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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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ターディグラダ・ガール 第八話「少女と未確認生物」 六章

 
「テオさんは食材で言うなら、大自然に育まれた天然素材。天然素材には、天然素材との組み合わせがいいはず! だからこのワッフルには、木苺のソースが相性抜群と思うのですわ!」
 そう言ってテオワッフルに、ラズベリー色のソースを楽しそうに振りかけるマゴット。
 香ばしい匂いと、酸味を帯びた甘い匂いが混ざり合い、思わずお腹の音が鳴りそうである。
 ナイフなどを使わずに、ワッフルを無造作に小さく引き千切る。そして大きく口を開け、パックリと頬張った。
 若いテオのほのかな甘みと、風のような涼やかさ。そして思った通り、天然木苺の甘酸っぱさが程よく混ざり合い、口の中を充満し…鼻孔から抜けていく。
「美味……。いえ、美味なんて言葉では、この感動は表しきれませんわぁ~っ、テオさん♪」
 全身の力が抜けてしまいそうな、大きな溜息が身体中を突き抜ける。
「全部頂きたい……。全部…私めが食べて差し上げたい。でも……、そうするとレイカさんが、お怒りになるでしょうねぇ……。」
 マゴットはそう呟きながら、潤んだ瞳でレイカに視線を移した。
 その当のレイカは、相も変わらずガールとの戦闘…真っ最中!!
 テオが抜けた事で再び一対一となり、一進一退の攻防が続いてはいるが……。
「まったくもぉーっ!! なんなのよぉ…このターディグラダ・ガールのしぶとさはぁ!?」
 そう言うレイカは、珍しく肩で息をし始めていた。
「いくらマアラ様の超強力な魔力を持っていてもぉ、生身の人間である…アタシの身体が、それに持ちこたえることができないーっ。そのせいでぇ……」
 レイカはそう呟きながら、自身の手足をチラチラと見始めた。
 その細い手足には、太い血管がアチコチに浮き上がっており、今にもブチ切れそうだ。自身が言う通り、その肉体が限界近くまで達しているのは一目瞭然。
 一方のガールも、何度もレイカやテオの攻撃を喰らっていたために、脚はガクガクと震え、立っているのが精一杯だというのも判る。
 ただ、それでもシールド越しに見える…その目は、ギラギラと光を失っておらず、闘志に満ち溢れている。
 そして、そんなガールに追い風が吹いたように、
「西東、中田……。両巡査、到着しました!!」
 CCSのメンバー。西東欄、中田素子の二人が、丁度駆け付けたのだ!
――これはレイカさん、少し危うい状況かもしれませんね。―
 ワッフルを食しながら、マゴットの眉間にやや皺が寄る。
 すると…、
「マゴット殿、一つ頼まれてくれんか?」
 ヌゥ~と近寄って来た死神教授が、囁くように声を掛けて来た。
「頼み……でございますか?」
「うむ。今の状況では、マゴット殿にしか頼めんことだ。」
「勿体ぶらずに、仰ってください~!」
 そう言って、ニコリと微笑むマゴット。
 それに対し、死神教授は鋭い視線をターディグラダ・ガールへ移すと、
「あの、ターディグラダ・ガールという女を『捕獲』してもらいたい!!」
 静かに、そして力強く言い放った。
「おそらく、あの服の中身……橘明日香という女は、ワシと同じように遺伝子工学の権威でもあった『橘東平』の娘と思われる!」
「橘東平さん……? お噂は聞いたことがございますが?」
「橘(ヤツ)は、『LOM』という遺伝子改変生物を主に研究していた。そして、それを医学に用いろうとしていたのだ。だが、それを人体で応用するのは人道に反すると、医学界から追われた期間がある。」
「人間というのは、大変面倒なんですね。」
「表向きヤツは、その研究を凍結させたように見せていたが、その裏では、身内を使った研究を続けていたとも噂されておった。」
「その身内が、あのお姉さん…ってことですか?」
「おそらく! あの強靭な肉体……タフさは、そうとしか思えん。」
 こう言う死神教授に、マゴットは全てを理解したように頷くと、
「そこで、お姉さんを捕獲して。その身体を調べてみたい…と仰るわけですね?」
 苦笑しながら、そう返した。
「いいですわ。ここは教授にご協力いたします。」
「うむ、頼むぞ……」
 死神教授の言葉に再度頷き、全てを了承したかのようなマゴットであったが、
「ですが……」
 まるで思い出したように口を開くと、
「一つ条件がありますの。その条件を承知していただけたら……の話です。」
 と言葉を付け加えた。
「条件……だと?」
「はい! お姉さんの身の安全を保障し、お調べ事が終わりましたら無事に釈放してさしあげること。これが条件でございます。」
 予想も付かなかったマゴットの言葉に、死神教授は目を丸くした。
「捕らえる敵の…身の安全と釈放が条件だと? ずいぶん変わった事を言う?」
 その言葉にマゴットは、真剣な眼差しで死神教授を見つめ、
「私め……、あのお姉さんの真っ直ぐで、純粋なところが大好きですの。たとえ敵であろうと、私めには関係の無い研究などで、その存在を失うことは…とても我慢できないことでございます!」
 と、力強い口調で言い返した。
「まぁ…良い! ワシには娘の生死では、どうでも良いこと。その細胞……遺伝子構造だ。調査が終わったら、無事に釈放することを約束しよう。」
