2ntブログ

自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

ターディグラダ・ガール 第六話「CCS再び……」 五章


「よし、これで送信機の回線変更ができましたわ!」
 明日香が救出され治療されている間、ミンスーはレイカから教わっていた命令送信機の回線変更を、終えたところであった。
「ハイパーオーク、じゃれ合っている場合ではありませんわ! すぐに人間の警察官を倒しなさい!」
 互いに掴み合い、噛みつき合っていた二体のオーク。どちらも大小のダメージを負ってはいるが、それすら物ともしない顔で、治療中の明日香たちに向かって駆け出した。
「和係長! オークのコントロールが敵の手に戻りました。奴等が襲ってきます!」
 パソコンを操りながら、申し訳なさそうに未希が叫ぶ。
「そうか、ありがとう……藤本くん。キミは充分よくやってくれた。西東くん、中田くん。明日香くんが回復するまで、時間稼ぎを手伝ってほしい。いけるか!?」
「舐めてるんっスか、係長!? 時間稼ぎ程度できねぇ~んなら、今…こんなところに来ていませんよ。なぁ……チビお嬢さん?」
 大型白バイFJR1300APに跨り、背後に立っている素子に視線を送りながら、欄はそう答える。すると、それに付け加えるように、
「うん、バカヤンキーの言う通り。もう二度と無様な姿は晒さない。」
 ガチャ!と拳銃の弾倉を戻しながら、欄の乗る白バイの後部座席に乗り込む素子。
 それを見た和は、
「キミ達、やっと協力し合えるようになってくれたのか!?」と、嬉しそうに問いた。
「まぁ、敵にやられて足引っ張って無様なトコ晒すくらいなら、その場だけでもお互いに手を組んだ方が……まだマシって事に話がついたんスよ。」
 そう返しながらアクセルを吹かす欄。
「じゃ、ちょっくら相手してきますんで、指示お願いしますよ!」
「うん、それじゃ……あの二体の間に、なんとか入り込んでくれ!」
「了解~っ!」
 欄はそう返答すると、勢いよく白バイを発車させる。
「中田くん。今の奴らは、本能的に弾道を予測できるようだ。だから、いくらキミでも仕留めるのは難しいと思う。まずは奴等の注意をキミ達に引き付けてくれ!」
 通信機を使って、白バイの後部座席に座っている素子にも指示を出す和。
 素子はその指示に頷くと、拳銃を両手で握りしめ、オークたちの足元を狙う。
バンッ! バンッ!!
 発射と同時に、飛び跳ねてその銃弾を避けるハイパーオークたち。
「ホントだ。ボクの目線か…構えか? それとも完全に本能的な予知なのか? どっちか判らないけど、普通に狙って撃ったら避けられそう。」
 和の言う通り、むやみやたらに発砲しても、無駄だと悟る素子。
「西東くん! 少々危険だが、少しの間……奴らの間を行き来してくれないか!?」
「了解!」
 和の指示に従い、褐色と通常の肌の二体のオークの間を行ったり来たりと、何度も反復する欄。二体のオークは、欄が操る白バイの動きを不審に思いながらも、ジワジワと間を詰めていく。
 そんなオークたちの動きを、ジッと見据える和。そして、何かに気づいたように、
「西東くん! 褐色ではない方の……普通のオークの背後を取るように、反転してくれ!!」
「了解!」
 いきなりの和の指示だが、欄は焦りもせずに、ハンドル…アクセル、ブレーキを巧みに操り猛烈なアクセルターン。一気に通常のハイパーオークの背後に着こうとする。
 当然それに気づいたオークも背後を取られないように、瞬時に身を捻って対応する!
「今だ、中田くん!! ヤツの軸足を狙え!!」
――軸足っ!?―
 激しい揺れを伴う白バイの後部座席だが、素子はその言葉を待っていたかのように両腕を伸ばし、間髪入れずに発砲をした!!
バンッ!!
 マグナムの発射音と同時に、身を捻ったオークの軸足である右太腿を撃ち抜く!!
ドシンッ!! 
 両手で撃たれた脚を押さえ、地響きを立てながら、その場で引っくり返るオーク。
「中田くん! そのままヤツの鎧の背中を撃つんだ!!」
 更に出された指示に、素子は冷静に頷くと、一発……二発とオークの鎧の背中を撃ち抜いていく。
