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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第18話「 妖木妃の目覚め -前編-」

 紫色の空が、辺りを包む夜明け前。
 犬乙山の麓の洞窟を出た、白陰、嫦娥、ムッシュ・怨獣鬼の三人は、柚子神社という小さな神社に辿り着いた。
 約三ヶ月半前、この神社で凛と妖木妃が対峙したのが、もう数年も前の事のように感じられる。
 妖木妃の放った黒炎弾は、樹木をなぎ倒し、参道を吹き飛ばし、辺り一面を焼き野原と化した。
 焼け焦げた木々。地肌が覗く石畳。
 今なおその惨状は残ったままで、参拝に来るものは誰一人といない。
 今三人は、その凄まじさを実感しながら、拝殿へと向った。

 感じる・・・・。

 拝殿から、強く大きな闇の鼓動が感じ取れる。
「来たか・・・?」
 拝殿の内から、低く重い、女性の声が聞こえた。
 扉がゆっくり開くと、闇の鼓動は、直接身体に重くのしかかるように感じられた。
 そこには、中国貴族が着ている華やかな出で立ち。青く透き通るような澄んだ肌。
 冷たく光る切れ長の眼差しに、存在感の大きい花の髪飾り。
「この方が妖木妃・・・?」
 ムッシュですら、目を奪われるような妖艶な美女。
 中国妖怪闇の王妃…妖木妃が、待ちくたびれたように立っていた。

妖魔狩人若三毛凛 18話1



「妖木妃様。お目覚めされるのを、ずっと待ち焦がれておりました」
 一歩前に出た白陰は、その場で跪き頭を下げた。
 嫦娥も後に続いて跪く。
「ワシが眠りについてから今日まで、侵攻状況はどこまで進んでおる?」
 妖木妃の鋭く冷たい目が、白陰を突き刺すように見下ろした。
「侵攻状況は・・・・・・・」
 青ざめたまま言葉が出ない白陰。
「ワシが見たところ、この国どころかこの小さな村ですら、奪い取れていないように見受けられるが?」
 言葉に詰まる白陰の、退路を断つような重い言葉。
「も・・申し訳ございません! 妖魔狩人に・・、妖魔狩人に侵攻を邪魔されており・・・」
「妖魔狩人・・? あの霊鳥金鵄が見つけた、人間の小娘か?」
「はい。あの娘はその後仲間を増やし続け、身共たちの刺客を尽く退けております」
「仲間・・・? 人数は・・・?」
「黒・・、白・・、赤・・、青・・。現在四人・・・」
 白陰がそう言い終えた瞬間!
 妖木妃が高々と上げた右腕には、黒い炎の塊が。
 それを、白陰に向けて投げ放つ。
「ひぃぃぃっ・・・」
 白陰の目の前で、黒い炎が高々と燃え上がった。
「たった四人の人間相手に、何をしているのだ!?」
「も・・申し訳ございません」
 白陰はガタガタと震えながら、更に深々と土下座をした。
「白陰よ。直様中国本土に連絡を入れ、我が配下の妖怪を、この村に全て集めよ!」
「全ての妖怪を、この村に・・・ですか?」
「そうだ。密かに事を進めようと思っておったが、今のままではまったく先へ進まん。こうなれば、力づくでこの地を奪い取る!」
「承知いたしました。大至急、妖怪たちを呼び寄せます!」
 白陰はそう言って立ち上がると、逃げるようにその場を去っていった。
「さて、残るは嫦娥。この場に姿の見えない銅角。そして、そこにいるのは・・・?」
 妖木妃は跪く嫦娥と、腕組をしたまま、待ち疲れたように立っているムッシュに目をやった。
「銅角は黒い妖魔狩人によって倒されました。そして、そこにいるのは・・・」
 嫦娥は妖木妃の問いに簡単に答えると、そのままムッシュへ視線を送った。
「吾輩、ムッシュ・怨獣鬼と申します。貴女が妖木妃殿でございますな? 以後お見知り置きを」
 ムッシュは右手を胸に当て、軽く会釈をした。
「ただの妖怪とは思えぬ。貴様、何かしら目的があって、我らに近づいているのではないか?」
「ウイ。この世の人間全てを家畜にした、妖怪牧場の設立。これにご協力いただければ・・と」
「妖怪牧場・・・。面白い発想だ」
「ご理解頂けて光栄です。そういったわけですので吾輩、世界征服のような野望は、一切持っておりません。したがって、貴女様と敵対する気もございません!」
 ムッシュはそう言って自慢のカイゼル髭を、ピンと引き伸ばした。
「愉快なヤツだ。よかろう、ワシの配下としてではなく、客人として扱おう」
 妖木妃もそう言うと、不敵な笑みを浮かべた。
 互いの挨拶を終えると、ムッシュは思いついたように二人に背を向けた。
「ムッシュ、どこへ行くのじゃ?」
 つい声を掛ける嫦娥。
「うむ。せっかくこうして妖木妃殿にお目通りして頂けたので、一つ・・祝いの料理でも作ろうかと思いましてな」
 そう言って、善は急げとばかしに、その場を去っていった。
 白陰、ムッシュの二人が離れ、二人きりとなった妖木妃と嫦娥。
「さて、儂もそろそろ、おいとまさせて頂きますじゃ」
 なにか気まずいように、嫦娥はスルリと立ち上がった。
「久しぶりに会ったんだ。ゆっくりしていいのだぞ?」
 そんな嫦娥を、嘲笑うように問いかける妖木妃。
「い・・いえ、宿敵…妖魔狩人の動向を探りながら、ついでにこの近辺で、手下にできる日本妖怪を探してみますじゃ・・」
「ほぉ・・そうか。いい手下が見つかると良いな?」
 どう聞いても、皮肉としか聞こえないその言葉。
 それは、主君と部下とは思えない。まるで仇同士のような、そんな空気すら感じられる。
 嫦娥は何も答えず、そそくさと立ち去っていった。


 八月も終盤。夏休みの残り日数も、数えるほどになっていた。
 今日は柚子中学校、全校登校日。
 この日、凛は朝から気分が優れなかった。
 その理由(わけ)は、いつになく邪悪な妖気が、感じ取れていたからである。
 こんな邪悪な妖気、今まで初めてだ。いや、初めてじゃない・・。
 そう・・・一度。いえ、二度程直面したことがある。
 凛は薄々と気づいていた。この妖気が、妖木妃のものであるかもしれない事を。
 だが、認めたくない。
 なぜなら、一度目は普通の女子中学生だった凛を、瀕死に追い込み。そして二度目は、圧倒的な力で敗北を味あわされた・・。この恐るべき妖気。
 妖気は、その戦いのあった柚子神社の方角から、感じ取れる。
 学校が終わったら、様子を見に行ってみよう。
 
 その頃、金鵄は若三毛家の、凛の部屋にいた。
 金鵄もまた、一つの不安事項を抱えていた。
 霊体のままなら、まだそこまで感じられない。だが実体化すると、明らかに霊力の不足を感じられる。
 ここ数日。それによる現象は、空を飛べなくなったり、動くことすらできない事もあった。
 考えてみれば、約三ヶ月半前、妖木妃と戦って敗れ。
 その時、偶然巻き込んでしまった凛。その凛が瀕死の重症を負い、その命を助けるために、自らの霊力を分け与えた。
 その後も危機の度に、残り少ない霊力を振り絞ってきている。
 霊力によって存在を形成している霊鳥が、その霊力を失うとき。それは、間違いなく死を意味する。
 そうだ。僕の命は長くない。
 だからこそ、朝から感じ取れるこの恐るべき妖気。
 今、アイツに目覚められては困るのだ。
 凛や優里、千佳。そして新たな仲間・・瀬織。彼女たちがもう少し力をつけるまで。
 彼女たちだけで、この危機を乗り越えられる力がつくまで。
 それまでは、まだ目覚めてほしくない。
 そう思わずには、いられなかった。


「さて、ああは言ったものの、祝いの料理は何にするべきか?」
 柚子神社を出てから、当てもなく彷徨い歩くムッシュ。
 ご存知の通り柚子村は、農産業が主要の村である。
 少し歩けば、右を見ても左を見ても、目に映るのは田んぼや畑ばかり。
 今、ムッシュの目に映る景色は、まさしくそれであった。
 だが、その先に少し大きな建物が見える。
 横長のその建物からは、少し甲高い声が、ワ~ッ!ワ~ッ!ワ~ッ!ワ~ッ!と聞こえてくる。
「ガキどもの声? 相変わらず、癇に障る声ですな」
 ウンザリするように溜息をつきながらも、その建物に歩を進めてみた。
 そこは柚子村立柚子小学校。
 以前、ムッシュの血で蘇った独楽妖怪ネンカチが、小学生たちを独楽に変えた、あの小学校だ。
 今日は、中学校同様、小学校も全校登校日。
 見ると、学校はもう終わっているのか?
 校門から、帰宅するように出て行く児童もいれば、まだ校庭で遊びまわっている児童もいる。
「それにしても、今のガキは栄養が行き届いているのか? 割りと良い身体をしていて、見るからに美味そうなガキが多いものだな」
 ムッシュは、まるで品定めをするかのように、児童たちを見渡す。
「ガキ・・・? うむ、ガキね・・!」
 何かを思いついたように、学校と反対側にある、山の景色に視線を移す。
 まだ青々とした木々が茂っているが、あと二ヶ月もすれば紅葉し、秋を実感するであろう。
 秋。そう、秋と言えば味覚の秋。味覚の秋と言えば、思い浮かぶのが・・・柿!
 柿=ガキ!
 ムッシュの頭の中で、何故かそういう公式が浮かび上がった。
 そもそも、柿は中国から伝わってきたもの。
 日本に昔からある、吊し柿や干し柿。たしか中国にもありましたね。
 ムッシュはそう思い、懐から自身が作成したレシピ本を取り出す。
 パラパラと頁をめくっていると、一つの文と絵が目に入った。
 円盤状に押し潰された、中国の干し柿『柿餅(シービン)』。
「うむ、悪くない! 祝いの料理はこれでいきますかな!?」
 ムッシュはそう頷くと、丁度校門から出てきた、五~六年生くらいの三人の少女たちに目を止めた。

