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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第13話「妖怪食品工場 -中編-」

 時刻は過ぎ、制服姿のまま志津香駅で待ち合わせた凛と優里。
 ローカル線に乗り換え、牛味駅へ着いた頃は夕方五時を回っていた。
 ネットで調べた住所を頼りにタクシーで工場に辿り着いた。
 柚子村みたいに山々に囲まれ、殆ど民家も見当たらず、広い土地の中にポツリポツリとある、工場や倉庫の一つ。
 神田川第一工場・・・・
 門には社名の下にそう書かれてあった。
 営業休止になったと聞いていたが、間違いないだろう。
 駐車場や荷受場所には、車やトラックが一台も停まっていない。
 工場を見渡しても、シャッターは全て閉ざされており、灯りの一つも見当たらない。
 凛と優里は互いに頷くと、門の中へ足を踏み入れようとした。
 そこへ・・・
「あなた達……中学生? それとも高校生……?」
 と背後から声を掛けられた。
 振り返ると、40半ばくらいの肉付きのいい中年女性が立っていた。
「私達は柚子村にある、青葉メイトという……小学、中学、高校生によって結成された、県の社会事業を観察していく集まりなんです。今日はこの付近で工場見学ができる場所を調べにやって来ました」
 優里が笑顔で素早く答える。
 もちろん、全て『嘘』である!
 だが、あまりの頭の回転の早さに、凛は呆然と見つめるだけであった。
「まぁ、そうなの! でも……ここは止めたほうがいいわよ。この工場は一ヶ月前から営業が止まっているし、なにより・・・」
「……?」
「ここだけの話・・・!」
「はい……?」
「ここ最近、この付近……行方不明者が続出しているんだって!」
「行方不明者……?」
「もしかしたら、この辺で怪しい新興宗教団体でもいて、拉致でもしているのかもよ!?」
「こ…怖いですね……」
 中年女性はそう言うと、手にしたハンドバックから何やら取り出し
「はい、飴ちゃんあげるから、それを食べて帰った方がいいわよ!」
と、二人に1つずつキャンディーを手渡した。
 中年女性は言うだけ言うと、何事も無かったように立ち去っていった。

 ガチャッ!!
 不思議な事に、周りのシャッタ―は全て閉ざされているのに、玄関の鍵は閉じていない。
 ゆっくり扉を開け、玄関に足を踏み入れる。
 電気は止められているのか?
 当然、全ての照明機器は作動していないため、工場内は1~2m先すらよく見えない程の暗がりになっている。
「優里お姉さん……、あまりよくない気を感じます……」
「うん、凛ちゃん程で無いけど、私にもなんとなくわかる……」
 玄関から入ると、すぐ正面に二階へ上がる階段と、その脇を通る小さな廊下がある。
「どっちから行く?」
 優里が声を掛けた瞬間・・・・
ゴトッ!!
 上の方から物音が聞こえた。
 慌てて凛の顔を見て確かめる。どうやら凛にも聞こえたようだ。
「二階・・・?」
 二人はゆっくりと階段を登っていった。
 階段を登り二階へ上がると、すぐ脇に営業事務室の扉があった。
 優里が扉をゆっくり開け、中を覗きこむ。
 殆ど暗闇状態で、まるで中の様子がつかめない。
 しっかり手を繋ぎ、恐る恐る事務室の中へ入っていく。
「誰だっ!?」
 ギクッ!!!
 部屋の奥から、人の声が聞こえた?
「誰だ、何故…勝手に入り込んでいる?」
 間違いない、人の声だ。
 暗闇に目を凝らし、部屋の奥を見つめる。
 どうやら一人の男が近づいてくるようだ。
 ほんの目と鼻の先まで近寄ってこらえ、やっと中年男性だとわかる。
 角刈りのような頭に、無精髭。
 さほど身長は高くないが、中肉中背で極普通の中年男性。
「俺はここの工場長、お前ら…中学生か?」
 怪訝そうな目で二人を見渡す工場長。
 すかさず優里が、中年女性を対応した時と同じように返す。
「申し訳ありません、私達は柚子村にある・・・(以下、略…)」
「ふ~ん……、工場見学ねぇ~。見ての通り、この工場はしまえているよ」
 工場長はお手上げといった仕草。
「そのようですね、私達の勘違いでした。ここで失礼いたします・・・」
 そう言って優里が背を向けたその時・・・
「でも、お嬢ちゃん達なら……食品加工の現場を見せてやってもいいよぉ~♪」
 口調が違う!
「優里お姉さん、不味いです……」
 凛が呟いた。
 凛の目には、工場長から赤い靄のような物が噴出し始めたのが見える。
「この人・・・・妖怪です!」
 凛がそう言った瞬間、工場長の姿が異変した!
 角刈りは鋭くハリネズミのようになり、指先は刃のような長い爪。そして耳まで裂け、犬歯のような牙が並ぶ口。
 凛にとっても見慣れた姿・・・妖樹によって妖怪化した姿!
シャァァァァッ!!

