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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第07話「女妖怪 胡媚娘 -後編-」

..①
 凛は踵を返し、水田のある山の斜面へと駆け出した。

 柚子村は山々に囲まれた、農村地帯。
 少ない土地を利用して農業を営んでいるため、こうした山の斜面にも、『棚田』と呼ばれる階段状の水田農耕が営われている。
 凛は田と田の境になっている『畝』という足場を利用し、上へ上へと飛び上がっていった。
 最上段近くまで飛び上がり振り返ると、一番下の水田に、丁度獲猿が足を踏み入れたところであった。
 小柄な胡媚娘は何事も無い様に畝を駆け上がってくるが、身体が巨体な獲猿は畝には足が乗り切れず、やむなく水田の中を歩いている。
 凛は慌てず正確に獲猿に狙いをつけた。
「獲猿、気をつけてぇ~っ、妖魔狩人が狙っているわよぉーっ!!」
 胡媚娘が叫ぶと同時に、凛が矢を放った。
 獲猿は横にステップし、かわそうとした。・・・だが。
 水田に足を取られ、体勢を崩してしまった。

 水田の水深は、だいたい10~15cm程度である。
 だが細く弱い苗が根を張りやすいように、その土壌は大変軟らかく、普通の大人でも中に足を踏み入れれば、15cmくらいは埋まってしまう。
 まして身体の重い獲猿。
 より深く沈み、長い毛は土や水を含み、重くなっているはずだ。
 いくら俊敏な動きを持ってしても、足を取られれば、動きは制限される。
 体勢を崩した拍子についた手も、軟らかい土に埋まり、抜くのに一苦労だ。
 凛はその隙を逃さない。
 立て続けに二発目の矢を放つ。
 一発目は払おうとした腕に突き刺さり、二発目は獲猿の胸に突き刺さった。
「くそぅーっ! 草葉の剣っ!!」
 胡媚娘が術を唱え、雑草や木々の葉が、まるで手裏剣のように凛に襲い掛かった。
 だが傍にいた金鵄が羽ばたく事で小さな空気の渦を作り、葉は全て渦に巻き込まれていく。
 その間にも凛は三発目の矢を放つ!

妖魔狩人 若三毛凛 if 第七話(2)

「ぐぅぅぅっ!!」
 矢は見事に獲猿の眉間に直撃。
 獲猿の身体が青白い光に包まれていく。
 断末魔の叫びを上げながら、獲猿の身体は無数の蛍のように飛び散って消えていった。
「獲猿~っ!!?」 
 驚きを隠せない胡媚娘であったが、凛の矢が自分に向けられている事に気づくと
「く…草葉の舞っ!!」
 無数の葉が、胡媚娘の身体を覆い隠すように舞い上がる。
「うっ!?」
 すぐに駆け寄った凛だが、その時には胡媚娘の姿はなかった。

「金鵄、ついに犠牲者を出してしまった……」
「でも凛、君はよくやっている。これまで犠牲者がでなかったのは、君の力によるものだ。」
(本当によくやっている。まだ12歳なのに精神的負担も大きいだろう)
「うん……」
(とは言うものの、中国妖怪も少しずつ本腰を入れてきている。正直……凛一人で守りきるのは、難しいかもしれない。)
 凛は何も言わず、じっと村の方を見つめている。
(あともう一人、仲間がいれば……)
 金鵄は、フトっ……そう思っていた。