妖魔狩人若三毛凛 18話2

「ボンジュール、子どもたち!」
 カイゼル髭をピンと立て、にこやかな笑顔で呼び止める。
 しかし、二メートル近い巨体に、更に大きく見せるコック帽。ギラギラと光る、赤い瞳。黒みがかった褐色の肌。
 それは子どもからしてみれば、どう見ても不審者以外何者でもない。
「いやぁぁぁぁっ!!」
 悲鳴を上げて、逃げようとする少女たち。
「面倒くさいですな・・・」
 ムッシュは大きく溜息をついたが、すっと飛び出し、少女達の眼前に移動した。
 それは瞬間移動かと思わせる、コンマ数秒の動き。
 そして、呆気にとられる少女たちの額に、ピン!ピン!ピン!と、デコピンを与えた。
 少女たちは声を上げることすらできず、その場に崩れるように倒れこんだ。
 ムッシュは、三人の少女を担ぎ上げると、鼻歌交じりでその場を去ろうとした。
 その時・・・・
「そこの人、すぐに子どもたちを下ろしなさい!!」
 背後から気の篭った声が、突き刺すように発せられた。
 何事ですか?と言った表情で振り返る。
 そこには空色の半袖シャツに縞の腕章。紺色のタイトスカートに、同色で旭日章の入った、丸い帽子。
 真っ直ぐ伸ばした右手には、二つ折りのパスケースのような物が握られており、それには顔写真と名前、帽子同様…旭日章らしきものが記されている。
 そう、それは一人の若い女性警察官だった。
「ほぅ・・?」
 ムッシュは少し関心を持った。
 切れ長の目元に、通った鼻筋。キリリと上がった眉。手入れ不足なのか、艶がイマイチ無いが、黒く短い髪がよく似合っている。
 美女・・・とまでは呼べないが、しかし決して『悪くない』二十代半ばくらいの若い女性警察官であった。

妖魔狩人若三毛凛 18話3

「早く、子どもたちを下ろしてください!」
 女性警察官は、念を押すように、再度警告してきた。
 やれ…やれ…といった表情で、子どもたちを下ろすムッシュ。
 それを見て、少し安心したのだろうか。
「ありがとうございます。では、少しお話を伺いたいので、交番まで同行願えますか?」
 女性警察官は、心持ち優しい口調に変え、問い直してきた。
 と・・・・、次の瞬間!!
 女性警察官の目の前に、影絵のキツネみたいな格好した、大きな黒褐色の手が迫ってきた。
ビンっ!!
 デコピン一撃っ!!
 あまりの衝撃に女性警官は数メートル程弾け飛び、グルグル目のその表情から、気を失っていることは一目でわかった。
 ムッシュは、女性警察官の制服の襟元をつまみ、そのまま釣り上げると、
「これは…これで、なかなか美味そうな食材ですな。ただ・・・・」
クン・・クン・・クン・・
 女性警官の全身を、むら無く嗅いでみる。
「少し…というか、結構・・汗臭いですな。肉も少々硬そうですし。ですが、逆に調理のしがいはありますな!」
 そう言うと、ちょっとラッキー♪な表情で女性警官を肩に担いだ。
 そして、気絶している少女たちも担ぎあげると、悠然とその場を去っていった。
 立ち去ったその後には、彼女が持っていたと思われる、『高嶺百合』と記された警察手帳が、ポツリと落ちていた。




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妖魔狩人 若三毛凛 if 第18話「 妖木妃の目覚め -中編-」

「しんどい・・。霊体なのに、ここまでしんどいなんて・・・」
 誰にも見えない霊体の姿で、柚子中学校校門までやってきた金鵄。
 凛は、学校は午前中で終わると言っていた。
 案の定、校舎からポツ・・ポツ・・と、生徒たちが姿を見せる。
 そろそろ凛も出てくるはずだ。
 校門の塀に止まり、凛が現れるのを待つ。
 来たっ!!
 凛に向って飛び寄ろうとした瞬間・・
「凛~っ! 待てっちゃ~っ!」
 先に呼び止めた者がいた。
 金鵄には見慣れたその姿。凛の同級生であり、妖魔狩人の仲間でもある・・、斎藤千佳。
 だが、その右手は包帯でグルグルに巻いてあり、三角巾で吊るし上げている。
 もう、二週間は経つだろう。
 あの大きな戦いで、千佳の灼熱爪は粉々に砕け散ったのだ。
 ただ、灼熱爪というのは、千佳の妖力を右手に集中させることで形成された物であり、それ自体は本物の肉体の一部では無い。
 したがって、それが砕けたと言っても、生身の右手が砕け散ったわけではないのだ。
 しかし、灼熱爪と繋がっていた神経は損傷しており、右手を動かすとかなりの痛みを伴うらしい。その痛々しい姿は、何度見ても悔やまれてならない。
 もし千佳が、わたしと交友関係でなければ、こんなことにはならなかった。
 ただでさえ、人との関わりが苦手な凛だが、更に追い打ちをかけるように、親友である千佳とも距離を置こうと考えていた。
「待てと言ってるっちゃよ~ぉ!」
 足早に立ち去ろうとしている凛に対し、立ち塞がるように前へ出た千佳。
「なぁ、今日の凛・・なんかおかしいっちゃよ。なんか、あったん?」
「別に何もないけど・・・」
「嘘やん! 朝から、ごっつ気分が重そうやん。ウチの凛センサーが、ピッ!ピッ!ピッ!と反応しとるっちゃ!」
 相変わらず、テンションが高いね・・千佳。
 その高さで、何度気持ちが救われたことがあったか。でも・・・
「ホント、なんでもないよ。千佳こそ、今日も水無月さんの家で、妖力回復するんでしょ? のんびりしている暇は、無いんじゃない?」
「そうっちゃ! 妖力が回復すれば、右手の痛みもかなりとれるらしいし、戦いにも復帰できる! そうすれば、『ふたりは妖魔狩人!』第二シーズン・・『Max Heart』っちゃよ♪」
 お前のテンションは、どこまで上がるんだ? そのまま大気圏を飛び出し、宇宙の果てまで飛んでいきそうな勢いだぞ!?
 …と口には出さないが、これ以上はさすがについていけない。
「わ・・わかったから、早くいってらっしゃい・・!」
 そう言う凛の縦筋の入った表情を見て、千佳は察したように苦笑すると
「んじゃっ! ちょっくら行ってくるっちゃ。また・・明日!」
 と、走って校門を駆け出していった。
 千佳の姿が見えなくなると、
「金鵄、いるんでしょ?」
 凛は心の中で、声を掛けた。
 その言葉に、霊体のまま近寄った金鵄。
「凛、気づいているだろう? この妖気・・」
「うん。だから、様子を見に行こうと思っている」
「だったら何故・・、千佳を帰したんだい? 味方は一人でもいたほうが・・・」
 金鵄の言葉に、凛は静かに首を振った。
「妖力が回復していない今の千佳では、どう考えてもまともに戦えない。 そんな千佳を連れて行って、もし万が一の事があったら、わたしは一生後悔する」
「ならば、優里か・・もしく瀬織を呼ぶとか?」
「瀬織さんには連絡いれるけど、丘福市からだから、すぐには来れないと思う。優里お姉さんは、あと2~3日は退院できないみたい」
 凛の良さは仲間を思いやる心。だが・・、時にはそれが災いし、彼女を不利な状況へ追い込むこともある。
「正直、僕はキミが一人で行くのは賛成できない。もし、ヤツが眠りから覚めていれば、間違いなくキミに勝ち目は無い」
「でも、妖木妃は人間を妖怪に変えるか、食料にしてしまうか? この国を、そんな世界に変えてしまうことが、目的でしょう。被害が出るまで、放っておくわけにはいかない!」
「わかった。とりあえず、様子を見に行くだけだ。少しでも危険だと感じたら、引き返すよ!?」
 金鵄の真剣な眼差しに、凛は無言で頷いた。


 一旦帰宅し、私服に着替えた凛は、柚子神社へ向って自転車を漕いだ。
 近づけば近づく程、邪悪で重い妖気は伸し掛かってくる。
 間違いない。ヤツは眠りから覚めている。
 そう確信した、その時・・!
ガサササッ!!
 突如、森の茂みから何者かが姿を現し、凛に飛びかかってきた!
「霊装っ!!」
 自転車を飛び降り、戦闘服に身を包む。
「こいつらは、中国妖怪・・!?」
 凛に飛びかかった二つの影。
 一つは、ムッシュに負けない程の、2メートルを超す人型の巨体に牛の頭部。
 もう一つは、そこまで巨体ではないが、スラリとした長身に馬の頭部。
 それは地獄の番人と呼ばれる、牛頭(ごず)馬頭(めず)という二人組の妖怪。

