめの襟にネクタイ。そしてプリーツスカート。
 襟とネクタイ、スカートは、水色地に白のチェック柄に統一されている。
 爽やかで都会的は雰囲気を持つこの制服は、やはり柚子村内の学校ではない。
 神田川県内でも、一二を争う高い偏差値を誇る、私立來愛(くるめ)女子大学附属高等学校の制服である。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第16話(1)

 この学校の天文学部は、夜空が澄んでいて綺麗だという理由で、毎年夏休み柚子村で一週間程の合宿を行っている。
 生徒達は、夜の天体観測の合間に食べるお菓子や、その後行う花火などを買い出しに、商店街へ来ていたのだ。
 今の十代はスーパーやコンビニでしか、こういった買い物をしたことが無い。そのため、個人商店が並ぶ商店街など、動物園や水族館に生息する希少生物と殆ど代わりがないのだ。
 彼女たちは買い物を殆ど終え、物珍しげに辺りを見まわっていた。
「そう言えば、瀬織(せおり)の姿が見当たらないけど・・・?」
「瀬織なら、他に寄る所があるから、後から来るって!」
「あ…そう!」
「ねぇ、アレ・・・何かな!?」
 一人が商店街から外れにある、古ぼけた平屋の建物を指さした。
 正面のガラス張りの上に、大きな看板が見える。
「ゲー・・・ム・・セ・・ンター・・・」
「ゲームセンターっ! ゲーセン!!?」
「こんな田舎でもゲーセンがあるの!?」
「行ってみよう!!」
 新たな獲物を発見した狩人のように、女子高生たちは一目散に走っていった。
 建物の前面は総ガラス張りで、見たことの無いようなゲームのポスターが貼りまくってある。
 よく見ると、そのうちの一箇所は引き戸になっており、どうやらここが入り口らしい。
 ガラガラ~と引き戸を開け、中に入る五人の女子高生たち。
 店内は極普通の蛍光灯で照らされており、暗くはないが、これといった綺羅びやかさも無い。
 十数台の筐体などが並んでおり、それぞれ独特のBGMらしきものが流れていることから、可動しているのはわかる。
 だが、人の気配はまるで無い。
「誰もいないのかな?」
「でも、機械は動いているんだから、やっていいんじゃない?」
「ねぇ、プリクラどこ!?」
 探索するように、それぞれ店内を廻る。
「プリクラどころか、見たことのないゲームばかり・・・」
「てか、これ・・・全部、昔の機械じゃないの?」
 彼女たちが言うとおり、店内にある筐体は、どうみても最近のものでは無い。
 昭和・・・・、それも1970年代に流行った筐体ばかりであった。
 もちろん彼女たちには、そこまでの知識はないが。

「ハン・・ティング・・・ゲーム・・? モンハンみたいなゲームかな!?」
 一人の女子高生、宮本 伊世(いよ)が、一台のゲーム筐体の前で、もの珍しげに説明書きを読んでいた。
「一回10円だって! やってみよっ!!」
 まるで見たことのないゲームで、しかも料金が安いことから、伊世は早速プレイを開始した。
 ハンティングゲーム。 
 筐体のデザインは、ライフル銃が備え付けられた、今でもよく見る狙撃(シューティング)ゲームぽい。
 銃を構え正面を眺めると、そこにはテレビモニターなどあるわけもなく、すっぽりと薄暗い空間があり、よく見ると両端からレールのような物を渡らせてある。
 ライトアップされたレールの上を、左右から交互にベニヤ版から切り抜かれた動物の絵札が移動してくる。
 引き金を引くと、銃(の下)から電光が走って行き、電光の直線上に動物の絵札があれば、命中というわけである。
 命中すると、動物の泣き声らしき音と赤く点滅で記される。
 今の時代なら、小学生でも作れそうなアナログな仕掛けだが、当時の子どもは結構ハマっていたようだ。
 伊世は命中するたびに、キャッ♪ キャッ♪ …とはしゃぎながらゲームを楽しむ。
 すると、奥の方に二つ並ぶ赤い光が現れた。 
 それはまるで赤く光る『目』に睨まれているようにも見える。
「なんだろう?」
 そう思った瞬間、伊世の目の前が真っ白になった。
「きゃ・・・」
「ん……!?」
 女子高生の一人、千葉 操(みさお)は伊世の声に振り向いたが、そこには伊世の姿は無く、ただクリアされていないBGMだけが、鳴り響いていた。
「??????」
 不信に思った操は、ハンティングゲームに歩み寄る。
― 今の今まで、ここに伊世が居たよね・・・?―
 操は銃を構え、ライトアップされたレールの上を覗く。
 普通に動物の絵が左右に移動している。
「ふむ・・・・」
 何気なく、引き金を引く操。
 動物の悲鳴音と赤い光が点滅する。
 すると、絵で描かれた動物が一瞬で本物の動物並みに大きくなり、操に襲いかかった。
「あ……!?」
 声も上げる間も無く、操はゲーム機の中に引き摺り込まれていった。