「なんなのよぉ~、この日本っていう国わぁ~? こんな小国……戦いにくいったら、ありゃしないわぁ~!」
 洞窟内に逃げ帰った胡媚娘は、開口早々……不平を撒き散らした。
「ケッ!負け犬はキャンキャンうるせぇーなー!」
 洞窟の奥で、大柄な男が一杯やりながら睨んでいる。
「誰よぉ~、あんたぁ~?」
「紹介しよう、この者は銅角。身共と同じ……幹部の一人だ。」
 その背後から百陰が姿を現す。
「銅角……? あぁ~ん、聞いたことがあるわぁ~。」
「それよりも胡媚娘、逃げ帰るとは何事だ。妖木妃様の軍団には、逃げるという言葉は無い」
「逃げたんじゃないわぁ~、戦術的撤退ってやつよぉ~。この国は湿原みたいな場所が多いので、それに見合った僕を連れてくるわぁ~!」
「カカカッ!負け犬らしい言い訳だぜ!」
「負けたんじゃ……ないわよっ!戦術的撤退……」
「胡媚娘!!」
 百陰が銅角と胡媚娘の間に入った。
「どんな策があろうと、逃げは……逃げだ。我が軍は逃げは許されない」
「……ど……どうする……っていうのよぉ……」
「逃亡兵として、処刑する」
「じょ……冗談じゃ、ないわぁ~っ!アタシはこの軍の、正式な兵でも何でもないのよぉ~!」
「だったら尚更、兵でも何でもない者を、軍の中をウロウロさせておくわけには、いかぬ!」
「や……殺るっていうのぉ……!?」
「待てよ……百陰!胡媚娘だって、黙ってすんなり殺されるのは納得いかねぇーだろ!?」
「あ……当たり前よぉ!」
「だったら、俺様と勝負しねぇーか!? 俺様に勝てたら、そのまま幹部の座を譲ってやる!」
「あんたに勝てたら……?」
「どうだ? どうせ殺されるなら、自分の力に賭けてみたらどーよ?」
 胡媚娘は銅角と百陰の顔を交互に睨みつける。
「い……いいわぁ!その勝負、受けてたつわぁ~!」
「そうこなくっちゃ!」
 銅角は楽しそうにグラスを置くと、胡媚娘に向き直った。
「お前から仕掛けてこいよ!」
 構えもせず、仁王立ちの銅角。
 胡媚娘は無数の木の葉を取り出し、
「草葉の剣ぃ~!!」
 あの、木の葉手裏剣のような術で攻撃を仕掛けた。
 次々に銅角の身体に突き刺さる木の葉。だが……
「なんだ?子どものような術だな!」
 屁でもないように、突き刺さった木の葉を払い落とした。
「お前、やっぱ……生き残れねぇーわ!」
 そう言って懐から、一本の瓢箪を取り出し、栓を開ける。
「胡媚娘!」
「な……なによぉ~!?」
 すると問いかけに返事をした胡媚娘は、驚くことに瓢箪に吸い込まれていった。
「な……なんなの……これぇ!?」
 瓢箪の中から、胡媚娘の驚きの声が聞こえる。
「義兄弟であった、金角、銀角が使っていた紅瓢。相手を吸い込み、溶かしてしまう宝具だ。お前もあと十分もしないうちに綺麗に溶けて、液状化してしまうだろうよ。」
「そ……そんなぁ……」
 瓢箪の中から必死に脱出を試みようとする胡媚娘。すると頭上、すなわち瓢箪の口から大量の液体が降り注がれる。
(この匂いは……)
 頭上から降り注がれた液体、それは『酒』であった。
 膝上まで酒が注がれると、壁に叩きつけられる程の激しい衝撃が身体を襲う。
 瓢箪に酒を注いだ銅角は、栓を閉じグルグルと振り回し始めたのだ。
 中では凄まじい横Gのため、身動きも取れない状態の中で、少しずつ……手や、足、全身が溶け始めていくのがわかる。
(い……いやぁぁぁぁつ!)

 十数分後、瓢箪の栓を開け、大きな枡に中身を注ぐ銅角。
 枡は、鮮やかな若草色の液体でいっぱいになった。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第七話(3)

「胡媚娘のカクテル、いい香りだぜ!」
 満足そうに香りを楽しむと、そっと口をつけ、一口啜ってみる。
 まるで草原のように涼やかで、それでいてほのかな甘みが口の中いっぱいに広がる。
「いい酒だ! 若い娘のエキスが入った酒は本当に旨い!」
 一口、また一口とゆっくり味わいながら、喉に通す。
「……というわけで、次は妖魔狩人とやらのカクテルを味わいたいのだが、文句はねぇーだろ……百陰?」
 銅角は枡の中の酒を揺らしながら、百陰に目を向けた。
「かまわん。汝が始末してくれれば、それに越したことはない!」


第八話へ続く(正規ルート)


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..②
 凛は踵を返し、森林の方へと駆け出した。

 木々が生い茂り、間を縫うように走り抜ける凛。
 さすがにあの巨体では、木が邪魔になって走りにくいだろう? 凛も金鵄すらも、そう思っていた。だが・・・
「待っちなさぁ~い!」
 胡媚娘を肩に乗せた状態で、獲猿はまるで、木の方が避けているのではないかと思えるような速さで、追いかけてくる。
 巨体とはいえ獲猿は大猿の妖怪。森の中の方が本領を発揮できるのであった。
「く……くそぉ!」
 凛は慌てて矢を放った。だが狙いの定まっていない矢など、獲猿にとってかわすことなど造作もない。
 二発、三発と矢を放つが、全て簡単にかわされていく。
 そうこうしているうちに、獲猿は目の前まで迫っていた。
「やば……」
 大慌てで高い木の枝に飛び乗る凛。
(ここからなら、急所を狙う間がある……)
 凛は落ち着いて、獲猿の眉間に狙いを定めた。しかし……
ウォォォォォォォォッ!!
 獲猿は雄叫びのような大きな声を上げると、凛が乗っている木に体当たりをかます。
 激しい振動で、落ちないように幹にしがみつく凛。
 二発……三発と、獲猿は立て続けに突進してくる。
ミキミキッ……
 鈍い音とともに、少しずつ木が傾いていく。
(ま……まさか……!?)
ズンッ!!
 低く重い音が響き、メキメキとその木は崩れるように倒れていく。
 慌てて飛び降りる凛。
「草葉の剣……!!」
 着地した凛の足元に、手裏剣のように飛んできた草葉が突き刺さる。
「逃がさないわよぉ~!」
 数十枚の木の葉を持った胡媚娘が、愛らしい笑顔を振りまいた。
「ま……まけないっ!」
 そんな胡媚娘に向かって弓を構える凛。
 その背後から、丸太のような太い獲猿の腕が、振りぬかれる!
バシッツ!!
 宙を舞う凛は、そのまま数メートル先まで吹っ飛んでいく。
 一撃……たったその一撃で、凛は気を失っていた。
「凛―――っ!!」
 思わず駆け寄る金鵄。だがその金鵄に無数の草葉の手裏剣が襲い掛かる。
「ううっ……!」
 十数枚の木の葉を喰らい、そのまま落下した金鵄。
 さらに容赦なく、獲猿の巨大な足が・・・・・
グシャッ!!
 金鵄は、獲猿に踏み潰され、絶命した。
 その間に胡媚娘は気絶した凛に歩み寄り
クンクン……
「うん、日本の小娘は栄養が行き届いているからぁ、いい育ち方しているわねぇ~!」
ぺロッ……
 「甘い肌~っ、お菓子にしたらぁ~、最適かもぉぉっ!!」
 そう言って獲猿に合図を送る。
 凛の身体を摘み上げると、二人はそのまま姿を消した。