妖魔狩人若三毛凛 18話4

 そして、その二人の背後から姿を現した、もう一つの影。
 緑色のイボイボの肌に、曲がった腰。齢百歳を超えていそうな老婆・・・。
 そう、妖木妃幹部の一人、嫦娥であった。
「やはり来おったな、黒い妖魔狩人! じゃが、ここから先は一歩も行かせるわけにはいかんのじゃ!」
 立ち塞がる嫦娥と、牛頭馬頭。
「牛頭馬頭・・・。噂で聞く限りでは、怪力を活かした攻撃をする牛頭。俊敏な動きで敵を惑わす馬頭。相当、息の合った攻撃をしてくるに違いない。凛が妖木妃以外で、初めて敗北を喫した相手、コンビ妖怪の手長足長。あの二人の妖怪と、ほとんど変わらない妖力を感じる・・!」
 しかし、敵の妨害は予想はしていたが、まさか凛にとって、もっとも不利なタイプの相手が待ち構えているとは。
 改めて、凛を一人でここへ来させたことを、後悔しはじめた金鵄。
 そうともしているうちに、申し合わせたかのように、同時に突進してくる牛頭馬頭。
 だが凛は少しも慌てた素振りを見せず、一本の霊光矢を放った。
 それは途中まで一直線に飛び、敵の寸前で四方八方に分散すると、まるで投網を広げたような形に変化した。
「これは・・あのときの・・!?」
 金鵄の記憶では、鶏の妖怪・・妖鶏に襲われ、卵化した人々を浄化するときに使った技。
 もともと霊光矢は物理的な矢ではなく、凛の霊力が矢の形をしているだけ。そのため、霊力の形成次第では、形を変えることも可能であった。
 そんな投網を避けるように、左右に分かれた牛頭馬頭。
 しかし、それを予測していたかのように、次の霊光矢が牛頭目掛けて、放たれていた。
 それを、必死で叩き落とす牛頭。
 その間、馬頭は凛に飛びかかろうと体勢を立て直していたが、当の凛の姿が見当たらない。
 なんと凛は、次の矢を数メートル離れた高い木の枝に突き刺し、そこから伸び繋がっている霊力の糸を手繰って、振り子の原理で一気に場所を移動していた。
 そして、そのまま体勢を整え、馬頭を目掛けて更なる霊光矢を放つ。
 自在に形を変えられる霊光矢を投網やロープ代わりに使い、一対複数の不利な戦闘を有利な展開へ運んでいる。

 そう・・・、このトリッキーな戦い方は、『てんこぶ姫』の戦い方だ!!

 金鵄はマニトウスワイヤーの一件で、凛と死闘とも呼べる戦いをした、蜘蛛妖怪・・てんこぶ姫を思い出した。
 てんこぶ姫の戦闘力数値は決して高い方ではなく、むしろ妖怪化人間より少々・・上回っている程度だ。
 だが、知恵と機転を活かしたその戦い方は、そんな数値では計り知れない力を見せ、凛やマニトウスワイヤーすら苦しめた。
 凛は今、そんな『てんこぶ姫』のような戦い方をしている。
 そうとは知らず、動きの読めない凛の攻撃に、今や防戦一方となった馬頭。
 執拗に繰り出される攻撃をかわし続けていると、目の前に一本の樹木が倒れこんできた。
 それは凛の攻撃によって起きたもの。しかし、今の馬頭にとってそんな原因より、樹木に押し潰されないように、身をかわすのが精一杯だ。
 寸前で倒れこむ樹木から身をかわし、安堵の溜息をつく馬頭。その油断が、次に放たれていた矢を気づけなかった。
 霊光矢は馬頭の足元で長い紐状に形を変えると、そのまま馬頭の足首を絡めとった。
 その場にひっくり返り、身動きの取れない馬頭。
 そんな馬頭を助けようと駆け寄った牛頭の背後にも、一本の霊光矢が。
 その霊光矢はそのまま四散し、投網となって牛頭を頭から包み込んだ。
「嘘だろっ!?」
 金鵄は、我が目を疑った。
 いくら、てんこぶ姫のようなトリッキーな戦法を身につけたとしても、この牛頭と馬頭。
 先程も言った通り、あの手長足長と変わらない戦闘力を持っているはずだ。それを、いとも簡単に取り押さえるとは・・・?
「牛頭っ!? 馬頭っ!?」
 そう思ったのは、金鵄だけでは無い。
 予想外の出来事に慌てた嫦娥。凛の前に飛び出し、クパッ!と大口を開けると、2メートルはあろうかと思われる長い舌を振り上げた。
 それを鞭のように振り回し、凛に襲いかかる。
 だが、凛はそんな攻撃をまるで風のようにかわし、一気に間合いを詰めると、霊光矢の矢尻を嫦娥の額に当てた。
王手!
 為す術もなく呆然と立ち尽くす、嫦娥。
「お・・驚いたわい、儂の負けじゃ・・・。そのまま、その矢を射るがいい」
 嫦娥は全てを諦めたように、そう呟いた。

 弦を引く凛に腕に、力が入る。


① 凛は弓を下げ、戦いを終わらせた。

② 凛は、嫦娥に止めを刺そうとした。
 

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第18話「 妖木妃の目覚め -後編-」

① 凛は弓を下げ、戦いを終わらせた。


 そのまま弦を離せば、霊光矢は嫦娥の額に突き刺さるだろう。
 だが・・
 凛は弓を下げ、その矢を消し去った。
「な・・なぜ、とどめを刺さない。凛っ!?」
 まさしく鳩が豆鉄砲を喰らったように、目を丸くして凛に飛びよる金鵄。
「わたしの目的は柚子村を守ることであって、妖怪を殺すことじゃない・・。それに・・・」
「それに・・?」
 凛は、嫦娥や牛頭馬頭を見渡し、
「この人達、最初からわたしを殺す気なんか、なかったみたいだし!」
と、答えた。
「だから、牛頭や馬頭も浄化消滅させないで、生け捕りにしたのか?」
 今でも信じられないといった金鵄に対し、凛は嫦娥に話を振った。
「そうですよね? 嫦娥さん・・」
「何故、そう思ったんじゃ?」
「わたしは幼いころから霊感が強く、霊や妖怪が放つ恨みや憎しみなどの気なども、感じ取れるんです。でも、嫦娥さんやそちらの二人の妖怪からは、殺気どころか、敵意すら感じ取れなかった」
「・・・・・・・・・」
「それに嫦娥さん。貴方は消滅しようとしていた、千佳の魂も救ってくれたことがある。わたしには、根っからの悪人とは思えないんです」
 凛の言葉を、一つ一つ噛みしめるように黙って聞いていた嫦娥。
 そして、フトっ・・凛の顔を見上げると、
「儂は、黒い妖魔狩人。お前さんを、妖木妃の下へ辿りつかせたくなかった・・・」
と、静かに答えた。
「それは妖木妃の身を守ることが、お前たちの役目だからだろう?」
 率直に言い返す金鵄。
「いや。そうことじゃ、ないわい」
 嫦娥はゆっくり首を振り
「その逆じゃ。今、妖木妃と戦えば、黒い妖魔狩人が敗れるのは目に見えておる。それを阻止したかったんじゃよ・・・」
「な・・なぜ、お前が凛の身を案じるんだ!?」
 嫦娥は、金鵄の問いに鋭い目つきで睨むと
「簡単な理由じゃ。あの妖木妃を倒せる可能性があるのは、妖魔狩人たちだけじゃ。だからこそ、こんなところで無駄死させるわけにはいかんのじゃ!」
 と、キッパリ言い返した。
「嫦娥さん、貴方は妖木妃を・・・?」
「ああ・・、殺したいと思っておる。なぜなら、あやつは儂の大切な夫を殺した、憎むべき敵だからじゃ!」

「今よりはるか昔・・・。この国では縄文時代と呼ばれていた頃の話じゃ。
 当時・・儂は、仙女と呼ばれる神族の一人じゃった。
 そして、儂には同様に神族である、『ゲイ』という名の夫がおった。ゲイは弓の達人で、数々の悪鬼を倒し、勇者と讃えられていたんじゃ」
「あっ!その話は僕も聞いたことがある。たしか・・・」
 金鵄はそう言うと、その続きを話しだした。
 ところがゲイの倒した数々の悪鬼の中には、当時・・国を納めていた天帝の、九人の息子たちも含まれていたんだ。
 天帝は激しく怒り、ゲイとその妻・・嫦娥から神族の能力を消去し、ただの人間に落として、一族から追放したんだ。
 神族から追われたゲイは、再び神族に返り咲こうと、全ての仙女を統率する西王母の下を訪ね、長寿の薬を貰おうとしたんだ。
 ところが、永遠の命に目が眩んだ嫦娥は、夫ゲイを騙し、長寿の薬を奪い取ると月へ逃げてしまったんだ。
 神族に戻れなかったゲイは、その後可愛がっていた弟子に騙し討ちを喰らい、そのまま亡くなったと聞く。