 すると軽鎧はバチバチバチッ!と火花が飛び散り、更にボウッ!と発火し、燃え始めた。
「よくやった中田くん! そこが奴等の弱点である、強化アーマーのバッテリー部分らしい。ですね……? 瑞鳥川さん。」
「そう言う事。あの強化アーマーの基本構造は、ボンベーガールの強化服と同じだからね。背中部分に装着されているバッテリーシステムを破壊すれば、機能は停止。後は、重たく動きづらい……ただの鉄の塊となる。
 それよりも和くん。奴らは弾道を予測できたのに、どうして銃弾を命中させる事ができたんだ?」
 瑞鳥川の問い掛けに、和は戦場から目を離さず……耳だけを傾け、
「奴らがどうやって弾道を予測していたのかは不明ですが、生物である以上……運動力学の応用が使えると考えました。捻りの運動では、軸となる部分に時間的ロスが生じる。つまり身を捻っている瞬間なら、仮に弾道を予測できても、体重の掛かっている軸足は、瞬時に動かすことができない。肌色が普通のヤツを狙わせたのは、ヤツの方が動きが若干鈍かったからです。」
 と答えた。
――そんな事よりも僕の驚きは、やはり…このメンバーは、一つになればこんなにも頼もしい仲間だと、改めて認識出来たことだ!―
「たかが……人間の分際で、あまり調子に乗るんじゃありませんわ! ハイパーオーク、なんとしてもあの人間たちをぶち殺しなさい!」
 勝利を目前としていたのに、アッと言う間に形勢を逆転されたミンスー。その怒りは、「ぶち殺しなさい!」などと、日頃使わない乱暴な言葉遣いからも察することができる。
 ミンスーの命令に従うまでも無いと言わんばかりに、最後に残った褐色のオークが瀾たちへ向かっていく。
「あと一匹! いくぜ、チビお嬢!!」
 瀾はそう叫ぶと、再びアクセルを吹かし白バイを発進! 動きを読まれないように、蛇行運転で褐色のオークへ向かっていく。
 そして一気に加速し、褐色オークの脇を通り過ぎる。そして、敵の背後を取るように急反転!! その瞬間には、素子も拳銃を構えている。
 だが、褐色のオークは瀾たちの動きに合わせるように振り返りながら、そのまま大きく跳び上がった!!
「クスッ! バカなの!? 跳び避けたら、尚更動きが制限されるのに♪」
 そう呟きながら拳銃を向けた素子だが、
「ち、違う……! 跳び避けたんじゃなく……」
 そう、褐色のオークは弾道を跳び避けたのではなく、逆に、攻撃しようとしている素子たちに向かって、飛び込んでいったのだ!!
バンッ!!
 慌てて発砲する素子。しかし、素子ほどの名手でも、焦れば当然…狙いは外れてしまう。
 銃弾はオークの左腕を微かに掠ったものの、逆にオークの渾身の右拳が、瀾と素子の二人が乗る白バイに、カウンター気味に炸裂!!
バァァァン!!
 二人は、十数メートル程弾き飛ばされ、激しく大地に叩きつけられた。
 その衝撃はあまりに強かったのだろう。二人とも倒れたままピクリとも動かない。
 トドメを差そうと、そのまま走り寄る褐色のオーク!
 その時っ!!
「ガール・ライトニングキィィィィック!!」
 青白い火花を散らした飛び蹴りが、褐色オークに直撃した!!
 ボウリングの球のように、勢い良く転がっていく褐色オーク。もちろん蹴りの主は、ターディグラダ・ガールである……明日香だ!
「ありがとうございます……和係長、瑞鳥川さん。そして……皆さん! お陰様で、なんとか動けるようになりました!」
 明日香はそう言って、全員に向けて敬礼をした。
「あの水無月さんの治療薬の効き目は凄いな! まさか、こんな短時間で明日香くんが復帰できるとは……!?」
「ま、復活早々……ライトニングキックだから、これであの豚野郎もオシマイだろう♪」
 明日香の言葉に、薄ら笑いを浮かべてオークを眺める瑞鳥川。だが、そんな笑みも束の間で消える。
 口元から滴り落ちる赤い血を拭いながら、褐色オークは立ち上がったのだ。血眼になったその目は、妖気でも発しているかのように、爛々と輝いている。
「たしかにダメージは負っている。だが、元々強靭な肉体のオークが、あの強化アーマーで更に強化された分、防御力も上がっているのかも知れない……」
 立ち上がるオークを見つめながら、和はそう推測した。