妖魔狩人 若三毛凛 if 第13話(2)

 鋭い爪が二人に向かって振り下ろされる。
 慌てて避ける凛と優里! そこにあった机が真っ二つに切り裂かれた!
「霊装っ!!」
 黒と白の戦闘服を身に纏い、弓と薙刀を構える凛と優里。
 だが、ただでさえ狭い事務室、更に机や事務用品が並んでいるため身動き一つするにも、ままならない。
 まして優里の薙刀なんかその長さゆえに、机や棚に突っ掛かって自在に操る事もできない。
「凛ちゃん、ここじゃ戦えないわ。一旦…工場の外へ出ましょう!!」
「はい!」
 二人はそう言って事務室から飛び出した!
 早く下へ降り、外へ出なければ・・・
 しかし!!
 上がってきた時に使った階段が・・無い!?
「まさか・・・!?」
 二人は我を疑った。
 いや、階段が無くなったわけではない。
 階段の前に防火用のシャッターが降ろされており、完全に閉ざされているのだ。
シャァァァァァァッ!!
 すぐ背後で、鋭い爪が空を斬った!
 優里が薙刀を構え応戦する。
 だが、ここも狭く、更に素早く動く敵に技が振るえない。
「お姉さん、こっち!」
 凛が階段の脇に奥へ進む細い廊下を見つけた。
 突っ走る二人!
 奥に扉が見える。
 蹴り破るように扉を開け、中へ飛び込むと、勢い良く扉を閉め鍵を掛けた。
― ふぅ… ―
 これで少しは時間が稼げる。
「ここは?」
 真っ暗な室内を手探りで探っていくと、部屋の両脇に十数個のロッカーが並んでいるのがわかった。
 どうやら飛び込んだ場所は、更衣室のようだ。
 外へ出る方法はないか? 
 部屋の中を見渡す二人。
 外からの薄明りでロッカーの上に排煙用の窓が見えたが、あまりに小さく、いくら小柄な凛でも通り抜けられそうにない。
 更に室内を探索すると、別の部屋に繋がる扉を見つけた。
 扉を開け、中の気配を探る。
 そこは更に小さく狭い部屋? どうやら、妖怪の気配はない。
 ゆっくりと先へ進む二人。
 暗闇のため二人は気づいていないが、ここは調理場へ入る前の消毒用のエアシャワールームであったらしい。
 部屋の左脇にあった引き戸型の扉を開けると、大きな厨房へ繋がった。
 排煙用の窓が並んでいるため、外からの薄明りが差し、今までの部屋より僅かだが室内の様子がわかる。
 中央には調理台が並んでおり、部屋の壁側にはフライヤーや鉄板など加熱機器が並んでいる。
 ゆっくりと歩を進めていくと、部屋の隅で何かが蠢いている気配を感じる。
 近づきながら目を凝らして様子を見る。
「キャッ…」
 凛が小さな悲鳴を上げた。
 床には数人分の白骨が散らばっていた。
 更にその先で、ガツガツと何かを食い漁っている4~5人の姿が。
「そこにいるのは誰っ!?」
 優里が凛とした声を掛ける。
 声に反応し振り向く4~5人。
 各々がその手、その口で、人間の腕や、動物の足などを食い漁っている。
 それは、人間や野良犬などを食い漁っている・・・妖怪化した元人間達。
ううううぅ・・・
 奴らは新たな獲物を見つけた肉食獣のように、食していた肉片を放り捨てると、ゆっくり凛と優里に向かって歩き出した。
 武器を構える二人。
「ソイツらは、食うという本能だけが残って、下等妖怪に成り果てた・・・ここの作業員達だ」
 背後から工場長が現れる。
「この俺は、誰よりも優れた加工食品を作りたいという願望があったため、知識も記憶も残したまま、上級の妖怪に生まれ変わったのだ!」
― たしかに・・・ ―
 凛は思い当たった。
 妖怪化した千佳は、凛に対する『想い』をしっかり残していた。
 同様に妖怪化した青年(春人)は、人形を集めたいという欲望が、能力として加わっていた。
うぅぅぅぅぅぅぅ・・・・
 そんな凛の思考を中断するかのように、うめき声が聞こえる。
 前方からは五人の妖怪化した作業員。後方は妖怪化した工場長。
 先程までよりは多少広くはなっているが、それでも室内。更に1メートル先さえ見えない暗闇。
 まともに戦える状況ではない。
 いや、優里自身は……本心を言えば、実はこの不利な状況でも、敵を倒す自信はあった。
 しかし、この状況下での戦いとなれば、敵に対して手加減などができず、それどころか相手を殺してしまう可能性が高い。
 相手は、いくら妖怪化しても元は人間。凛の浄化の力を使えば、人間に戻すことができる。
 そう・・・優里の母、美咲のように。
 凛によって妖怪化した美咲を元の人間に戻してもらった喜びは、優里には痛いほどわかる。
 この作業員たちも、もしかしたら……家族がその帰りを待っているかもしれない。
 だから、無闇矢鱈に戦うことで、その生命を奪うわけにはいかない!
「優里お姉さん・・・!?」
 凛の心配そうな声。
 だが、優里にとっての最優先は凛だ。
 どんな事になってもこの子だけは守らなければ!
 最悪、この手を汚してでも・・・・
 優里がそう決意した時。
「こっちよ!」
 右の方向から声が聞こえた。
 見ると、右方向の壁に扉があり、その扉の先には門の前で出会った中年女性の姿があった!
「あの人は・・・!?」
「お姉さん!」
 凛の顔が少し明るくなり、目で合図を送る。

 優里は・・・・・どう動く?

 ① 「待って!」凛を制した。
 ② 凛の手を握り、扉へ向かって走った。
 
 

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『-後編-』へ続く。

そのまま、下のスレをご覧ください。

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 01:57 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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