 金鵄の話を、ここまで無言で聞いていた嫦娥。
「今…金鵄が話した経緯が、儂らの世界で語り継がれている事の経緯じゃ。だが・・」
「・・・・?」
「その話は、真実ではない。捏造されておるのじゃ!」
「捏造!? 作られた話ってこと?」
「むろん、大筋の流れはそんなところじゃ。天帝の怒りを買って人間に落とされた事。西王母から長寿の薬を貰うあたりの経緯はな。
 じゃが、ゲイを神族から落とすように、背後から天帝を炊きつけた者がおる。
 妖木妃じゃ!
 妖木妃は悪行を働いた息子だけでなく、いずれゲイは天帝の命すら脅かすじゃろうと、憤りを感じておるその心を、揺さぶってきたのじゃ。
 そして薬を渡した西王母。アレも本物ではなく、妖木妃が化けた姿じゃ。
 西王母に化けた妖木妃は、儂に偽の薬を渡した。その薬は妖怪変化の薬。奴の言うがままに薬を飲んだ儂は、このようなヒキガエルの妖怪と化し、遠く離れた死火山の洞窟に閉じ込められたのじゃ。
 その一方で、儂を探し回っていたゲイには、儂が薬を盗んで月へ逃げたと偽りおった。
 そして、神族に戻れず普通の人間として生きる事になったゲイを、今度はその弟子を言葉巧みに誑かし、殺害させたのじゃよ。
 元々妖木妃は、死人の腐肉や血を養分として生まれ育った植物型の妖怪。
 永遠の命を手に入れ神族となり、いずれ中国大陸を制圧する野望を持っていたのじゃよ」
 醜いヒキガエルの姿である嫦娥。だが話を語るその目には、その姿とは逆に、美しい涙が溢れていた。
「二つほど疑問点があるけど、いいかい?」
 金鵄が、ゆっくり問い始めた。
「一つ、妖木妃は何故そこまで、ゲイに執着したのか? そしてもう一つは、西王母から手に入れた本物の長寿の薬は、いったいどうなったんだい?」
 たしかに・・・。凛もそこを知りたいといった表情で耳を傾ける。
「ゲイについては後ほど話そう。先に薬の件じゃが、お主らが想像している通り、妖木妃が服用したよ。じゃが・・・・」
「!?」
「妖木妃が手に入れた薬。実はアレは薬ではなく、一種の寄生生物の卵じゃった」
「寄生生物・・・の、たまご・・・っ!?」
「本来ならば人間の心臓に寄生し、血液から養分を吸収する代わりに、老化を鈍らせる成分を送り込むことで宿主の寿命を維持する」
「それが・・・長寿の秘密?」
「そうじゃ。だが、妖怪である妖木妃に寄生した生物は、栄養分ではなく妖力を吸収し、一匹の新たな妖怪へと進化したんじゃ」
「まさか・・・!?」
「そう、頭にある花の髪飾り。アレこそ寄生生物が、絶対防御の能力を備えた妖花に進化したものなのじゃ。
 結果的に、妖木妃は神族になれず妖怪のままで、百年の生体活動を維持するためには、その倍の年月を眠りつかなければならない。その代わり妖花の髪飾りという、無敵の防御力を手に入れた」
 嫦娥の話に、凛は表情を曇らせた。初めて妖木妃と戦ったあの時あの恐怖を、思い出したからだ。
「儂はどうしても、夫ゲイを殺された復讐を遂げたかった。だからこそ、幹部として奴に付き添い、長年奴を倒せる手段を探し続けていた。そして、ある事に気づいたのじゃ!」
「ある事・・・?」
「それは、先程お主たちが尋ねた、妖木妃が何故我が夫ゲイにそこまで執着したか?に繋がる。
 たしかに神族だった頃のゲイは、数多くの悪鬼を倒した。妖木妃が最大の難敵と想定したのも無理はない。だが、妖花の髪飾りを手に入れて、尚且つ・・普通の人間になったゲイを、そこまで恐れる必要があったのかを・・・?」
 言われてみれば、あの妖花の髪飾りはこちらからの攻撃を全て防御する。それが物理攻撃であっても、霊力の攻撃であっても・・・。
「そう。妖木妃の強さの秘密はお主たちも知っての通り、髪飾りによる絶対防御。じゃが、もし・・あの髪飾りを破壊できる方法があるとしたら?」
「あるんですか!?」
「あの妖花の髪飾り、いや・・寄生妖怪は、闇の属性を持っておる。闇の属性は、他の風・地・火・水の四大属性の力を半減させる事ができる。奴の絶対防御もソレによるものじゃ」
「やはりそうか!」
「じゃが、唯一・・その闇属性を打ち敗れる属性がある!」
「光属性っ!!?」
「その通り。それこそが、妖木妃がゲイを恐れた、真の理由なのじゃ!」
「ちょっと待って!!」
 話が、もっとも佳境に入った所だというのに、凛は嫦娥の言葉を遮った。
ガサッ・・!ガサッ・・!
 気配だ! 強い殺気を持った気配を感じる!
うぉぉぉぉぉぉっ!!
 土砂崩れのような大きな雄叫びが響き渡ると、何者かが森の茂みから飛び出し、嫦娥に襲いかかろうとする!
 だが、凛の戦いによって培われた反射神経が、即座に弓を射らせた。
 霊光矢を左肩に受け、そのまま倒れこんだソレは・・・
「こいつは、山精っ!?」
 身長は小学生高学年くらいだが、顔つきは中年男性。骨格はガッシリとしていて、その身体を支える太く筋肉質な一本足!
 それは白陰直属の妖怪戦闘兵、山精であった。
「気をつけろ凛!山精は集団で行動する。一体だけではないはずだ!」
 金鵄の忠告通り、周りの森から次々に山精が姿を見せる。
「話は聞かせてもらった・・」
 更に、凛たちを取り囲んだ山精たちの背後から、一人の男が姿を見せた。
 色白の肌、艶々とした黒い長髪。そしてスラリと伸びた長身。妖木妃一番の幹部、白陰である。
「まさか、幹部の一人である嫦娥。汝(うぬ)自身が妖木妃様の命を狙っていたとは。本国に連絡を取った後、様子がおかしいので密かに見張っておれば、こんな事になっているとはな・・」
「いやいや、白陰殿は案外鈍いのですな。我輩はもっと早くから。そして・・・、妖木妃殿もとっくに気づいておられたと思いますぞ」
 同時に野太い声と共に褐色の大男、ムッシュ・怨獣鬼も姿を現した。
 その両肩には大きな籠を担いでおり、その中には複数の女児と、女性警官らしき姿が見える。
「最悪だ・・・」
 顔面蒼白の金鵄から、溜息のように言葉が漏れた。
 四方八方、数十体の山精にそれを操る白陰。そして、おそらく妖木妃に次ぐ実力者であろうムッシュ。
「うぉぉぉっ!!」
 そのムッシュに、牛頭と馬頭が襲いかかる。だが、地獄の番人と呼ばれた牛頭と馬頭ですら、ムッシュの足元にも及ばない。
ガツッ!! バギッ!!
 たった二撃の拳。これだけで牛頭馬頭の二人を沈黙させた。
「吾輩こう見えても、屠殺場に送られた家畜たちの怨念の集まり。ですから、貴殿らのような牛や馬の妖怪には、危害を加えたくは無いのですがね」
 足元に転がる二体の妖怪を見下ろし、不敵に微笑んだ。
 凛や嫦娥にも、数十体の山精たちがじわじわと歩み寄る。
 弓を構え、相手の動きを注意深く探る凛。だが、どう考えても戦って勝利するどころか、逃げることすら難しい状況下。
「こうなれば一か八か・・・。戦って活路を見出すしか、手は無い!」
 今まで霊体のままでいた金鵄も実体化し、戦闘準備に入ろうとする。しかし・・・
「うぐッ・・・!?」
 実体で飛び上がった瞬間、激しい痛みに襲われた金鵄は、そのままユラユラと舞い落ちた。
「金鵄っ!?」
「くそ・・っ、こんな肝心なときに戦うどころか、飛ぶことすらできないなんて・・・」
 悔しさに顔を歪ませる金鵄。
「黒い妖魔狩人よ、ここは儂が突破口を開く。そうしたら、全力でこの場を逃げ去るのじゃ・・」
「わかりました。でも・・・」
「ん!?」
「貴方も一緒ですよ?嫦娥さん」
 優しい眼差しで見返す凛。その瞳に嫦娥は口元を緩ませると・・
「承知したわい!」
 と、今までにない優しい口調で返した。
「行くぞ!」
 嫦娥はそう叫び、一番手薄な山精の群れに飛び込むと、前屈みに頭を下げた。
ブシュッッッ!!
 嫦娥の後頭部、いや・・耳の後ろ辺りから、激しい水しぶきが飛び散る!
 水しぶきを浴びた数体の山精が、突然・・目や口を抑えて苦しみだした。
「毒の水飛沫!? そんな奥の手があったとはな・・・」
 驚く白陰。そう、それは嫦娥最後の切り札。致命傷ではないが、しばらくの間、敵の動きを封じ込める程度の毒性はある。
「さぁ、早くっ・・黒い妖魔狩人!!」
 嫦娥の声に、隊列の乱れた隙間を走り抜けようとする凛。
 その後に続く嫦娥・・・・
「ぐわっっ!!」
 だが、その嫦娥の身体を、背後から貫いた細長い影。
「嫦娥さん!?」
 驚いて振り返った凛が見たもの。
 それは嫦娥の胸から突き出た、白い蛇。蛇は離れた場所にいる白陰の右腕に、繋がっている。