――係長の言う通りだと思うけど、でも…それだけじゃない。直接戦ってみればわかる! あの褐色のオークだけは、他のオークに比べて精神力も……体力も、大きく上回っている!―
 空手という武術を鍛錬している明日香。そのため種族は違っても、相まみえる事で相手の潜在的強さを見抜くことができるのであろう。
 褐色オークも、もっとも楽しみにしていたウィンナーソーセージが、再び自分に牙を向いてきたのだ。なんとしても、もう一度ウィンナーにして茹で上げて、喰ってやろうと意気込んでいるのであろう。なぜなら、相当ダメージを負っているはずなのに、その鼻息は今までとは比でないからだ。
「瑞鳥川さん。私の行動時間は、あと…どれ位持ちますか?」
「う~ん……、かなり戦っているし、一度はウィンナーにされてシステムも結構損傷しているからね。持ってあと2~3分……。ライトニングキックも、あと一発撃てればいい方だね。」
 瑞鳥川のその返答に、明日香は気を引き締めてオークを睨みつける。
――あと…2~3分。ライトニングキックも、あと一発のみ……。なにか、他に手は……!?。―
「じゃあ! 俺……、手を貸すぜ!」
 そう言って声を掛けてきたのは、つい今しがたまで気絶していた瀾。
「手を貸すって、何をするんだ西東くん?」
 明日香ではなく、代わりに返答したのは…和であった。
「橘巡査って、前回……FJR1300AP(白バイ)の加速力を使って技を決めたんッスよね? 俺が運転すりゃ、もっと速くなり威力も倍増スよ!」
「そ、それはそうだが……。だが、相手は銃弾の弾道すらも予測できるヤツだ。さっきは不意打ちだったから決められたが、正面から向かえば…それでも避けられる可能性がある。」
「だったら、ボクが援護する!」
 そう言って和に返したのは、瀾同様……今しがたまで気を失っていた素子。その手には狙撃用ライフル銃が握られている。
「バイクに乗らずに撃つなら、このM1500(ライフル)が使える。これならM686(拳銃)よりも弾速が速くて正確だ。」
 和は、瀾と素子。二人の自信溢れる言葉に、「わかった!」そう言って頷くと、こう付け加えた。
「キミ達が一つになれば、絶対に敵を倒せるはずだ! ここはキミ達に全て任せる!」
 瀾は早速白バイのエンジンを掛け直すと、
「そんじゃ~ぁ……橘巡査、後ろに乗ってくれ。俺ぁ…速ぇ~から、振り落とされないでくれよ!」
「うん、期待している!」
 明日香を乗せると、瀾は二回三回とアクセルを吹かし、土埃を上げながら反転すると、褐色オークとは逆方向へ凄まじいスピードで走り出した。
 そして数百メートル程行き距離を空けると、再び反転。褐色オークを目指してガチャガチャとギアを切り替え、どんどん加速していった!
 そんな瀾たちを待ち構える褐色オーク。つま先立ちで腰を落として重心を下げ、どちらにでも動けるように身構える。
……キュンッ!!
 そこへ拳銃よりも遥かに速い、ライフル独特の風切音が耳をかすめる。撃ったのは、もちろん素子だ!
 だが、驚くべきは褐色オーク。明日香が感じた通り、このオークは並のオークたちよりも遥かに潜在能力が高いのであろう。
 銃声が鳴るか鳴らないかの刹那の瞬間。咄嗟に身を伏せ、弾道を避けたのだ!
 まさしくそれは、理屈ではない……、正真正銘の強者の本能。
 しかし、その身を伏せたのが不味かった!
 次に襲いかかる攻撃に対して、反応が遅れてしまったのだ!
 それは、猛スピードで突っ走ってくる白バイ。それが急激にブレーキを掛ければ、後部座席で構えていた明日香はどうなるだろう? 
 走っているバスや電車内で急ブレーキを掛けられ、前のめりに倒れそうになった経験は無いだろうか?
 それは慣性の法則。本体が止まろうとしても、それに乗っている物は、それまでの速度で進もうとする性質。
 瀾は、200km近い速度で走っていた。そこへ急ブレーキ。
 それは、まるで中世の投石武器の発射台のように、後輪が一気に跳ね上がるほどのもの。
 そこに乗っていた明日香は、慣性の法則で前方へ弾き飛んで行く。
 その速度による運動エネルギーをプラスして、青白い火花を放つ…必殺の飛び蹴り!
「ガール・アクセルライトニング……キィィィィック!!」