「ほぉ、まさか本当に妖魔狩人を仕留めてくるとはな……」
 洞窟の中で、凛を連れ帰った胡媚娘たちを見て、百陰は驚きの表情を隠せない。
「約束わぁ、忘れていないわよねぇ~ん?」
「汝を幹部にする話か? むろん、守る」
「結構~っ!それじゃ……前祝いをしましょ~う。ちょっと調理器借りるわよぉ!」
「それは元々ボンディァォフーニュの物。奴がこの世にいない今、好きに使うがよい。」
「ありがと! じゃ……獲猿、早速始めなさい!」
 胡媚娘の指示に頷くと、獲猿は凛を調理台の上に乗せた。
「う……んっ……?」
 その拍子に意識が戻った凛。
 焦点の合わない目に映ったものは、獲猿の巨大な手。
 獲猿の体重を乗せた巨大な手が、凛の身体を押しつぶす。
「や……」
 悲鳴を上げる間もなく、ギュっ……ギュっ……と、押しつぶされていく。
 更に調理台に二回、三回と叩きつけられ、その後もギュっ……ギュっ……と、まるで小麦粉を捏ねるように押しつぶされた。
「あ……」
 目の前も、頭の中も真っ白になった凛の身体は、すっかりグニャグニャになって、もはや指一本ですら、自分の意思では動かすこともできない。
 獲猿は、そんな凛の頭部と足首を掴むと、思いっきり左右に引っ張っていった。
 粘土のように伸びていく凛の身体。
 それを二つ折りにし、絡み合わせながら捻っていく。
「うふっ、原型は出来上がったわねぇ~。それじゃ…早く揚げてしまいなさい!」
 胡媚娘の指示を待っていたかのように、大きな中華鍋に大量の油を注ぎ、火を点ける。
 油がもくもくと湯気を上げ始めたのを見計らって、捻りあげた凛を放り込んだ。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第七話(4)

ジュュュュュッッ!!
 一気に舞い上がる湯気とともに、パチパチと油が飛び散っていく。
 そして、香ばしい匂いが洞窟内を漂い始めていった。
 二十分ほどしてから救い上げると、それはこんがり綺麗な狐色に揚がった、大きな大きな中国のお菓子である。
「いやぁぁ~ん!すごく美味しそうなぁ~麻花(マーホア)が、出来上がったわぁーっ!!」
 麻花(マーホア)、中国の菓子で生地を捻り、油でカリカリになるまで揚げる。いわば硬いドーナッツとかりんとうの中間のようなお菓子と思ってもらえればいい。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第七話(5)

 少し冷ました後、凛の頭部のあたりを齧る胡媚娘。
 カリっとした歯ごたえのあと、口の中に独特の甘さが広がった。
 更にもう一齧り。何度も噛み締め、鼻から空気を抜くように息を吐くと、甘味が口の中だけでなく、鼻腔をも擽る。
「はぁ~~っ……、なんて美味しさなのぉ!最近食べた人間の中では、一番当たりかもぉ~ぅ!」
 とろける様な甘い笑みで、至福の時を味わう胡媚娘。
 麻花の一部分を契り取り、獲猿に与え
「アンタも少し食べるぅ?」と百陰に目をやった。
「いや、身共はいい……」
「そぉ!じゃ……アタシが全部食べちゃうわねぇ~!」
 こうして、揚げ菓子になった凛は、全て胡媚娘の腹の中に収まった。

 それから数ヶ月後、妖木妃の下……侵略軍一番隊を率いて、日本各地に攻め込んでいる胡媚娘の姿があった。

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