妖魔狩人若三毛凛 18話5

「くそぉぉっ!」
 弓を構え、応戦しようとする凛。
「だ・・だめじゃ!!」
 はぁ…はぁ…と肩で息する嫦娥だが、己の状況よりも凛の身を案じるように制すると、
「こ・・これを・・持って、逃げる・・んじゃ・・」
 そう言って懐から一つの白い瓢箪を取り出し、凛に放り投げた。
「その中には、妖木妃を倒す事のできる・・秘密が入っておる・・・」
 嫦娥は凛が瓢箪を手にしたのを見届けると、
「白陰ーっ!!」
 長い舌を鞭のように振り上げ、白陰へ向かっていった。
ガブッッ!!
 だが、その舌が届く前に白陰のもう一方の左腕が、右腕同様白い蛇と化し、嫦娥の喉元に喰らいついていた。
「蛙が蛇に勝てると思うなよ!」
 白陰の言葉と連動しているように、左手の蛇は嫦娥の喉元を喰い千切る。
 噴水のように噴き出る、緑色の血液。
「仇を・・・。ゲイの仇を・・・」
 嫦娥はそのまま崩れるように倒れ、瞳孔が開いたその瞳は、絶命しているのが一目瞭然だった。。
 呆然と立ち尽くしたまま、その光景を見届けていた凛。
「な・・なんで? なんで、平気で・・仲間だった人を殺せるの・・・!?」
 ワナワナと肩を震わし、白陰を一直線に見据えるその瞳。明らかに激憤していることががわかる。
「だめだ・・凛。今は、逃げることだけを考えるんだ・・・」
 弱り切った身体で、必死で忠告する金鵄。
 とは言うもの、そんな凛と金鵄を山精たちは容赦なく取り囲んでいた。
「この世で唯一、妖木妃様に傷をつけた人間・・黒い妖魔狩人。だが、汝もここで終わりだ」
 右腕を高々と上げ、一斉攻撃を合図しようとする白陰。そして、その指先を凛へと向けかけたその時・・!
 山精に負けない大勢の人影の群れが、一斉にその中に乱入した!
 それは、全身真っ赤な肌の、まるで子どものような姿の大群。
「これは、赤子っ!?」
 驚く白陰の言葉どおり、それは小人妖怪、赤子。妖怪姑獲鳥(こかくちょう)の力で生み出だされた、初芽涼果(うぶめすずか)の得意な術。
 次から次へと湧き出るように現れる赤子たちは、凛と山精たちを遮るように割って入る。
「こんな雑魚妖怪、さっさと捻り潰して妖魔狩人を狙え!」
 剣を取り出し、赤子たちを斬りつけながら、命令を下す白陰。
 ムッシュも軽く腕を振り回すだけで、赤子たちの身体を叩き落とす。
「若三毛、早くこっちへ!!」
 凛に向って、あまり聞き覚えのない声が掛けられた。
 半信半疑のまま声の方向へ進むと、突然・・旋風が凛の身体を包むように舞い降りた。
 旋風は人影となり、ギュッと凛の腕を引き寄せる。
「一気に飛び去るから、しっかり私につかまっていて!」
「ええっ!? 貴女は・・・!?」
 それは、まさかの人物・・・・。
 長く靭やかな黒髪。170cm台の長身、高校生と見間違えられるような整った体つきに、ややツリ目ながらも優里とは違った美少女。
 凛の学校の先輩で初芽涼果の親友・・・。日笠琉奈(ひかさりな)であった。
「な・・なぜ、日笠先輩が・・・?」
「理由(わけ)は、あと・・。いくよーっ!」
 琉奈はそう言って凛の身体を抱きしめると、まるでロケットのように空高く飛び上がる。
 そして、全身に旋風のような気流を纏わりつかせると、そのまま山を下るように飛び去っていった。
 予測もつかない事態に、目を白黒させ立ち尽くしていた白陰・ムッシュ・山精たち。
 ハッと、我に返り・・・、気づけば赤子たちの姿も見当たらない。
「いつの間に・・、空を飛ぶ者を・・・・?」
 今尚、信じられないといった表情で、飛び去った行方を見送り続けていた。


「どうやら、追っ手はないようね!」
 琉奈は飛びながら後方を確認すると、ゆるやかに減速し、あぜ道へ舞い降りた。

妖魔狩人若三毛凛 18話6

 こちらでも目を白黒させ呆然とする凛。
「ど・・どうして、日笠先輩が・・空を・・・?」
 凛の問いに、琉奈はおどけたようにペロっと舌を出すと
「やっぱ・・驚いた? まぁ…普通、空飛んだら驚くよね。詳しい話は涼果が戻ってきてから話すけど、結論から言えば、妖怪鎌鼬(かまいたち)・・・だっけ? 私、彼の力を引き継いだんだ!」



 第十九話へ続く(正規ルート)

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第17話「瀬織の選択 -前編-」

「改めて、ワタクシの名は棚機 瀬織(たなばた せおり)。今まで隠していて申し訳なかった・・・」

 一人のポニーテール少女が、深々と頭を下げた。
 凛よりは少しだけ背が高く、やや細めだが、ほぼ標準的体型で色白の肌。
 クリクリとした瞳が愛らしい、どこにでもいそうな美少女。
 凛も改めて見る、『青い妖魔狩人』が頭巾を外した素顔。
 それが、この瀬織であった。
 ここはマニトウスワイヤーの時の戦いで、負傷した凛が運び込まれたホテルニューオーニタの一室。
 どうやら瀬織はこの部屋を、長期に渡って借りきっているようだ。
「今・・着ているのが、学校の制服ですか?」
 凛の問いに無言で頷く。
 白地のブラウスに、大きめの襟。それに通ったネクタイ。
 襟とネクタイ、そしてミニのプリーツスカートは、水色地に白いチェック模様。
 そう、あのとき・・・柚子村のゲームセンターで、ゲーム機に取り込まれた女子高生たちと同じ制服。

妖魔狩人若三毛凛 17話01

「そうだ、來愛(くるめ)女子大学付属高等学校一年生。それが普段のワタクシの姿だ」
「そして、真の姿は・・・・神族の一人である、瀬織津(せおりつ)姫!」
 今まで黙って聞いていた金鵄が、ここぞとばかりに口を開く。
 その言葉に瀬織はすぐに反応せず、しばらく間をおいてから頷くと、
「正確には、今のワタクシは、もう神族ではなく、普通の人間となんら変わりがない」
 と答えた。
「たしかに霊鳥金鵄が言った通り、ワタクシの真名は瀬織津。日本神話の時代・・、水神とも呼ばれていた」
「そんな古い時代から・・!?」
「勘違いしないでほしい。別に1000年以上も、生き続けているわけではない」
 先日まで、頭巾越しで常に無表情だったように思えたその目だが、珍しく苦々しくも目尻を垂らしたように見えた。
「話せば長くなるので掻い摘むが、当時ワタクシは神として崇められていた。だが、妖怪どもの企みによりその地位から落とされ、ついには神族であることからも追われてしまった」
「それって、マニトウスワイヤーみたいに・・・?」
「そう。地位だけでなく、永き寿命も消され、人間と同じ寿命になり、何度も~何度も転生し、今に至っている」
「なるほど・・・。それで妖怪を憎んでいるんだね」
 金鵄のその言葉に、瀬織はキッと目尻を上げたが、それ以後この件について、何も語ろうとしなかった。
「しかし・・若三毛凛。マニトウスワイヤーの件では本当に感謝している。貴方がいてくれなかったら、ヤツを倒すことはできなかっただろう」
「いいえ、わたし一人の力ではありません。あの場に駆けつけた人、みんなの力があったからこそ、解決できたんです。もちろん棚機さん、あなたも居てくれたから・・こそです!」
「瀬織でいい。勝手で悪いが、これからも力を貸してほしい・・」
「こちらこそです!」
 たった一日の戦い・・・。
 だが、そのたった一日が、これまでに無い、厳しく激しい戦いだった。
 そんな戦いを乗り越えてきたからだろう。
 今、凛と瀬織の気持ちはしっかり繋がっている。
 金鵄はそう感じ取っていた。

「ところで、高嶺優里と斉藤千佳の具合はどうだ?」
 急に切り替わった話題に、凛は一瞬戸惑ったが・・・ 
「優里お姉さんは、精密検査で予想以上に深い傷を負っているのがわかり、今・・中央区の病院に入院しています。もっとも、水無月さんの応急手当てと、この一週間の入院で、だいぶ身体の傷は癒えたようですが。それでもまだ動ける状態ではないみたいです」
「聞く所によると、奥技とやらのせいで、相当身体に負荷が掛かり、身体の機能が停止状態近くまでなったらしいからな。回復が長引きそうだ」
「はい。もうしばらく入院が必要みたいで、三日に一度、お見舞いに行ってます」
「斉藤千佳は・・・・?」
「千佳の灼熱爪はあの戦いで、粉々に砕けてしまいました。水無月さんの話によると、元々・・全身を覆っていた妖力を、右手に集中させる事によって、あの灼熱爪は出来ていたそうです。
 だから、妖力が完全に元に戻れば、灼熱爪も再構成できるらしいので、毎日妖力の回復のために、水無月さんのお宅に通っています」
「なるほど。それにしても・・・痛いな。貴重な戦力が三人も欠けてしまっている」
「三人?」
 金鵄が不思議そうに聞き返した。
 それに気づいたように凛が
「そう言えば、あの祢々さんという、禰々子河童の女性はどうされたんですか?」
 と尋ねた。
「祢々はトラブル処理で、先日から地元栃木に帰っている。アイツはああ見えても、関東一円の水棲妖怪を束ねる、女党首だからな」
「噂は聞いているよ。過去、数多くの妖怪を退けた女傑だということをね」
「そう・・。だからこそ高嶺優里、斉藤千佳、祢々。この三人が欠けている今、なにか事があると戦力が足りない」


