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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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ネザーワールドクィーン 「第2章」



「ただいま。叔母さん、帰りにイチゴ大福を買って来た。」
 玄関に入って早々、俺は台所に向かってそう声を掛けた。
 すると、台所から恵比寿様が……いや、叔母さんが顔を出し、こちらに歩み寄ってくる。
「お帰り、倫人ちゃん! なに? お菓子買って来たの? それならお茶を用意しておくから、一旦着替えてきなさい。」
 そう言ってイチゴ大福を受け取り、台所へ戻って行ったが、再び…ひょこっと顔を出し、
「それと……王女ちゃん。部屋にいるみたいだから、声を掛けておいで~♪」
 そう言うと、ニコリと微笑んだ。
 俺は部屋に戻って、長袖Tシャツと綿パン、カーディガンと簡単な私服に着替えると、二つ向う隣の部屋の襖の前に立った。
「王女、土産買って来たけど…一緒に喰いませんか?」
 そう声を掛け、返事を待つ。
 しかし、一向に返事が無いので再び声を掛けるが、やはり返事が無い。
「王女、入りますよ!?」
 俺はそう言って、襖を開いた。
 この下宿屋は、借り部屋全てが八畳の和室で、この部屋も例外ではない。
 なのに、どうやって押し込んだんだろうね? 中には豪華なダブルベットに、革張りのL コーナーソファセット。
 俺の中で、「こんな御大層な物が必要なら、下宿屋じゃなくて高級ホテルとかで寝泊まりしろよ!!」とツッコミが入る。
 そのソファセットのテーブルの上に、何やら雑誌のような物を広げて、食い入るように眺めている一人の少女の姿が目に入った。
 どれだけ集中して眺めているのか? 俺が部屋に入ってきたことすら気づいていない?
「いや、当然…気づいているぞ。」
 まるで俺の心を読み取ったかのようなタイミングで、返答してくる少女。だがその声は、まだ声変わりしていないかのように幼い。
「だったら、最初から返事してくださいよ……。」
 やれやれ…といった口調で溜息をつく俺に、彼女は更にこう付け加える。
「それよりも倫人。やはりこの国は凄いな! 古今東西……色々な国のスイーツが揃っている。なのに……なぜ、此方(こなた)はもっと早くから、この国を訪れなかったのだろう?」
 どうやら眺めている雑誌には、ケーキやらプリンやら、スイーツ特集が大きく取り上げられているようだ。
 それを見て、まるで自問自答するように、大きく頷いたり首を振ったりしている。
 ちなみに『此方』というのは、私とか俺とかと同じ『一人称』だ。二人称で『其方(そなた)』っていうのは、よく聞くだろう? それと同じ時代の言葉だ。
「で、何の用だ?」
 そう言って、邪魔をするなと言わんばかりに振り向いた彼女の顔は、声同様に幼い。

ネザーワールドクィーン 一話04

「お土産買って来たんで、下で一緒に喰いませんか?」
「お土産……?」
「王女が以前絶賛していた、キラリン大福ってヤツですよ。」
 この言葉には、アドレナリンでも抽出させる効力が含まれているのかね? 
 彼女は、いきなり目をキラキラと星のように輝かせると、まるで昔あったゲーム…『黒ひ●危機一髪』のように、一気に飛び跳ねる。

 ここで、この少女……彼女(王女)のことを簡潔に説明しておこうか。
 名は『ヘル』。
 うん? ヘルって、地獄という意味じゃ…? そう、その解釈で間違っていない。
 改めて言おう。彼女の名はヘル。本当にそれだけしかない。
 しかし、この『人間界』では、それだけだと怪しまれたり、色々都合が悪かったりするので、ヘル・レジーナというフルネームにしているらしい。
 祖国は『ニブルヘイム』。その場所は、俺の口からは説明しずらいな。まぁ、暗くて寒くて氷だらけの国だ。
 彼女は、そのニブルヘイム(国)を統括支配する主だ。
 うん、本来…そういう地位のことを、『王』。女性なら『女王』と呼ぶよな。なのに、なぜ彼女のことを『王女』と呼んでいるか?
 俺も詳しくは知らないのだが、国で彼女に仕えている『執事』から、そう呼んでくれと聞かされたんだ。
 なんでも理由は、「女王だと、老けて見られる。それは気に入らん! だから王女と呼べ!」という、本人からの命令らしい。
 それが本当なら、まったくもって…しょうもない理由だ。
 それともう一つ。今現在だと更に当てはまるのだが、何も知らない第三者の目から見たら、その姿は女王よりも王女の方が、理解してもらいやすいらしい。
 まぁ、そうだろうな。今のその姿と言えば、細い手足に丸みの少ない直線的な体つき。そう10歳ちょっと、小学高学年といったくらいだろう。
 たしかに、女王と言われてもピンとこない。王女の方が、しっくりくるな。
 やや長めの髪は、青白磁色というべきか? 言うなれば、白に近い……薄く淡い青緑色。後ろ髪は一括りにしているが、長い前髪は左目から頬まで完全に隠している。
 本日の恰好は今風の少女らしい、ちょっとロック風のシャツやミニスカート姿。ただ、そのミニスカートから伸びる細い脚は、左足だけニーハイソックスを履き、前髪同様にあえて左肌の露出を避けている。
 そんな幼い姿ではあるが、俺は知っている。この人は、本当はもっと大人で美しい女神のような姿であったことを! ただし……その『女神』の上に、『死の』という単語が付くのだが。
 そして、この人がこんなこんな幼い姿になってしまった原因は、実は俺にある!
 俺の自己満足で軽率な行動のせいで、彼女はこんな姿になってしまったのだ。
 だが王女(彼女)は、そのことを責めたり、咎めたりはしない。むしろ、「自分が望んで行った結果だから、気にする必要はない。」と言ってくれる。
 しかし、俺の心の中には、今でもその罪悪感が残っているのだ。