TG-06_15.jpg

 素子の援護射撃から身を伏せていた褐色オーク。必死に立ち上がって避けようとしたが、流石に間に合わず自慢の強靭な胸に、その一撃をマトモに喰らってしまった!!
 全身から放電しているかのように青白い火花を散らしながら、数十メートルほど弾け飛ぶ褐色オーク。
 大地に叩きつけられたときには、白目を剥き出し、蟹のように泡を吹き、ピクピクと全身を痙攣させ、一目で意識が飛んでいることが解るほどだった。
「う、嘘でしょ……!? アタクシが率いた部隊が……全滅だなんて……!?」
 褐色オークが沈黙したと知ると、ただでさえ青い顔のミンスーは更に蒼白となり、
「ひぃぃぃぃぃぃっ!!」
 と、悲鳴を上げながら猛ダッシュで逃げていった。
「こらっ…待ちやがれっ!!」
 逃げ去ろうとしているミンスーを追いかけようとする欄。しかし、
「西東くん。奴は後だ! それより倒れている警官たちや、一般市民の救出が先だ!」
 そう言って和は、欄の前に立ち塞がり彼を制す!
 すると、それを待っていたかのように、数台の救急車が雪崩れ込むように次々に駆け付けてきた。
「救急車……? いつの間に……!?」
 あまりのタイミングの良さに、驚く面々。
 すると、一人黙々とパソコンを操作していた未希が、
「わたしが手配しました。もっとも、各消防署の緊急連絡網に直接入り込みましたが…」
 と、涼やかな顔で答える。
「本来なら叱るところだけど、今回だけは良しとするよ。さすがだ!」
 和は苦笑しながら、そう返した。
 オークたちと戦って倒れた警官たちは、市内各地の緊急病院へ。ウィンナーソーセージにされた女性たちは、水無月診療所へ運ばれることとなった。
 「みんな、よくやってくれた!」
 全ての救急車が立ち去った後、和は全員の顔を見渡しながら言い始めた。
「僕は今日、改めて確信したよ。このメンバーが協力し合えば、どんな未確認生物や改造生物が相手でも、そして…あらゆる緊急事態に陥っても、必ず人々を守る事ができる…と。」
 そういう和の言葉に、瑞鳥川も明日香も、そして未希や欄、素子も。誰もが嬉しそうに微笑んだ。
「僕は、そんなキミたちと一緒に働けて、本当に嬉しく思っている!」
「係長、私もCCSに配属されて、嬉しく思っています!」
「わたしもです。ただ……ネットに関しては、もう少し融通を効かせてくれると、もっと嬉しいですが。」
「係長! 県警トップクラスの俺の腕、これからも期待してくれていいぜ!」
「バカヤンキーの戯言はさて置き、ボクこそこの射撃で、誰よりも力になるよ。」
「橘ちゃん!一度でいいから…あたしと寝てくれぇ~っ!!」
 約一名、煩悩が先走っている勘違い野郎がいるが、始めてCCSが本当の意味で一つになった! 
 和はそう、喜びを感じていた。