「幸い、この一ヶ月間、中国妖怪の動きはない」
 ホテルニューオーニタを後にし、JR丘福駅へ向かう途中、思い出したように金鵄が呟いた。
 わかっているとは思うが、霊鳥である金鵄は一般人には見えない。当然、言葉も聞こえないが、魂を共有した凛とならば、近距離という限りはあるものの、直接声は出さなくとも会話は可能である。
「でも・・中国妖怪にしろ、マニトウスワイヤーのような敵にしろ、どんどん強敵が現れている。瀬織さんの言うとおり、今・・何かあったら防げるか、どうか・・?」
「とにかく、優里や千佳が復帰するまで、何事もなければいいんだけどね」
 そう話しながら駅まで、あと1~2分というところで
「あ・・っ、やっぱりそうだ! 黒い妖魔狩人~っ!?」
 と声を掛けられた。
「えっ?」
 振り返るとそこには、一人の若い女性が立っていた。
 それは雪のように白い肌・・白く長い髪。
 流し目が得意そうな、潤んだ色気のある目。
 その割には、タンクトップにTシャツを重ね着。キュロットパンツというスポーティーな出で立ち。

妖魔狩人若三毛凛 17話02

 凛には、まるで見覚えがなかった。
「あ・・あの・・、どちら様でしょうか?」
「あら、あたしの事・・見覚えがない? じゃあ・・こうしたら、ど~ぅ!?」
 と女性は、なにやら魔法攻撃でもするような仕草をとった。
「り・・凛・・・、気を・・妖気・・を感じ取るんだ・・!」
 そのとたん、何かに気づいたように声が振るえる金鵄。
「う・・うん・・、この・・妖気、初めてじゃ・・ない!? まさか・・・」
 同じように驚きを隠せない凛。
「やっと思い出してくれた!? そう、あたしは雪女郎よ~~っ♪」
 雪女郎!?
 雪女と同種族の妖怪で、マニトウスワイヤーに召喚され、凛や瀬織と戦った・・。
「た・・たしかに雪女郎だけど、だけど・・・なんなんだいっ! その格好は~っ!?」
 雪女と言えば、白い和服姿が定番だ。現にマニトウスワイヤーに召喚された時も、そういった姿だった。
「あんなもん、イメージ合わせ、コスプレみたいなもんよ~っ!(笑) 黒い妖魔狩人だって、ゴスロリ服着ていたじゃなぁーい!?」
「わ・・わたしのは戦闘服であって・・、コスプレじゃ・・ありません!」
「あ、そうなんだ!? どっちにしろ~、いくら妖怪でも、町中であんな格好している方が、恥ずかしくない?」
 お前は本当に妖怪なのか!?
 そうツッコミたくなるのも抑えて、凛も金鵄も、ただ・・唖然とするばかりだった。
「・・・で、その雪女郎が、どうしてこんな所にいるんだい?」
 呆れたように問いただす金鵄。
「その前に、もう一人・・、そこで待っている子がいるんだ!」
 雪女郎はそう言って、背後に目を送る。
 すると、今まで気付かなかったのが不思議なくらい、雪女郎のすぐ背後から、もう一人の女性が姿を現した。
 赤みがかった肌に、赤毛のショートカットヘアにカチューシャ。
 強気そうなツリ目だが、瞳は挙動不審のように、おぼつかない。
 雪女郎とは真逆に、清楚な感じのするブラウスにリボン。そしてジャンパースカート。
「あ・・あの・・ぉ・・、こ・・こんにち・・わ・・」
 性格も控えめなのか、オドオドしたところも見受けられる。

妖魔狩人若三毛凛 17話03

「ま・・まさか、貴方は・・・?」
 今度はすぐに妖気を探った凛と金鵄。
 だが、あまりの驚きにそれ以上、声が出ない・・!
「はい・・、サ・・サラマンダー・・・です・・ぅ・」
「いや、嘘だろぉ!? キミが・・あの火トカゲぇぇっ!?」
「ていうか・・、女の子だったの!?」
 珍しい、凛と金鵄によるダブルツッコミ!
「いやぁ~っ、まさか!そこまで驚くとはね~ぇ!?」
 ニヤニヤとほくそ笑む雪女郎。
「クールなイメージと程遠い雪女郎にも驚いたけど、サラマンダーに関しては、仮にマニトウスワイヤーが復活したと言われても、それ以上に驚くよ!」
 もはや、金鵄にも何がなんだか、解らなくなってきた。
「でも、どうして二人ともそんな姿で、こんな所に・・・?」
「その前に、駅構内のファーストフードでも入らない? 雪妖怪のあたしとしては、やっぱ・・この暑さは辛い」

 雪女郎の申し出により、丘福駅構内にあるドーナッツチェーン店に入った一行。
「知っての通り、あたしとサラマンダーの二人は、マニトウスワイヤーに召喚されて、この地に来た。ちなみに黒い妖魔狩人は、召喚ってどんな契約になっているか、知ってる?」
「いえ・・?」
「基本的に召喚って、魔力や霊力などの供給という見返りがあって、そこで力を貸してやるという、従僕の契約を結ぶんだよ」
「はい・・・」
「だが、マニトウスワイヤーは違った。ヤツはあたし達の力を借りるのではなく、あたし達そのものを操ることができたからね。だから~なんの見返りも無い、無料(タダ)働きってやつだったのよね」
「それは僕もやられてわかった。自分が自分でなくなるんだ・・・」
「そんな訳で、マニトウスワイヤーには恩も縁もないから、事が済んだら、みんなすぐに、元の世界や国へ帰っていくのよ」
「そういうものなんですね・・・」
「で・・あたし達も本当なら、即座に地元に戻りたいんだけど・・。ほらっ、あたし達って、マニトウスワイヤーに融合されたじゃない?」
「ああ・・、はい!」
「その時に妖力の殆どをヤツに持ってかれて、帰る力も残っていないわけ」
「なんと!?」
「そこで、地元に戻る力が回復するまでここに滞在することにしたんだけど・・、知らない土地で生きていくのも大変じゃない?」
「はい・・?」
「だから、あたし達が完全回復するまで、従僕契約をして、その日~その日を生き延びる程度の霊力供給を、あたし達にしてくれないかな?」
「はい~~~っ!?」
「もちろん、無料(タダ)で霊力を貰おうなんて思っていないよ? その分、ちゃんと働くからさ!」
 そう言って、雪女郎とサラマンダーは満面の笑みを浮かべた。
 もっとも、状況を今ひとつ理解していないサラマンダーに至っては、笑顔がぎこちなかったが。
「状況は理解したけど、なぜ・・凛なんだい? キミ達は、その凛を殺そうとしただろう?」
「やだな~~っ! あれは~ゎ、あたし達の意思じゃなく、マニトウスワイヤーに操られていたせい。金鵄ちゃんも同じことやってたじゃん!」
「き・・金鵄ちゃん・・?」
「そうだね~!」
 思わず微笑んでしまう凛。
「いいですよ! わたしの霊力で良ければ、少しくらいならお分けします」
「さすが、黒い妖魔狩人! あの時戦ってみて、一番優しそうだな~って思っていたんだよね!」
「身勝手な解釈だね・・」
 呆れる金鵄を他所に、雪女郎は凛の手を握り・・
「それじゃ、あたしの言うとおりに契約の言葉を言ってみて!」
「はい」
「我・・汝と力の契約を結ぶ。汝は肉を・・我は血を・・、互いに分け与えると誓う」
 雪女郎の言うとおり、凛は契約の言葉を並べた。
 その瞬間、青白い凛の霊力が雪女郎に流れ込んだ。
 だが・・・
「あぁぁっ!!?」
 思わず仰け反る雪女郎!
「ど・・どうしたのぉ・・・?」
 サラマンダーが心配そうに顔を覗きこんだ。
「強すぎる・・・・」
「えっ!?」
「この子の霊力、浄化の力が強すぎて、あたし達妖怪の身体には合わない!?」
「そ・・そんなぁ・・・?」
 ガックリと落ち込む二人。
「ごめんなさい・・・」
「いや、黒い妖魔狩人のせいじゃない。でも・・浄化の力が、ここまで強いとは思わなかったわ」
「ねぇ・・雪女郎・・・」
 そんな雪女郎にサラマンダーが声を掛けた。
「もう・・一人・・・、青い・・妖魔狩人・・・なら、どうかな・・・?」
「青い妖魔狩人か・・・」
「あ、いいかも! 瀬織さんも強い霊力を持っているし!」
 だが、賛同する凛を諌めるように
「いや、おそらく無理だと思う。たしかに瀬織の霊力は、マニトウスワイヤーと同じ元神族だっただけに、精霊や妖怪との波長も合いやすいかもしれない」
「だったら?」
「だが、彼女は妖怪を憎んでいる。とても、妖怪のために霊力を分け与えるとは思えない」
 たしかにそうかもしれない・・。
 凛は金鵄の言葉に、何一つ言い返すことはできなかった。

 結局その後、話をまとめる事ができず、雪女郎たちと別れることなった。
「ごめんなさい、全然役に立てなくて」
 そう項垂れる凛に対し、雪女郎はニッコリ微笑むと・・
「ううん、快く引き受けてくれようとした気持ちだけでも嬉しい。契約はできなかったけどさ。もし、あたし達の力が必要な時は、いつでも言って!」
「ありがとう」
「あ、それと~っ、もう一つ! もしかしたら、あたし達以外でも、この地に留まっている精霊がいるかもしれない」
「え、雪女郎さんたちみたいに、帰れなくなった精霊や妖怪が他にも・・・?」
「帰れなくなったのか・・・、それとも『帰る気が無い』のか!? とにかく、ここ数日。この土地で、嫌な気を感じるのよ」
「わかりました」
 こうして一行は、その場は分かれ去っていった。