 死神教授は、マゴットの言葉にやや呆れつつも、ハッキリとした口調でそう答えた。
 それに対してマゴットは満面の笑みで頷くと、再びレイカの戦いの行方に目を向けた。
 そこでは、新たに参戦した西東、中田の姿もあり、三人の連携プレイにやや苦戦を強いられているレイカの姿があった。
 それを確認すると、マゴットはまるで重力を失ったかのように…フワリと跳び上がると、花のようにワンピースを翻し、レイカの目の前に着地した。
「マゴットさん~? 今頃…参戦ですかぁ?」
 皮肉の籠ったレイカの言葉がマゴットを突き刺す。
「ごめんなさいませ…レイカさん。私めも色々と忙しい身なもので……」
 そう答えるマゴットに、レイカは糸目を吊り上げ、
「ふ~ん……。さっきアッチで、のんびりとぉ…ワッフル食べている姿がぁ、目に入ったけどぉ~っ?」
 と、言葉の切れ味を更に上げて来た。
 それにはマゴットも
「食欲が最優先の私めですから……」
 そう目を細めて苦笑する。そして気を取り直したようにガールに視線を移し、
「強化服のお姉さんは私めが相手をしますので、レイカさんは雑魚二人の相手をお願いいたします。」
 そう言って体勢を整えた。
「あらあら……? 主菜を横取りされるなんてぇ、ちょっとぉ…侮辱ぅ~っ! これじゃぁ…マスターとしての立場がぁ、形無しじゃなぁ~い!?」
 マゴットの言葉に、膨れツラのレイカ。
「申し訳ございません。教授からちょっとした依頼がございまして。」
「死神教授…からぁ?」
 レイカは、チラリと覗くように死神教授を見ると、
「まぁ、いいかーぁ! ぶっちゃけ~ぇ、アタシもちょっと疲れていたしぃ~っ。だったらぁ、さっさと片付けてぇ…さっさと帰りましょ~ぉ!!」
 そう言って気を取り直したかのように冷笑を浮かべると、欄と素子に向けて体勢を整えた。
「では、私めから……」
 マゴットはそう言うと、今度は一足飛びでガールの眼前に立ちはだかった。
「こ……この子は、以前…私の下着を食べた……!?」
「あの時はご馳走様でした、お姉さん。とても美味な下着でしたので、もう一度頂きたいと思っているのですが……」
 マゴットのその言葉に、
「だ…だめっ!!」
 思わずガールの両手が、胸とお尻を覆い隠す。
 そんな隙だらけとなったガールにマゴットは、
「でも、今日は急ぎの用事がございますので、それはまた次回に……!」
 そう言って、彼女の喉元に人差し指を突き刺した。すると、その指先に、線香花火のような…バチバチと火花を散らす爪先程の白い発光体が現れる。
「おやすみなさいませ、お姉さん!」
 言葉と同時に発射される発光体。それは至近距離から喉元を直撃。
 ガールは仰け反るように首を反らしたかと思うと、そのまま仰向けに倒れた。
 ピクピクと全身を痙攣させて、起き上がれないガール。
「なぁ~るほどぉ! 砲弾のような魔力の塊を爪先程までに凝縮してぇ、それを喉元に打ち込んだぁ……って訳ねぇ~っ。あんなのを喰らったらぁ、さすがに刑事さんもぉ…ただじゃ済まないかぁ~!? さすがはマゴットさん、理に適った器用な攻めねぇーっ!!」
 状況を見つめていたレイカは、ただ…ただ…感心すると、小さく溜息をついた。
 そして、もう二人。それを茫然として見つめていた欄と素子。
 欄はフトッ…我に返り、白バイFJRに跨ると、
「お嬢ーっ! 俺がコイツで突っ込み…隙を作るから、おめぇーは全弾ぶち込んでやれっ!!」
 エンジンを二~三度空ぶかしをし、勢いよく発進させた。
「任せろ……!!」 
 それに続くように、マグナム拳銃M686を構える素子。
 するとレイカは、そんな二人を迎え撃つように両手を前に突き出すと、
「アタシ…マゴットさんのようにぃ~器用な真似できないからぁ、大雑把にいくわよぉ~っ!!」
 その合わせた掌から、身の丈ほどの…巨大な赤黒い発光体を撃ち放った!!
 発光体はアスファルトを抉りながら突き進み、
バゴォォォォン!!
 まるでボウリングの球でピンを弾き飛ばすかのように、FJRで突っ込んでくる…欄と素子、二人纏めて吹き飛ばした。
 一発…。たった一発の魔法で沈黙した欄と素子。
 無論、彼らが弱いわけでは無い。レイカの魔力が強すぎるのだ。
 辺りを見渡し、もう抵抗する者がいないと確信すると、マゴットは身動きしないガールをお姫様抱っこで抱え上げた。
 それを見て、
「さすがだな……、マゴット殿」
 そう声を掛ける死神教授。
「約束は守ってくださいね!」
 そんな死神教授に、ニッコリ微笑み返すマゴット。
「もちろんだ!」
 そう言葉を交わすと、二人は瞬間移動魔法で立ち昇る煙のように…この場から消え去った。
 一方のレイカは、食べかけの『テオワッフル』を拾い上げると、一口だけ齧り、
「あら…やだっ!? ホント……美味しい~っ♪」
 そんな、にこやかな表情を浮かべると、後を追うように消え去って行った。
 それまでの様子をモニターで眺めていた和。
 我を見失ったように対策車両…UMVから飛び降り、現場に駆け付けると、
「僕のミスで……、僕のミスで……明日香くんが、攫われた………!?」
 辺りに響き渡るような声で、そう叫び続けた!



  つづく 
 

| ターディグラダ・ガール | 15:06 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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