「キラリン大福だと!? それを早く言わないかーっ! ほら…倫人、早く下へ降りるぞ♪」
 嬉しそうに俺の背を押し、階段を駆け下りようとする王女。
 その嬉しそうな姿は、誰の目から見ても、無邪気なJSにしか見えないだろうな。
 
「おおっ!! これだ!キラリン大福~っ♪ 初めてこれを麻奈美から食べさせてもらった時は、心の底から感動したぞぉーっ!!」
 嬉しそうに大福を手に取ると、大口を開けてパクリ!と頬張る王女。モグモグと噛みしめるその顔は、どれだけの幸福感も噛みしめているのだろう。
 その可愛らしさに、思わず俺の頬も緩むってもんだ。
 おっと、一つ言っておくぞ! 俺は決して「ロリ●ン」ではない! 普通に同年代。もしくは、それ以上の年齢の女性が好みだ。早まって通報なんかするんじゃないぞ!
「ところで、その麻奈美は今日は来ていないのか?」
 早くも一つの大福を平らげ、二つ目を口にする王女。
「今日…麻奈美は学習塾らしくて、帰宅早々出かけて行きましたよ。」
「そうか。麻奈美は色々美味しいスイーツを教えてくれるからな! 此方にとってこの国においては、最重要人物の一人と言って過言では無い。」
 アンタにとって重要人物の基準とは、スイーツを紹介するか…どうかで決まるのか!?
 ていうか、もう三つ目を口に入れているのか!? おいおい。嬉しいのはわかるが、あまり慌てて食べるなよ。一応…餅なんだから、喉に詰まらせるかもしんねぇーからな。
 
「ねぇ……、倫人ちゃんって、西郷公園の傍を通って学校へ通っているわよね?」
 その声と共に叔母さんが、自分の分のお茶を手にして居間へ入って来た。そして、席に着く前にテレビのスイッチを入れる。
「その西郷公園で、なんかあったみたいよ?」
「西郷公園……?」
 俺は意味がよく分からないまま生返事をし、テレビ画面に目を向けてみた。
 放送しているのはニュース番組で、丁度西郷公園の事を取り上げている。どうやら今日、西郷公園で失踪らしき事件が起こったようだ?
 行方が掴めないのは、現場に残された所持品などで、判っているだけで約5名。
 その詳細を見ていて、自分の顔が青ざめていくのがハッキリ判る。
 なぜなら、その行方不明者の中に……後藤絵里子の名があったからだ。
 それだけではない。他に『中川文恵』という名があるが、もしかして……この子は、絵里子が言っていた『ふみっち』ではないだろうか?
 そして更に、俺の背に冷たい氷の塊を押し付けたような、鋭い痛みを伴う衝撃が走る。
 行方不明者の一人で、移動クレープショップの販売員である、『山口亜希奈(あきな)』という名の若い女性。その彼女の写真が公開されているが、その顔は……
「あ、あの……段ボール箱の、模様の顔……!?」

ネザーワールドクィーン 一話05

 偶然なのか? それとも関係があるのか? 俺は、ただ……ただ、茫然と画面から目が離せなかった。

 その時……、けたたましい電子音が辺りに鳴り響く。それは、俺のポケットに入っているスマホの着信音だ。
 慌てて画面に映る差出人の名を確認する。
 ま…麻奈美!?
 なぜ、今頃……? アイツは塾へ行ってるんじゃなかったのか!? 
 あんな事件の放送を見た後だからか? 微かな不安が過る。 
「もしもし……麻奈美か。今、塾じゃないのか?」
「り、倫人!? た…助けて!!」
「助けて……!? どうした!? なにがあった!?」
「授業中、絵里子が塾へ駈け込んで来たの。変な奴らに…ふみっちが潰されたって。自分も潰されそうになったから、だから…逃げて来たんだって!」
 潰される? 何を言っている!?
「そうしたら、変な人たちが入ってきて……。友達も…先生も、みんな…連れ出されて……、そして潰されちゃった……。だから、私たちは……すぐに逃げて……」
「どこだ? 今、どこにいるんだ?」
「トイレ。隣のコンビニのトイレに…。でも……奴らはまだ探し回っていて……」
「奴らって、どんな奴らなんだ? 何人いるんだ?」
 俺がそう聞いた瞬間、電話から別の女性の声が聞こえた。
「麻奈美ーっ! コンビニの人も……、お客もみんな…連れ出された!!」
 絵里子だ。絵里子の叫び声が聞こえているんだ!
「助けて……倫人!」
「麻奈美、逃げろ! 今すぐ逃げろ!!」
 俺の指示が聞こえているのか、いないのか? 電話は、それっきり通じなくなっている。
 こうしちゃいられない! すぐに助けに行かないと……!
「叔母さん! 警察に連絡して、すぐに麻奈美の塾に行くように言って! 俺、今すぐ……そこへ向かうから!」
「警察って、何があったの……!?」
「いいから、すぐに連絡して!!」
 事情を説明している暇はない! 俺は何もかも忘れて、下宿屋を飛び出して行った!


| ネザーワールドクィーン | 16:39 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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