『続いて、次のニュースです。 あの謎の震災から一週間たった今日ですが、またしても大生堀公園近くで、新たな遺体が数体発見されました。
 ただ、遺体は比較的新しく、バラバラに切り刻まれたものや、動物に食い殺されたようなものもあり、警察は震災との関連性。身元の確認などを急いでおります』
 彼女達が去った駅前の建物に設置された大型モニターで、TVのニュースが報道されていた。

| 妖魔狩人 若三毛凛 if | 17:46 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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妖魔狩人 若三毛凛 if 第17話「瀬織の選択 -中編-」

 あれから三日後。
 ここは丘福市中央区にある、大生堀公園。
 周辺の長さ、約2㎞という大きな池が特徴の公園で、通常ならジョギングや景色を楽しむ人々が集まっている。
 だが一週間以上前、マニトウスワイヤーが起こした災害で、この近辺は特に大勢の犠牲者が続出した。
 そのため、一部立ち入り禁止区域などもあり、人影は殆ど見受けられない。
 そんな中で、カメラや照明器具、レフ板など撮影機材をもった集団が、なにやら池の前に集まっていた。
 中心にいるのは、10代と思われる3人の少女。
 その内の一人は、日笠琉奈(りな)。
 そう、ティーン雑誌の読者モデルで、凛と同じ中学の先輩。
 そして、あの生徒たちが赤ん坊化した事件の中心人物。
 もう一人。琉奈を見守るように、撮影スタッフと一緒にいる少女・・初芽涼果(うぶめすずか)。
 琉奈のクラスメートで、赤ん坊化事件の首謀者。
 妖怪姑獲鳥に転生した少女だが、瀬織に浄化され、今ではほとんど、普通の女子中学生に戻っている。
「琉奈ちゃん、薫ちゃん、貢実(つぐみ)ちゃん。一旦休み入れようか!?」
 カメラマンのすぐ側に立っていた中年男性、小済賢一は、そう声を掛けてきた。
 その言葉に三人は池縁から離れ、それぞれベンチに腰掛ける。
 八月も、もうじき終わりだというのに、まだまだ残暑が厳しい。
 琉奈はハンカチで汗を拭っていると・・・
「琉奈、おつかれ~っ♪」
 と、缶ジュースを両手に、涼果が歩み寄ってきた。
「ありがとう、涼果!」
 涼果に手渡された缶ジュースを開け、口に含む。爽やかな清涼感が身体を駆け巡る。
「今日、仕事が終わったら、アレ・・・。連れて行ってくれるんでしょ?」
「うん。でも・・・、あまりいい状況じゃないんだよね」
 それからニ時間。
 赤みがかった夕暮れも薄暗くなってきた頃、
「じゃぁ、琉奈ちゃんはここまで。上がっていいよ!」
 小済賢一が声を掛ける。
「は・・はい!」
「薫ちゃん、貢実ちゃんは、あと・・もう四~五枚撮ろうか!?」
「えーっ!?」
「薄暗くなってきた今こそ、『大人への移り変わり』というコンセプトに合うんだよ!」
「もう、疲れた」
 ぼやく薫と貢実を後に、琉奈と涼果は早々にその場から離れていった。


 大生堀公園から歩いて2~3分にある、小さな動物病院。
 琉奈と涼果は、ここに立ち寄った。
「こんにちわ。あの子の具合、どうですか?」
 入って早々、そう切り出す琉奈。
 その言葉に反応したかのように、奥から白衣を着た中年女性が現れる。
 そして、寂しそうな笑みを浮かべると・・
「いらっしゃい、日笠さん。でも・・あまり良くはないわね」
 と静かに返した。
 奥の部屋には十台前後のゲージが並んでおり、琉奈と涼果はその内の一つを覗きこむ。
 そこには狐色の毛に覆われた、猫ほどの小動物が丸くなって眠っていた。
 見ると、その腹には幾重にも、包帯が巻かれている。
「この子がそうなの?」
 涼果は、小動物を見つめながら琉奈に問いかけた。
「5日前・・。仕事でこの近くに来た時、木陰で蹲っているこの子を見つけたんだ。でも、全身血まみれで」
「それで日笠さんがここに連れて来たんだけど。正直、今でも生きているのが不思議なくらいな重症よ」
 中年女医も一緒にゲージを覗き込み、そう付け加えた。
「事故にあったんですか?」
「判らないわ。ただ・・、腹部に大きな刺し傷があってね。鋭い何かで貫かれているみたいだけど・・・」
「誰かが、刺したんですか!?」
「誰か・・? でも・・たぶん、人間では無いと思うの。傷口に爪痕のようなものがあったから・・」
「じゃあ、虎とか・・ライオンとか?」
「そういう動物とも、違うと思うわ。でも、なんだかは、わからない」
 涼果と女医の話を黙って聞きながら、琉奈は小動物の身体を撫でてやる。
「先生。私・・モデルやってるから、少しくらいならお金用意できます。だから、なんとか助けてやってください・・・」
 静かに。それでいて強く頼み込む琉奈。
「出来る限りのことはするわ。でも、覚悟はしておいてね」
 女医はそこまで言うと、治療室の方へ去っていった。
 それを見届けると、涼果は先程とは打って変わって、眉を潜めながら・・・
「ねぇ、琉奈。その動物、なんていう動物なの?」
 と尋ねた。
「先生の話だと、イタチらしい・・・」
「琉奈、怒らないで聞いてね。その子・・・、普通のイタチじゃないよ!」
「・・・?」
「微かだけど、妖怪のような・・、そんな気を感じる」
 険しい表情で、そう告げる涼果。だが、琉奈がとった反応は・・
「やっぱり、そうなんだ」
 と、予想外のものだった。
「声がしたんだ、『助けて・・・』って。
 そして、その声を辿っていったら、その子が倒れていた」
「琉奈! 妖怪かもしれないって、わかっていて・・・!?」
「関係ないじゃん。イタチだろうが・・、妖怪だろうが・・。傷だらけで助けを求めているのに見捨てるなんて、そっちの方が酷くない?」
「でも。もし・・、もし・・、琉奈に万が一の事があったら・・・!?」
「私の親友も、妖怪の力を持っているよ」
 琉奈は、キッパリと言い返した。
「涼果は、私に万が一のことをするの?」
「そ・・、それは・・・?」
 琉奈の真っ直ぐな視線に、涼果は言葉を詰まらせる。
「ないよ!」
 絞りだすように、言葉を返す涼果。
「それは、絶対にないよ! あたしは、琉奈が大事だもん!」
「ほら! 妖怪だからって、悪者とは限らないじゃん!」
 琉奈はそう言って、ニッコリ笑った。
 その時、それまで黙って撫でられていたイタチが、ムクっと頭を上げた。
 そして・・・
「逃げ・・るんだ・・・」
 弱々しい声で、そう告げる。
「喋ったっ!? ねぇ、喋れるの? 身体は痛くない?」
 驚きのあまり、矢継ぎ早やに聞き返す二人。
「そ・・んな事はいいから・・、早くここから・・離れる・・んだ!」
 イタチがここまで言った、その時・・・
ガシャーンッ!!
 激しい音と共に、玄関から何者かが駆け込んだ気配。
「どうしました!?」
 女医が駆けつけると、そこには血まみれになった、小済賢一の姿が。
「た・・助けてくれ・・! 化け物・・が・・!」
「えっ!?」
 女医は、理由がわからず外に目をやると・・・
グシャッ!!
 真っ黒な手が、その顔面を鷲づかみにした。
「た・・た・・たすけ・・」
 女医が助けを求める間も無く、鋭い歯が首筋に齧り付いた。
ガブッ・・!
クチャ・・クチャ・・・
ゴクッ!
「マズイ・・・、歳とった人間は、やはり美味くない・・・」
 そう、不気味な言葉を吐きながら、黒い手の本体がゆっくりと姿を現した。
 まず最初に目に入るのは、黒い肌。
 その黒い肌に覆われた体型は、人間の成人となんら変わりない。
 全裸状態で現れたその姿、その黒い顔に爛々と輝く赤い瞳。
 そして、肌が黒いため、より鮮明に浮かび上がる白い歯。
 しかし、その白い歯もクチャクチャと音を立てながら動くたび、赤い肉片が目に入る。
 そいつは、絶命した女医の身体を、更に貪り続ける。