「参りましたわ……。マスターから、『全滅しただけでは飽き足らずぅ~っ、手ぶらで帰ろうとするなんてぇ、ミンスーって度胸あるわねぇ~っ♪』なんて脅されましたわ。」
 そう…独り言を呟くミンスー。
 一度は一目散に逃げ出した彼女だが、途中…マスターであるレイカに報告を入れたところ、そのような言葉が返ってきたらしい。
「とりあえず、一人だけでも始末しておけば、なんとかお咎めを受けずに済むかもしれませんね。」
 ミンスーはそう言って公園の茂みに隠れながら、ジワジワとCCSメンバーに近づいていく。
 丁度彼らは、勝利の余韻に浸って和気あいあいとしており、油断している。狙うなら今だ!
 茂みの中から、ミンスーは真っすぐ腕を伸ばす。その指先の先にあるのは、CCSリーダーである…和だ。
シュッ!!
 まるで、矢が放たれたような風切り音が微かに鳴ると、ミンスーの人差し指が和目掛けて一気に襲い掛かる。
 その鋭い鏃のような爪先が、和の後頭部に突き刺さる寸前……!!

ダダダダダッ!!

 それはまさしく…機関銃の銃撃音。
 それが鳴り響くと同時に「ギャアァツ!」という、ミンスーの悲鳴もこだました。
 何事かと背後を振り返る和。彼の目に入ったのは、青い血に塗れた人差し指を、痛々しく握りしめているミンスーの姿であった。
「あ、あれは……先程のパーピーヤスの幹部? しかし、何があったんだ!?」
 そう言って驚く和とCCSメンバー。
 そのミンスー当人は、そんな和たちの斜め後ろの方向を睨みつけている。
「だ、誰ですの……? アタクシの邪魔をしたのは!? 名乗りなさい!!」
 和たちが、そう叫ぶミンスーの視線を追っていくと、そこには文字通り…一つの黒い人影が!
「………………。」
 ミンスーの問い掛けにも全く無言の人影は、黒いロングコート姿で、頭にはコートのフードをスッポリと覆わせており、顔は一切見えない。だが、赤い瞳らしきものがギラギラと輝いているのだけは、何となくわかる。
「あ、あれは……!?」
 更に和たちを驚かせる出来事が、もう一つあった。
 それは、そのコートの人物が真っ直ぐミンスーに向けている…左腕!
 コートの袖を肘上まで捲り上げた…その左腕は……!
「左腕が、銃になっている……!?」
 そう、その人物の肘から下の左腕は、回転式多銃身機関銃…通称ガトリングガン(銃)と呼ばれる形状によく似ていた。

TG-06_16.jpg

「名乗るつもりはないようですね。でも……アタクシの知る限りでは、左腕が銃になる者は、ただ一人! この借りは、いずれ返させて頂きますわ!!」
 ミンスーは鬼のような形相でその人物を睨み続けていたが、そう叫び終えると、辺りの景色に溶け込むように、その姿を消し去っていった。
 それを確認すると、黒いコートの人物はもう用は無いと言わんばかりに、腕をゆっくりと降ろした。
 すると、瞬く間にその機関銃の腕が、人間の腕へと変化する。
「人間の腕になったり……銃になったり。しかも、その肌の色は…!?」
 驚愕する和を更にダメ押ししたのは、その人物の左腕の肌の色。日本人ではあまり見かけない、黒っぽい…? または褐色? そんな肌の色であった。
「黒い肌で、左腕が銃などの武器に変化する人物。僕にも心当たりはあるぞ!」
 和は、鋭い目つきでコートの人物にそう告げるが、その者はそれを無視して踵を返した。
「ま、待てっ!!」
 和が追いかけようとすると、コートの人物は木陰に隠しておいた、大型の自動二輪車に跨った。そして素早くエンジンを掛けると、何事もなかったかのように、その場を走り去っていった。
「係長。あの人物は係長を助けたのでしょうか? でも、あれは…多分?」
 明日香は、そう和へ問い掛ける。
「うん、おそらく助けられたのかも知れない。でも……僕たちが知る『あの女』であったのならば、彼女も敵であるはずだ!」
 喜びも束の間。和たちには、更なる謎が深まり始めていた。



  続く




| ターディグラダ・ガール | 13:51 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://kenitiro.blog.2nt.com/tb.php/499-a2d7db8a

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT