2ntブログ

自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

妖魔狩人 若三毛凛 if 第04話「最弱妖怪 猪豚蛇 -前編-」

「はぁ……どうしたら、ええダ?」
 村はずれにある、今では誰も住んでいないはずの古民家。
その玄関先で丸々太った子豚のような生物が、一人うなだれていた。
 この生物、名を猪豚蛇(チョトンダ)といい、二ヶ月前からこの村に隠れ住む中国妖怪である。
 体つきは丸々太ってはいるものの、小学生並みの身長で大した力も無く、母国中国では『最弱妖怪』とも呼ばれ、人間からも逃げ回る日々であった。
 妖木妃の配下に収まる事でとりあえず身を守る事はできたが、使いっぱしり同然にこき使われ、情報収集の為に一足先に日本へ送り込まれていた。
 しかし、元々たいした能力も無い妖怪。
 柚子村へ来ても、これといった情報を集められるわけでもなく、空家となった古民家に隠れ住み、日々…食っては寝ての繰り返しである。

 そんな猪豚蛇の前に今朝早く、一匹の白蛇が現れた。
 そう、妖木妃の側近の一人、白陰である。
「昨日、妖木妃様が妖魔狩人と名乗る人間の娘に襲われた。幸い大した傷は受けていないが、妖力を大きく消耗し、しばし眠りにつかれる事となった。
 猪豚蛇よ、汝(うぬ)はその妖魔狩人を見つけ出し、始末するのだ」
「オラが妖魔狩人の首を・・・!? 無理ダヨ~」
「汝も妖木妃様の手下なら、少し位は役にたて。さもなければ、身共が汝を始末する」
「そ…そんなぁ~っ!」
「無論、何の能力の無い汝がまともに戦って勝てるとは身共も思ってはおらん」
 白蛇白陰はそう言うと、細身の若い男の姿に変身した。そして小さな袋を猪豚蛇に手渡すと、
「その袋の中には、中国秘境に生息する妖怪人参を煎じた粉を入れている。その粉を飲むと、一時的だが全ての霊力はその力を封印され、生身の肉体は・・・・。
いいか、三日間の猶予を与える。その間に妖魔狩人を見つけ出し、その首を取れ。よいな!?」
そう言い残し、白陰は姿を消した。

「オラはどうしたらええダ……」
 あれから二時間。猪豚蛇はずっとうなだれたまま、今に至るわけある。
グゥゥゥゥ……
 いきなり、腹の音が鳴る。
「そう言えば、今日はまだ飯も食ってねぇーダナ。考え込んでも仕方ねぇ、とりあえず…飯にするダ」
 猪豚蛇のこういう時の行動は速い。すぐさま台所へ向かった。
 台所の物入れから手ぬぐいに包んだ塊を取り出すと、調理台に上に広げる。
それは十分に練り込んだ、真っ白な小麦粉の生地。
 麺棒を使って薄く伸び広げた後折りたたみ、端から数ミリ間隔で切り落としていく。
「この国へ来て最初に食べた『うどん』という食べ物。中国でもあんな美味い物は食った事がねぇ。毎日食べても、全然飽きねぇーダヨ」
 切り落とした麺を大鍋で茹ではじめ、その間にめんつゆを用意する。
「もう、いいかな?」
 茹で上げた麺を冷水で洗い、ざるセイロに乗せた。
「色々試したが、やっぱりザルうどんが一番うめぇーダ!」
 悩みなんてなんのその。美味そうにうどんを啜る猪豚蛇の頭から、白陰の命令はすっかり消えていた。


「セコが言っていたのは、この辺りかな?」
 猪豚蛇がうどんを啜っている頃、丁度その付近の上空を金色の霊鳥、金鵄が探索していた。
 昨日、妖木妃との戦いの後に出会った霊獣麒麟。
 麒麟の話では、妖木妃の手下の妖怪の中に密かに敵対心を持つ者がおり、その妖怪が妖木妃の防御を壊る方法を知っているという。
 その妖怪が何者で何処にいるかは、わからない。だから、たとえ小さな情報でもより集め、一つ一つしらみ潰しに調べていくしかないのだ。
 そんな時、麒麟を手助けしている日本妖怪セコが一つの情報をくれた。
 セコは見た目は人間の子供。その姿を利用し、よく人間の居住地にも出入りしているのだが、空家はずの古民家に、この二~三ヶ月前から妖怪らしき者が隠れ住んでいる事に気づいた。
 それが普通の妖怪なのか?それとも妖木妃の手下の妖怪なのか? それを調べるため、金鵄は今、その付近を調べまわっている。

「あの家がそうかな?」
 金鵄は小さな古民家を見つけ、静かにその周りを飛んでみた。
 縁側越しに中を覗いてみると、丸々太った子豚のような妖怪が、うどんを啜っているのが見える。
―あれは、中国妖怪。となると、やはり妖木妃の手下?―
 相手がどんな妖怪かわからない以上、うかつに飛び込むわけにはいかない。
 なにしろ、今の金鵄はこれまでの妖木妃との戦いで霊力の殆どを使い果たし、その姿を維持するのが精一杯の状態。戦闘力は皆無と言ってもいい。
―凛の学校が終わり次第、一緒に来てもらった方が間違いない―
 しばらく様子を見ていたが、その妖怪がすぐになんらかの行動を起こす気配が無い事を知ると、金鵄は一旦引き戻す事にした。