「ねぇねぇ・・・見てっ! ドライブゲームだって! しょぼくない!?」
 こちらでは藤井 千鶴(ちづる)、杉本 七瀬(ななせ)。
 二人の女子高生が別の筐体の前にいた。
 ドライブゲームと銘打たれた筐体は、奥行きの深い筐体で、上面はガラス張りになっている。
 ガラス面から中を覗くと、ベルトコンベアに描かれた道があり、その上に玩具のオープンカーが乗っていた。
 オープンカーの後部には一本の棒が取り付けられており、その棒が筐体前面にあるハンドルに繋がっていて、ハンドルを回すことで車が左右に動く仕組みになっている。
「どのくらいショボイか? やってみようよ~♪」
 そう言って七瀬が硬貨を入れた。
 BGMが流れだすと同時に、ベルトコンベアも動き出す。
 要は道なりに車を左右に動かして、いかにもドライブしている気分を味わうゲームであるが、道からはみ出したり、途中ある障害物や川(絵で描いてあるだけ)に当たると、車がグルグル回転し、事故を起こしたという設定のようだ。
 最終的には時間内にどれだけの距離を進んだかで、点数が決められる。
 七瀬はBGMを鼻歌で合わせながら、右に左に、匠にハンドルを操っている。
 そばで見ている千鶴も「右~右~っ!」「左~左~!」「あっ、左に池がある! 避けてっ!!」と、一緒になってはしゃいでいる。
「任せなさい! Driveclubで鍛えた七瀬には、こんなレトロゲーム・・・。ベビーカーを押すより簡単よ!!」
 七瀬も得意満面の笑みで、ハンドルを回す。
 しばらくすると、ベルトコンベアに描かれた道が真っ赤になり、その質感はまるで動物の舌の上のようである。
「なにこれ!? こんなルートもあるの?」
「…て言うか、コレ・・・ずっと回転し続ける一本のベルトコンベアよね? いつの間に入れ替わったの?」
 さすがに薄気味悪くなってきた、七瀬と千鶴の二人。
 そう思った瞬間!!
 車の目の前に、怪物のような巨大な頭が姿を見せた!
 そしてソレは、大きな口を広げると、車だけでなく・・・ハンドルを握っていた七瀬。そして、その隣にいた千鶴まで一瞬で飲み込んだ!
「ん・・・?」
 最後の一人、松井 若菜(わかな)が気づいた時には、軽妙なBGMだけが流れており、七瀬と千鶴の姿は見当たらなかった。

 若菜はクレーンゲームの前にいた。
 クレーンゲームは今の時代のゲームセンターにも設置されているが、今とは構造も景品も違う。
 現代のタイプは、80年代から登場した『UFOキャッチャー』と呼ばれる、空飛ぶ円盤の下部に、二本もしくは三本の爪がついており、前後左右に移動させ、縫いぐるみやカプセルに入った景品を掴んで取るものが派生したものだ。
 しかし、当時のクレーンゲームは、ガラス張りの円筒の中で、それこそ重機のクレーン機のような腕が回転し、吊り下がった『クラムシェル』と呼ばれる二枚貝のように開閉するバケットで、底に並べてあるラムネ菓子(四~五錠をセロハンに包んだもの)を掬うものである。
 正直、技術よりも運に左右されるようなゲームである。
 若菜は話の種に程度の軽い気持ちで、硬貨を投入した。
 ガクガクと震えながらクレーンが移動し、ゆっくりと降下するバケットでラムネ菓子を拾う。
 運良く? 二包のラムネ菓子がポケットに落ちてきた。
「ま、10円だから・・・こんなものか!」
 苦笑いしながら、包を開けラムネを口に放り込む。
 甘酸っぱい香りが、口の中に広がった。
「そう言えば、ここに入っているお菓子まで、昭和のままって事は無いよね?」
 ちょっと怖い想像をしながら、残りのラムネも口に放り込んだ。
 その時・・・
ガタン!
 店舗が軽く振動する程度の音が鳴り響いた。
 更に、ガチャガチャと鎖がこすれ合うような音が聞こえる。
「なにかしら?」
 辺りを見渡しても、鎖らしきものが動いている様子は無い。
ガチャ…ガチャ…
 しかし、明らかに鎖がこすれ合う音が響く。
「ま……まさか……!?」
 若菜は頭上を見上げた。
 そこには、まるで恐竜が大口を開けたように、クラムシェルのバケットが開いていた。
 数分後、クレーンゲーム機の中に、水色地に白のチェック柄のセロハンに包まれた、肌色のラムネ菓子が一つ、転がっていた。


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 今回もかなり長めになっております。ww
引き続き、下のスレ「中編」を御覧ください。

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 14:59 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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