妖魔狩人若三毛凛 17話04

「な・・なんなの・・あいつ・・?」
 ガチガチと振るえる口から、蚊の泣くような声で、琉奈が言葉を漏らした。
「アレの・・名は・・、グール・・・。主に・・中東・・にいる・・精霊・・。いや・・魔神・・・だ・・・」
 琉奈の問いに、弱々しく答えるイタチ。
「ヤツは・・人間の・・・特に・・若い女の・・・肉を・好んで・・・喰う・・・。は・・早く・・逃げる・・だ・・」
「琉奈!!」
 状況を理解した涼果が、目で合図を送る。
 琉奈は静かに頷くと、イタチを抱きかかえ、ゆっくりと窓を開け身体を潜らせた。
「涼果~っ、早く!!」
 先に窓を潜り抜けた琉奈は、上半身を潜らせた涼果の手を引く。
 しかし、元々運動神経が達者でない涼果。
 潜り抜けようと足をバタバタした為、棚に乗せてあった置物に当ってしまった。
ゴトン・・・
 棚の上でゆっくり転がる置物。
「誰か、いるのか・・・?」
 敏感に察知したグールは食べかけの中年女医を放り投げると、扉や診察台を蹴散らすように突進してきた。
「早く!涼果~っ、早く~っ!!」
 涼果を強引に外へ引きずり出すと、その手を引いて一目散に駆け出す。
「若い・・・女・・!?」
 逃げ出した琉奈たちを見つけると、グールも窓から飛び出し後を追う!
 日も沈み、つい一~ニ週間前なら、街灯や街の明かりで、辺りが見渡せるほど明るかったのに、あの災害でアチコチが焼け落ちた今では、僅かな月明かりしか頼れない。
 どこを走っているか分からぬまま、二人と一匹が行き着いた場所は、大生堀公園の中。
「あっ!?」
 池に反射した月明かりが、しゃがみこんでいるような人影を照らしだした。
「助けてくださいっ、バケモノが・・!?」
 琉奈は必死に叫びながら、人影に駆け寄った!
「バケモノ・・・?」
 振り向いたその顔は、あたりの暗さに溶け込むように黒く、目はギラギラと赤く輝き、白い歯には真っ赤な血糊が滴っている。
 そして、そいつの足元には、ミニスカ―トから伸びる、細い足が見える。
「つ・・貢実・・・!?」
 思わず、声を上げた琉奈。
 だが、元・・貢実というべきだろう。
 首からスカートまでの間には、もはや肉片しかなく、人の形はしていない。
「ほぅ。まだ他にも、若い娘がいたか? この国は本当に餌が豊富だ!」
 そう言いながら、貢実を喰っていたグールは、嬉しそうに立ち上がった。
 いや、正確にはグーラ・・。女のグールだ。

妖魔狩人若三毛凛 17話05

 グーラは、ダラダラと垂れる涎を拭くと・・
シャァァァァッ!!
 と叫び声を上げながら、襲いかかってきた。
 必死に飛び避けると、涼果は己の髪の毛を数本引き抜く。
 そして、「ふぅ~っ!!」と息を吹きかけると、髪は赤い肌の子どもの姿に変化した。
 それは、妖怪赤子。
 以前、涼果が教室を襲った時、その手足となって働いた、小人妖怪。
「赤子~っ、あたし達を守って!!」
 涼果の叫びに、数匹の赤子がグーラに飛びかかる。
「今のうちに・・!」
 涼果と琉奈は互いに合図を送ると、再び駆け出していった。
 だが・・・
「娘・・・、美味そうな・・小娘・・・」
 どこからともなく、まるで呪文のような声が響き渡る。
 同時に、気を失いそうになるほどの恐怖が二人を襲った。
 なんと、公園内のアチコチから、黒い肌をしたグールたちが十数体。
 ゆらり・・、ゆらり・・と、集まってくる。
 その中には、もう一人のモデル仲間、薫の身体を、まるでトウモロコシみたいに齧りついている。 そんなようなヤツもいた。
「な・・何匹いるの・・・?」
 更に背後から、赤子の手足を引き裂きながら、ニタリと笑うグーラと、最初に襲ってきたグールも近寄ってくる。
 周りを囲まれるように追い詰められ、琉奈も、涼果も、完全に血の気が失せてしまった。
「だ・・だれか・・・」
「誰か、助けてぇぇぇっ!!」
 涼果と琉奈の叫び声を合図にしたかのように、数体のグールが飛びかかる。
「水泡幕~っ!!」
 その瞬間、二人を覆い隠すように、無数の泡が辺りに広がった。
 泡に阻まれ、二人を襲う事ができないグールたち。
「早く、こっちへ!」
 琉奈たちを導くように、青い衣で身を固めた、一人の少女が声を上げた!
 声に惹かれるように、少女の元へ走り出す二人。
 瀬織を先頭に石段を駆け上がると、赤いレンガの建物に辿り着いた。
 それは公園内にある、丘福美術館。
「早く~っ、中へ!!」
 二人を中に入れると、瀬織は追って来るグール達を見渡した。
「水流輪っ!!」
 瀬織の得意技、水流輪が一体のグールを包み込んだ。
 水流はすぐに白い水泡と化し、中にいたグールは、糸の切れた操り人形のように倒れこむ。
 ピクピクと痙攣するその姿は、徐々に肌が白くなり、やがて人間と見分けがつかなくなると、そのまま永遠の眠りについた。
「なるほど、浄化の術か・・・」
 それを見ていた女のグール・・・グーラ。
「マニトウスワイヤーに召喚され、この地に来たが、ヤツが死んだ後もこの地に居残って、正解だったわ!
この地は餌である人間が豊富な上、あんな上等な霊力を持った娘もいる。
あの娘、なんとしても食ろうてやるぞ」
 そう呟き、嬉しそうに笑うと、・・
「その娘を捕まえて、ワッチの所に連れて来い!」
 と、全てのグールに命令を与えた。
 どうやら、このグーラは女王蟻のような存在なのだろう。
 全てのグールが、一斉に襲いかかったのだ。
「水流輪・・!」
 右へ左へと、水流輪を放つ瀬織。
 だが、あまりにも敵の数が多い。
 一匹浄化しても、その間に二匹~三匹と詰め寄ってこられ、ついには術を放つ隙すらない状態になってきた。
「くっ・!!」
 迎撃を諦め、やむを得ず、入り口に飛び込む瀬織。
 中から錠を閉め、琉奈たちの元へ駆け寄った。
 幸か・・不幸か、美術館は作品劣化を予防するため、室温を維持する目的と、直射日光が入らないようにするため、窓などは付けていない。
 したがって、野外と通じているのは、出入口ただ一箇所だけである。
 その出入り口さえ塞いでしまえば、しばらくは時間が稼げる。
「どうなの?」
「ダメだ、敵の数が多すぎる。これでは、助けに来た意味が無い!」
 悔しそうに唇を噛み締める、瀬織。
「いえ、来てもらわなかったら、あの時・・、もう殺されていたよ。でも、どうして私達が襲われていると、わかったの?」
「んっ? ああ・・。偶然、部活の用事で大生堀高校を訪ねてきてな」
「えぇぇっ!? もしかして高校生なの? い・・いえ・・なんですか!? てっきり、あたし達と同じ中学生かと・・・?」
 小柄で童顔。まぁ、そう見られても、不思議ではないとわかってはいるものの、涼果のしまった!といった表情を見て、少しだけ目が座った瀬織。
「まぁ、この際それはいいとして。それより、これから先どうするかだ?」
 と、冷静に話を戻した。
「朝日を浴びたら、消滅するとか・・。そういうのは無いんですか?」
「グールはヴァンパイアとは違う。基本、夜行性ではあるが、昼間でも自由に活動できる」
 そうこう話している間に、ギシギシと・・入り口扉がこじ開けられそうな音が聞こえる。
 入り口から奴らが侵入すれば、逆に瀬織たちの逃げ場は無くなる。
 二人の前にたち、術を仕掛ける構えを取る、瀬織。
 その時・・
「おいらと・・従僕の・・契約を結べ・・・」
 琉奈の腕の中から、弱々しい声が聞こえた。
 それは、琉奈に抱きかかえられている、イタチの妖怪。 
 それを見た瀬織。
「鎌鼬(かまいたち)か・・・?」
「そうだ・・・。あんた・・青い妖魔狩人・・だろ・・? あの・・戦いの場・・で、見たから・・覚えてる・・・」
「なるほど、その傷は、あの蜘蛛女にやられた傷か。で、何故・・ワタクシがお前と契約せねばならん?」
 冷ややかな眼差しで返す、瀬織。
「おいら・・は・・風属性の・・妖怪。だから・・感じるんだ・・風の動きで・・。近くに・・同じ・・風属性の・・強い・・霊力を持った・・・奴が・・」
「・・?」
「おいらと・・契約して・・あんたの霊力を・・・、おいらに・・供給しろ・・。そうすれば・・おいらは・・あんたたちを・・助けて・・やる事が・・できる」
 真剣な眼差しで訴える、鎌鼬。
 しばらく口を閉ざしたまま、考え込んでいた瀬織だが、
「そんな申し出、受けるわけにはいかない」
「ど・・・どうして・・!?」
「まず今のお前は、生きている事自体が奇跡と言えるほどの重症。そんな身体に霊力を与えても、たいした戦力として望めない。そして、もう一つは・・・」
 瀬織はここまで言うと、一旦息を飲み込み、
「ワタクシは、妖怪を信じない!」
 と、キッパリ言い放った。
「霊力を分け与えたとたん、ワタクシたちを裏切るだろう!」
「だったら・・・、ここで・・あの子たちと・・一緒に・・・、黒い邪霊・・・に喰われて・・死ぬ・・か・・?」
「喰われはせん。守りぬいてみせる!」
「どうだか・・・? あんたの・・術は・・・、浄化・・・と・・癒やし・・だろ? 本当・・に・・戦える・・・のか・・・?」
「妖怪ごときに、心配される覚えはない!」
「もう・・・一度・・言う・・・。おいら・・を・信じて・・・、契約して・・・おいらの・・力・・を使え・・・」
 弱り切ってはいるものの、真っ直ぐな眼差しが、瀬織を見つめる。

 
① 鎌鼬を信じて契約し、霊力を分け与える。

② 鎌鼬を信じられず、自分たちの力で迎撃する。


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『-後編-』へ続く。

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