「……と言うわけで、斎藤さんはしばらくお休みになります。尚、万が一、感染るといけないので、治るまでお見舞なども行わないでください」

 ゴールデンウィーク明けの今日、学校へ行くと朝一番で担任の教師から、千佳が季節外れのインフルエンザにかかり、数日間学校を休む事を知らされた。
 一昨日電話があった時には凄い元気そうだったのに。昨日かかったのかな?
 そう言えば、昨日は千佳の家で宿題の答え合わせをする約束をしていたんだっけ。妖木妃との戦いがあったから、すっかり忘れていた。

 そんな事を考えながら、凛は授業を受けていた。
 だが実際は、千佳が昨日から行方不明になっている事を、この時点では知る由も無かった。


「金鵄、この家がそうなの?」
 村はずれにある、古民家の前。
 金鵄は校門前で待っており、授業が終わった凛に事の成り行きを知らせ、あの民家へ連れて来ていた。
「うん、まだ家から出た様子は無い。だからおそらく中にいるはずだ。」
「わかった。 霊装!」
 そう言うと、凛の身体は青白く輝き、一瞬のうちに戦闘服(ゴスロリ服)を身につける。
「見た目は攻撃的な妖怪では無いけど、中国妖怪はどんな能力を持っているか、未知数だ。凛、気をつけて!」
 金鵄の助言に頷き、凛は静かに古民家の戸口に足を踏み入れた。台所としても使われる土間になっており、流しや調理台、コンロを見ると、たしかに使用した跡がある。
 ふすま越しに座敷の中を覗いてみると、丸々太った子豚のような妖怪が、ため息混じりにお茶を啜っている。
「あの妖怪?」
「うん」
 金鵄の頷きを合図に、凛は一気にふすまを開けると、弓を構えた。
「動かないで!動いたら射るわよ!」
「あっ・・あっ・・!!?」
 突然の強襲に猪豚蛇は慌てふた向き、腰を抜かしている。その姿はとても凶悪な妖木妃の手下には見えない。
 それには、さすがの凛も少し拍子抜け。
「あなた、本当に妖木妃の手下なの?」
 凛の言葉に猪豚蛇は小さく頷いた。
「あ……あの……、ど……どちら様……ですダ…?」
「わたしは妖魔狩人、若三毛凛」
「よ……妖魔……狩人……!? あ……あの、妖木妃様と戦った……?」
 凛の名を聞くと、猪豚蛇は更に目を潤ませる。その怯え方は、どう見ても嘘とは思えない。
「少し聞きたい事があるのだけど、素直に答えてくれるなら、わたしも攻撃はしないわ」
 その言葉に猪豚蛇は、何度も大きく頷いた。

 座敷に通された凛と金鵄に、猪豚蛇はお茶を差し出した。
「熱いうちにどうですダ……」
「ありがとう……」
 どうも、調子が狂う。

妖魔狩人 若三毛凛 if 第四話(1)

「改めて聞くわ、あなたは妖木妃の配下の者よね?」
「そ……そうダ。中国にいた頃から、妖木妃様の下で働いているダヨ」
「今から聞く事は、すごく重要な事。だから正直に答えて。」
「わ……わかった……ダ」
 今から本題へ入ろうとしたその時・・・・
「う……うっ……」
「!?」
 凛は隣に目をやると、金鵄が苦しそうにうずくまっている。
「き……金鵄!?」
「霊力が……僕の霊力が……封じられている。か……身体を、動かす事も……でき…ない……」
 その言葉に直ぐ様猪豚蛇を睨みつける!
「何をしたの!?」
「効いた……、白陰様から頂いた妖怪人参が効いたダ……」
 猪豚蛇自身も信じられないような表情で金鵄を見つめていた。
「答えて! 一体何をしたの!? 妖怪人参って、何っ!?」
「ひぃぃぃぃっ!!」
 立ち上がった凛に我を取り戻したかのように、猪豚蛇は奇声を上げながら座敷を飛び出し、奥の間へと逃げ込む。
「待ちなさい!!」
 直ぐ様その後を追って奥の間に駆け込む凛。
 凛が奥の間に足を踏み入れた瞬間、床が観音開きに開き、凛は真っ逆さまに落下していった。
ダンッ!!
「痛った~っ・・・・」
 床下に叩きつけられたものの、強度な戦闘服が身を守り、幸いにも怪我一つ無い。
「こんな時の為に、落とし穴を作っておいて正解だったダ!」
 上を見上げると、高さ三~四メートル先で猪豚蛇が嬉しそうに見下ろしている。
「金鵄とかいう霊鳥も、お茶に混ぜた妖怪人参の粉が効いて動く事もできねぇ。そして、ここでお前も始末しておけば、オラも白陰様に殺されずにすむダ!」
 そう言って、猪豚蛇は吊るしてある紐に手に取ると、勢いよく引いた。

ゴゴゴゴゴ・・・・・!!

 激しい振動と音が鳴り響く。
 なんという事か! 天井は吊り天井になっており、どんどん下ってきている。
 このままでは、凛の身体は押し潰されてしまう。
「ペチャンコに潰されるといいダヨ!」


 どうなる!?

①凛は、猪豚蛇が出したお茶を飲んでいなかった。
②凛は、猪豚蛇が出したお茶を飲んでいた。

----------------------------------------------------------------

『-後編-』へ続く。

そのまま、下のスレをご覧ください。

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 21:38 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://kenitiro.blog.2nt.com/tb.php/287-3d7ba252

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT